A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

持つべき物は友とよく言うが・・・

2013-10-21 | MY FAVORITE ALBUM

Thank You, Gerry / Gerry Mulligan All Star Tribute Band

人生を終えるとき誰に看取ってもらいたいか?
愛する家族か、苦楽を共にした仕事仲間か、あるいは一緒に遊び呆けた友人達か、・・・・それは人さまざまであろう。亡くなった直後は、誰もが故人の生前の思い出が走馬灯の様に駆け巡るが、月日が経つにつれ徐々にその思い出も薄れてくる。たとえ肉親であっても。

しかし、ミュージシャンの場合は録音を残すことで故人の演奏は時代を経ても代々聴き継がれていく。特にジャズの世界は過去の名演、名盤は永遠の宝物だ。今この時間に、世界中でマイルスやコルトレーンを聴いている人は何人もいるだろう。
そして故人と一緒に演奏した経験を持つミュージシャンは、故人との共演の思い出はこれも一生の宝物だろう。さらに、その共演から多少なりとも影響を受けた何かが今の自分の演奏に引き継がれていればなおさらだ。

故人をしのんで、仲間達や後を継ぐ者達によってTributeアルバムが良く制作される。
しかし、多くは亡くなってからしばらく月日が経ってから。特に本当のJazz Giantsになると、様々なミュージシャンによって、中には何十年たってから制作されることも数多い。

マリガンがこの世を去ったのは、1996年1月、このアルバムは亡くなった翌年、一周忌を終えた後に作られた。メンバーはマリガンと一緒に仕事(プレー)をした仲間達。
亡くなる直前まで一緒にバックに参加していたメンバーを始めとして、53年に一緒にプレーをしたリーコニッツ、ラストアルバムに参加しているランディー・ブレッカーなど多士済々だ。中でもカルテットでの共演も長く、その後も色々関係が深いボブ・ブルックマイヤーが参加しているのが嬉しい。

曲は、マリガンのオリジナルが大半だが、中に3曲だけがスタンダード曲が。いずれもマリガンの好きだった曲なのかもしれない。

演奏は、マリガンのバリトンは聞こえないが、マリガンサウンドそのもの。アレンジは、今回の纏め役、ピアノのローゼンタールが行っているが、マリガンのDNAはきちんと引き継いでいる。
それを演奏するメンバーも、亡きマリガンを忍びながらのプレーであったと思う、自然とマリガンの世界に取り込まれていく。
蛇足ながら、2インチのアナログテープで録られたという録音が実にいい音だ。マリガンサウンドはアナログが似合うのかもしれない。

マリガンも、昔の仲間に改めて弔ってもらい、無事自分の音楽が引き継がれているのを確認して、これで無事成仏できたに違いない。


1. Bark for Barksdale         Gerry Mulligan 5:09
2. Theme for Jobim          Gerry Mulligan 6:06
3. Elevation              Gerry Mulligan 4:10
4, My Funny Valentine Lorenz Hart /  Richard Rodgers 8:37
5. Rocker                Gerry Mulligan 5:30
6. Walking Shoes          Gerry Mulligan 7:29
7. Moonlight in Vermon John Blackburn / Karl Suessdorf 5:16
8. Line for Lyons            Gerry Mulligan 5:58
9. Festive Minor             Gerry Mulligan 6:39
10. Bernie's Tune Jerry Leiber / Bernard Miller / Mike Stoller 5:57
11. Curtains                 Gerry Mulligan 7:28

Gerry Mulligan All-Star Tribute Band
Lee Konitz (tp)
Randy Brecker (flh,tp)
Bob Brookmeyer (vtb)
Ted Rosenthal (p,arr.)
Dean Johnson (b)
Ron Vincent (ds)

Engineer : Paul Wickliffe
Music Direction :Ted Rosenthal
Produced by Bob Karcy
Recorded on August 28&29,1997, at Avatar Studio,New York


Thank You Gerry! Our Tribute to Gerry Mulligan
クリエーター情報なし
Arkadia Jazz
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自分の曲を他人の編曲で演奏すると・・・・

2013-10-18 | MY FAVORITE ALBUM
The Gerry Mulligan Songbook / Gerry Mulligan and Sax Section

ジェリーマリガンはプレーヤーとしてだけでなく作編曲家としても有名だ。
ウェストコーストサウンドに代表されるクールジャズの代表格としてのマリガンサウンドは、マリガンのアレンジによって作られたといってもいいだろう。といっても、マリガンは決して西海岸を拠点として活動して訳ではない。

マリガンが音楽活動を始めたのはピアノから。自らも時にはピアノを弾く。だからピアノレスの編成が多いという訳でもないとは思うが。そしてクラリネット、バリトンサックに転じて表舞台に登場する。
しかし、プレーヤーとして頭角を表す前からアレンジャーとして活動を始める。いくつかのバンドにアレンジを提供し、クロードソンヒルにアレンジを提供したのはまだ20歳になったばかり。音作りの上手さは天賦の才能だろう。

プレーヤー、そしてアレンジャーとしても参加した初期の有名なアルバムは何と言ってもマイルスのクールの誕生だろう。このアルバム自体が当時の一般的なジャズアルバムと並べてみると特異なアルバムだ。マリガンもデビュー当時から「普通の人」とは、ちょっと違う道を歩み出していたのかもしれない。

50年代に入ると、あのチェットベイカーとのピアノレスカルテットが誕生する。
ドラッグで一時一線を退いたが、ボブブルックマイヤーとのコンビで復活を果たす。
そして、50年代の後半はいわゆるMEETSともいえる、色々なプレーヤーとの共演アルバムが続く。モンクからゲッツ、そしてベンウェブスターとスタイルや楽器の違いはものともせず、ディキシーからモダンな演奏まで、自分のスタイルを貫きながら得意のコンビネーションプレーを発揮する。これが、マリガンのプレーの特徴だ。

60年代に入ると自分の音作りをより深めるためにビッグバンドを作って新しい世界に入るが、50年代の活動がマリガンの長い活動歴の第一期だろう。

この節目に一枚のアルバムを作っている。
作曲家としても有名なマリガンは、ここまでにも多くの曲を作っているが、それらの曲を自ら演奏するソングブックアルバムだ。

このアルバムは、よく見ると単なる自作自演のソングブックではなく、面白い試みがいくつかある。
まずは管楽器の編成。ホーン楽器を使わずサックスだけ。集めたメンバーも一流揃いだが普段使っている楽器の持ち替えもある。例えばズートシムスがアルトとか。

ピアノレスはいつもと同じだがギターが加わっている。それもフレディーグリーンが。当然いつものカルテットよりリズムが強烈になっている。

そして肝心なアレンジはマリガンかと思いきや何と全曲ビルホルマン。マリガンはプレーヤーに徹している。

アレンジャーも変えて編成も変えると結果としてどんな音が出てくるかと思うと、マリガンサウンド。アレンジャーはよく演奏するプレーヤーを意識するという。この場合は、曲、プレーヤー、そしてバンドカラーまでマリガンを意識したのかもしれない。流石のホルマンも全く曲想を変えるわけにはいかったのかもしれない。反対に見事にマリガンサウンドを引き継いでいる。演奏しているマリガンもご満悦であったろう。
マリガンとホルマンの出会いはスタンケントンオーケストラを通じて。マリガンとケントンは肌合いが合わなかったようだが、ホルマンはマリガンの技をしっかり身に着けたという。その成果をマリガンにお返ししたのかも。

CD化されたこのアルバムには未発表だったエクストラトラックが4曲。これもストリングを加えたバックのマリガン節。これはマリガンのアレンジだが普段聴けないサウンドだ。しかし、パーカーのウィズストリングスとは異なり、ストリングスバックでもマリガン節のアレンジは健在だ。



1. Four and One Moore               Gerry Mulligan 4:23
2. Crazy Day                   Gerry Mulligan 7:05
3. Turnstile                   Gerry Mulligan 7:53
4. Sextet                    Gerry Mulligan 4:18
5. Disc Jockey Jump song review         Gerry Mulligan 4:35
6. Venus de Milo                 Gerry Mulligan 5:08
7. Revelation                  Gerry Mulligan 5:01
8. Mayreh                     Horace Silver 6:02
9. The Preacher                  Horace Silver 6:25
10. Good Bait             Count Basie / Tadd Dameron 4:39
11. Bags' Groove                  Milt Jackson 3:55

1~7
Gerry Mulliga (bs)
Zoot Sims (ts,as)
Al Cohn (ts,bs)
Allen Eager (ts,as)
Lee Konitz (as)
Freddie Green (g)
Henry Grimes (b)
Dave Bailey (ds)

Arranged by Bill Holman
Recorded in New York City on December 4&5 1957

8~11
Gerry Mulligan (bs)
Dick Wetmore (Violin)
Vinnie Burke (b)
Paul Palmieri (g)
Calo Scott (cello)
Dave Bailey (ds)
Recorded in New York City on December 5 1957

Richard Bock : Producer
Michael Cuscuna : Reissue Producer


Gerry Mulligan Songbook
クリエーター情報なし
Blue Note Records
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ラストレコーディングはなかなか意図してできるものではないが・・・・・

