A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ゲッツとベイカー、2人がヨーロッパに渡る前の久しぶりの共演は・・・・

2014-01-13 | MY FAVORITE ALBUM
Stan Meets Chet / Stan Getz & Chet Baker

他人から見ると相性が良さそうに見える2人であっても、実際に付き合ってみると上手くいかない場合がある。似た者同士だとかえってお互いが気になってしまうものなのかも。
ビルエバンスとスタンゲッツの2人もそうであったように、スタンゲッツとチェットベイカーの2人も一緒にやる機会は少なかった。それもかなり期間を空けて。

最初は1953~54年のライブレコーディングが残されている。あの有名なベイカー、マリガンのカルテットの後釜として、マリガンの代わりに加わってヘイグのライブに出演したが長くは続かなかった。マリガン&ベイカーのコンビはマリガン主導かと思ったが、当時はベイカー主導だったのか?ベイカーとマリガンのコンビも有名だが一緒にやっている期間は決して長くはなかったので、別れた後でカルテットのメンバーと引き続きクラブ出演をしたのかもしれない。

そして、晩年では1983年のストックホルムでのライブ。その間実に30年もある、
そして丁度その間はというと、1958年にゲッツがヨーロッパに旅立つ直前に2人の共演アルバムが作られている。
ゲッツは、直前にカル・ジェイダーとのアルバムを作り、そしてこのアルバムを残した直後にヨーロッパに旅立つ。その後3年間はヨーロッパでの生活になるので、一つの区切りとしてこのアルバムが母国への置き土産となった。

一方の、ベイカーの方も、57年は一時マリガンとの再会を果たしたが他にはほとんどアルバムを残していない。
西海岸中心に活動していたベイカーが東海岸にも遠征を始めた頃だが、実はこの57年にはペッパーアダムスと良く一緒にやっていた。アダムスも拠点にしていた西海岸ではもちろんの事、アダムスがファーガソンのオーケストラでニューヨークに行った時など一緒にクラブ出演をしていた。残念ながらその時の演奏は残されていない、もしくはまだ陽の目をみていないようだ。

そして、58年の2月に突然ゲッツとベイカーはこの共演アルバムをVerveに残す。Verveはお馴染みの有名ミュージシャン同士のMeets(VS)シリーズを出していたので、2人の対決は以前から計画の中にはあったのかもしれないが。

しかし、録音された場所はシカゴ。西海岸、東海岸両方から離れ、特に2人の地元でもない。一緒に付き合っているリズムセクションも地元のミュージシャンで、何故か人目を盗むようして作られたような気さえする。この時期2人は麻薬で苦しんでいた時期。必ずしも絶好調の時ではなかったはずだ。

演奏内容は、いわゆるヘッドアレンジの一発物であり、それぞれのソロもたっぷりとられた演奏だが、2人の絡みは大ブローのバトルというよりは、何故かマリガンのカルテットのような2人のコンビネーションも聴かせてくれる。一方で、アップテンポのゲッツは一転ホットな演奏で絶好調。ベイカーも引っ張られている。二人の相性は決して悪くはなさそうなのだが。カルジェイダーと同様、一緒にやりたくともなかなか機会がなかったのかもしれない。



ベイカーの方は、これで自信を取り戻したのか、あるいは吹っ切れたのか、リバーサイドで再度復帰にかける。そして翌年にかけて先日紹介した3枚のアルバムを残して、ゲッツに一年遅れて彼もヨーロッパに渡る。リバーサイドのアルバムに満足したのか、否、不満であったのか、何か決心させるものがあったのだろう。
ちょうど、西海岸から東海岸へ、そしてアメリカからヨーロッパへ、アメリカのミュージシャンが移動を始めた時期。ひとつの節目のエポックメイキングなアルバムとしても貴重な演奏だと思う。2人の活動歴の区切りである同時に、ジャズ界全体が転換を始めた頃だった。

1. Jordu
2. Medley:
Autumn In New York / Embraceable You / What's New -
3. I'll Remember April -
4. Half-Breed Apache

Chet Baker (tp)
Stan Getz (ts)
Jodie Christian (p)
Victor Sproles (b)
Marshall Thompson (ds)

Robert Jordan & Associates Recorders, Chicago, IL, February 16, 1958

スタン・ミーツ・チェット
Stan Getz & Chet Baker
ユニバーサル ミュージック クラシック
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新春はビッグバンドのライブ通いで始まったが・・2日目はJ-Line Jazz Orchestra

2014-01-08 | MY FAVORITE ALBUM
Wish / J-Line Jazz Orchestra

新春早々のライブはエリック宮城率いるブルーノートオースタービッグバンドであった。ゲストのアルトゥーロ・サンドヴァルの迫力と多芸ぶりに、強者揃いのオーケストラの面々も圧倒されたようであったが、これはまた別の機会に。



連日であったが、昨日はJ-Line Jazz Orchestra。
若手のビッグバンドだが、昨年のCD発売記念を兼ねたライブ以来半年ぶりのライブがあった。一人一人のメンバーは色々なビッグバンドでコアメンバーとして活躍していて普段から聴く機会は多いが、皆が揃ってというのはこのような機会しかない。
メンバーには年男(女?)が多いそうだ。若手といってもいつの間にか皆中堅になっている。結成はリーダーの朝里さんが大学生の時、ちょうど2000年だそうなので、すでに14年の歴史があるバンドだ。

普段の長老達に囲まれてのプレーと異なり仲間同士のバンドということもあり、最初の曲からリラックスしてスタート。
自分にとって今日の収穫は2曲目のMoanin’。バリトンサックスをフィーチャーしたミンガスの曲だが、この日の主役は長嶋一樹。バリトン好きとしてはファンの一人。最近は教職についたとかで中々プレーを聴くことができなかったが、この日は久々にこの曲で彼のバリトンを堪能した。
まずはこれで満足。

この後は、昨年発売されたCDからの曲が続く。このオーケストラの特徴はメンバーの面々が作った曲やアレンジを持ち寄って演奏しているところにもある。
ビッグバンドの場合は、過去の有名オーケストラの曲を演奏するレパートリーバンド、リーダーが有名プレーヤーのバンド、そしてアレンジャーが率いるバンドなどが多い。
このような仲間が集まって和気藹藹にというオーケストラはあるようであまりない。曲の雰囲気も田中充の水煙やパレードのように情景描写をテーマにした曲想から鈴木圭のファンク調のBoenathmまで様々。
これが、満足その2。

セカンドステージの最後は各セクションのソロの掛け合いと取り回しで盛り上がって終えたが、これもなかなかGood。アンサンブルワークだけなくソロも皆一流だが、自分たちのバンドでやっているという気楽さが普段よりヒートップしていたようだ。
これが、満足その3.

そして、アンコールの締めとして演奏したのが、おなじみベイシーレパートリーのApril in Paris。古いビッグバンド好きのオジサンには心地よいベイシーサウンドを聴かせてくれた。あのうねる様なねちっこいアンサンブルを聴かせてもらい、そして最後はお馴染みの”One More Time”でフィニッシュ。やはり、締めの一曲はこの手の物がいい。
これが、満足その4。

リーダーの朝里君が、演奏の途中で「今日のライブはマイクを使わない生音ですがいかがですか?」と再三気にしていたが、この東京TUC位の広さであれば十分。最近ここを拠点にしている辰巳哲也さんのバンドも生音だし、あのマンハッタンジャズオーケストラも生音だった。自分はバンドやソロの個性もはっきり出る「生音」肯定派なので、今回のセッティングは大満足。
これが、満足その5.

そして、また新年早々で客の入りが心配だったといっていたが、会場は若い女性中心にほぼ満員。いつもビッグバンドのライブというと老人会の集まりのような会場が多いが久々に客席側も輝いていた。演奏する方も張り合いがあったと思う。若いジャズファン、そしてビッグバンドファンを育ててくれて感謝。
これが、満足その6。

長年このようなバンドを率いて活動し続けられているのも、多分リーダーの朝里君の人柄だろう。次回のライブは夏のようだが、このCDを聴きながら心待ちにしていよう。
次回もきっと何か「満足その7」を与えてくれそうな気がする。
彼の人柄同様、演奏は緊張感がありながら、ほのぼのとした雰囲気のいいオーケストラだと思う。

そうそう、会場の東京TUCでは1月19日に恒例になっている辰巳哲也ビッグバンドのアフタヌーンライブがある。こちらのオーケストラもバンドリーダー達を集めた一流揃いのメンバーだが、今回はスタンケントン特集。普段なかなか聴けないレパートリーを披露してくれるようだ。若いジャズファンにもぜひ聴いてもらいたいライブだ。



1. Shooting Line
2. パレード
3. Fragments
4. Trains
5. Boenathm
6. 水煙
7. El AVE
8. Ballad #3 [For You]
9. Cumulonimbus
10. Workin' Day And Night

朝里 克久 (Leader,btb)
本間 将人、萱生 昌樹、横田 寛之、庵原 良、鈴木 圭、大郷 良和、竹村 直哉、長嶋 一樹 (sax)
中野 雄介、田中 充、中村 恵介、中山 浩佑、高澤 綾 (tp)
石戸谷 斉、東條 あづさ、半田 信英、榎本 裕介 (tb) 
伊藤 志宏、宇関 陽一 (p)
岸 徹至 (b)
能村 亮平 (ds)

