A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

一段とパワーを増したバディーリッチビッグバンドの名演といえば・・・

2015-02-09 | MY FAVORITE ALBUM
The Roar of ’74 / Buddy Rich Big Band

先日久しぶりに稲垣貴庸ビッグバンドのライブに行った。最近は他のバンドでの演奏を聴く機会が多いので、稲垣BBも良く聴いていると思ったが一年ぶりくらいだった。

稲垣貴庸BBというとやはりバディーリッチ。
ビッグバンドファンには、バディーリッチ好きも多いが、リッチの曲を聴くにはこの稲垣BBが一番いい。この日も常連さんを含めて多くのお客が集まっていた。メンバーもお客さんもそれを目当てに集まるので、自分のオーケストラでバディーリッチを演奏する時の稲垣さんのドラムは一層軽快になる。



アップテンポの曲が多いのでドラムは大変だと思ったが、ホーンセクションも目いっぱい吹き続けることが多く、曲間に一息入れないとしんどいらしい。確かにミディアムテンポが多いベイシーとは大違いで、リッチの曲をこなすにはテクニックに併せて体力勝負のような気がする。

お馴染みのリッチの曲が続いたが、久々にウェスサイドストーリーメドレーの大作も聴けた。
そして、締めはナットビル。リズミックなメロディーも馴染み易いが、この曲はアップテンポで一段とドライブがかかる。ビッグバンドでのショーケースとしてもうってつけの曲なのだろう。
この曲は、何故か他のバンドでも取り上げることが多いホレスシルバーの名曲だ

さて、この曲が入っているリッチのアルバムはというとこのアルバム。
レーシングスーツに身を包んだ写真が印象的で、一度見れば忘れないジャケットデザインだ。デザインどおりスピード感溢れる曲が並ぶ。
久しぶりにじっくりアルバムを眺めてみたが、ライナーノーツには曲とメンバーだけで何も書かれていない。

このスピード感を増すためか、リズム隊が補強されパーカッションが加わっている。サムウッドヤードとあるが、あのエリントンオーケストラのドラムのサムウッドヤードか?
そして、ギターにジェフベック。
これだけで結構雰囲気が変る、エイトビートでなくとも躍動感が増す。同じ4ビートでも、リッチのドラミングはドライブ感が違う。それにこのリズム隊が加わるとターボ付きのパワーとなる。それがオーケストラ全体をドライブするので、並のビッグバンドとは異次元のサウンドとなる。

リッチのアルバムで、このアルバムを推す人も多いが、このドライブ感がたまらないのだろう。自分はジャズロック風の演奏が多くなってきてからのアルバムよりも初期のアルバムを聴く事が多いが、このアルバムのナットビルとタイムチェックはどちらも好きな曲だ。

リッチのオーケストラもデビューした時のパシフィックジャズからRCAにレーベルが変っていたが、このアルバムはというと、グルーブマーチャントへとまた変わっている。

グルーブマーチャントというと、サドメルの初アルバムを作ったソリッドステートレーベルを作ったプロデューサー、ソニーレスターのレーベルだ。
グルーブマーチャントというと同名の曲がサドメルのレパートリーにもあった。ジェロームリチャードソンのグルービーな曲で、好きな曲のひとつだが、そうしてもこの曲のイメージを持ってしまうが。時代が変われば、同じグルービーといってもカッコよさは変化する物。

ソニーレスターが一段とパワーを増したバディーリッチのオーケストラから、また新たな「カッコよさ」を引き出したアルバムといえよう。

次回の稲垣ビッグバンドのライブは、5月6日@新宿Someday
バディリッチファンの方は是非一度お試しください。



1. Nutville                (Horace Silver)  4:47
2. Kilimanjaro Cookout         (Manny Albam)   6:14
3. Big Mac               (Ernie Wilkins)  5:54
4. Backwoods Sideman         (John La Barbera) 4:29
4. Time Check               (Don Menza) 3:45
5. Prelude to a Kiss  (Duke Ellington, Mack Gordon, Irving Mills) 3:32
6. Waltz of the Mushroom Hunters      (Greg Hopkins) 7:16
7. Senator Sam                (Wilkins)   4:40

Buddy Rich (ds)

Charley Davis (tp)
Larry Hall (tp)
Greg Hopkins (tp)
Pat La Barbera (ts,ss)
Bob Crea (ts)
John Laws (bs)
Alan Kaplan (tb)
Keith O'Quinn (tb)
John Leys (btb)
Buddy Budson (p)
Joe Beck (g)
Tony Levin (b)
Jimmy Maeulen (cong)
Sam Woodyard (per)

Produced by Sonny Lester
Recorded on October 6 & 13, 1973


Roar of 74
クリエーター情報なし
Lrc Ltd
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名盤の陰に、名プロデューサーあり・・・・

2015-02-06 | MY FAVORITE ALBUM
Speak Low / Walter Bishop Jr.