2013-10-16 | MY FAVORITE ALBUM
Dream A little Dream / Gerry Mulligan Quartet

何の仕事をしていても必ず引退する時がある。
会社勤めをしていると定年退職は大きなきっかけだ。自分で仕事をしている人は歳をとるとそのタイミングをいつか意識し始めるものだ。しかし、長くひとつの仕事を続けていると自然と「体力と気力が続く限りは生涯現役」を貫く人が多いように思う。

スポーツと違って音楽の世界は年をとって益々その技に磨きがかかることも多い。先日来日したクインシージョーンズなどはその代表格だろう。プレーを辞めても、作編曲、プロデュースと色々な道はあるが、ベテランの元気な演奏する姿をいつまでもステージで見ることができるのはファンとしては嬉しいものだ。

その中で、ラストレコーディングが生まれる。意図して制作されることは少ないとは思うが、残り少ない演奏生活の集大成ともいえるラストレコーディングは人によって様々なアルバムとなって後世に残る。

しばらく前に、セルドンパウエルのEnd Playというアルバムを紹介した。自らのアルバムが少なく、リーダーとして活動も少ないパウエルのようなミュージシャンにとっては、仲間に囲まれたセッションがラストレコーディングとして残されていたのは素顔のパウエルの記念としても良かったと思う。

バリトンサックスの大御所にジェリーマリガンがいる。
プレーヤーとして、作編曲家として、バンドリーダーとして50年以上の幅広い活動暦がある。アンサンブルワークはどちらも得意であるが、ソロになるとペッパーアダムスとはある意味対極に位置するプレーぶりだが、どちらも個性があって好きな2人だ。

そのマリガンにもラストアルバムがある。1996年1月に亡くなる前の1994年と1995年にTelarcに2枚のアルバムを作っている。
結果的には95年の録音の自分の曲の作品集が本当のラストアルバムになるが。しかし、このアルバムは、自分の作品で固め、それもすべて新曲、そして普段あまり一緒に演奏したことのないゲストを迎えた演奏となると、これまでの集大成というより過去にけじめをつけて新たな船出を迎えた一枚という感じがする。

一方で、1年前のアルバムは、スタンダード曲をマリガンのワンホーンでたっぷり聴かせてくれる一枚だ。
マリガンはスモールグループでも必ずと言っていい程相手がいる。チェトベイカーやブルックマイヤーとのコラボレーションは有名だが、ブルーベックのグループに加わった時も、ブルーベックとのコラボレーションが基本だ。
ところが、このアルバムではピアノトリオは控えめで、あくまでもマリガンの独演会。スロー、ミディアムテンポの曲が多いせいもあるが、ゆったりとこれまでの人生を振り返りながら、あくまでも自分のテンポでマイペースにこなしていく。マリガンのフレーズ作りは以前のアルバムの紹介の時も書いた記憶があるが、何か日本的なノリを感じるので余計に親近感を覚える部分もある。
有名なスタンダードが並ぶ中でマリガンの曲も何曲かあるが、ウォーキングシューズをはじめとしてお馴染みの曲。スタンダードと言ってもいいかもしれない。
その中から、アルバムタイトルに選ばれたのは、”Dream A Little dream of me”。

アームストロングの歌で有名だが、


自分があの世に逝ってしまっても、この曲を聴いて自分のカルテットの夢を見て欲しいということかもしれない。好きなアルバムの一枚だ。
いずれにしても、この2枚がマリガンのラストアルバムになる。マリガンの音楽生活を振り返るにはふさわしい一枚だと思う。

自分も仕事を退くときは、ジャンルは別にして変な理屈や難しいことは無しにして、淡々とシンプルで明快な仕事をしたいものだ。

晩年の演奏だが、アルバムはこれより枯れた演奏だ。



1. Nobody Else But Me      Oscar Hammerstein II / Jerome Kern 4:09
2. Home (When Shadows Fall)   Harry Clarkson / Peter Van Steeden 6:00
3. Dream a Little Dream of Me Fabian André / Gus Kahn / Wilbur Schwandt 3:48
4. I'll Be Around                    Alec Wilder 3:16
5. They Say It's Wonderful              Irving Berlin 4:45
6. The Real Thing song review      Gerry Mulligan / Mel Tormé 4:41
7. Noblesse                     Gerry Mulligan 6:15
8. Here's That Rainy Day     DayJohnny Burke / James Van Heusen 4:25
9. Georgia on My Mind        Hoagy Carmichael / Stuart Gorrell 4:21
10. My Funny Valentine         Lorenz Hart / Richard Rodgers 4:39
11. As Close as Pages in a Boo           Sigmund Romberg 4:17
12. My Shining Hour          Harold Arlen / Johnny Mercer 4:05
13. Walking Shoes                 Gerry Mulligan 4:37
14. Song for Strayhorn               Gerry Mulligan 6:31

Gerry Mulligan (bs)
Bill Mays (p)
Dean Johnson (b)
Ron Vincent (ds)

Produced By Robert Woods
Engineer : Jack Renner

Recorded at Clinton Recording Studio A,New York City,April14-16,& April 28-29,1994


Dream a Little Dream
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Telarc
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「天は二物を与えず」とはよく言われるが・・・・・

2013-10-11 | MY FAVORITE ALBUM
A Beautiful Friendship-Honoring Jay & Kai / Sliding Hammers

普通の人は一つの才能さえ生かしきれずに一生をおくるが、中には有り余る才能を多方面に発揮するマルチタレントもいる。しかし、それぞれプロといえる道を2つ歩むとなると、そうそう簡単ではない。一つの道も極められない凡人にとっては、2足の草鞋を履いて成功している人は羨ましい限りだ。

調布の柴崎駅前に、「さくらんぼ」というライブハウスがある。トロンボーン好きの皆さんであればご存じだとは思うが。オーナーがトロンボーンを吹いていたということもあり、トロンボーンのセッションが多い。自分は堀恵ニさんのサックスアンサンブルを聴きに行くことが多いのだが。

10月9日は、カールフォンタナの命日。ということもあり、この日はカールフォンタナに捧げた4トロンボーンのライブがあった。主催はカールフォンタナを研究している西島泰助さん。ゲストはアレン・ハーマン。ニューオリンズ出身でディキシーもやり、クリントン元大統領とも共演したこともある凄腕。

今日主賓はカールフォンタナとのアルバムも作っている隠れた名手。
一方の本職は医学用のバッテリー(ペースメーカー)の開発では世界的に有名な物理学者とか?詳しい所は知らないが、良く学会の仕事で来日して、夜はプレーもしているそうだ。

それに加えて、今回は紅二点、上杉優と駒野逸美が参加。上杉さんは先日、宮嶋みぎわのオーケストラでも大活躍していた。駒野さんもしばらくあごの調子が悪くプレーを休んでいたが元気に復帰。トロンボーンのカルテットは最近多いが、その中でも今回は珍しい組み合わせで、果たしてどんな演奏になるか楽しみであった。

一昨年のライブ



演奏は2人の長老に2人の孫娘といった雰囲気で和気藹々としたアットホーム雰囲気で大満足。もちろん演奏はホットであったが。トロンボーンは人の声に近い音域のせいか、アンサンブルは他の楽器と較べて聴いていて心地よい。
最後はゲストも加わって、大ジャムセッションで盛り上がって終わった。どこまでも広がる友達の輪といった感じで、次回のセッションが楽しみだ。



今回参加した上杉&駒野のコンビは2人での活動もやっているようだが、残念ながらまだ
そのプレーは聴いたことが無い。最近女性の管楽器のプレーヤー増えているがこれも喜ばしいことだ。こうしたベテランの大先輩との共演は2人にとっては、きっと明日への礎になっているだろう。

トロンボーン2人でコンビ組んだグループといえば,昔はJ&Kと相場が決まっていた。最近は女性の管楽器プレーヤーも多いが女性コンビのグループもぼちぼち見受ける。
トロンボーンコンビの大先輩と云えば、やはりスウェーデンのSliding Hammersの2人。金髪の美女のコンビだけでも興味が湧くが、その演奏は見かけと異なりホットなプレーで、歌も実に上手い。上杉さんも今回歌を披露していたが、和製”Sliding Hammers”に育っていってもらいたいものだ。



という訳で、Sliding Hammerのアルバムを一枚。
彼女達の3作目。前作と較べるとオリジナルの曲も増え、独自路線を打ち出してきているが、彼女達の良さはコンベンショナルなものに軸足を置いていること。
プレーは相変わらず男勝りのハードなプレー。

女性でありながら男勝りの演奏、天は二物を与えだした。これからはいよいよ女性の時代かもしれない。

1, Falcon               3:56
2. Penthouse              4:27
3. High Altitude Delivery        4:16
4. The Good Life            5:32
5. When Lights Are Low         5:14
6. The Hammer Theme           4:33
7. Winter                3:11
8. Being Alive             4:50
9. My Wedding Shoes           4:50
10. You'd Be So Nice to Come Home    4:54
11. All These Days           5:10
12. A Beautiful Friendship       6:30

Karin Hammar (tb.vol)
Mimmi Petterson Hammer (tb,vol)
Mathias Aigotsson (p)
Martin Sjostedt (b)
Ronnie Gardiner (ds)

