日本人の日序章 第22回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
Http://www.yamada-kikaku.com/
■二〇五五年 フランス アルベーヌ市
ド=ヴァリエ将軍は自宅で、TVを見ながら、怒り狂っていた。目の
前のTVモニターには、日本組織に占拠された飛鳥ステーションヘ向かう日本人達のロケ。卜が
映っている。
「ラインハルトめ、何てざまだ。Bプランの命とりになる。さらに
はJVO(日本壊滅組織)の命とりだ。
だいたい日本人に加えてアジア人。アフリカ
人どもも気にいらん。この地球上には我々、白人のキリスト教徒だ
けで充分だ。我々白人は神に選ばれた人種なのだ。我々のみが地球
人なのだ」
ド=ヴァリエは独り毒づいていた。
この白人指導主義と独占企業グループへの攻撃が世界各地で
火を噴いていた。
■二〇五五年 アスカステーション居住区
「アサガさんだね」
通路から歩いて来た男はそう言った。アサガの知らない男だった。
「そうだが、君は」
「これを」男はアサガの手に小さなカプセルを渡す。
「何だこれは」
「いいから。持って帰れ」
「君は何者なんだ」
「ゼウスからの使いだ」
そう言いおくと、男はすばやく通りから消えた。
ゼウスは、ゼウス・ステーションの意味だろう。
ケン・アサガが、最初に情報ネットワークに誘拐されたときの
情報マフィアINSの宇宙ステーションだ。
ケン・アサガは傷がいえ、このステーション奪還に寄与したことにより、特別に
アスカステーション内に一部屋を与えられて
いた。
男から渡された箱にはメモリがはいっていた。機械にかける。
モニターにINSブキャナンの顔が映る。
『アサガ君、まずはおめでとうを言おう。君は日本の英雄になった。そし
てアスカステーションでは大きな役割を与えられるだろう。君は日
本人グループのエリートになった。が、アサガくん、我々INSの手
から逃れられんぞ。これを見てみろ」
映像に恋人のジュン・バルボアの姿が映っている。
「ジュンー」アサガは叫ぶが、その声はとどくわけはない。おまけ
にジュンは子供をだいていた。
『この子供が、誰の子供かわかるか』
ブキャナンはニヤリと笑う。
『君の子供だよ』
「何だって!」
『いいかね、アサガ君、我々の手からは君は逃がれられんのだよ。
これからの連絡を楽しみにしたまえ』
映像はとぎれた。
ケン・アサガは肩をおとし、自分の机の前で頭をかか
えていた。これからの俺はいかに生きるべきか?
■地球には放射能嵐が、吹き荒れていた。
地球表面に、人類が生息できなくなって久しい。
あの「日本壊滅条約」発効から、各種の問題が噴出し、調停が不可能となったのだ。
日本列島に、ミサイルが降り注いだ。それからの日本列島からの日本人の
エクソダスには、各国家との軋轢が生じてきた。
その波及効果で 各地で宗教戦争が勃発し、全世界は炎と化した。各々の宗教にとって、
それは聖戦だったろう。
大空をいきかったミサイルは、地球上をさながら聖典上の地獄と
化した。
生きながらえた地球人達は、急遽、多産された地球軌道上の宇宙ステーションへ移
住、さらには生存可能な他の星へ移住する者も続出した。
日本人の日序章 第22回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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