ジャズの世界で大物プロデューサーといえば、JATPの興業を成功させたノーマングランツ、ニューポートジャズフェスティバルを有名にしたジョージウェインなどが有名だ。そして、コンサートだけでなく、レコーディングとなるとアルフレッドライオン、ボブシャッド、クリードテイラー、ボブシール・・・・など成功したレーベルには必ず名物プロデューサーがいた。
我々がジャズに接するには、直接目に触れる機会はなくとも彼らプロデューサーの存在は重要だった。もし彼らがいなければ、コンサートが開かれることもなく、アルバムが残されることも無かったので。

もちろん、彼らのような有名プロデューサーだけでなく、自主録音以外の大部分のアルバムにはプロデューサーの名前がクレジットされている。無名であっても、彼らがいるからアルバムが作られ、今でも楽しむことができる。もちろん、彼らがアルバムの出来を左右する事も多いので、ミュージシャンの本領を発揮させられるかどうかの責任は重要だと思う。

ペッパーアダムスのアルバムEncounter !を制作したフレッドノースワーシーは、有名プロデューサー達と較べると無名と言ってもいいだろう。だが、結果的にいいアルバムを作っている。

ピアノトリオの名盤は?といって必ずと言っていいほど選ばれるのが、このウォルタービショップJr.のアルバム「スピークロウ」である。日本盤が出た時、その宣伝文句で「無人島に持っていく一枚だけのピアノ・トリオ・アルバム」とアピールされていた。
オリジナル盤は幻の名盤といわれていたアルバムだが、このレーベルがJazztimeという、わずか5枚のアルバムをリリースして消えてしまったレーベルであったのも理由の一つだろう。短い寿命であったが、途中で名前をJazzLineと変えているのも分かりにくい。

実は、このレーベル設立に参画した一人が、このFred Northworthyであった。
彼のアルバム制作への関わり方は、Producerと書かれることも、Artists & Repertoire と書かれることも。そしてRecording Engineerと書かれることもある。そして、自らレーベルを立ち上げようとしたことも何度かあったが、最初のチャレンジがこのJazztimeであった。

彼の経歴はイギリス出身という以上良く分からないが、基本的にアンダーレイテッドなミュージシャンに注目していたように思う。
「自分の好きな、あまり注目されない境遇のミュージシャンに、好きなように演奏してもらう」をモットーにしていたようだ。売ることを真っ先に考えていないので、当然あまり商売にはならない。しかしミュージシャンにしてみれば実に気持ちよく演奏できるので、いいアルバムができるということだろう。

このような事情を知って改めてこのアルバムを聴き直すと・・・。
まずは、サイドメンとして参加したアルバムしか無かったウォルタービショップをリーダーに据えた大英断を評価すべきだろう。このビショップ、前回のペッパーアダムスなどを含めて新人で無名という訳ではなく、それなりの活動をして評価はされていても、リーダーとして活動の機会は少なく、その評価以前にその実力をアピールできる場が限られていたというのが実態であった。そのようなミュージシャンに機会を与えようというのは本当に好きでなければできない事だ。

次に、ベースのジミーギャリソンの起用。こちらもコルトレーンのグループに加わった頃。ジミーギャリソンの図太いベースが魅力だ。
ドラムのホーガンも無名といっていいだろう。自分も他のアルバムで記憶が無い。派手さはないが、パウエルは興したモダンジャズのピアノトリオの原点がブラッシングだったというのを知っているかのような演奏ぶりだ。

コンコルドのカールジェファーソンも、ミュージシャンに自由に演奏できる場を与えたのは同じだが、こちらは過去の実績があるベテラン達が中心。最初は細々とスタートしたが、あっというまに全国区に受け入れられたのも、すでにいたファンから受け入れられたから。この違いは商売的には大きく違った。ジェファーソンは、元々車のディーラーをやっていたビジネスマンであったのも大きな違いだと思う。

アルバムの中身に関しては多くを語る必要はないと思うが、実に味のあるピアノだ。まさにジャズ喫茶に似合う音だ。

そして、自分の好きなグリーンドルフィンもやっているという訳ではないが、スタンダードありジャズの名曲ありの選曲もいい。
1961年の録音、ファンキーブームの真最中、多分世の中の動きに惑わされることなく、パーカーとやっていた頃のスタイルを全く変えることなく、自然体のプレーを出し切れた結果が良い演奏になったのだろう。