Produced By Ingmar Matsgard
Engioneer : Goran Stegborn
Recorded at SAMI Studios, March 10 &12、2006


ア・ビューティフル・フレンドシップ~ジェイ&カイに敬愛をこめて~
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スパイス・オブ・ライフ
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どの業界にも世に知られざる「名品」を作り出す隠れた老舗企業があるが・・・・

2013-10-09 | MY FAVORITE ALBUM
The Bill Holman Band

先日の日曜日、辰巳哲也Big bandのAfternoon Liveに出かけた。
今回で3回目だが、毎回テーマを決めてあまり取り上げられない珍しいアレンジの演奏を披露してくれるライブなので、ビッグバンド好き、それもマニアックなファンにはたまらない。

前回はオルガン特集であったが、今回はビルホルマンのアレンジ特集。
ホルマンは普段あまり表には出ないが、50年代から今に至るまで結構色々なアルバムにプレーヤーとして、そしてアレンジャーとして顔を出している。

ゴルフクラブのメーカーに三浦技研という会社がある。いつも表に出るナショナルブランドと較べると知名度は圧倒的に低いが、有名ブランドの商品も実はこの三浦技研で製造されているクラブが多くある。いわゆるモノづくりのための技術は実はごく限られた数社に限られているという話はよく聞くが、その一例だろう。

このビルホルマンも実は有名オーケストラや歌手を支えてきたアレンジャーとしてはいなくてはならない存在だ。名盤といわれる中にホルマンがアレンジを行ったアルバムは枚挙の暇がない。

自分の紹介したアルバムでもホルマンが関係しているアルバムは結構な枚数がある。作編曲のクレジットを書き漏らしたものもあると思うので、丹念に探せばもっとあるかもしれない。最近では、ベイシーのパブロ盤が丸々ホルマンのアレンジであった。

今回のライブは、そんなホルマンの作品集だったので、果たしてどんな曲が飛び出すか楽しみであった。イントロは、まずはデイブペルのオクテットからスタートした。
Jazz goes to Siwash. “A Pell of A Time”というアルバムに入っている曲だ。

軽くウォーミングアップで本命はフルバンド編成のアレンジ。
50年代から最近までの物まで多くの作品があるが、今回も古いアレンジから比較的最近のアルバムに収められている曲まで色々と。途中、ホルマンのアレンジの特徴などの解説も入り、自分のような「聴くだけファン」には参考になった。
演奏する方にとっても難曲が多いらしく、プレーヤーとっても終わった後で達成感を感じた雰囲気が伝わってくるライブであった。

丁度バブルの絶頂期、日本の企業は業種を問わず元気であった。ジャズレコードの業界でも日本のレーベル、プロデューサー制作のアルバムがアメリカ録音で数多く作られた。バブルが弾けた結果の負の遺産は山ほどあるが、こと音楽に関しては、よくぞこの時残しておきてくれたというアルバムが何枚もある。これらは後世に残る遺産だ。

このホルマンのアルバムもそうかもしれない。ホルマンのバンドは1975年に結成され地元でリハーサルバンドとして活動を続けていたが、アルバムとして残っているものはあまりない。
ビクターの田口ディレクターが他の仕事でロスを訪れていた時、地元でのライブを聴いて、」ホルマンの作編曲の素晴らしさに惚れて、このアルバム制作に至ったそうだ。企業人が営利主義でしか行動できない今の時代では考えられないことだが。

曲は、ホルマンのオリジナルから、スタンダード、そしてモンクの曲まで、素材は千差万別。
それぞれアレンジの施し方が、ホルマンの本領発揮といった所だろう。

このアルバムに収められているJust friendsも今回のライブで演奏された。
ピアノのソロからスタートするが、各セクションの総出のユニゾンが延々続く。譜面を繰るのが追い付かないほど、これでもかという感じでひたすら突き進む。途中のベースソロで一服するが最後までアンサンブルワークが続く。普通の譜面では繰り返しが多いが、この様なアレンジはエリントンの大作物のようだ。

これは、WDR bigband の同じアレンジの演奏。



ジャストフレンズといえば、内堀勝のMUBig bandのトロンボーンアンサンブルが軽快でお気に入りだが、このホルマンのアレンジは心地よさを超えて強烈だ。CDで聴く以上にライブだとその迫力に圧倒される。
以前紹介した、Bill Holman の”Live”というアルバムからも何曲かDonna Leeはいきなり最初のメロディーの展開から意表を突くし、PressOneも楽しい曲だ。

やはりビッグバンドはライブでないと本当の迫力を実感できない。辰巳さんのバンドは拘りでいつもPAを使わない生音。今回のライブでもそうだったが、サンサンブルでもソロでも全く問題なかったし、反対に生音のバランスが心地良かった。

素晴らしいライブであったが、惜しむらくは聴衆が少なかった事。一回目のシュナイダー&ブルックマイヤーはそこそこの出足であったが、今回はせっかくの演奏にもかかわらず寂しい客席だった。

辰巳さんも自らのブログで語っているが、ビッグバンドファンは是非一度足を運んでみる価値はある。マイクプライスさんのバンドとか辰巳さんのバンドは普段聴けない曲の演奏をたっぷり楽しめるのだが。

クラシックの場合は、必ず出演者だけでなく、当日の演目が事前に発表される。聴きに行く人は、もちろん演奏家目当てもあるが、時には曲を聴きたくてということもある。
ところが、ジャズの場合は事前に分かるのは出演者だけ。曲目が告知されるのは稀である。
それでは、当然ライブに行く目的はその出演者目当てになってしまう。辰巳さんのような試みは、出演者というよりは、その日のプログラムが目的になるのだが。

もしかしたら、このオーケストラに何か別なネーミングが必要かもしれない。リンカーンセンタージャズオーケストラのように。

次回のケントンも日本では人気のない代表格。実は自分もあまり聴いていなかったが、ペッパーアダムスを追いかけていたら当然のようにケントンオーケストラに遭遇。西海岸の多くのプレーヤーが在籍したケントンは聴き返すとやはり素晴らしい。卒業生は数多い、マイクプライスもそうだし、先日来日した、ピーターアースキンもケントンオーケストラの卒業生だ。

今後もこのシリーズはマニアックなライブになりそうだが、何とかこのシリーズを盛り上げたいものだ。


1, Front Runner Bill Holman 5:39
2. Isn't She Lovely Stevie Wonder 6:24
3. St. Thomas Sonny Rollins 7:10
4. Goodbye Pork Pie Hat Bill Holman 5:39
5. I Mean You Coleman Hawkins / Thelonious Monk 5:48
6, Just Friends John Klenner / Sam M. Lewis 5:51
7. Primrose Path Bill Holman 6:47
8. The Moon of Manakoora Frank Loesser / Alfred Newman 7:21
9. The Real You Bill Holman 8:02

Carl Saunders (tp,flh)
Don Rader (tp,flh)
Bob Summers (tp,flh)
Frank Szabo (tp,flh)
Jack Redmond (tb)
Rick Culver (tb)
Bob Enevoldsen (tb)
Pete Beltran (btb)
Bobby Militello (as,ss,cl)
Lanny Morgan (as,ss,fl)
Bob Cooper (ts,ss,fl)
Bill Holeman (ts)
Dick Mitchell (ts,ss,fl)
Bob Efford (bs,bcl)
Barry Zweig (g)
Rick Eames (P)
Bruce Lett (b)
Jeff Hamilton (ds)

Akira Taguchi Producer
Takashi Misu Producer
Don Murray Engineer, Mastering
Leslie Ann Jones Assistant Engineer

Arranged By Bill Holman

Recorded on Nobember 30 & Decmber 1,1987 at Capital Studio in Los Angels.
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今は別の道を歩んでいても若い頃苦楽を共にした仲間との再会は格別・・・・

2013-09-29 | MY FAVORITE ALBUM
Chicago and All That Jazz! / Eddie Condon & All Stars

秋になると同窓会シーズンだ。
自分も、10月、11月は同窓会とかOB会とか、昔の友人、仲間との集まりが続く。
大きなクラス会もあれば、仲間内の飲み会も、そしてゴルフ好きの仲間とはゴルフのコンペとか。
現役一線を退いたメンバーが増えてきたので、泊りでというのも多くそれなりにスケジュール調整に忙しくなる。現役時代は年末の忘年会、年明けの新年会が多かったが、最近では12月にはあまり予定が入らないものだ。

ジャズの世界でも、昔の仲間を偲んでメモリアルコンサートとか、同窓会的なセッションもよく行われる。初期のコンコルドやパブロのようなレーベルは、レーベル自体が同窓会企画のようなものなのだが・・・・・。
成功したものもあれば失敗作と言っていい物まで。この手の企画は余計な色気を出すと上手くいかないような気がする。

このアルバムもそのような同窓会セッションの一枚。
ニューオリンズジャズがミシシッピー川を上ってシカゴにたどり着きシカゴジャズを生んだ。キングオリバー、アームストロングなどの黒人グループの活躍とは別に、彼らに影響された地元の白人グループの活躍がシカゴジャズを洗練された華やかなものにした。