Produced by Yoshinari Takegami
Recorded by Takeshi Nakada


Wish
J-Line Jazz Orchestra
Battle Cry Sound
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「世界は日の出を待っている」・・・来年こそ本当の夜明けが来てほしいものだ

2013-12-31 | MY FAVORITE ALBUM
Jass At Ohio Union / Geroge Lewis

いよいよ今年も今日で終わりである。

歳をとると一年経つのが早いとよくいうが、確かにたいしたことをやっていないのにあっと言う間に一年が過ぎ去る。子供の頃一日は長かった。一年経つのをすごく長く感じたものだ。
確かに、生まれてからの延べ時間に占める絶対時間の一時間の割合は、遥かに子供の頃の方が大きいので長く感じるのかもしれない。あるいは子供の方が何事も同じ時間で吸収する情報量が多いので、一日が盛りだくさんに感じたのかもしれない。

新年を迎える準備も昔の方がきちんとけじめを付けていた。今より新たな年を迎える心構えもできていたように思う。大掃除も単に綺麗にするだけではなく一年の棚卸でもあった。最近はけじめもなく新年に突入してしまうので、年の区切りも不明確になる。あの出来事は去年だっけ、一昨年だっけということは良くあることだ。
今年は年末に引越しもあり掃除どころかまだ片付けも終わっていないが、少しはけじめをつけようと今日は最後の足掻きをした。何とかけじめを付けて正月を迎えられそうだ。

そして、せっかくのけじめを設けたので、買い置きをしてあったレコード針を久しぶりに交換した。アナログディスクを聴く機会も一時減っていたので彼是2年ぶりかもしれない。新しい針で新年の「初聴き」を迎える緊張感はいいものだ。子供の頃、新しい下着で新年を迎えたのと同じで。

愛機はYAMAHAのGT-2000、カートリッジはShureのV15typeⅢ。当時のベストセラーだが、もう30年近く使っているのにまだまだ元気に動いている。最近の電気製品は安くなった半面、壊れたら使い捨てが大部分。その点、昔のメカ物は大事に使うといつまでも持つし、修理で蘇るので感動ものだ。



先日も、17年乗った車を買い替えたが愛着があった車なので別れが寂しかった。今のオーディオ機器もあと何年もつか分からないが、かなり愛着が沸いているのでもう少し頑張ってもらいたい。しばらく前にShureの交換針がメーカーで純正品が製造中止になって一時はもう使えなくなるのでは?と心配したが、しっかりサードパーティーが供給してくれている。有難いことだ。

自分が最近使っているのはJICOのSAS針。JICOとは日本精機宝石工業。兵庫の日本海側に工場がある小さな会社だと聞く。そこがすでに製造されていない2000種類近いカートリッジの針を今でも提供している。すべて手作り、工具も自前で作っているそうだ。製品には一本一本特性の検査データがついてくる。作った人の真心を感じる。このような会社があるからこそ、昔の愛着ある製品を今でも使える訳で感謝感激だ。粗製濫造&利益追求型の企業とは基本的にスタンスの異なる会社だが、もう一度このような会社を大事にする社会になって欲しいものだ。

日本では大手のメーカーの多くが利益追求型経営に走ったために大事な技術を失った。特にオーディオの世界ではそれが顕著だと思う。アナログ高級オーディオが最近復活しているようだが、その中に日本メーカーの名前は聞かない。このJICOも頑張って欲しい。

さて、大晦日となると、昔はラジオ番組では必ずといっていいほど「世界は日の出を待っている」がリクエストされた。
今年、自分は久々にトラッドジャズに復帰したが、トラッドジャズの世界ではこの曲はどのバンドも十八番にしている。最近では、青木研のバンジョーのプレーが印象に残る。CDも出たし、ライブでもこの曲で彼の技のすべてを披露してくれる。



自分のジャズの原点はジョージルイス。そしてジョージルイスといえばオハイオユニオンのコンサート、そしてこのライブにローレンス・マレロのバンジョーをフィーチャーした「世界の日の出を待っている」が入っている。



このアルバム自体、昔は幻の名盤といわれた。このアルバムの再発に当時尽力したのは、評論家で研究家であった河野隆次氏。苦労の末やっと再発にあたっては、当時の名だたる評論家の皆さんが揃って解説を書き下ろした名盤である。その中でもこのマレロの「世界は日の出を待っている」のために、このアルバムを買って損は無いといわれた名演だ。

改めてこのアルバムを聴き返すと、コンサートの最初のメンバー紹介からイントロへ、途中の会場の雰囲気の変化も手に取るようにわかる。そしてこの「世界は日の出を待っている」では、マレロが技を駆使して「これでどうか」とソロを続けると、会場は否が応でも盛り上がる。イントロからこれらの演奏に加え、そしてアンコールの雰囲気まで、ニューオリンズジャズの醍醐味をたっぶり味あわせてくれる。会場の雰囲気をそのままの姿で収録した完全ライブアルバムだ。時は1954年、ジャズの世界はビバップで賑やかだった頃、ニューオリンズに残されたジャズの古き伝統が再び陽の目を浴びた。

今日は、この曲をもう一度聴いて新年を迎えることにする。
長く暗いトンネルを通り続けている「平成の時代」、来年こそは本当の夜明けを迎えたいものだ。日本の良き伝統が陽の目を見ることを願って。

Disc1
1. Introduction (Basin Street Blues)   Spencer Williams 3:33
2. Salute to Ohio State        Traditional 1:33
3. Collegian              Traditional 3:44
4. Mama Don't Allow It Cow      Cow Davenport 6:32
5. Climax Rag            James Scott 4:05
6. Lord, Lord, You Sure Been Good to Me    Traditional 4:43
7. High Society         Armand Piron / Clarence Williams 4:56
8. If I Ever Cease to Love            Traditional 1:47
9. The World Is Waiting for the Sunrise  Eugene Lockhart / Ernest Seitz 6:33
10. Maryland, My Maryland           Traditional 2:53
11. Funeral Sequence:
    Just a Little While to Stay Here
    Flee as a Bird
    I'll Be Glad When You’re Dead You Racal You Traditional 5:24
12. Burgundy Street Blues             George Lewis 4:30

Disc2
1. Over the Waves               Juventino Rosas 5:56
2. Bugle Boy March               Traditional 5:05
3. Doctor Jazz Walter              Melrose / King Oliver 4:30
4. Red Wing Thurland              Chattaway / Kerry Mills 3:55
5. Sensation Rag                Eddie Edwards 3:29G
6. Corrine, Corrina         Mitchell Parish / J. Mayo Williams 6:50
7. Ice Cream      Howard Johnson / Robert A. King / Billy Moll 6:08
8. Chimes Blues                    King Oliver 4:23
9. When the Saints Go Marching In        James Black / Traditional 5:33
10. Muskrat Ramble              Ray Gilbert / Kid Ory 2:47
11. Finale                   George Lewis 1:17

Kid Howard (tp,vol)
George Lewis (cl)
Jim Robinson (tb)
Alton Purnell (p)
Laurence Marrero (bjo)
Alcide Pavageau (b)
Joe Watkins (ds)

Recorded live at Ohio State University on March 3, 1954


ジャズ・アット・オハイオ・ユニオン
George Lewis
徳間ジャパンコミュニケーションズ
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表向きの顔と素顔の違いが明確になる時はどんな時・・

2013-12-29 | MY FAVORITE ALBUM
Stan Getz & Bill Evans

スタンゲッツとピアノといえばビルエバンスとの共演も忘れる訳にはいかない。

VerveレーベルはJATPのコンセプトの流れか、50年代の後半は有名プレーヤー同士のバトル物のアルバムを多く作った。スタンゲッツもピーターソン、マリガン、ベイカー、JJジョンソンなど数多くある。

60年代に入ってジャズの世界が変わった。必ずしも大物同士のセッションが受け入れられる時代ではなく、よりマスマーケットを狙ったアルバム作りになった。よくコマーシャリズムに毒されたといわれる時代だ。
マイスルやコルトレーンなどを除くと、大物といわれるプレーヤーも路線変更を強いられた。クインシージョーンズのビッグバンドもPOP路線になり、ベイシーやエリントンもビートルズナンバーやヒット曲でアルバムを出した時代、ゲッツもボサノバで売り出した。

Verveはその時代もピーターソン、モンゴメリー、ジミースミスなど大物ミュージシャンを抱えていた。時代は変わり、プロデューサーもクリードテイラーに変わったが、大物の共演アルバムはビッグバンドをバックにして少し趣を変えて作られていた。いゆゆる丁々発止にという感じは薄れて。

大物達の中にはゲッツとエバンスもいた。両者の共演アルバムは当然あってもいいはずだが、当時はそれぞれ人のプレーは「人の動向には我関せず」のスタンスで、共演アルバムなどは夢の中といった雰囲気であった。プロデューサーによって表向きの顔が作られてしまったからか。