それを引き出せたのも、プロデューサーの力量だと思う。



1. Sometimes I'm Happy     Caesar, Youmans 6:25
2. Blues In The Closet          O. Pettiford 3:57
3. On Green Dolphin Street     B. Kaper, Nancy Washington 9:45
4. Alone Together                A. Schwartz 6:45
5. Milestones                  M. Davis 4:45
6. Speak Low                 Weil, Nash 9:20

Walter Bishop Jr (p)
Jimmy Garrison (b)
G. T. Hogan (ds)

A & R : Fred Northworthy
Engineer Bill Stoddard
Recorded at Bell Sound Studios, New York, March 14, 1961

スピーク・ロウ
クリエーター情報なし
ミューザック
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自分でエアチェックした物は、アルバムとはまた違った楽しみがあるような・・

2015-02-05 | MY FAVORITE ALBUM
Aurex Jazz Festival '81 / All Star Jam Session

一時お蔵入りしていた自宅のアナログのレコードが再びターンテーブルに乗って10年近く経つ。当時は仕事とゴルフに熱中していたが、歳をとったら好きだったジャズをもう一度聴き直したいと思ったのがきっかけだ。

ちょうどその頃このブログを開設した。最初は、ゴルフの記録を残すことが主な目的であったが、このブログのタイトルでもあるウェスモンゴメリーのアルバムを取り上げたのを機にジャズのアルバム紹介もするようになった。

三日坊主にならないように、それをきっかけにレコードの棚卸も始めた。昔聴きこんだアルバム、一回聴いてお蔵入りしたものまで、今聴き返すとそれなりに新たな印象が生まれる。レコードを棚卸すれば、当然CDも。一時、新たにアルバムを買う事も無くなっていたが、聴き始めるとまた新たなアルバムが欲しくなる。新しいアルバムというよりは、古いアルバムを聴いて気になったものがまた増えてくる。昔は、欲しいアルバムを探すのも楽しみであったが、今ではネットで簡単に探せる。簡単に買えるようになったのが、いいのか悪いのか、店に足を運んで探す楽しみは無くなった。

お蔭で、棚卸は遅々として進まないが、最近は、ゴルフの記事よりももっぱらジャズアルバムの記事になっている。別にゴルフを辞めた訳ではないが、プレーへの執着心が無くなると、書く事も無くなる。
最近はアルバムそのものの紹介よりも、アルバムにまつわる話が多くなっている。これも、棚卸をやっている中で、好きなサドメル(ビッグバンド)、ペッパーアダムス、そしてConcordに関しては、せっかくなので少し突っ込んで調べてみたいと思う、ファンの心理からだろう。

段ボールに詰まったままであった古いスイングジャーナルも再び書棚に陽の目を見た。良く読んだ記憶のものもあれば、全く記憶にないものもある。確かに、仕事が忙しかった時期は読む暇もなく、定期購読して毎号届くものの、ただ積んでおいたものも多かった。

昨年は、ベーターのデッキを復活させた。これで段ボールに詰めてあったβのテープが陽の目を見た。30年以上前の懐かしい映像に見入ってしまうことも。

そこに、また一つ最近復活させたものがある。カセットテープである。当時エアチェックをしたものがこれも一山ある。元々整理ができない質なので、タイトルはあってもインデックスが記されていない物が大半。中身は聴いてみてのお楽しみということだ。

もうひとつ物置にオープンテープが一山あるが、これもいつかは手を付けなければと思うが、これはいつになることやら。

こんな生活ができるようになったのも、最近は仕事を減らして比較的自由な時間がとれるようになったのもひとつの要因だ。
程ほどにしようとは思うが、元々凝り性。次の楽しみが見つかるまではしばらくは続きそうだ。



さて復活したカセットで最初に聴いたのは、この81年のオーレックスのオールスターズの演奏のエアチェック。レコードではカットされている、ゲッツとブルックマイヤーのそれぞれのソロが異色だ。アルバムではゲッツはミルトジャクソンとのイマネマと、ブルックマイヤーはマリガンとバニーズチューンの再演となるが、それぞれのソロは懐メロではなく全く違う雰囲気の演奏だ。

というのも、この81年というと、ゲッツはサンフランシスコに居を移しConcordで復活する時。そしてブルックマイヤーも古巣のメルルイスオーケストラでも本気モードを出していた頃だ。
此の頃は、ジャズフェスティバルも全盛期、世界中で色々なコンサートが開かれていた。今聴き返してみると、お祭りは別の場として割り切り、皆、本業では真剣モードだった気がする。このようなお祭りでは、自分のソロの時だけは、今の自分のせめてものアピールの場だったのかもしれない。