その中で、シカゴのオースティンハイスクール出身の若者達が、泥臭いニューオリンズ生まれのトラッドジャズを都会的に洗練させスイングジャズへの橋渡しをした。
それぞれが、名を成しジャズの発展に功績を残した面々だが、30年ぶりに皆が集まって録音したのがこのアルバム。多分にオースチン高校の同窓会的な雰囲気が漂うが、いずれもまだ60歳前後、引退した訳ではなくまだまだ現役でプレーをしている時の演奏、年季の入った燻し銀のプレーが聴ける。
8人のオリジナルメンバーの内6人が集まり亡くなったフランクティシュメーカーの代わりにピーウィーラッセル。引退したベースのジムラニガンの代わりにボブハガートが参加。それにジャックティーガーデンが加わり、さらにはボーカルにリルアームストロングが加わるという最強布陣だ。
このアルバムに参加している、バドフリーマンが最年長の纏め役であったようだが、ジャックティーガーデンやエディコンドンを始めとしていずれのメンバーも一流揃い。
まさに、シカゴオールスターズだ。

ジョージルイスなどの黒人達は、戦後のトラッドジャズの見直しの中でジャズの演奏を離れて別の仕事をしている中から発掘されてきた。それと較べると彼ら白人グループはまだ恵まれた環境にいた。モダンジャズが全盛期を迎えた中で、主流ではなくなったトラッド系の見直しをテレビ局のNBCが”America’s Music”という番組企画を立て、その延長でこのアルバムが作られたとのことだ。
ニューポートジャズフェスティバルのプロデューサーであったジョージウェインも自らピアノを弾きながら参加して、彼らの仲間達を当時のジャズの檜舞台、ニューポートジャズフェスティバルの舞台に立たせていた。

最近、トラッド系を聴く機会が多いせいかもしれないが、新しいものへの取組みも大事だがこのような古いものを大事にするのはいつの時代にも必要だと思う。
もっとも我々が必死になって聴いていた50年代から70年代にかけてのジャズも、若者から見ればすでに「トラッドジャズ」の仲間入りをしているのかもしれない。
後世に良い物を残すには、埋もれている「名作・名人」の良さを発掘し、後を継ぐ世代にその良さを受け継ぐのが我々世代の責務かもしれない。

1. Logan Square
2. Chicago
3. After You’ve Gone
4. China Boy
5. Take Me To The Land Of Jazz
6. Sugar
7. Original Boogie
8. Nobody’s Sweetheart Now
9. Original Rag
10. Wolverine Blues
11. Chicago

Eddie Condon (g)
Bud Freeman (ts)
Jimmy McPartland (tp)
Pee Wee Russell (cl)
Jack Teagarden (tb)
Joe Sullivan (p)
Bob haggard (b)
Gene Krupa (ds)
Lil Armstrong, Bllissom Seeley (vol)


Produced Donald B. Hyatt
Engineer : Ray Hall
Recorded in New York City, Oct. 30 & 31, 1961


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クラリネットとバンジョーの相性は最高・・・・・

2013-09-25 | MY FAVORITE ALBUM
Playlet / Naoki Suzuki & Ken Aoki

先日ひょんな事で、友人とディキシーを聴きに行った。
元々中学生の時、ディキシーからジャズを知り、ジャズの歴史を追うように聴き始めたのが自分のジャズ好きの原点なので、ディキシーの響きは何か心の故郷に帰るような感じである。都会暮らしに慣れた生活の中で、久々に田舎に帰ったような気分であった。

最近ではあまりトラッド系を聴く機会も少なく、ましてやライブとなるとしばらく振りだった。
何年か前、HarlemBlues & Jazz bandの演奏会が大久保の教会であり、場所の雰囲気も含めて、トラッドジャズを味わった。地元早稲田大学のニューオリンズジャズクラブのメンバーもゲストで演奏したのを聴いて以来である。

場所は、浅草のHUB。トラッド、ディキシー系のライブで有名な店だが、自分がたまに行くのはスイング系まで。先日は、渡邊恭一のグループの演奏に行ったが、ここでディキシーを聴くのは実は今回が初めて。
ここを拠点にしているハブディキシーランダースの好演を久々に満喫してきた。ハウスバンドとしてこの日で2百何回目かのステージとのこと、常連の客に囲まれたステージで、普通のライブハウスと違って客席も和気藹々とした雰囲気、和服姿のおばあちゃんが踊りだすのが微笑ましかった。

という訳で、家でも久しぶりにジョージルイスを聴き返してクラリネットづいていた矢先、先日クラリネットの鈴木直樹のビッグバンドのライブがあった。

いつもは、角田健一やマイクプライスのビッグバンドのメンバーとして聴く事はあるが、スイングジャズに軸足を置く鈴木直樹自身のビッグバンドを一度聴きたいと思っていた。年に数回しか機会がなく、なかなかスケジュールも合わず今回が初めてであった。

通常のビッグバンド編成から、バリトンサックスとベーストロンボーンを外したスイングオーケストラの編成。
軽いサウンドはスイングジャズそのもの。レパートリーも、おなじみのグレンミラーからベニーグッドマンレパートリーから、普段あまり聴く事のないシャンペンミュージックの類まで。久々に輝くスイングオーケストラの響きを楽しんだ。

中でも収穫だったのはゲストの2人。
一人はバンジョーの青木研。今回はギターとの持ち替えであったが、バンジョーのソロプレーは圧巻。さすが若手のバンジョーの一人者と言われるだけある。次回は小さな編成でたっぷり聴いてみたいものだ。

もう一人が、トランペットの二井田ひとみ。初めて聴いたがまだ大学をでたばかりの若手で、女性でありながら輝きのあるスイング系のトランペットを吹くのにびっくり。ハリージェームス、レイアンソニー系の曲にお似合いな演奏だ。
確かこのバンドは、いつもはベテラン岸義和がメンバーだったと思うが、いい後継者ができた。スイング、ビッグバンドのライブは客席は年配の客が多いが、このように若手のプレヤーが増えてくると若手のファンもきっと増えてくるだろう。

会場では、鈴木直樹と青木研のデュオアルバムが「出来立てのホヤホヤ」といって紹介されたので、早速一枚買い求めてきたが、これがなかなかの好演。2人は最近一緒にプレーをすることも多いらしく呼吸もぴったり。モダン系でも最近デュオのライブが多いように思うが、中には長時間聴くと飽きがくるものも。このスイング系の2人のデュオはCD一枚をあっと言う間に楽しめる。




1. Caravan
2. Who’s sorry Now?
3. Tiger Rag
4. Si Tu Vois Ma Mere
5. Amapola
6. Song of the Vagabonds
7. Washington Square
8. When You’re Smiling
9. Home
10. The world is Waiting for the Sunrise
11. 上を向いて歩こう
12. Do You Know What it Means to Miss New Orieans

Naoki Suzuki  (鈴木直樹) (cl,bcl)
Ken Aoki  (青木研) (bjo)

Produced by naoki Suzuki
Engineer : Hiroichi Akikubo
Recorded at Studio No.9 on May 17, 2013
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ニスティコがいればホルマンもいる。アレンジャーが変わると音が変わるか?・・・・

2013-09-24 | MY FAVORITE ALBUM
I Told You So / Count Basie Orchestra

ビッグバンドの両雄、エリントンとベイシーはよく対比されるが一番の違いは何か?
というと作編曲をリーダー自ら手掛けるかどうかだろう。

両者とも強烈な個性を持ったオーケストラであるが、エリントンサウンドはエリントンとビリーストレイホーンのコンビの作品に因るところが大きい。
一方のベイシーは多くのアレンジャーの作品をレパートリーに加えている。本格的なビッグバンド編成になってから自らのアレンジした作品というのは聞いたためしがない。

ベイシーの50年代後半の黄金期はニールヘフティー、クインシージョーンズ、サドジョーンズなどの名アレンジャーが支えた。サドジョーンズのアレンジはベイシーオーケストラには複雑過ぎるものもあり没になったのも多かったとか。後に自分の作品を自由に演奏するために、サドが自らのビッグバンドを作ったという話も聞いたことがある。
やはり、ベイシーオーケストラにはベイシーサウンドに合うアレンジというものが大事なのだろう。

一般的には、オーケストラとアレンジャーの組み合わせは両者の特徴をうまく掛け合わせてハイブリッドな成果が出た時にいい作品ができる。ベイシーの場合は、誰のアレンジを演奏してもアレンジャーの個性を上回るバンドカラーがある。ベイシーのピアノであり、フィレディーグリーンのギターが特徴であるが、それらに支えられたセクションワークにも特徴がある。これは、どのようにして生まれるのか素朴な疑問であったのだが・・・・・


パブロレーベルに移籍しての、最初のオーケストラのスタジオ録音はサミーニスティコをアレンジャーに迎えた作品”Basie Big Band”であった。60年代のアルバムには今一つ満足できなかったが、ドラムのブッチマイルスの加入もあり、新生ベイシーオーケストラとしては素晴らしいアルバムだと思う。