丁度東京オリンピックの頃、自分がジャズを聴き始めた時代のジャズ界であった。

ところが10年近く経ってから、実はゲッツとエバンスのアルバムがあったという話題が広まり、未発表アルバムとしてリリースされた。当時リリースされたアルバムでの演奏とはガラッと雰囲気の違うストレートな2人のホットな演奏にビックリしたし、「やればできるじゃない」と思ったものだ。

人は社会に出ると自然といくつかの顔を持つようになる。家庭の顔、仕事の顔、友人付き合いの顔、そして恋人同士の顔・・・・などなど。
自分も意識している訳ではないが、寡黙な時もあれば多弁な時もある、穏和に感じられることもあれば、怖い印象を与えていることもあるようだ。仕事で知り合って付き合ってみるとプライベートでは全く違うキャラの持ち主だったということは良くある。異性と付き合う時は、意識して付き合い出すとなかなか素顔の自分を出すきっかけが難しいが、最初から本音ベースで付き合えると結構気楽な付き合いが長く続くものだ。もっともこればかりは相性がまずは大事だが。

60年代に入ってからのジャズアルバムも、売るための仕掛けが色々と工夫されるようになると、いつの間にか世に出る演奏スタイルは普段のプレーとは違った形で意図的に作られた物になってきた。
ボサノバのスタンゲッツなどはその最たるものであろう。その点、エバンスの方が化粧は薄めだが。でも、リバーサイドのビレッジバンガードのライブのような素顔の演奏とは異なってきていた。

さて、ゲッツとエバンス、この2人のスタイルは似てはいるとは言ってもそれぞれ自己主張が強い。それに何と言ってもこのアルバムは強力なバック陣だ。エルビンジョーンズにロンカーター&リチャードデイビスといえば、それぞれも時代を代表する主役。このアルバムは、まさにリズムを加えた4人の自己主張とお互いぶつかり合ったコラボレーションの成果だ。

お蔵入りしたのが不思議なアルバムだが、やはり「表の顔が売れている最中に素顔のアルバムは如何なのか?」という辺りが実情であったのだろう。もっとも、その後2人はライブでも共演の機会があったが、ここではゲッツのプレーぶりに腹を立ててエバンスがプレーを中断したという話もあるので、2人の微妙な意識のずれがアルバムに残すのに躊躇いがあったのかもしれない。ジャズはある意味瞬間芸の産物、そのようなアルバムがあってもいいとは思うのだが。

では、このアルバムが録音された64年当時のゲッツの素顔のアルバムが皆無かというとそうでもない。
同じ‘64年の5月の録音にボブブルックマイヤーのアルバムにスタンゲッツが客演したアルバムがある。ここでは、リズム隊は同じエルビンにカーター、このアルバムの様にゲッツのホットなプレーが聴ける。
こちらはレーベルがCBSと異なりプロデューサーもテオマセロが務めている。自宅では表向き大人しくしていたゲッツだが、遊びに行った友達の家で他所ではそこの親御さんの理解があり一暴れさせてもらった感じだ。実は、このアルバムは、それに先立ち自宅でも親の目を盗んでひと暴れしていたというものだ。
まさしく、表の顔と素顔が同時期にうまく両方残されていた。



オリジナルのLPは味気ないジャケットデザインであったが、再発CDのジャケットはオリジナルとがらりとイメージを変えたデザイン。イラストの中にエラ&ルイのアルバムが据えられているが、それは何か意味を含ませているのか??
あまり表裏のない感じの仲睦しい2人を羨んでいるのかも。




1. Night and Day     Cole Porter 6:45
2. But Beautiful      Johnny Burke / James Van Heusen 4:41
3. Funkallero       Bill Evans 6:40
4. My Heart Stood Still   Lorenz Hart / Richard Rodgers 8:37
5. Melinda         Burton Lane / Alan Jay Lerner 5:04
6. Grandfather's Waltz   Lasse Färnlöf / Gene Lees 6:28
7. Carpetbagger's Theme   Elmer Bernstein 1:47
8. WNEW (Theme Song)    Larry Green 2:50
9. My Heart Stood Still   Lorenz Hart / Richard Rodgers 6:45
10. Grandfather's Waltz   Lasse Färnlöf / Gene Lees 5:32
11. Night and Day      Cole Porter 6:34

1~6が当初のLP収録曲。

Stan Getz (ts)
Bill Evans (p)
Ron Carter (b)
Richard Davis (b)
Elvin Jones (ds)

Recorded in NYC, May 5 & 6 1964


Stan Getz & Bill Evans
Stan Getz
Polygram Records
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人生の転機で成功するには良い人との出会いと確かな人の推薦があれば・・・

2013-12-20 | MY FAVORITE ALBUM
Miles and Miles of Swing….. / Butch Miles

カウントベイシーオーケストラに加わって今年来日したブッチマイルスのプロとしてのデビューはメルトーメのバックであった。マイルスのその後の活躍を見ると、ドラムを自分でもプレーするメルトーメが新人を起用した選択眼は正しかったということであろう。
そして、ベイシーオーケストラに加入したが、ドラマーを探していたベイシーにマイルスを推薦したのは、マイルスが師と崇めるバディーリッチであった。
もちろんリッチが強く推した眼力にも間違いはなく、ベイシーに気に入られたマイルスはベイシーオーケストラに5年間在籍して大活躍した

ブッチマイルスもメルトーメとの出会い、リッチの推薦、そしてベイシーでの実績が無かったら、今のマイルスは無かったであろう。

ペッパーアダムスもニューヨークに出てきてオスカーペティフォードとの出会いがあり、そしてスタンケントンへの推薦が無かったら、全く別の人生を歩んだかもしれない。
人生、何をやっていても良い人との出会いと、人を見る目を持った確かな人に推され、そして新天地へ踏み出せる機会を得ることが大きな転機を迎える秘訣かもしれない。

ブッチマイルスはベイシーオーケストラに75年から5年間在籍したが、その在籍中にフェイマスドアレーベルでこの初リーダーアルバムを作っている。
ファイマスドアというレーベルは伝説のレーベル「キーノート」のプロデューサーであったHarry Limが捲土重来を期して1973年の立ち上げたレーベル。こちらのLimは志は高かったものの色々挫折を繰り返して、一時はレコード店の店員をやって、ファイマスドアに辿り着いた苦労人だったようだ。

このレーベルは"Concord"同様中間派の中堅プレーヤーの演奏が多いが、その中で若手の代表としてブッチマイスルにもリーダーアルバム制作の白羽の矢が立った。

こうして、ベイシーで活躍中のマイルスのもう一つの表の顔として、ジョンバンチやミルトヒントンというベテランに共演メンバーをバックにブッチの初アルバムが作られた。
バディーリッチやジーンクルーパというモダンスイング派のドラミングを継承しているブッチの軽快なドラミング。そのソロでA面、B面ともにスタートする。曲はお馴染みのスタンダード中心。メンバーも心得たもので、ブッチの軽快なドラムを引き立たせる好演をしている。
フロントラインにはベテラン、アルコーンに加えて同じ新人のスコットハミルトンも加わっている。ちょうどハミルトンがコンコルドにデビューする直前の録音で、ニューヨークに出てきたハミルトンが中間派の溜まり場であるCondon’sでプレーをしていた時だった。

因みに、ハミルトンはこのCondon'sでの演奏をたまたま聴いたジェイクハナの強い推薦でConcordへのデビューを果たせた。

時代が代わり、このマイルスやハミルトンの推しによって第一線で活躍しているミュージシャンも多いと思う。表舞台に立って良き伝統を次世代に引き継いでもらいたいものだ。
次々に隠れた存在から、このような晴々した顔を世の中にお披露目できるようになって。



このジャケットに「ファイマスドアは最高級の機器と技術を使用した録音」と謳っている割には、50年代や60年代の録音より音が悪いのは何故? 同じ時期のConcordの録音はそこそこ良いのに。
Harry Limは夢は大きかったものの、最後まで大成功に至る運気に恵まれなかったのかもしれない。

1. Cherokee
2. I’m Getting Sentimental
3. Take The A Train
4. The King
5. Sweet Lorraine
6. For The Boss
7. Broadway

Butch Miles (ds)
John Bunch (p)
Milt Hinton (b)
Marky Markowitz (flh)
Scott Haminton (ts)
Al Cohn (ts)

Produced by Harry Lim
Recording Engineer : Richard Le Page
Recorded at Mastertone Recording Studios, New York, Fall 1977

Miles And Miles Of Swing...
Butch Miles
Famous Door
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たまにはラージアンサンブルの演奏も・・

2013-12-11 | MY FAVORITE ALBUM
My Favorite Colors / Junko Moriya

先日、深澤恵梨香のストリングスを含む大編成のオーケストラを聴いていつものビッグバンド編成とは違ったジャズを堪能したが・・・

コンボとビッグバンドの中間に大編成のアンサンブルを売りとしたグループがある。
トロンボーンカルテットというのは最近多いが、サックスとブラスを組み合わせたオクテット、ノネット、テンテットとなると、ビッグバンド同様ソロもバラエティーに富むし、アンサンブルワークも楽しめる。辰巳哲也さんがデイブ・ペルのオクテットのスコアを中心に演奏しているグループはあるが他はあまり聴く機会は無かった。探せば色々あるのだろうが。