コンサートのプログラム作りも、一般受けを狙って(それはそれで楽しいものだが)出演者の普段の演奏とは違う物であったことが良く分かる。

ということで、表題のアルバムはこの時のライブアルバムだが、今回は自分のカセットのエアチェックで聴いてみた。曲が違い、順番が違うだけでもアルバムとはまた違った印象を受けるものだ。

1. Crisis
2. Bernie's Tune
3. Song For Strayhorn
4. What Am I Here For
5. Take The 'A' Train - Caravan - Things Ain't What They Used To Be
6. A Night In Tunisia
7. Time For The Dancers
8. The Girl From Ipanema
9. Bag's Groove

Freddie Hubbard (tp)
Stan Getz (ts)
Bob Brookmeyer (vtb)
Gerry Mulligan (bs)
Milt Jackson (vib)
Roland Hanna (p)
Ray Brown (b)
Art Blakey (ds)

Engineer : Yoshihisa Watanabe, Yutaka Tomioka
Executive-Producer : Nobuo Ohtani
Producer : Yoichiro Kikuchi

Live recorded at Budokan, Tokyo on September 3, 1981
Live recorded at Osaka Festival Hall, Osaka on September 2, 1981
live recorded at Yokohama Stadium, Yokohama on September 6, 1981
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ビッグバンド育ちは、誰もがいつかは自分のビッグバンドをと思うのだが・・・

2015-02-01 | MY FAVORITE ALBUM
Taking The Long Way Home / The Bud Shank Big Band

ビッグバンド育ちのミュージシャンは、いつかは自分のオーケストラを持つのが夢かもしれない。ペッパーアダムスは自分でも譜面も書いたが、自分のオーケストラを持つことはできなかった。やっと最後のレコーディングで、ビッグバンドをバックにしたアルバムを残せたのがせめてもの救いであった。

ソリストは日頃のプレーでもビッグバンドをバックに演奏する機会を得ることは簡単ではない。努力すれば多くのメンバーを集め、リハーサルを重ねて、演奏の質を上げていくリハーサルオーケストラを持つことは可能でも、日常的にそれを運営することは洋の東西を問わず、経済的な面で難しいのが現実だ。
その昔、ドンエリスがビッグバンドを立ち上げた時は、他に仕事を持っているミュージシャンを集めたとか。

スタンケントンの出身で、西海岸を中心に活躍してきたバドシャンクはパーカー派の流れを汲む名アルト奏者だ。50年代から活躍し、一時スタジオワークが中心であったが、その後ローリンドアルメイダなどと共にLA4に加わって活動した。さらに、ショーティーロジャースとともにジャズの第一線に復帰し、ライブもレコーディングも最後までジャズに拘った一人だ。

しかし、そのプレーは。スモールコンボでの演奏が中心であった。ビッグバンド育ちなので、いつかは自分のビッグバンドでと思うのは、彼も他のミュージシャンと同じであった。しかし、彼の場合は、自分で作曲はするが、オーケストラのアレンジをやらなかったので、自分の作品をやってみたいという想いは、他のアレンジをメインにしているミュージシャンよりは少なかったようだが。

そのようなバドシャンクに、ビッグバンドのリーダーになるチャンスが訪れた。
2005年ロスアンジェルスジャズインスティテュートが主催するスタンケントンネオフォニックオーケストラの40周年記念のコンサートに出演する機会が得られた。
この第一回のオリジナルのケントンのコンサートには、シャンクはメインソリストとして出演していたが、自らビッグバンドのリーダーとして参加するのは今回が初めての経験であった。早速譜面の用意が始まった。

約10年前、シャンクはフランクフルトのラジオ局からの依頼があってメンバーを集めたことがあったが、その時、アレンジをマイクバロン、ボブクーパー、マニーアルバムなどに依頼しそのスコアがあった。いつもコンボでやっている曲のアレンジをビッグバンド用に手直しもした。そして、75歳の誕生日を迎えた2001年、それを祝って作られたビッグバンドアレンジで、2回だけ演奏された曲もあった。

そして、このコンサートをジャズメディアレーベルのオーナー、グラハムガーターがライブ録音をすることになった。レコーディングとなると、準備には普通以上に力を入れざるを得ない。
バドシャンクがビッグバンドと向き合う基本はやはりスイングすること。シャンク流のノリへの拘りもあったようだ。ロスでいつも一緒にプレーしているメンバーを中心に本番に先立って入念にリハーサルが繰り返され、譜面への手直しも行われていった。いつもクインテットで演奏している曲のアレンジも完成した。ところがいつも相手を務めているピートクリストリーブが参加できなくなって相手を替えなければならなくなった。全編、テナーとの掛け合いが売りだけに呼吸合わせも大事だった。