パブロにはこのアルバムに続いて制作された、もう一枚アレンジャーを前面に出したアルバムがある。
白羽の矢が立ったアレンジャーはビルホルマン。
西海岸で50年代から活躍してきたアレンジャーの一人だが、まだ現役で活躍しているようだ。古いアルバムだとテナーの演奏も聴ける。

ビルホルマンが有名になったのはスタンケントンオーケストラへのアレンジの提供から。自らメンバーに加わってツアーにも参加していた。ちょうどメルルイスがメンバーに加わっていた頃だろう。スタンケントンに続いて、メイナードファーガソン、テリーギブス、そして60年代に入るとバディーリッチのオーケストラにも多くの作品を提供してきた大ベテランだ。
58年2月には、早くもアレンジャーとして自らのリーダーアルバムも残している。
ちょうど前年には西海岸でホルマンのアレンジの録音多く参加していたペッパーアダムスがニューヨークに戻って再スタートした頃だ。

この西海岸の重鎮にベイシーオーケストラのアレンジをノーマングランツが頼んだのはそれから20年近く経った1976年になってから。サミーニスティコのアルバムが上手くいったので2匹目の・・・を期待したのかどうかは分からないが?
ある種対極にいる印象を受ける2人の組み合わせがどのようなサウンドになるのか興味が湧く。

結果は、やはりベイシーサウンドが全面に響き渡る。素材としてもブルースがメインだし、ホルマンもかなり意識したのかもしれない。やはり、このベイシーオーケストラはアレンジャーの個性よりもバンカラーが上回る。

最近になって、この当事者であるビルホルマンにこの作品についてインタビューを行った記事が紹介されている。記事の中にも書かれているが、ビルホルマンが西海岸で仕事をしている時、ミュージシャンは如何に譜面に忠実に演奏するかに注力するのだが、ベイシーの場合はそうはいかなかった。御大ベイシーが納得のいくまで曲を醸成させていくようだ。
特にこの時はトランペットセクションに新メンバーが2人いたので余計に大変だったとか。この時ホルマンはレンジ自体をベイシーオーケストラを想定し、曲によってソロのメンバーも実際のメンバーを想定して書いたようだが、最終的にベイシーオーケストラの曲に仕上がるには御大の最終的な味付けが重要だったということだろう。




さて、このビルホルマンのアレンジは新旧たくさんあるが、あまり表立って紹介されることは多くはない。ビッグバンドは良く聴きに行くが、マイクプライスのビッグバンドは西海岸のアレンジャーの作品をやることが多いので、ここでは良く紹介される。しかし、他ではあまり聴いたことはない。

そのような中でアレンジャーに拘りを持って紹介、演奏をしてくれるのが辰巳哲也ビッグバンドだ。
最近は、東京TUCで日曜日の午後のアフタヌーンライブが定期的に行われているが、10月6日の次回のライブがこのビルホルマン特集とのこと。
この日はちょうど地方にいる学生時代の友人を仲間と訪れる予定が入ってしまい、せっかくの機会を聴けずに残念に思っていたのだが、幸いにも日程変更で当日はフリーに。
ゴルフもお休みにしてアフタヌーンライブを楽しんで来ようと思っている。

1. Tree Frog        Bill Holman 5:15
2. Flirt           Bill Holman 5:52
3. Blues for Alfy      Bill Holman 4:42
4. Something to Live For Duke Ellington / Billy Strayhorn 3:41
5. Plain Brown Wrapper   Bill Holman 4:22
6. Swee' Pea        Bill Holman 4:36
7. Ticker          Bill Holman 4:37
8. Too Close for Comfort Jerry Bock / Larry Holofcener / George David Weiss 4:10
9. Told You So       Bill Holman 6:28
10. The Git         Bill Holman 3:54

Count Basie Orchestra

Pete Minger (tp)
Bobby Mitchell (tp)
Jack Geierman (tp)
John Thomas (tp)
Jack Feierman (tp)
Sonny Cohn (tp)
Curtis Fuller (tb)
Al Grey (tb)
Mel Wanzo (tb)
Bill Hughes (btb)
Jimmy Forrest (ts)
Danny Turner (as,cl)
Bobby Plater (as,cl)
Eric Dixon (ts,fl)
Charlie Fowlkes (bs)
Count Basie (p)
Freddie Green (b)
John Duke (b)
Butch Miles (ds)

Norman Granz Producer
Bob Simpson Engineer

Bill Holman Arranger, Composer

Recorded at RCA Recording Studio, NYC, on Jan 12-14, 1976



I Told You So
Count Basie
Ojc
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ドラムが締まると、バンド全体が締まる・・・・・・

2013-09-21 | MY FAVORITE ALBUM
Basie Big Band / Count Basie Orchestra


先日カウントベイシーのライブに行った。昨年に続いての来日だ
ビッグバンド好きにとってはベイシー、エリントンは「故郷」のようなもの。
色々聴いても、ここに戻ってくるとほっと一息つける。
高瀬龍一のビッグバンドのベイシーライブも先日2回目が行われたようだが、2回目も満員だったそうだ。ファンの心理としては同じような物なのかもしれない。

御大が亡くなって、御大と一緒にやっていたメンバーも居なくなっても、ベイシーオーケストラの看板を引き継いでいるバンドは、やはり「本家本元」という重みがある。
それに、今回は、直前になってドラムがブッチマイルスに替わったのも楽しみのひとつであった。

会場はブルーノート。昨年も同じブルーノートであったが、このサイズで聴くビッグバンドは格別だ。最終的に来日したメンバーは、トランペットのターニャダービーに代わり、リードはマイクウィリアムス。彼の方がレギュラーメンバーかもしれないが得意のハイノートを聴かせてくれた。バリトンにもバンガードオーケストラでお馴染みのフランクベイシルに替わっていたのにもびっくり。

今回はボーカルも無く、お馴染みの曲が続くが会場のPAが少しラウド気味。ベイシーなんかは生音でも十分なのだが。ドラムのブッチマイルスが期待通りばっちりメリハリの利いたリズムを聴かせてくれる。先日のバディーリッチのピーターアースキンでも感じたが、やはりビッグバンドはドラムが締まると全体が締まる。特にベイシーのようなオーケストラだと余計に。

という訳で、久々にブッチマイルスが加わっていた頃のアルバムを引っ張り出してきた。
LPをかけるのも久しぶりだ。

70年代に入ってパブロに移籍してからのベイシーは何故かスモールコンボでのアルバムが続いた。この頃は同時進行で聴いていた頃だが、ビッグバンドのベイシーを聴き慣れた自分にとっては、スモールコンボでのベイシーのピアノが新鮮であった。

そんな中、1975年の8月にPabloで初めてオーケストラのスタジオ録音が行われたのがこのアルバム。ベイシーオーケストラの来日もあり来日記念アルバムとして日本盤は発売された。
最新の状況を今のようにインターネットで簡単に知ることができない時代だったので、なりを潜めていたベイシーオーケストラが生き返った感じがして嬉しかったのを思い出す。もちろんコンサートにも足を運んだが、生ベイシーは感動物だった。

このアルバムにブッチマイルスが参加しているが、マイルスがベイシーオーケストラに参加したのはこの年の2月。ベテラン勢に混じって、まだ30歳になったばかりの若者であった。金髪を振り乱してのプレーは好感が持て、ベイシーサウンドにピッタリはまっていてすっかりお気に入りになった。当時はフュージョンやエレキサウンドが台頭してきた時代、フォービートが余計に新鮮だった。

このアルバムは、全編サミーニスティコの作編曲。ベイシーサウンドを支えたアレンジャーは、その時代時代で何人もいるが、このニスティコもその一人だ。
60年代のベイシーのアルバムはヒット曲や当時のスタンダードを素材にしたアルバムが多かったが、このアルバムでは久々にオリジナルばかり。それもニスティコの作品ばかりだが、どの曲もベイシーサウンドの伝統、歴史を引き継いでいる。今の時代のベイシーオーケストラの定番になっている曲も何曲もある。

改めて聴きなおしてみると、ブッチの素晴らしさも改めて分かるし、なかなかいいアルバムだ。最後のトールコットンは曲想もアレンジもサドメルのグルーブマーチャンに似ていることを発見、聴きなれたアルバムでも久々に聴くと新たな発見がある。

しばらくこの時代のベイシーを聴き返しそうだ。

Count Basie Orchestra

Sonny Cohn (tp)
Dave Stahl (tp)
Pete Minger (tp)
Frank Szabo (tp)
Bobby Mitchell (tp)
Curtis Fuller (tb)
Al Grey (tb)
Bill Hughes (tb)
Jimmy Forrest (ts)
Eric Dixon (ts,fl)
Bobby Plater (as,fl)
Danny Turner (as)
Charlie Fowlkes (bs)
Count Casie (p)
John Duke (b)
Freddie Green (g)
Butch Miles (ds)

Composed & Arranged by Sammy Nestico
Produced by Noman Granz

Recorded on August 26&27,1975 in Los Angels



The Basie Big Band
Count Basie
Pablo
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他人が先に録音した曲を作曲者自身がスキャットで料理すると・・・・