守屋純子のノネットのライブがTUCであった。ちょうどその日は夕方から予定があったのだが、予定がキャンセルになったので急遽駆けつけることができた。ちょうどBフラットでは923ビッグバンドがあったが、こちらは何度も聴いているので今回はこちらに。

開演まで少し時間ができたので、久々に近くの神田の街を歩いてみた。
駿河台下から神保町にかけては予備校時代、会社勤めを始めた頃慣れ親しんだ街なので路地の裏まで知り尽くしていたが、目的も無くゆっくり歩くのも久しぶり。初めての場所のタウンウォッチングと異なり、勝手知った街は、何が変わっているかを見定めるのも楽しみの一つである。

最近はどこの街に行ってもチェーン店全盛時代だが、この辺りにはまだ拘りの美味しい物を食べさせてくれる店が多い。久しぶり歩いてみたが、懐かしい看板がいくつも、まだまだ古い店が残っている。
その中の一軒、共栄堂のスマトラカレーを食した。
火事で焼けた戸建ての店からビルの地下に移ってから大分経つが、相変わらず昔ながらの特徴ある味は変わらない、食前に出てくる熱々のスープもこの時期は有難い。カレーは食べた瞬間はあまり辛さを感じないが、ジワジワ効いてくるタイプ。そしてここのもう一つの名物は焼きりんご。丸々一つは食べではあるし、甘さを控えてじっくり焼き込んだ味はカレーの後にはピッタリ。お勧めです。





さて、守屋純子のノネット。デビュー当時のアルバムがあるがライブで聴くのは初めて。
特に奇抜なアレンジではないが、彼女のビッグバンドの原点ともいえるモダンなアレンジを楽しめる。メンバーも一流処が揃って、曲は”A Foggy Day”からスタートしたが、CDに収められている曲中心にスタンダードあり、オリジナルありで彼女の本領発揮というところだ。オリジナル曲はどれも意欲的で、秋吉敏子を筆頭に女性作曲家は若手に至るまで誰もが情景や叙情の表現が直接的であり挑戦的なような感じを受ける。
何故かガーシュインに始まりガーシュインで終わるアンコールも” I Got Rhythm“であったが、皆のソロを披露するエンディングに相応しい選曲だった。ジャムセッションのように大ブローで終わるのではなく、きちんとアレンジで収められているのはノネットならでは。

そして、もう一つ当日の拾い物は彼女のピアノソロ。ちょうど1部と2部の間で聴けたが何とラグタイムピアノ。何でも近々コンサートでも披露するそうだが、スコットジョプリンのメイプルリーフラグやジェームスPジョンソンが聴けるとは。最近トラッド回帰しているので楽しい幕間のひと時だった。

このアルバムが録音されたのは1997年。彼女が本格デビューした直後の今から15年以上前だが、今でも斬新さを感じるアレンジだ。アルバムのメンバーは彼女がアメリカに留学していた時のプレー仲間、そして録音はルディーバンゲルダーという本場のミュージシャン、スタッフを起用したニューヨーク録音。

因みに、今回のライブのメンバーは、

守屋純子(pf)
奥村 晶(trp)
岡崎好朗(trp)
近藤和彦(as)
岡崎正典(ts)
岩持芳宏(bs)
パット・ハララン(trb)
中村健吾(b)
広瀬潤次(ds)

という強力な布陣。もちろん彼女の15年前の意欲作を色褪せずに再現してくれた。

ラージアンサンブルもなかなかいいものだ。近々探してまた出かけてみよう。

1. Dancing Puppet        Junko Moriya 7:12
2. A Foggy Day         G.Gershwin 4:13
3. Watercolor         Junk Moriya 6:01
4. One For The Art Festival   Junko Moriya 10:35
5. Song For K         Junko Moriya 5:45
6. Cheerful Colors       Junko Moriya 6:27
7. Lullaby           Junko Moriya 5:07
8. All The Things You Are    J.Kern 6:32
9. Stardust           H.Carmichael 5:40
10. In Your Own Sweet Way    D,brubeck 6:37

Junko Moriya (p)
Ron McClure (b)
Tony Reedus (ds)
Ryan Kisor (tp,flh)
Chris Potter (as,ss,fl)
Willie Williams (ts)
Scott Whitefield (tb)
Howard Johnson (bs,bcl)

Produced by Don Sickler
Recording Engineer : Rudy Van Gelder
Recorded at Van Gelder Studio, Englewood Clliffs, N.J. on May 14,15,1997


マイ・フェイヴァリット・カラーズ
Junko Moriya
Spice of Life
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古き良き時代の楽器を存分に・・・・・

2013-12-02 | MY FAVORITE ALBUM
Melody From The Sky / Scott Robinson plays C-Melody Saxophone

今年もマリアシュナイダーが来日する。昨年は初来日ということもあり会場のブルーノートは大盛況であったが今年も多くのファンがかけつけることであろう。
このマリアシュナイダーオーケストラのサックスセクションの重鎮にスコット・ハミルトンがいる。昨年はマンハッタンジャズオーケストラにも加わって来日した。秋吉敏子のオーケストラにもいたことがあるし、フルバンドでもコンボでもスタイルを問わず何でもこなせるオールマイティーなプレーヤーだ。一見特徴が無さそうだが・・・・

このロビンソン、自分のグループの演奏となると、スタイルはどちらかというとコンベンショナルなスタイルになる。それも、曲だけでなく楽器も古き良き伝統を重んじている。特に楽器のマルチプレーヤーふりは半端ではなく、今では博物館にでもいかなければ無い様な代物まで登場する。

さて、このアルバムの主役はCメロディーサックス。
トラディショナルジャズはクラリネットが主役。サックスは脇役であったが、時にテナーともアルトともつかないやや明るい感じのサックスの音色を聴くことがある。1920年代のサックスは、このCメロディーサックスがジャズでも多く使われていたようだ。今では作られていないCメロディーサックスの魅力を存分に味わえるのがこのアルバム。

曲も、当時のビックスバイダーベックの曲から、ロビンソンのオリジナルまでバラエティーに富んでCメロディーサックスの特徴を生かす選曲とアレンジが綿密に施されている。バックも単にピアノトリオだけでなく、オルガントリオ、ストリングスカルテット、アコースティックギター、マリンバ、ギターを加えたカルテット、トランペットを加えたクインテット、ピアノとのデュエットなど曲に合わせて実に多彩に考えられている。

エリントンの”Isfahan”も演奏しているが、この曲はジョニーホッジスの名演で有名なエリントンナンバー。先日来日したエリントンオーケストラではアルトのチャーリー・ヤングが好演をしていたが、ここではアルトとは一味違った魅力をこの曲に提供している。
“C Here”では、オルガントリオをバックに、コルトレーンのカルテットのようなアプローチまで、Cメロディーサックスがモーダルなジャズにも通用することを証明している。
個人の技を競い合うようなセッションプレーを重視した演奏も魅力だが、このようにプログラムされ尽くして何かをアピールしようというアルバムも貴重だ。

このアルバムが作られたのは1998年。この楽器の魅力を21世紀にも繋げようという意志でつくられたようだが、果たしてこのCメロディーサックスの運命は今ではどうなっているやら?
アメリカの家庭にはこのCメロディーサックスが使われなくなってたくさん眠っていたようだが、ネットオークションが普及してこれらの死蔵品が大分世に出回るようになったとか。復元・修理されて吹かれる機会が増えたのであれば、ロビンソンも同好の士が増えて喜んでいることだろう。
いずれにしても、ロビンソンの多芸・多才ぶりには恐れ入るばかりだ。


ライブではこんな演奏も・・・一度聴いてみたいものだ。



Scott Robinson (C melody Sax)
Larry Ham (p,org)
James Chirillo (g)
Lee Hudson (b)
Jon-Erik Kellso (tp)
Mark Shane (p,org)
Greg Cohen (b,bass Marinba)
Marty Grosz (g)
Klaus Suonsaari (ds)
Valerie Levy (vin)
Ming Yeh (vin)
Carol Benner (viola)
Hong-Chi Chen (cello)

Produced by Scott Robinson
Recorded by Jay Newland
Recorded at Edison Studio, New York City on November 11 & 12.1998



1. Davenport Blues      Bix Beiderbecke 5:46
2. Where Is Love?      Lionel Bart 3:45
3. Just Like a Melody Out of the Sky  Walter Donaldson 2:59
4. Isfahan          Duke Ellington / Billy Strayhorn 4:49
5. Yardville        Scott Robinson 6:35
6. I'm Making Believe    Mack Gordon / James V. Monaco 3:35
7. Saxophone Blues      Al Bernard / Rudy Wiedoeft 8:27
8. This Is No Laughing Matter    Al Frisch / Buddy Kaye 3:42
9. Sweet Rhythm         Eddie Wilcox 4:26
10. The Swan (Le Cygne)     Camille Saint-Saëns 2:36
11. Ups and Downs    Scott Robinson 5:34
12. Count Your Blessings (Instead of Sheep)    Irving Berlin 3:54
13. For No Reason at All in C   Bix Beiderbecke / Frankie Trumbauer 3:32
14. Singin' the Blues  (Till My Daddy Comes Home)
Con Conrad / Sam M. Lewis / Jimmy McHugh / J. Russel Robinson / Joe Young 2:37
15. C Here           Scott Robinson 4:41
16. A Melody from the Sky    Louis Alter 4:27