そして、本番を迎える。会場はロスのホテルが会場。
全曲、バドシャンクがフィーチャーされている。ソリスト冥利に尽きるコンサートがスタートする。
フルートも得意なシャンクであるが、今回はアルト一本。自らMCを務め、順調にスタートする。シャンクが軽くメロディーを吹いて始まると、続いてオーケストラが炸裂する。如何にもウェストコーストのビッグバンドといった感じのスマートな演奏だ。

エバンスのワルツフォーデビーのビッグバンド版というのも珍しい。ここではボブクーパーのアレンジだが、シャンク自身は1996年にエバンスの曲を集めたアルバムでも演奏している。シャンクはよく演奏する曲だそうだ。

Lime Awayはライムハウスブルースをベースにしたスインギーな曲。ドックセベリンセンのオーケストラに提供したアレンジに手を加えたが、ここではトランペットのカールサンダースのソロが先行する。

スインギーな曲が続くが、最後の20分近くの大作Taking The Long Way Homeはがらりと雰囲気が変る。アレンジャーのボブフローレンスも駆けつけてくれて、自らピアノを担当した。

この曲が終わり、最後にメンバー紹介があってコンサートは幕を閉じるが、シャンクの80歳にして初めて経験したビッグバンドのリーダー&メインソリストの大役を終えた嬉しそうな顔が目に浮かぶ。

1. Rosebud
2. Waltz for Debby
3. Greasiness Is Happening
4. Night and Day
5. The Night Has a Thousand Eyes
6. The Starduster
7. Limes Away
8. Taking the Long Way Home

The Bud Shank Big Band

Bud Shank (as)

Ron Stout (tp)
Dennis Farias (tp)
Carl Saunders (tp)
Roger Ingram (tp)
Mike Barone (tb.arr)
Andy Martin (tb)
Craig Gosnell (tb)
Charlie Morillas (tb)
Doug Webb (ts)
Keith Bishop (as)
Brian Williams (ts)
Lanny Morgan(as)
Jack Nimitz (bs)
Bob Florence (p,arr)
Christian Jacob (p)
Joel Hamilton (b)
Kevin Kanner (ds)

Produced by Graham Carter
Tim Pinch : Engineer

Manny Albam Arranger
Bob Cooper Arranger

Taking the Long Way Home
クリエーター情報なし
Jazzed Media


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ラストアルバムというのは、ミュージシャンだけでなくレーベルにも訪れるものだが・・・

2015-01-31 | MY FAVORITE ALBUM
American Eyes / Rare Silk

先日、ペッパーアダムスのアルバムを紹介している中にPalo Altoからリリースされたアルバム“California Dream”があった。自分が持っているのはCDの再発物だが、Palo Alltoのオリジナルのレコードは何枚か持っている。

何か自分の好みと相通じるものがあるのかと思い、もう一度カタログリストを眺めてみた。当時人気のリッチ―コールがあったり、かと思ったらメイナードファーガソンがあったりと、色々バラエティーに富んでいる。
何か拘りがあるような、無い様な・・・・。オーナーのHerb Wongの好みといえばそれまでだが。
そして、リストの最後にあったのが、このアルバムだった。カタログナンバー8086、これがPalo Altoのラストアルバムという事になる。

このレアシルクは、ベニーグッドマンの専属コーラスグループとしてデビューした。オーレックスジャズフェスティバルで来日した時も同行していた

その時の武道館での演奏は↓



そして、男性ボーカルを加えて独立して、New Weavesというアルバムを作った
当時。ジャズコーラスといえばマンハッタントランスファー。1984年のグラミー賞は、マントラのWhy Not。先日紹介した、Body and Soulというアルバムに収められている。

実は、この時ノミネートされた他の4枚に、このレアシルクのニューウィーブスも選ばれていた。少なからず注目されたグループであったということである。確かに、グッドマン時代のレトロな感じを残すコーラスから、モダンなコーラスに変身して新天地を切り開いたいいアルバムだったと思う。

そして、その成功を経て、このアルバムへとつながってくる。バックは一部ソプラノサックスが入るが基本は管楽器を使わずキーボードのトリオ。しかし、シンセサイザーやエレピを使って思い切りモダンなサウンドに。