2013-06-29 | MY FAVORITE ALBUM
A Good Git-Together / Jon Hendricks

先日紹介したペッパーアダムスとジミーネッパーのアルバムに、Minor Catastropheという曲が収められていた。バラードはエリントンの曲が2曲、後は2人のオリジナルが中心であったが、この曲の作者はJon Hendricks。あの、ランバートヘンドリック&ロス(LHR)の一員のJon Hendricksだ。
アダムスのアルバムに何故この曲が選ばれたのかは分からないが、他の曲とも違和感なく収められている。



ヘンドリックスは、歌だけでなく作詞や作曲でも有名で、ヘンドリックスの書き残した詩は数多い。ベニーゴルソンの名曲アイリメンバークリフォードに歌詞をつけたのも彼だが、多くの歌手に歌われている。歌(それもスキャットやコーラスも)だけでなく作詞や作曲の才能にも長けているスーパーマンだ。

ヘンドリックスのレコードデビューは、コーラスグループLHRの一員として世に出た。1955年のFour Brothersがデビュー作だと思う。他にも、ジョージラッセルのNew York N. Y.ではナレーションを努めるなど、単なる一歌手として以上の活躍をデビュー当時からしていた。
そのヘンドリックスが、1959年に一足遅れてリーダーアルバムを出した。いつものコーラスではなく、自身のボーカル(スキャット)を中心に、バックには、曲によってモンゴメリーブラザース、そしてアダレーの兄弟が付き合うという豪華編成だ。
1959年というと、キャノンボールアダレーはマイルトあのKind of Blueを吹き込んだ直後。自分のグループで活動を始めた頃。ウェスモンゴメリーも本格的に表舞台に登場してきた時期。この時期のアルバムには、後の大物達が雨後の筍のように次々と顔を出した時期だが、この組み合わせも今振り返ればすごい組み合わせだ。

そのアルバムの中にも、このMinor Catastropheが収められているが、歌詞はなくスキャットでヘンドリックス自身も登場する。さらに、スキャットの相方としてアルトのポニーポインデクスターも加わるが、この2人は後にヨーロッパでも活躍するがどちらもスキャット上手。いいコンビでこの曲での2人の掛け合いはアダムスとネッパーのアンサンブルやソロと比較しても聴き応えがある。ヘンドリックスの場合はコーラスではなくソロでやっても、単なるボーカルではなく、ボーカリーズのバックとのコラボが素晴らしい。
すでに90歳を超えているが、今年元気に来日したようだ。聴き逃したが是非生でもう一度聴いておきたい一人だ。


1. Everything Started in the House of the Lord       Jon Hendricks 1:03
2. Music in the Air                     Jon Hendricks 3:58
3. Feed Me                         Jon Hendricks 3:50
4. I'll Die Happy                      Jon Hendricks 2:22
5. Pretty Strange                      R.P. Weston 2:53
6. The Shouter                       Jon Hendricks 5:03
7. Minor Catastrophe                    Jon Hendricks 5:21
8. Social Call                       Jon Hendricks 2:22
9. Out of the Past                     Benny Golson 4:55
10. A Good Git-Together                  Jon Hendricks 3:41
11. I'm Gonna Shout (Everything Started in the House of the Lord)  Jon Hendricks 2:26

Jon Hendricks (Vol)
Pony Poindexter (as,vol)
Cannonball Adderley (as)
Nat Adderley (cor)
Gildo Mahones (p)
Buddy Montgomery (vib)
Monk Montgomery (eb)
Wes Montgomery (g)
Bill Perkins (Tambourine)
Ike Isaacs (b)
Walter Tolgen (ds)
Walter Bolden (ds)

Richard Bock Producer

A Good Git Together
Jon Hendricks/td>
Blue Note Records
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ゴルフとライブのハシゴは流石に・・・・

2013-06-12 | MY FAVORITE ALBUM
夜のアルバム / 八代亜紀

忙しくなると、日程調整が中々難しくなる。特に、他に選択肢のないイベントがあると。
先週の土曜日、仲間内のゴルフが栃木で。それも益子となると自宅から150km近く。2時間以上のドライブになる。スタートが8時であったので、5時には家を出るが、その時間でも高速は結構混んでいた。渋滞する程でもなかったが、80Km走行が続く。
遅れはしなかったが、ギリギリの到着。練習もできず、パットの感触を確かめただけでスタートに。
最近ドライバーの調子が良く、この日もまずまずの出来。ショットの大きなミスは無かったが、この日だめだったのはパット。ちょうどグリーンの更新の後で遅めであったのも影響してか、タッチがあわずに3パットを連発。せっかくのショットの良さも帳消し。
後半も同じようなゴルフであったが、4ホール目で池ポチャ。これでリズムを崩してトリプル。其のままずるずると。
進行が遅めで、最後は時計を見ながら上がり時間が気になりながらのプレーであった。当然のように目標のボギーペース切はならず。
時間が気になったのは他でもない、夕方から都心でライブの予定がありそれに間に合うかどうかはスタート前から気に掛かっていた。

2時過ぎに上がって、着替えもそこそこに岐路につく。帰り道は東北、常磐どちらでも行けるが、東北道と決めて渋滞が無いことを祈ってICまで行くと何と事故渋滞。これでは間違いなく間に合わないので、北関東自動車道を反対に水戸方向に。ナビの到着予定時刻は開演10分前の4:50.。少しでも渋滞があるとこの時間では着けないのでヒヤヒヤ物であったが、幸いにも大きな渋滞もなく無事に到着で一安心。最近はこのような綱渡りのスケジュールが多いが、不思議と時間通りにこなせているので、反対にこれが快感にもなっている。すっかり現役時代の殺人スケジュールのような有様だ。
そのライブは、八代亜紀のジャズスタンダードコンサート。昨年CD「夜のアルバム」を新たに出して、ニューヨークのバードランドでも歌ったという話を聴くと、一度聴いてみたかったライブだ。

会場の青山劇場はかなり大きなホールだが満員御礼。人気が半端でないのを実感する。ピアノの香取良彦率いるクインテットはCDのバックと同じ。ステージ慣れしている八代亜紀は流石舞台運びが上手い。休憩なしで2時間弱のステージを一気に務め上げた。
彼女自身が語っていたように、決してジャズボーカルではないがスタンダードをジャジーに歌い上げる歌いっぷりは十分に楽しめた。最後はおまけで得意の演歌も披露してくれたが、これは、自分はなかなか聴く機会がないので新鮮だった。たまには、このようなライブもいい物だ。

7時に終わって近くのブルーノートでチックコリアの最終ステージがあったので、もう一軒とも思ったが、こちらは満員札止め。完全立ち見であればとのことであったが、流石にこれはパスして家路についた。
最近若者から「歳の割りには元気ですね」と言われるが、喜んでいいのやら呆れられているのやら・・・。

1. Fly Me To The Moon
2. Cry Me A River
3. Johnny Gutar
4. 五木の子守唄~いそしぎ
5. Summer Time
6. Autumn Leaves
7. Sway
8. 私は泣いています
9. One Rainy Night In Tokyo
10. 再会
11. ただそれだけのこと
12. Over The Rainbow

香取 良彦(p,vib)
岡 淳 (ts,as)
田辺 充邦 (g)
川上 修 (b)
有泉 一 (ds)

Produced by 小西 康陽

夜のアルバム
八代亜紀
ユニバーサルクラシック
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誰か影響を受けた人に捧げる演奏は一段と熱が入るもの・・

2013-06-02 | MY FAVORITE ALBUM
Down For The Count / Harry Allen

日本人はサックスはテナー好きかもしれない。純粋ジャズではないが、サムテイラーとかジョージオールドは絶大な人気があった。もちろんコルトレーンやロリンズもファンが多い。ハンクモブレーやジーンアモンズ。ゲッツやシムスも。アルトよりもテナー好きが多いような気がする。モダンスイング系のプレーヤーも好まれるようだ。少し前はスコットハミルトンであったが、今ではハリーアレン。毎年のように来日しているし、CDの数も半端でなく日本で企画された物も多い。

今年も、富士通Concordで来日中だ。前回ライブを聴いたのは、角田健一のビッグバンドへゲスト出演した時。確か3年前の同じ頃だったと記憶している。いつもコンボ主体の演奏ばかりなので、興味半分で出掛けたが、フルバンドをバックにしても期待にたがわず素晴らしい演奏だった。

今回はグラントスチュワートとフロントがテナー2本でバトルの様相だ。バックがジェフハミルトントリオとくれば聴かずにはいられない。前回のツノケンバンドとの共演も同じであったが。大きなホールではなく場所が東京TUCというのも最高だ。

会場に早めに着いたがすでに満員。やはり人気プレーヤーは出足が早い。開演前のBGMに流れていたのはJATPのライブ。日本語のMCも聞こえたので、53年のJATPの日本公演の時のものか?そういえば、今回の、富士通Concordは“Tribute To Noman Granz”と銘打ったJATP仕立てだった。バトルが期待できる。