Melody From the Sky
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Arbors Records
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クインシー・ジョーンズオーケストラの原点は・・・

2013-11-28 | MY FAVORITE ALBUM
The Big Band in Concert 1957/1958 / Harry Arnold

今年の印象に残ったイベントのひとつはクインシー・ジョーンズの来日であった。
32年ぶりだったそうだ。前回の来日コンサートにも行ったが、それから32年経ったとは改めて月日の経つのが早いことを実感する。
今回は80歳の記念ライブでもあったが、自分がクインシーを知ったのは高校の頃。ビッグバンドリーダーとして、そしてアレンジャーとしてのクインシーであった、長い付き合いである。
その後ブラックコンテンポラリーミュージックの旗頭として現在に至るが、息の長い活動暦、そして幅広い活動領域は間違いなくジャズジャイアンツの一人である。



記念ライブは1部、2部で4時間を越える長丁場で、これも一ミュージシャンのコンサートとしては前代未聞。舞台に登場したミュージシャンも世界中から一体何人集まったのであろう。
バラエティーに富んだプログラムは楽しめるものであったが、自分の興味はやはりクインシーオーケストラの再演であった。お馴染みのエアメイルスペシャルで始まり、A&M時代の曲まで何曲かが披露されたが全体のプログラムの中ではほんの一部、物足りなさを感じたのも事実であった。
これは、参加したミュージシャンにとっても同じ気持ちだったのかもしれない。

そこで、参加したミュージシャンが今回集まった仲間で再演をする企画を立てた
トランペットの小林正弘を中心に当日参加した若手が集まって、「感動を再び再現」という趣旨でQuincy Jones Nightと銘打ったライブが先日Blues Alleyで開催された。
この夜は1部、2部ともたっぷりクインシーのビッグバンドの世界を堪能できたが、客席はいつものビッグバンドファンの年齢層とは異なり若者中心。30年前に自分が楽しんだサウンドを今の若者達が聴いていると思うとこれも嬉しかった。客席の後ろには原信夫氏の姿も、原さんもきっと同じ思いであったと思う。
今回を第一回としてまた企画して欲しいものだ。

このクインシーとビッグバンドの関係というと、ライオネル・ハンプトン、ディジー・ガレスピーのオーケストラを経て、クインシーが1957年にパリに留学をしたのが大きなターニングポイントであった。それまでもトランペットの演奏だけでなく、色々なバンドにアレンジを提供していたが、この留学を経てクインシーのアレンジは大きく飛躍を遂げ、自分のオーケストラの編成に繋がっていった。

ヨーロッパに滞在していたクインシーに、スウェーデンのハリー・アーノルドから声が掛かった。クインシーとスウェーデンのつながりは古い。駆け出しの頃、ライオネルハンプトンのオーケストラに加わって、クリフォードブラウンやアートファーマーと並んでヨーロッパを巡演していたクインシーはスウェーデンでアルバムを残している。スウェーデンという地は自分のキャリアで忘れることのできない場所のひとつであったのだろう。

クインシーのオーケストラでも有名な曲の多くはこの頃生まれ、そしてこのアーノルドのオーケストラによって演奏されている。
このアルバムに収録されているのは、4月28日のコンサートホールでのライブの模様だが、この前後にスタジオでの収録も行われており、別のアルバムに収められている。という意味では、スタジオ録音を終えた記念ライブといってもいいかもしれない。

この日のコンサートは後になっても語り継がれたようだが、チェロキーに始まりアーノルド曲が続いて、”Have You Met Quincy Jones”でクインシーがいよいよ登場する。
その後はクインシーの指揮によるクインシーのアレンジが4曲。どれも後のクインシーレパートリーのお披露目だ。パリの留学を経て、翌年自らビッグバンドを立ち上げるきっかけとなったのがこのコンサートであったと思う。

このアルバムは、ハリーアーノルドオーケストラのコンサートライブを集めたもので、自己のオーケストラに加えて、クラリネットのトニー・スコットとの共演ライブの模様も収められている。スタンダード曲をモダンなアプローチで自己のアレンジしたビッグバンドをバックにモダンなタッチでクラリネットを操るスコットの演奏を、先日紹介したエバンスのアルバムと比較するのも面白い。2年間での大きなスタイルの変化が伺える。

このハリー・アーノルドは当時地元スウェーデンのラジオ局専属のオーケストラであった。60年代に入って放送や映画で使う音楽も変化しアーノルドは専属を離れたがスウェーデンを拠点にヨーロッパの色々な放送局の仕事をしばらくこなしていたようだ。

1. Stand By
2. Six-Ten
3. Lullaby of Birdland
4. Stardust
5. The Moon Walks
6. A Night in Tunisia
7. Frantic Blues
8. Prelude To A Kiss
9. Cherokee
10. Kinda Blues
11. Brief Encounter
12. Indian Summer
13. Have You Met Quincy Jones
14. Room 608
15. Count’em
16. The Midnight Sun Never Sets
17. Meet Benny Bailey

Tony Scott (cl)
Sixten Eriksson, Arnold Johansson, Weine Renliden, Bengt-Arne Wallin (tp)
Benny Bailey (tp) <9-17>
Gordon Ohlsson, Ake Persson, Andreas Skjold, George Vernon (tb)
Rolf Backman, Rolf Lindell <1-6>(as)
Bjarne Nerem (ts),Rolf Blomqvist (ts, fl)
Lennart Jansson <1-6>, Johny Ekh <7-12>, Rune Falk <13-17> (bs)
Bengt Hallberg (p)
Bengt Hogberg <1-6>, Rolf Berg <7-12> (g)
Simon Brehm <1-12>, Larsse Pettersson <13-17> (b)
Egil Johansen (d)

Quincy Jones (arr)
Harry Arnold (dir.arr)
Goeta Theselius (arr)
Tonny Scott (arr)
Eddie sauter (arr)
Bengt Hallberg (arr)

Recorded
at Karlaplan Studio, Stockholm, Feb.19,1957 <1-6>
at The Concert Hall,Gothenburg, April 10,1958 <7-8>
at The Concert Hal, l Stockholm, Sweden, April 28,1958 <9-17>


Big Band in Concert 1957-58
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Dragon
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ヒーローの交代というのはどこの世界でもあるが・・・

2013-11-19 | MY FAVORITE ALBUM
Sung Heros / Tony Scott & Bill Evans Trio


クラリネットが続くが、モダンクラリネットというとトニー・スコット。この前紹介した1958年ダウンビートのタウンホールコンサートでは主役の一人であった。
トラッド系のジャズでは今でもクラリネットは主役だが、モダンジャズの世界ではクラリネットはいつの間にか日陰者になってしまった。それが理由かどうかは分からないが、スコットは翌年の1959年にはアメリカを離れる、そして演奏を辞めたわけではないがジャズの檜舞台からは遠ざかることに。

一時日本にも滞在していたことがあるようだが「仏教と音楽」をテーマにして日本にも拘りを持っていたようだ。音楽一筋というのではなく、いわゆるスピリチャルな世界と音の世界の接点に立ち位置を変えていった。60年代に入るとジャズもインド音楽とのコラボがあり、あるいはボサノバの登場など民族色を取り入れながら進化していったが、スコットの決断もその先駆けだったのかもしれない。

そのスコットがアメリカを離れる前にビルエバンスとアルバムを作る。何枚かあるので一回限りの付き合いではなかったようだが・・・。これが最後のアルバムとなった。

この年のエバンスは飛躍の年。1959年の春に有名なKind of Blueが録音された。これを機にエバンスはラファロと組んで自己のトリオ中心に活動を始める。ビルエバンストリオ時代の始まりだ。
一方のスコットはアメリカでの演奏活動に見切りをつけて母国を離れる。順風満帆なエバンスと行き詰まりを感じていたスコットの共演というのも皮肉なものだ。

このアルバムは、トニー・スコットがリーダー、ビルエバンストリオが伴奏で加わった形だ。スコットがエバンスと組んで何を表現したかったか興味が湧くが。実は、このアルバムの前にライブのアルバムがあるが、このアルバムは前作といささか趣が違う。

最初の曲は、何故かイントロが ”What Are You Doing The Rest of Your Life”に似てる。



聴いたとたんに思い浮かぶ言葉は「哀愁」「別れ」「瞑想」・・・・。ある種エバンスの世界ともいえるが、ちょっと違う。

いわゆるジャズのスイング感は無いし、バラードのまったり感もない。両者の冷たく研ぎ澄まされた音色が空間に舞い、時に耳に突き刺さる。ある時はオーバーダブされたバリトンが雄叫びを上げ、フリーインプロビゼーションの趣も。
まさに何かスコットが瞑想の世界に入るのを誘うかの如く不思議な雰囲気が漂う。ドライブの効いたスコットのクラリネットは無い。何故か悲しみが全編を包む。彼の今までの人生を支えてきたヒーロー達に別れを贈るように。

