東京地下道1949第2回
(飛鳥京香・山田企画事務所・1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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アメリカ軍占領軍情報部(OSS)の一部屋に一人の日本人が,
大きなデスクを手前に腰かけている。
彼の青白い顔に汗がにじんでいる。
時々、時計に視線を向けいらだっていた。
乾公介、
名目は「占領軍付日本人通訳」だが、OSSのメンバーの一員である。
彼,乾公介は確かにあせっていた。理由は死期がせまって
いるからだ。癌の宣告を受けていた。あと3ケ月とないだろう。
それまでにあのプランを完遂し々ければならない。
それは、彼の宿願であった。
いまや、彼の命脈を保っているのはその計画の
みである。双肩に重くそれがのしかかっている。
アメリカ人が、一人いそいで乾の部屋へはいって
きた。
「どうやら、我がアメリカ保安部は、あの地図をMGB(在日占領軍ソ
連保安省)のエージェントから手にいれることに失敗したようだ」
「よかった。地図はまだ、やつら、保安部の手には手にはいらなかったのですか。
それでいいんです。地図を持っていたイワノフ大尉はどうしたのです」
「保安部がライフルでしとめたとのことだ。
が、先に自殺し、地図のはいったカバンは見つていない。
死体の前が河だったので、おそらく投げ込んだものと思われる」
「わかりました。その地図が保安声の誰かの手にはい
らないか留意しなければなりませんね」
「そうだ。引続き、我われわれ保安部は、MGBのエージェントの監視を続けよう」
瞬間、血の気がうせて、乾は、自分の机の上につっぷしそうになる。
「乾チーフ、だいじょうぶか、休が悪いのでは」
「いやなんでもないです。だいじょうぷです」
OSSの内部では、波が宿摘の病にあることは誰も知らない。
「この仕事を頑張らせて下さい」
乾はそう言い、立ち上がった。
占領軍情報部(OSS)の窓の外は焼けのこったトウキョウ市の
無残な姿が横たわっていた。
アメリカ占領軍情報部の接収しているショウワ・ビルからは
トウキョウ市全部がみわたせる。
トウキョウ市は日本の首府であった。
そのトウキョウ市を壁が真ふたつに分断して
いたo
壁の向こう側は、、極東ソビエト軍の占領地区なのだ。
(続く)20090501改定
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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