という訳で、演奏も客席もいつもより熱っぽい。どちらかとポーカーフェースのアレンのプレーも、曲が進むに連れてノリノリに。あっという間の2ステージだった。やはりJATPという看板が演奏を普段よりホットにする効果があるのかもしれない。ジェフハミルトンのドラムも相変わらず切れ味が良いが、思わぬ拾い物(失礼な言い方だが知らなかったので)はピアノのタミールヘンデルマン。初めて聴くイスラエルのピアニストだが、スインギーなプレーはこのようなセッションにはピッタリでなかなかいい。これで来週末のブルーノートも迷っていたが行かねばならない。JATP伝統の大ジャムセッションが期待できそうだ。「ノーマングランツに捧げる」とタイトルされると熱の入れ方も変わるであろう。

アレンのプレーは、モダンスイングに根差した良くうたうテナーだ。父親もドラマーだったそうで、早くからジャズには慣れ親しんでいたようだ。ジャズレコードに囲まれていたスコットハミルトンと同様、子供の頃の育った環境は矢張り大事かも。

ある日、アレンが高校時代というから80年代に入ってすぐの頃、アレンは父親に連れられてカウントベイシーオーケストラを聴きに行ったそうだ。もう車椅子になった頃かもかもしれない、晩年の演奏だ。それは昔のビッグバンドの時代のように踊り子をバックに従えたステージだったそうだが、それをかぶりつきで聴いたアレンはすっかりベイシーの虜になったとか。
ベイシーオーケストラがエリントンをやったが、ベイシーをやる者がいても不思議ではない。最近、日本では高瀬龍一。これはベイシーオーケストラのカバー。多分譜面も新たにおこしたのではなくベイシーと同じだろう。

このハリーアレンもベイシーに捧げたアルバムを作った。アレンは同じカバーでもあえてベイシーの真似をすることなく、素直な気持ちで臨んだとライナーノーツに記されている。

ギターの入ったクインテット編成だが、この編成でのベイシーナンバーも乙なもの。特にカンサスシティー風にしなくても、ハリーアレンのテナーとベイシーの十八番としている曲は相性がいい。
Concord好きの自分の好みの演奏だが、間違いなくアレンも日本人が好むテナー奏者の一人だと思う。

1. Topsy
2. Li’l Darlin
3. Whirly Bird
4. The Secon Time
5. AroundJunpin’ At The Woodside
6. I Wanna Be Around
7. Splanky
8. Cute
9. April In Paris
10. Doggin Around
11. Wives And Lovers

Harry Allen (ts)
Ray Kennedy (p)
Joe Cohn (g)
Joel Forbes (b)
Chuck Riggs (ds)

Produced by Ikuyoshi Hirakawa
Recorded on Sep.5&6, at Skyline Studios,NYC


ダウン・フォー・ザ・カウント
ハリー・アレン・クインテット
スイングブロス
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いつも対決していたビッグバンド界の両雄の融合方法は・・・・

2013-05-30 | MY FAVORITE ALBUM
Count Plays Duke / Count Basie Orchestra

何事においても頂点を2分する両雄が存在する。両者の対決というのは何であっても、そしていつの時代であっても興味があるものだ。それが個人であってもグループであっても。
相撲でいえば、東の正横綱と西の横綱の千秋楽の対決は見ものだし。フットボールのスーパーボウル。サッカーのワールドカップの決勝・・・・・・。
そして、ビッグバンド界ではデュークエリントンとカウントベイシー。長年ライバル同士でありながら、それぞれの個性でファンを魅了し続けた。両者の間で勝ち負けは無かった。日本では原信夫とシャープス&フラッツ、宮間利之とニューハードも、そのような関係だった。

このエリントンとベイシー、ジャズフェスティバルのようなところでは、両巨頭の揃い踏みで舞台を沸かせることもあった。が、両者が一緒に揃ってということになると・・・・?。
レコードの世界ではこれが実現し、両バンドが左右に分かれて共演した”First Time”というアルバムがあった。その続編は聴いたことがないので、これが最初で最後だったろう。

お互いライバル同士でも、お互いの演奏は気になるもの。何か接点を求めることもあったかもしれないが、そのひとつの試みが両方のボスが亡くなった後で実現した。
ボス亡き後、カウントベイシーオーケストラを率いたのは、バンドには馴染みの深い、フランクフォスターやサドジョーンズであった、そしてこのアルバムが制作された時はGrover Mitchellがリーダーを務めていた。

彼が考えた2つのバンドの融合策、それはベイシーオーケストラがエリントンの曲を演奏すること。作曲家としても有名であったエリントンの曲は多くのミュージシャンに演奏されスタンダード曲になった物も多い。そしてエリントンソングブックのアルバムが制作されることも多い。いわるるカバー物だ。
なのに、何故ベイシーバンドはエリントンの曲をあまり積極的に演奏しなかったのか?
やはりライバル意識が強かったのかもしれない。

ベイシー自身の曲は少ない。オーケストラはオリジナル曲だけでなく、スタンダード曲を幾多の名アレンジャーの協力を得てレパートリーに加えてきた。60年代以降は当時のヒット曲も加えていたし。作曲家エリントンとみれば、エリントンの曲のアルバムがあっても不思議は無いのだが。
1998年になって初めてこれが実現した。ベイシーが亡くなってから14年、エリントンが亡くなってからは24年も経ってからだ。

エリントンの曲をベイシーサウンドに変身させた料理人はアリンファーガソン。
映画やテレビの音楽のアレンジでは有名なアレンジャーだ。ジュリーアンドリュースやジョニーマティスの音楽監督も務めていたようだ。

ファーガソンがベイシーオーケストラのレパートリーのアレンジをそれまで手掛けていたかどうかは定かではないが、結果は素晴らしい両者の融合作品だ。
映画やショーのバックとなると、普通のアレンジとは一味違う。全編を通しての一体感、ビジュアルとのイメージ合わせも重要だ。いわゆる全体のトーン&マナーを合わせるというものだ。今回のアレンジも、個々の曲の単なるアレンジというよりは、エリントンのカバーをベイシーが演奏するという大きなショーの音楽担当といった方がいいかもしれない。

お馴染みのエリントンの曲だが、いつも以上にベイシーサウンドに聞こえるのは、ファーガソンのアレンジの魔力のお陰だ。普通のカバーとも違うし、エリントンのスコアを演奏している訳でもなく、2人の良さをハイブリッドさせて新たに融和した魅力を引き出している。ゲストにフランクウェス、ドラムにブッチーマイルスが加わっていることも仕上げとしては完璧。
最近良く聴くアルバムだが、1998年のグラミー賞のBest Large Jazz Ensemble Performanceを受賞したアルバムだ。

ベイシーといえば、先日サムデイを満員にした高瀬龍一ビッグバンドの次回のライブが7月31日に決った。この日はクインシージョーンズのコンサートもあるし。スケジュール調整が大変だが、行きたいライブが続くのはファンとしては嬉しい悲鳴だ。



1. Take the 'A' Train                 Billy Strayhorn/Count Basie 5:34
2. It Don't Mean a Thing (If It Ain't Got That Swing) Duke Ellington / Irving Mills 3:03
3. I Got It Bad (And That Ain't Good)      Duke Ellington / Paul Francis Webster 6:14
4. I Let a Song Go Out of My Heart
        Duke Ellington / Irving Mills / Henry Nemo / John Redmond 4:21
5. Just Squeeze Me (But Don't Tease Me)   Duke Ellington / Lee Gaines 4:39
6. Do Nothin' Till You Hear from Me  Duke Ellington / Bob Russell 4:32
7. The Star-Crossed Lovers     Duke Ellington / Billy Strayhorn 4:07
8. Love You Madly          Duke Ellington 3:56
9. In a Sentimental Mood       Duke Ellington / Manny Kurtz / Irving Mills 4:26
10. Cotton Tail           Duke Ellington4:11
11. Paris Blues           Duke Ellington 2:52
12. Mood Indigo            Barney Bigard / Duke Ellington / Irving Mills 5:13
13. I'm Just a Lucky So and So     Mack David / Duke Ellington 4:31

Count Basie Orchestra
Grover Mitchell Conductor, Producer, Trombone

William ‘Scotty’ Barnhart (tp)
Robert Ojeda (tp)
Michael P. Williams (tp)
Shawn C. Edmonds (tp)
Clarence Banks (tb)
David Keim (tb)
Alvin Walker (tb)
William H. Hoghes (btb)
Doug Miller (ts,fl)
Kenny Hing (ts,cl)
Brad Leali (as,cl)
Frank Wess (sa,fl)
John Williams (bs,bcl)
Terence Coneley (p)
James Leary (b)
Butch Miles (ds)

Allyn Ferguson Arranger, Producer
Dan Ferguson Associate Producer
Josiah Gluck Engineer
Douglas Evans Editing, Executive Producer, Producer

Release Date October 20,1998

Count Plays Duke
Count Basie Orchestra
Mama Records
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ファンを楽しませ続けるには、世代が変われどそれなりの努力が・・・・

2013-05-28 | MY FAVORITE ALBUM
Keep The Customer Satisfied / Buddy Rich Big Band

来月バディーリッチのビッグバンドが来日する。といっても本人が亡くなって久しいが。ベイシーにしてもエリントンにしても本人が亡くなった後も、それぞれのサウンドを引き継いだオーケストラが続いているのだが・・・・・。このバディーリッチに関しては何といってもリッチのドラミングの魅力が半分以上を占めるので、本人が居ないオーケストラといってもイチゴの無いショートケーキを食べるようで味気ない物だ。