Israelではエバンスとのデュオで。最後の2曲は編成が代わりギターが主役。父に向けた哀愁をスコットがギターのソロで奏でる。続く曲では、フラメンコギターとクラリネットのデュオで伝説の闘牛士ラメンテを悼む。
トニー・スコットがこれまで歩んできた華やかな世界を去り、これから歩もうとする内なる世界にエバンスが餞を贈る感じのするアルバムだ。

1. Misery (To Lady Day)
2. Portrait of Anne Frank
3. Remembrance of Art Tatum
4. Requiem for Hot Lips Page
5. Blues for an African Friend
6. For Stefan Wolpe
7. Israel
8. Memory of My Father
9. Lament to Manolete

Tony Scott (cl,bs,g)
Bill Evans (p)
Juan Sastre (g)
Scott LaFaro (b)
Paul Motian (ds)

Produced by Francois Zalacain & Ray Passman
Recorded on October 29, 1959


Sung Heroes
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Sunny Side
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2本になるとクラリネットの魅力は2倍以上・・・・

2013-11-16 | MY FAVORITE ALBUM
Comes Love / Swingin’ Clarinet Duo

この土日新宿がディキシーの調べに包まれている。新宿トラッドジャズフェスティバル、今年で13回目を迎えるイベントだ。新宿2丁目の一帯で屋外、店内を含めて20ヶ所以上の会場において同時進行で演奏が行われる。1日で100グループ以上が集う。老舗のピットインもこの間は会場になるが、路上でもCaf�でも居酒屋でも、そこら中からジャズの調べが聞こえてくるのは壮観だ。



演奏内容は、タイトル通りディキシー、トラッド、スイング・・。モダンやフュージョンの類はない。ジャズフェスティバルは最近色々な街で行われるが、トラッドに限らずこれだけの規模感で行われるジャズイベントはそうはないだろう。あまりのプログラムの多さに選ぶのに苦労するが、ファンにとってはたまらない。
以前から気にはなっていたイベントだが自分はこれまで出かけたことは無く、今回が初めての体験だった。天気も良く、屋外のイベントも気持ちが良い。朝一番のパレードから一日フルに楽しんできた。やはりファンの年齢層は高いが、どの会場も満員で立ち見も出るほどの盛況ぶりであった。来年も間違いなく行くことになりそうだが、若いジャズファンも一度は足を運んでみてはどうかと思う。



今回聴いたプログラムの中で、お目当てのひとつがこのアルバムのグループ。
クラリネットは元々好きだが、白石幸司がお目当ての人。この世界ではディキシーキングスのメンバーとして有名だが、自分との接点はビッグバンドや堀恵二のサックスアンサンブルで接することが多い。スイング系だけでなくモダンビッグバンドもこなしているが、そこでのプレーはテナーが中心。得意のクラリネットもソロではフィーチャーされるが、クラリネットをじっくり聴くにはやはりスイング・ディキシー系のグループでないとタップリとは楽しめない。という意味でも今回は楽しみだった。

人気者らしく、色々なセッションから引っ張りだこで、今回はディキシーキングス以外にも昼からのプログラムにすべて出ずっぱりだった。その中の最初のセッションが後藤雅弘とのクラリネットデュオ。このアルバムでは聴いてはいたが、ライブで聴くのは初めてだった。

クラリネットのデュオというと、本家で有名なのはボブ・ウィルバーとケニー・ダバーンのデュオ。ソプラノサックスも多用していて、Concordレーベルの初期にはSoprano Summitというグループで活躍していたが、そのグループにも負けない洗練されたコンビだと思う。



このアルバムもディキシー、スイング系の有名曲が並ぶが、2クラリネットの編成を生かした絶妙なアレンジも施され単なるバトル物より味わい深い演奏だ。
ディキシーといえばこの曲ハイソサエティーからスタート。クラリネットというと明るいディキシーでは高音で飛び跳ねる軽妙さが魅力だが、Comes Loveのベースのイントロに続く低音のクラリネットの音色にびっくり。さらにアンサンブルでの2つの楽器のハモリ方にもうっとり。改めてクラリネットの表現力の豊かさを堪能できる。

ライブでの演奏を思い出しながら、久々にトラッドジャズに浸かった一日の感激を再度味わっている。

1. High Society
2. It Came Upon The Midnaight Clear
3. Comes Love
4. Louiana
5. Petit Fleur
6. Grand Slam
7. Clarinet Taking
8. Lover Come Back To me
9. Alligator Craw
10. Ole Miss
11. Black & Tan Fantasy
12. Shine
13. Tickle Toe
14. Lonesome

後藤 雅弘 (cl,ss)
白石 幸司 (cl,ss)
後藤 千春 (p)
小林 真人 (b)
権堂 浩己 (ds)

Produced by 永谷 正嗣
Recording by 石渡 義夫
Recorded at J-Jay’s Caf� Meguro, Tokyo on September 8&9 2009

Swingin Clarinet Duo
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インディーズ・メーカー
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他人の空似とはよく言われるが・・・・

2013-11-13 | MY FAVORITE ALBUM
Chet Baker in New York

ジャズはクラシックなどの較べると演奏者の個性が演奏に現れやすい。楽器自体の音色だけでなく、アドリブのフレーズ作りになると、より色濃く出る。すると聴いただけで「これは誰の演奏だ」ということを想像したくなる。
ブラインドフォールドテストなるものがあって、何の情報もなく曲を聴いて演奏者を当てたりする遊びが、昔はよくジャズファンの間では行われていた。確か、ラジオのジャズ番組でも行われた記憶がある。

ジャズ喫茶でいつもかかるような有名アルバムは自然とメンバーを含めて頭に焼き付いてくる。聴いたことが無いアルババムがかかると、まずは一体これは誰だろう?と過去の記憶から頭が回転を始める。そしてジャケットを見る。見覚えのあるデザインが目に入ると「なるほどこのアルバムはこのようなサウンドなのか」とまた一つ頭の中に刻み込まれる。見たことのないジャケットだと、思わず席を立ちジャケットを裏返してパーソネルを見る。昔ジャズ喫茶で一人ブラインドフォールドテストもどきをしていたことを思い出す。

このアルバムを手にして一曲目を聴いた瞬間思い出したのは、アート・ファーマーの”Modern Art”だ。同じ曲Fair Weatherが入っている。こちらはエバンスのピアノから始まりイントロがあってテーマのアンサンブルに入っていくが、このアルバムではドラムとピアノのちょっとしたイントロからいきなりテーマのアンサンブルが始まる。トランペットとテナーサックスのよくある組み合わせだが、覚えやすいメロディーを両者で絶妙に奏でる。よく似たサウンドだ。

作曲者はベニー・ゴルソン。Modern Artは自作自演、こちらのアルバムで演じているのはチェット・ベイカーとジョニー・グリフィン。よく聴くと似ているといえば似ているが当然微妙に違う。人に例えれば細かい顔立ちを見れば当然別人だが、遠目に見た姿形や風貌はそっくりだということだろう。

このアルバムが録音されたのは58年の9月。Modern Artも同じ9月。全く同じタイミングで録音されたものだ。ゴルソンがこの曲をいつ作ったのかは分からないが、ライナーノーツにはこのアルバム用にスコアを提供したように書かれている。とするとゴルソンがアート・ファーマーとの自分のセッションにも同じ曲(アレンジ)を使ったことになるが。とすれば、両者が似ているのも合点がいく。

さて、肝心なベイカーのプレーだが、このアルバムはリバーサイドに移って2枚目。一か月前に録音した前作がボーカル入りのパシフィックジャズ時代からのイメージを引きずっていたが、これは思いっきりハードバップよりの演奏だ。
リズムもフィーリージョージョーンズとポールチェンバースを起用しているのが大きいが、テナーのジョニー・グリフィンとの組み合わせが何と言っても特徴付けている。ボーカルも無く必然的にトランペットも力強いプレーとなってくる。ただし選曲がゴルソンの曲を含めてメロディックな曲を選んでいるので、雰囲気はアート・ファーマー似といった所か。

その後のリバーサイドでは前回紹介したCHETのようにまたソフト路線に戻っているので、唯一ハードバップを売りにしたリバーサイドらしいベイカーの演奏が聴ける。ジャケットのイメージは別にするとタイトルの“In New York”らしさがやっと出た一枚だ。移籍しても新球団に溶け込めず一勝もできない投手がやっと勝ち星を上げたように。






1. Fair Weather Benny Golson 6:58
2. Polka Dots and Moonbeams Johnny Burke / James Van Heusen  7:56
3. Hotel 49 Owen Marshall 9:48
4. Solar Miles Davis 5:52
5. Blue Thoughts Benny Golson 7:33
6. When Lights Are Low Benny Carter / Spencer Williams 6:52
7, Soft Winds Benny Goodman / Fletcher HendersonChet  6:26

Chet Baker (trumpet)
Johnny Griffin (tenor saxophone -1,3,5)
Al Haig (piano)
Paul Chambers (bass)
Philly Joe Jones (drums)

Recorded in NYC, September, 1958
Produced by Orrin Keepnews
Engineer : Jack Higgins


In New York
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Ojc
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JAZZを愛するということは・・・・

