時代の風
風は どっちへ向いて吹くか知れない
時代は どっちへ向いて流れるか知れない
気まぐれなのか 悪質なイタズラなのか
それとも無邪気な戯れなのか
望みを抱かせ 触れようとしたまさにその時に
性悪の小娘のように その身をひるがえす
時代の風に 胸をそびやかせていた者も
時代の波に 快走していた者も
時代の目に 羨望されていた者も
時代の口に もてはやされていた者も
その風に吹き飛ばされ 波の底に沈む
時代の寵児は やがて時代の鼻つまみ
時代の勝者は やがて時代の敗者
時代の富は やがて時代の負債
時代の喜びは やがて時代の悩み
時代の幸福は やがて時代の不幸
風は どっちへ向いて吹くか知れない
時代は どっちへ向いて流れるか知れない
貧しかった時代が 幸せだったような気がする
敗者であったことが 幸いだったような気がする
富を蓄えることなど及びも付かないが
負債を持たないことは 何より富んでいることだと思う
病を得ることは 老いて死ぬことの道程にすぎない
老いて死ねることは 何より幸いだと思う
時代の風は 乱れてさらに強くなりそうだ
時代の波は 揺り返しさらに大きくなりそうだ
時代の性悪の小娘も老いる
老いて病を得る
時代も 俺たちと共に死ぬ