という訳かどうか分からないが、本国でもこのバディーリッチオーケストラはリッチを偲ぶメモリアルコンサートとして開催される事が多く、その模様は以前紹介したDVDでも全貌を知ることができる。
ジャズ、ロックとジャンルを問わず名ドラマーが集まって、ドライブ感のあるリッチのオーケストラナンバーを繰り広げるのはお祭りとしては最高だ。今回の来日では、昨年もボブミンツァーのビッグバンドで来日して好プレーを披露してくれたピーターアースキンがゲストで加わっている。アースキンのプレーをまた聴けるのも楽しみだ。グレッグポッターとのバトルも面白そう。



このバディーリッチのビッグバンドが旗揚げしたのは1966年。ファーストアルバムの“SWINGIN’ NEW BUDDY RICH BIG BAND”が66年9月の録音なのでこのアルバムが録音された1970年まで4年間着実に活動を続けていた。ビッグバンドの世界ではレギュラーバンドの維持が難しくなっている中、このリッチのビッグバンドは若者にも人気を得て、ワンナイトスタンドの国内ツアー、ジャズフェスティバル、そして大きなクラブへの出演、そして海外ツアーと休むことなく活動を続けていた。特に海外はイギリスがお気に入りだったようで、何度も訪れていた。イギリスはビッグバンドファンが多いのか、この’70年はエリントのバースデーコンサートもイギリスで行われていたが、このリッチのイギリス公演も勿論大盛況であったようだ。

帰国したリッチは、引き続き国内ツアーを続けたが、このアルバムもその最中での録音。リッチのビッグバンドのアルバムはこのような活動のためか、ライブでの収録が多い。
このアルバムも一曲(#3)を除いてラスベガスのトロピカーナホテルでのライブ。LPでは7曲しか入っていなかったが、CD盤では全部で13曲。よりライブのステージの全貌が聴ける。デビュー当時と較べてこの頃になると、スタンダードより最新のヒット曲やアレンジャーのオリジナルが多く、ビートの効いたアレンジで演奏されているが、これも若者を含めた幅広いファン層向けのライブになっていたからだろう。

長いツアーに出るバンドの常として、若者の登用とそれに伴うメンバーチェンジが頻繁に起こる。このアルバムでは、ソリストのメインはアルトのリッチーコールと、テナーのパットラバーベラ、トランペットはジョージゾンスといったところ。トランペットセクションにはソロは無いがマイクプライスが秋吉敏子のオーケストラに加わる前の修行中の若者の一人として加わっている。

新生ビッグバンドのデビューからこのアルバムが6枚目だが、Pacific Jazzでのアルバムはこれが最後になる。という意味ではタイトルどおり「聴衆を楽しませ続けて」デビュー以来走り続けてきたバンドも70年代に入って一区切りといった感じだ。

今回の来日公演も御大は居ないものの、きっと恩師の意を汲んで後輩たちが楽しませ続けてくれるであろう。来月のライブを期待しよう

1. Keep the Customer Satisfied             Paul Simon 6:40
2. Long Day's Journey                 Don Piestrup 4:42
3. Midnight Cowboy Medley:
   He Quit Me Man/Everybody's Talkin'/Tears ...         11:12
4. Celebration                    Don Piestrup 3:35
5. Groovin' Hard                   Don Menza 5:25
6. The Juicer Is Wild          Fred Neil / Roger Neuman 4:32
7. Winning the West                 Bill Holman 7:30
8. Body and Soul Frank Eyton / Johnny Green / Edward Heyman / Robert Sour 4:54
9. Happy Time                     Mike Hughes 3:57
10. The Nitty Gritty                 Lincoln Chase 4:07
11. Straight and Narrow                Don Piestrup 4:17
12. Groovin' Hard                   Don Menza 5:54
13. Cornerstone                    Ted Pease 4:45

Joe Giogiani (tp)
John Madrid (tp)
George Zonce (tp)
Mike Price (tp)
Tony Lada (tb)
Rick Stepton (tb)
Larry Fisher (btb)
Jimmy Mosher (as,fl)
Richie Cole (as,fl)
Don Englert (ts,ss,fl)
Bob Suchoski (bs)
Mickey McClain (p,org)
Rick Laird (elb)
Buddy Rich (ds)

Richard Block : Producer
Reice Hamel : Engineer

Recorded at the Tropcana Hotel Las Vegas on March 30,31 & April 1, 1970

Track3 was recorded in a Los Angels Studio April 1970

Keep Customer Satisfied
Buddy Rich
Blue Note Records
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元気なコーラスグループが活躍していた時代もあったが・・・

2013-05-23 | MY FAVORITE ALBUM



It’s Wonderland / ‘ITS’

モダンコーラスグループの世界でマンハッタントランスファーの登場、そして彼らの現在に至る活躍はジャズ、ポップス、フージョンのジャンルを問わずコーラスグループの世界に大きな影響を与えてきた。
ジャズの伝統に根差し、モダンなサウンドのコーラスグループは楽器の響きとはまた違って聴いていて心地よいしスリルがあるので自分も好みのジャンルのひとつだ。
マントラが活躍を始めて、それに影響を受けたのか日本でも色々なコーラスグループが生まれた。今も野口久和のオーケストラとも一緒に活動しているBREEZEもそのひとつだと思うが、今から30年前にはこんなグループもあった。

ITSというグループは1978年に結成され、84年まで活動した。ITSの由来はメンバー3人の頭文字。分かりやすいといえば分かりやすい。81年に制作されたこのアルバムは、確かスイングジャーナルでも賞を受賞したと思う。当時、彼らのコンサートは郵便貯金ホールを一杯にするほどの人気と実力を合わせ持ったグループだった。

久々にこのアルバムを取り出して聴いてみた。佐藤雅彦のアレンジで、オリジナル曲を含めてモダンなサウンドを聴かせてくれるが、やはりB面が良い。ディズニーソングのメドレーも最高だが、アカペラのベニーゴルソンのウィスパーノットが秀逸。
 ゴルソンは先日来日して元気にプレーしていたが、作曲家としても多くの名曲を残している。このウィスパーノッツを始めとして名曲アイリメンバークリフォードなどは一体何人に演奏されたのだろう。先日のライブでは、クリフォードブラウンが亡くなった時の様子から、この曲が生まれるまでの経緯をまさに生き証人としてたっぷりと時間を掛けて話をしていた。



ジャズの場合はどうしても名アルバム、そしてそれに収められている名演が語り継がれるが、素材となる曲もいいものは良い、名曲と云われるものも多く存在する。いわゆる古いヒット曲のスタンダードとは別のジャズスタンダードと云われる曲だ。名曲と云われる物はコンボでも、大編成でも、ボーカルでも、そして誰がやっても素材の良さにそれぞれのプレーヤーの味が組み合わさっていいものだ。料理もいくらシェフの腕前が良くても、素材が良くなければシェフの腕を発揮できないのと同様。プレーヤーと較べて不思議と作曲家はスポットライトが当たらないが、このベニーゴルソンなどは名作曲家の一人として後世に残ると思う。

 このアルバムで、3人のコーラスのバックを努めたのは、当時フュージョングループで注目された“Fuse One”のメンバー達。歌良し、バック良し、アレンジ良し、そして曲良しの4拍子揃ったアルバムだ。当時は、このような贅沢なアルバムがたくさん作られ、コンサートも活況を呈していたし、今思えば元気な時代だった。
 企業、経済面の凋落ばかりが語られるが、最近の音楽市場も縮小が止まらないようだ。文化面でも衰退の一途を辿っているのは嘆かわしい。 古いアルバムをひっくり返すのもいいが、新しい現役コーラスグループでも探してみよう。せっせと若者を連れてライブ通いでもして、現役を応援しながら微力ながら音楽界の復活に貢献したいものだ。

1. Count On My Love
2. Dark Honey Dance
3. Solitary Search
4. Makeup Your Mind
5. Disney's Wonderland
Bella Notte ~
Someday My Prince Will Come ~
Zip-A-Dee-Doo-Dah ~
Chim Chim Cher-ee ~
When You Wish Upon A Star
6. Whisper Not
7. Sesame Street
8. Open Up Your Heart


木本いず美 ( Izumi Kimoto )
東郷輝久 ( Teruhisa Tohgoh )
島すみえ ( Sumie Shima )

Joe Farrell (ts,fl)
Ronnie Foster (p,elp.mini Moog)
Jeremy Wall (prophet 5)
Masahiko Sato (Prophet 5)
Steve Khan (elg)
Will Lee (elb)
Leon Chancler (ds)

Hoji Hadori,Fumio Shiroyama (tp)
Eiji Arai, Yasuo Hirauchi (tb)
Sumio Okada (btb)
Kiyama Takeshi,Michiya Koide,Takeshi Shinohara (fl)
Koji Yamaguchi, Tsutomu Goto (fhr)

Produced by Akira Taguchi
Arranged by Masahiko Sato

Rercording Engineer : Hideo Takada
Recorded at Victor Studio, Sound Inn studio, Media Studio, Tokyo
On July through September 1981

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