2013-11-10 | MY FAVORITE ALBUM
After Hours / Clint Eastwood

ちょっと洒落た店に行くと、和風であろうと洋風であろうと。BGMにジャズが流れているところが多い。自分のゴルフのホームコースに行ってもロッカールームにジャズが流れている。それもデイブペル風のウェストコーストジャズが。身の周りに結構ジャズが流れている場所は多い。

しかし、面と向かってジャズを聴こうという意思を持っている人を身近にはあまり見かけない。ジャズも100年を超える歴史を経て色々なスタイルがある。何も新しいスタイルだけでなく、古いスタイルがそのままの形であっても今でも十分に楽しめる。
最近、知人が長年好きであった音楽がディキシーであり、それがジャズであったことを最近知ったという。今の時代は、一つのことを根を詰めて勉強するより、広く浅く色々な事を知っているという方が好まれる生活スタイルなのかもしれない。あるいは、ネットで何でも知ることができるようにはなったとはいうものの、入口のガイダンスが重要なのかしれない。

映画のバックにもジャズは良く使われる。ジャズミュージシャンにとって映画のサントラは大事な仕事場であり、演奏家だけでなく作編曲家も腕の見せ所だ。クインシー・ジョーンズも一時映画音楽を多く手がけた。映画を観ていてバックがJazzyな曲だと思わず気分が良くなる。自分にとってはバックグラウンド以上の興味が湧いてしまう。

映画の世界でジャズと正面に取り組んできたのはクリント・イーストウッドだ。俳優業から監督、プロデュースまで幅広く活躍してきたが、バックにジャズが良く登場した。そして、Birdでは、素材としてチャーリーパーカーそのものに取り組むほどのジャズ狂だ。ロックギター好きの息子を、何度もビッグバンドを聴きに連れ出して、ジャズベースをやらせるようにしたとか。

JAZZ好きのイーストウッドが、自分の映画人生とジャズとの付き合いとの総括ともいえるコンサートを1996年10月に行った。
場所はニューヨークのカーネギーホール。イーストウッドは二人三脚で映画の音作りに取り組んできたレニー・ニーハウスをはじめとして、新旧のミュージシャンが集まった。
ジョージウェインが監修し、リンカーンセンタージャズオーケストラがバックを支えて、オールスターメンバーが次から次へと登場する。
全体の構成も良く練られていて、よくあるジャムセッション物とは一線を画する。映画で取り上げられた名曲が、歌ありコンボありビッグバンドありで、次々と登場する。DVDで見ると映画のシーンが被さってきて懐かしく思い出すことができる。

DVDには節々でイーストウッドのコメントが入っているが、「最近のジャズは理屈っぽくなっているがジャズはやはり楽しくなくては」と語っているが、思わず同意。
ベテランが元気に登場するのは嬉しいが、ジェイムス・カーターやジョシュア・レッドマンといった若手も元気だ。特にこの2人のバトルは凄まじい。イーストウッドも思わず昔とはスタイルが違うが・・といって2人の熱演を絶賛。



レスターリープスインはオーケストラをバックにした大ジャムセッションだが、ラストのベテラン、フリップ・フィリップスの若手に負けないプレーも印象的だ。



最後の曲ではイーストウッド自身のピアノによるブルースプレーが聴ける。昔から楽器を触っていたようだが「俳優業を選んだことを後悔している」という笑いをとるコメントも、まんざら嘘でもなかろう。筋金入りのジャズファンであるイーストウッドの本音かもしれない。



違うジャンルで活躍してもこのようにジャズを愛する人がいてこそ、ジャズは永遠なのだろう。イーストウッド自身ジャズというアメリカ生まれの文化を守りたいと言っているが、このようなコンサートを開催できてもちろんご満悦な様子だが、参加したミュージシャンも皆このようなコンサートに賛辞を贈っていた。

先週、マイクプライス&ジャズオーケストラの久々のライブがあった
残念ながら、メンバーの数より少ない聴衆だった。ジャズを愛する人の応援団がいないとせっかくのライブも盛り上がらないのが現実だ。というより今後の存続も大変だろう。イーストウッドの様に影響力のある熱烈ジャズファンが必要なのかしれない。

1. Misty - Kenny Barron/Barry Harris (from "Play Misty For Me")
2. The First Time Ever I Saw Your Face - Little Jimmy Scott/Kenny Barron/Christian McBride/Kenny Washington (from "Play Misty For Me")
3. This Time the Dream's on Me - The Kyle Eastwood Quartet (from "Bird")
4. Hootie's Blues - Jay McShann/Christian McBride/Kenny Washington (from "The Last Of The Blue Devils")
5. San Antonio Rose - Claude "Fiddler" Williams/Jay McShann/Christian McBride/Kenny Washington (from "Honkytonk Man")
6. Satin Doll - Kenny Mahogany/The Carnegie Hall Jazz Band (from "White Hunter, Black Heart")
7. Doe Eyes / Jitterbug Waltz (from "The Bridges Of Madison County") - The Carnegie Hall Jazz Band
8. Take Five - The Carnegie Hall Jazz Band
9. Claudia's Theme - The Carnegie Hall Jazz Band  (from "Unforgiven")
10. Tightrope - James Rivers/The Carnegie Hall Jazz Band (main title)
11. The Good, The Bad And The Ugly / Rawhide - The Carnegie Hall Jazz Band
12. Misty - The Carnegie Hall Jazz Band
13. Straight, No Chaser / Now's The Time - James Carter/Joshua Redman/The Carnegie Hall Jazz Band
14. Straight, No Chaser - Kenny Barron/Barry Harris/Christian McBride/T.S. Monk (from "Thelonious Monk: Straight No Chaser")
15. 'Round Midnight - Gary LeMel/Kenny Barron/Barry Harris/Christian McBride/T.S. Monk (from "Thelonious Monk: Straight No Chaser")
16. I See Your Face Before Me - Kevin Mahogany/Roy Hargrove/Barry Harris/Christian McBride/T.S. Monk (from "The Bridges Of Madison County")
17. Cherokee - Charles McPherson/The Carnegie Hall Jazz Band (from "Bird")
18. Laura - James Carter/Barry Harris/Peter Washington/Kenny Washington (from "Bird")
19. I Didn't Know What Time it Was - Barry Harris/Peter Washington/Kenny Washington (from "In The Line Of Fire")
20. Parker's Mood - James Moody/Barry Harris/Peter Washington/Kenny Washington (from "Bird")
21.These Foolish Things (Remind Me of You) - Joshua Redman/Barry Harris/Peter Wahington/Kenny Washington (Lester Young Tribute)   
22. Lester Leaps In - Joshua Redman/James Rivers/James Moody/Roy Hargrove/Charles McPherson/James Carter/Flip Phillips (Jass at the Philharmonic Tribute)
23. After Hours / C.E. Blues - Clint Eastwood/Jay McShann/James Moody/Roy Hargrove/The Carnegie Hall Jazz Band

Recorded live At Carnegie Hall, N.Y.C. on October 17 1996


イーストウッド ・アフター・アワーズ [DVD]
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有名グループのレパートリーを今風にカバーすると・・・・

2013-11-06 | MY FAVORITE ALBUM
Benny Rides Again / Eddie Daniels & Gary Burton Quintet

世の中に名コンビといわれたグループがいくつもある。
ビッグバンドではサド・メルやボラン・クラークが有名だが、ベニーグッドマンはある時ライオネルハンプトンとのコンビで名を馳せた。というよりグループ全体がオールスターバンドであったが。

有名プレーヤーやグループをカバーしようとした時、絶妙な関係のコンビがいるグループやオールスターグループをカバーするとなると、どうしても相方が必要になる。自分との相性も必要だし、オリジナルグループのイメージもあるし、誰でもいいという訳にはいかない。

クラリネットのエディー・ダニエルスはリーダーデビューした後しばらくして、GRPレーベルで何枚かアルバムを出している。
このGRPレーベルはデイブグルーシンとラリーローゼンとが設立したレーベルだったが、新しいものと古き良き伝統を自由にミックスした自由度の高いアルバムを多く制作していて、自分もお気に入りのアルバムが多くある。

このダニエルスが91年から92年にかけてゲイリー・バートンと組んで、ベニーグッドマンのトリビュートバンドを組んでいた。ダニエルスとバートンの組み合わせはモダンでクールなイメージでは相性がいい感じはする。しかし、グッドマンとハンプトンのコンビのカバーとなると・・・・・果たしてどうか?
この時の2人の演奏がGRPに残っている。

結果は大成功だったと思う。
他のメンバーも、ピアノにはマリュグリュー・ミラー、テディーウィルソンとは全くスタイルが違う。ドラムのピーター・アースキンのドラミングも実に現代的だ。結果は、オリジナルグループの良い所は引き継ぎながらも内容は一新して徹底的にモダンな作りにした演奏となった。
店舗改装に例えれば、店名やメニューは同じものを残しながら、中身は現代風にアレンジし直したといった感じだ。しかし、昔からの伝統はしっかり引き継がれており、決してモダンすぎるということはない丁度良い塩梅だ。これは単なるコピーではなく、立派なオリジナルサウンドだと思う。