そして、ラウンドミッドナイトではベースだけをバックにアカペラを聴かせてくれる


手作り感が漂うこのアルバムもグラミーの候補に選ばれる。しかし、結果はマントラのボーカリーズに敗れる。この時代、(というよりその後もだが)コーラスグループはマントラの時代が続いたので当然の結果かもしれないが、少なくとも2枚のアルバムが注目され、これからと思われたのだが・・・・。その後、活動の様子が聞かれなくなった。
今回改めて確認したら、このアルバムのすぐ後1986年には解散したとあった。
人気が出かかったのに何故? と気になるが。

世の中には運気というものがある。もし、このレアシルクがこのアルバムを機にブレークしていたらパロアルトも続いていたかもしれないし、パロアルトがその後も続いていたら、このレアシルクの活動も続いていたかも。
どちらも悪い運気を持っていた同士の出会いだったということだろう。

いずれにしても、せっかくグラミー候補になるアルバムを作るまで上り詰めたのだが、レアシルクもパロアルトもこれが最後のアルバムとなってしまった。

ジャズ好きのオーナーと、有能なミュージシャンの組み合わせだけでは残念ながら活動を続けるだけのお金が回らないということかもしれない。
昨今のジャズ界もそのような気がする。

1. Oops!
2. Watch What Happens
3. 'Round Midnight
4. Hello
5. American Eyes
6. Storm
7. Up from the Skies
8. Burn It

Rare Silk
Todd Buffa (vol)
Gaile Gillaspie (vol)
Mary Lynn Gillaspie (vol)
Barbarann Reeves (vol)

Rrae Silk Trio
Eric Cunninson (keyboard)
Kip Kuepper (b)
Michael Berry (ds)

Produced by Rare Silk
Engineer : Tim Greene

American Eyes
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Hardware
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伝説のテナーは日本でもまだ健在だ・・・

2015-01-29 | MY FAVORITE ALBUM
The Tenor Summit / SATORU Meets Young Six

最近、ベテランミュージシャンの音楽活動何十周年といったライブがよく開かれる。昨年はトランペットの岸義和さんの50周年、そして先日は、ドラムのバイソン片山さんの40周年のライブが開かれた。スインギーなドラムで、ハンクジョーンズやウォルタービショップとも共演していた。今でも、ライブ活動をやっているようだが最近は聴く機会は無かったが。今回は、記念ライブという事もあり、ビッグバンド編成で出演ということでゴルフ帰りに駆けつけた。

メンバーはベテランが中心であったが、中にはテナーの大内満春、ギターの加治雄太といった若手の顔も。ベテランに交じって若手が加わっているのも嬉しいものだ。

そして、ゲストには飛び入りでボーカルのハービー・トンプソン。いつもながらの素晴らしいボーカルであったが、この日のメインゲストは何といってもテナーの尾田悟。元気に活躍しているニュースは良く聞くが、最近なかなか聴く機会がなく、これも当日の楽しみであった。

ビッグバンドでの演奏はグレンミラーナンバーからスタート、そしてベイシーレパートリーと続いた。途中で尾田悟さんが加わったが、ビッグバンドをバックに、そしてジャムセッション風にコンボでの演奏と続く。何と今年は米寿のお祝い、88歳になられるようだが、レスターヤングライクのテナーは健在であった。



昨年、今や伝説のテナーともいえるベニーゴルソンが来日したが、実はゴルソンの方が2つ年下。日本の伝説のテナーも負けてはいない。
しばらく前に、ベニーゴルソンの「テナー伝説」というアルバムを紹介した。この尾田さんのプレーを久々に聴いて、ゴルソンに負けないテナーバトルのアルバムがあったのを思い出した。

尾田さんが若手を集めてバトルを繰り広げたアルバムだ。1996年の録音なので、今から20年近く前。この時、尾田さんは60代半ば、すでに長老の域に達していたが、他のメンバーは皆20〜30代、彼等も今ではベテランの域に達しているが、この時は若手の伸び盛り。リズム隊を含めて親子ほど違うメンバーを集めてのバトルであった。

このアルバムで自ら尾田氏がコメントしているように、尾田さんのプレーは、60年代に一世を風靡し多くのテナー吹きに影響を与えたコルトレーンを否定したスタイルだ。そして、フュージョンの世界とも縁遠くレスタースタイルのテナーを吹き続けている。このアルバムのために集まった若者達にもそのコンセプトは伝わっていた。よく、ベテランが若手を相手にしたバトルだと、若手の若々しいプレー(これがコルトレーンに影響を受けたスタイルであることが多いが)に刺激を受けて、ベテランも若手に負けじと、いつも以上に気負ったプレーをすることも多い。しかし、ここでは尾田さんの存在感のある演奏に、若手が大先輩の胸を借りて畏れ多くもチャレンジしているという感じがする。

