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ロボサムライ駆ける■第21回

2015年11月21日 | ロボサムライ駆ける
ロボサムライ駆ける■第21回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」

■第3章  (9)
 それは巨大なガラス箱に見える。
 西日本都市連合の議場は、京都郊外にある新京都ドーム都市の中に造られていた。

 この議場全体は透明強化プラスチックフレビレンガラスのドームで覆われている。中から近畿の外界がよく見えた。西日本の各市を代表する代議員が、--各市の場合、市長が多いのだが、--その一人一人がこの議場に送り込まれていた。

 近畿新平野がフラットだけに、ドームからはすべての町々がよく見える。レザー光線がよく届くのだ。

 各議員は、丁髷の上にヘッドベルトを巻いている。その後半分にレザー光線集約装置がついている。レザー光線は各都市の市議会との連絡ができる。直接アクセスができるので、嘘の発言はできない。

 各都市の市章が、各々の羽織りに鮮やかに描かれている。
 各々武士階級の出身者が多い。がしかし、腰の大小は議会場内の持ち込みはご法度となっていた。

 いよいよ、全国都市会議が開催されたのだ。 が、いかんせん意見の一致するところは少ない。

 二十年前に起こった「霊戦争」の影響で、日本は東西に大きくわかれていた。ロボット奴隷制の西日本と、ロボット自由主義の東日本である。

 霊戦争のおり、東日本では人間が数多く亡くなり、社会のシステムとして、ロボットに人権を与えなければ立ち行かないエリアとなっていた。それゆえ、統一国家としての日本の態をとるのは非常に難しい。それは「霊戦争」以後、どの国も同じであった。

 落合レイモンは、東日本を代表してこの会議に出席している。

 東日本側の立場としては、統一を望んでいるのが事実だ。現在の関が原関所により人的交流、ロボット的交流が阻害している現在では、日本国家としての発達は望めなかった。加えて、レイモン、あるいは、徳川公国の徳川公廣にとって、心を曇らせているのは、ロセンデールの動きである。

 ロセンデールは神聖ゲルマン帝国の後援を受けて、日本へ来ている。

 神聖ゲルマン帝国は、日本が再び統一国家として国力を充実するのを望んでいない。極東の分裂国家として存在してもらう方が、有り難かった。つまり、支配しやすいと言う訳だ。


 落合レイモンは、議場で訴えていた。

「日本は、心柱(しんばしら)によって統一されるべきです」

「その心柱というのは、実際どこに存在するのだ」
 議場のあちこちから罵声が飛んでいた。レイモンは声をおとした。

「西日本の方々、真実を申し上げましょう。その場所はすでに発見されておるはずです」
 レイモンの顔は自信に満ちている。レイモンのこの発言の後、会場は一瞬無言となり、それから蜂をつついた騒ぎとなった。人の頭があちこちしている。熱気がドームを包む。
「どういうことだ」
「説明しろ」

 がなり声がつづいた。

 続けてレイモンは、指で指し示しながら

「西日本都市連合の議長、水野栄四郎殿がすべて、ご存じのはずだ」
 『議長団席』の一角に占める水野の方に、人々の眼が集まる。議員の一人が言った。

「本当ですか、水野様」
 水野は二メートルもある長身を急に立ち上がらせた。場内は水を打った静けさとなる。皆聞き耳をたてているのだ。

「諸君、落合レイモン殿の諌言に惑わされてはなりませぬ。レイモン殿は、我々西日本の纏まりを壊すためにこの会議に派遣されてきたのだ。我々が、その心柱を探すために何年かけてきたと思う。ここで説明しておこう。ロセンデール卿に心柱を探すことをお手伝いしていただいておるのは、卿が優れた霊能力者であり、かつて各国の心柱の幾つかを発見なさっておるからだ」

 水野は断固とした口調で、すべてを締めくくった。会場が落ち着く。が、再び、

「まて、水野殿。ロセンデール卿は各国の心柱を発見することによって、その国を神聖ゲルマン帝国の支配地にされなかったか。ロセンデール卿こそ、新しい帝国主義のまわしものであるこに、諸君は気がつかれぬのか」

 レイモンは言い切った。再び、爆弾発言である。
「誹謗だ。誹謗だ」

 議席のあちこちから声が上がり、レイモンに向かって人々がこぶしを振り上げ殺到してくる。議会はパニック状態になる。

「いかん、主水。レイモン様をお助けしろ」
 夜叉丸は立ち上がった。議場の控室にいた主水の耳のレシバーから、レイモンの付け人夜叉丸の叫びが響いた。

「レイモン様を無事に議場から脱出させよ」
「が、夜叉丸殿。議場警備員たちに任せた方がよいのではないか」

「馬鹿者。あの議場の暴徒の中に、ロボ忍が交じっておったらどうする。あやつら、レイモン様を誘拐し、心柱の利用にレイモン様の力を使うつもりだ。わたしの後に続け」

「道を開けろ」

 主水は叫んで、飛び出して行った。

「こやつは」
議場の警備員が罵声をあげる。

 議会は混乱状態だ。そこに主水が飛び込む。
「ロボザムライだ」
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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