ジャズのカバーは、限りなくオリジナルの雰囲気を踏襲するのも一つだが、このように新しい流れや自分なりの解釈を加えた演奏もまた楽しいものだ。
先日、本家ベニーグッドマンのBenny Rides Againを紹介したが、後輩に再チャレンジしてもらってグッドマンも天国でご機嫌だろう。

当時のライブの映像



1. Sing, Sing, Sing             Louis Prima 3:39
2. Stompin' at the Savoy 
      Benny Goodman / Andy Razaf / Edgar Sampson / Chick Webb 5:40
3. Moonglow       Eddie DeLange / Will Hudson / Irving Mills 4:09
4. Air Mail Special Charlie Christian / Benny Goodman / Jimmy Mundy 3:47
5. Let's Dance   Fannie Baldridge / Joseph Bonine / Gregory Stone 5:09
6. Slipped Disc               Benny Goodman 4:04
7. Memories of You         Eubie Blake / Andy Razaf 5:25
8. Avalon       Buddy DeSylva / Al Jolson / Vincent Rose 2:57
9. In a Mist                  Bix Beiderbecke 5:17
10. Grand Slam               Benny Goodman 4:52
11. After You've Gone      Henry Creamer / Turner Layton 3:28
12. Goodby 
     Stanley Cowell / Debbie Gibson / Gordon Jacob / Gordon Jenkins / Carole Bayer Sager / Narada Michael Walden 5:44
13. Knockin' on Wood                Red Norvo 3:37

Eddie Daniels (cl)
Gary Burton (vib, Xylophone)
Mulgrew Miller (p)
Mark Johnson (b)
Peter Erskine (ds)
Produced by Dave Grusin & Larry Rosen
Elaine Anderson : Engineer
Recorded on January 14, 1992 - January 15, 1992


Benny Rides Again
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Grp Records
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誰もが知っているテレビの主題歌を・・ジャズでやると

2013-10-30 | MY FAVORITE ALBUM
巨人の星 Jazz

我々世代が子供の頃はスポーツと言えば野球。キャッチボールをやる姿は街角のどこでも見かけたし、ちょっとした空き地では草野球がおこなわれていた。人数が少なければ三角ベース、子供なりの知恵を働かせて日が暮れるまでボールと戯れていた。最近ではめったに見かけない風景だ。
自分もそのような時代を経て、高校時代は野球部で本格的にやっていたので、野球に対してはそれなりの想い入れがあった。自分でやるだけでなく、よく観戦のため球場にも通った。子供の頃は当然のように巨人ファンであったが、学生時代を経て社会人になると徹底的なアンチ巨人に。

ところが、世の中で野球に人気が無くなった頃から、自分も急激に野球への情熱が無くなってしまった。50歳近くまで着ていた会社の野球部のユニフォームを脱いだ頃かもしれない。プロ野球の選手にもチームにも・・。

今では、興味の対象外となってしまった野球であるが、今年は流石に楽天のマー君の動向は気になる。
無敗でシーズンを終え、今は日本シリーズの真最中。今日楽天が勝っても負けても明日の一戦が天下分け目の戦いになるだろう。ここまできたので、マー君に胴上げ投手になって欲しいものだ。相手の巨人は、昔は天下無敵の存在であったが、引き立て役に甘んじているのも時代の変遷か。巨人といえば、「巨人の星」星飛雄馬も忘れることができないが、マー君が星飛雄馬となるのも皮肉なものだ。

ジャズを演奏するための素材は何でもありだ。クラッシクや民族音楽とのコラボはメインストリームのジャズとはまた違ったジャンルを創り出しているが、・・・
メインストリームの演奏では素材は何でもありで、この前スクールソングを素材としたアルバムを紹介した。皆が知っている曲というと映画やテレビのテーマソングもよくジャズのアルバムで取り上げられるが、日本のテレビ主題歌となると・・・・?

そんな中で、「巨人の星」を素材としたJazzアルバムがある。タイトルもその物ずばり、「巨人の星 Jazz」

全体がモーダルな演奏だが、ギターは何となくウェス風とか、個々人の演奏は多少味付けがされているような感じだ。いずれにしてもメロディーはオリジナルの雰囲気を出している。メインテーマを吹くトランペットは、コンボでの演奏以外でもビッグバンドでは常連、最近は自己のビッグバンドでも大活躍の高瀬龍一。ここでは哀愁が籠ったプレーが何とも言えない。

ジャズの楽しみ方の幅広さを感じるアルバムだ。

1. ゆけゆけ飛雄馬(クインテットバージョン)
2. クールな恋
3. 青雲高校応援歌 「青雲健児の歌」
4. ゆけゆけ飛雄馬 (トリオバージョン)

高瀬 龍一 (tp)
音川 英二 (ts)
中野 飛音 (g,arr.)
吉田 智 (g)
新津 健一郎 (p,arr.)
武田 桂ニ (b)
岩瀬 立飛 (ds)

Produced by Hiroyuki Fukuhara
Recording Engineer : Kazuhiko Miyamoto
Recorded at Heart Beat Reccording Studio、Tokyo on October 22, 2002


巨人の星JAZZ
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トライエム
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ジャズの素材は何でもいいが、大事なのは料理法・・・・

2013-10-29 | MY FAVORITE ALBUM
Swingin’ School Songs / The Dave Pell Octet




先日、浅草のHUBに行った。トラディショナル&スイング系のライブハウスとして有名だが、久々にニューオリンズスタイルのライブをタップリ聴いた。リーダーの大松澤さんがグループを結成したのは昭和39年、50年の歴史を持つ大ベテラン率いるバンドは流石に年季が入った演奏だった。リーダーの軽妙な司会で曲の説明、歌詞のさわりの紹介も堂に入ったもので、客席と一体になった楽しいステージを作り出していた。

ニューオリンズ&ディキシーのスタンダートが次から次へと繰り広げられたが、ダウンバイザリバーサイトや谷間の百合といった、元はゴスペルや讃美歌などの素材も多い。モダンジャズの時代になるとスタンダードはミュージカルや映画の音楽が多くなるが、ジャズの創世記は身近な素材を何でもジャズに仕立てていった。

客席には外国人も多かった。異国の地に観光に来て母国の懐かしい曲を果たしてどんな気分で聴いていたのか? にこやかに一緒に口ずさんでいる表情は存分に楽しんでいる様子が伺えたが、まさか日本でこのような演奏が聴けるとは思わなかったろう。日本人がアメリカを旅行して、演歌や民謡を聴けるとは思わないように。

最近ではジャズというとオリジナルも多く、少し取っ付きにくくなっているが、良く知っている曲がジャズで演奏されると、ジャズの良さや楽しさが伝わりやすいものだ。硬派のジャズファンはあまり好みでは無いかもしれないが。

ウェストコーストジャズの全盛期、西海岸で人気のあったグループのひとつにデイブ・ペルのオクテットがある。ダンスのバックから聴かせるジャズに変わっていった中、デイブ・ペルのオクテットはダンスのバックとしても活動をして地元で人気を博していた。それに加えて、ハイスクールやカレッジの学校での演奏も頻繁に行っていたそうだ。

メンバーの一人が、学校周りをやるならレパートリーにスクールソングを入れたらどうかというアイディアに早速数曲取り入れたら、これが結構評判がいい。ということで、このアルバムができたそうだ。

という経緯で、アメリカ人なら誰もが知っている校歌集が出来上がった。
アレンジはビルホルマンやマティーペイチといった西海岸の当時の西海岸の売れっ子を揃えているが、サウンドはお馴染みのデイブ・ペルサウンド。何をやってもそして誰がアレンジしてもバンドカラーとしては確立していたということだと思う。
日本では、辰巳哲也さんがこのオクテットの演奏を時折してくれるが、このペルサウンド好きにはたまらないグループだ。

HUBのライブで、大松澤さんがMCの中で、ディキシースタイルのいいところはメロディーラインを大事にしている所。バックのオブリガードもメロディーを大事にしてのバックなので、モダンジャズのようにひたすらソロを延々と吹くのはちょっと違うんだ。とコメントされていたが、このペルのオクテットの良さもメロディーラインを大事にしたアンサンブルが聴き処でソロは短い。コルトレーンを好む人には物足りないと思うが、古き良き時代のジャズをモダンにしたペルのオクテットはアンサンブルが好きな人には嵌ると思う。

1. On Wisconsin
2. The Victors
3. Rambling Wreck from Georgia Tech
4. Fight On
5. Far Above Cayuga's Waters
6. Iowa Corn Song
7. Indiana, Our Indiana
8. Navy Blue and Gold
9. The Eyes of Texas
10. Hal Purdue
11. Minnesota Rouser
12. Wave the Flag
13. Go, U Northwestern
14. Illinois Loyalty
15. Sweetheart of Sigma Chi
16. Notre Dame Victory March

Dave Pell (ts)
Don Fagerquist (tp)
Bob Enevoldsen (vtb,arr)
Marty Berman (bs)
Marty Paich (p,arr)
Tony Rizzi (g)
Buddy Clark (b)
Frank Capp (ds)
Bill Holman(arr), John T. Williams(arr), Med Flory(arr)

Recorded in Los Angeles, August 8,11 and 13, 1958

Swingin' School Songs
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Fresh Sound
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