テナー4本でのアンサンブルあり、ソロの取り回しあり、バトル有と、尾田さんのテナーを中心に4人のテナープレーをタップリと楽しめる。似ているようで微妙に違うスタイルを楽しむのも良し。アンサンブルと言ってもスーパーサックスのような超絶テクニックを競うというのではなく、ソロ中心の心地よいサウンドだ。スインギーな曲が多いが、アリーオータムのようなしっとりモードも魅力だ。いずれもサックス好きにはたまらない。

スタジオライブでの演奏もリラックスした感じを生んでいる。さらに、2chダイレクトによるライブ録音というのも、マルチチャンネルで楽器の一つ一つが浮き彫りになりすぎているサウンドと異なり、このようなスタイルの演奏にはいいものだ。

1. Fast Company
2. Bluer Than Blue
3. There Will Never Be Another You
4. Sweet And Tangent
5. Angelica
6. If I Had You
7. Not Really The Blues
8. Things Ain’t What They Used To Be
9. Tenor Madness
10. Early Autumn
11. Crazy Rhythm

尾田 悟 (ts)
三木 俊雄 (ts)
安保 徹 (ts)
右近 茂 (ts)
守屋 純子 (p)
杉本 智和 (b)
田鹿 雅裕 (ds)

Supervised by Osamu Uchida
Engineered By Shigeki Kato
Recorded at Audio Park on Dec. 8, 1996
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ジャズピアノの祖、バドパウエルのピアノトリオの出発点は・・・

2015-01-22 | MY FAVORITE ALBUM
Bud Powell Trio (バドパウエルの芸術)

最近、アナログディスクがまた復活の兆しを見せているという話を良く聞く。ネット時代に入って「今後音楽は皆ダウンロードになってしまう」と声高に言われていた頃もあった。自分も現役時代はデジタルビジネスに携わっていたので、その当事者でもあった訳だが、CDの売上は減っても、どうやらダウンロードも思ったようには伸びていないようだ。

自分も車の中などBGMで聴く時は、iPhoneでシャッフルにして聴く事も多く、あまりアルバム単位にこだわらない聴き方をする。これにはデジタルが確かに便利だ。しかし、腰を据えて聴く時はやはりLPでもCDでも、20年以上使っている昔のオーディオで、アルバム単位で聴くのが基本だ。「アルバム単位」と「アナログディスク」というのは何故か相性がいいのかもしれない。

音楽に限らず、コンテンツという物は、それを楽しむには編成、編集といった概念が捨てられない。編成があるからこそ個々のコンテンツが生きてくるのだと思う。ライブでも、いい加減な選曲、無頓着な曲順の演奏と、きちんと考えられたプログラムで行われるステージは全然違った印象を受ける。

瀬川さんのビッグバンドに関する記事が載っていた’67年のスイングジャーナルを見ていたら、長年続いたSJ選定<ゴールドディスク>のスタートがこの年の5月号だった。
ジャズを聴き始めたものの何を聴いたら良いのか分からない頃、過去の名盤なるものを知るには良い企画だった。まさに「アルバム単位」でのお勧め盤であった。

あのトミーフラナガンのオーバーシーズがそのゴールドディスクの記念すべき第一回の発売。このオーバーシーズは、当時幻の名盤(今や死語になっているようだが)の代表格、当時でもオリジナル盤は1万円を超えていたそうだ。それが世に出るということで、予約だけで1万枚を超えたという。当時自分はまだ俄かジャズファンであったが、世の中にはジャズファン(というより訳知りのマニア?)が沢山いたようだ。

そして、その後名盤の復活が続くが、11月にはバドパウエルのルースト盤も続いた。モダンジャズピアノの祖といわれるパウエルのトリオ演奏の原点といえる有名なアルバムだ。
先日パウエルの後継者バリーハリスのアルバムを聴いたので、久々に本家パウエルでもと思ってこのアルバムを出してみた。

1967年に出たこのアルバムは、ルーレットで12インチ盤で再発された国内盤。47年の録音と53年の録音から12曲が収められていた。ところがこのアルバムはルースト盤の2枚の10インチLPが元になっていて、オリジナルはそれぞれ8曲ずつだった。
ところがこのアルバムでは53年の録音からは4曲だけが収められていた。残りの4曲も聴きたくなるのが人情だし、そもそも時代も違った2枚のアルバムを一緒にしたのに片方が半分というのでは座りが悪い。拘りのファンが多い日本のファンからは当然完全盤を望む声が大きくなった。

その後、このアルバムが再発された時にはやっと本来の16曲に戻った。自分の手元にあるアルバムもその再発物だが、元々2枚のアルバムが一枚になって裏表というのであれば納得できる話だ。ところが、この時残りの4曲のマスターテープが見つからなかった。仕方なく評論家の佐藤氏が所有していたオリジナル25センチ盤から残りの4曲をコピーして収録して完成させたと記録されている。

最近はコンプリートなら良かろうという判断からか、別テイクや未発表曲までを詰め込んだアルバムも多い。よほどのファンでない限り「そこまではいいよ」というのが本音ではないだろうか?
このようなコンプリートは編集でも編成もない。コンプリートを目指す熱烈ファンには有難いが。ただ詰め込んだだけ、アルバムとしての意図は「コンプリート」以外何も感じないものだ。

また、最近は、過去のアルバムが名盤から駄作まで何十枚単位で安価で再発され、その気になれば簡単に入手できる。憧れの名盤といわれるものも、有難味を感じなくなってしまった。

このパウエルのアルバムは、最初にゴールドディスクで発売された時は、原テープをオリジナルのピッチに合うように復元して発売されたと記されている。16曲への拘りとか、このピッチの調整とか、名盤と云われるものは、是非このように手をかけて本来の形で大事に残してもらいたいものだ。

さて、このアルバムの内容に関しては、色々な所で多く人が語られているので説明の必要は無いと思う。自分としてはパウエルといえばクレオパトラであったが、パウエルの火の出るようなアップテンポのインディアナに驚き、反対にバラードの良さも知り、ドラムのフラッシングへの拘りに感心し、療養前後のプレーの違いを感じたアルバムだ。
バウエル派のピアニストの原典ともいえる演奏の数々、自分のように聴くだけのファンはなるほどと感心するだけだが、きっと演奏する人にとってはそれ以上に学ぶべき点が沢山あるのだと思う。きっとバリーハリスに引き継がれているエッセンスのような物が。

1. I'll Remember April     Gene DePaul / Patricia Johnston / Don Raye
2. Indiana           James F. Hanley / Ballard MacDonald
3. Somebody Loves Me   Buddy DeSylva / George Gershwin / Ballard MacDonald
4. I Should Care      Sammy Cahn / Axel Stordahl / Paul Weston
5. Bud's Bubble                   Bud Powell
6. Off Minor                  Thelonious Monk
7. Nice Work If You Can Get It    George Gershwin / Ira Gershwin
8. Everything Happens to Me        Tom Adair / Matt Dennis

Bud Powell (p)
Curly Russell (b)
Max Roach (ds)
Recorded in January 10, 1947, NYC

9. Embraceable You         George Gershwin / Ira Gershwin
10. Burt Covers Bud                 Bud Powell
11. My Heart Stood Still       Lorenz Hart / Richard Rodgers 
12. You'd Be So Nice to Come Home To          Cole Porter
13. Bags' Groove                   Milt Jackson
14. My Devotion           Roc Hillman / Johnny Napton
15. Stella by Starlight        Ned Washington / Victor Young
16. Woody 'N You                  Dizzy Gillespie

Bud Powell (p)
George Duvivier (b)
Art Taylor (ds)
Recorded in NYC, September, 1953

バド・パウエルの芸術
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EMIミュージックジャパン
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観ると聴くだけでは大違い・・・モニカゼタールンドの1960年代前半のシングル集

2015-01-17 | MY FAVORITE ALBUM
Ohh! Monica! / Monica Zetterlund

ブログの機能に自分のブログのアクセス記録というものがある。PV(ページビュー)とか、IP(訪問数)に加え、検索ワードというものもある。要は、GoogleやYahooなどで、何のキーワードの検索から、このブログに辿り着いたかの記録である。

この一カ月くらい、モニカゼタールンドがキーワードで上位を続けている。もちろんゼタールンドの映画、「ストックホルムでワルツを」の影響だろう。自分のブログではエバンスのアルバム、そしてサドメルとの共演アルバムを紹介したが、いずれも映画の公開前の記事。残念ながら映画の情報を求めて来られた方には、あまり参考になる内容ではない。

この映画を観ると彼女の半生が良く分かり、名アルバム「ワルツフォーデビー」が誕生した経緯も詳しく知ることができる。彼女に限らないが、アルバムだけで知る演奏と、そのミュージシャンの生涯を映画なり、自伝で知って聴く演奏とでは、明らかに聴く方でも印象が異なってくる。

この映画は、レナードフェザーに誘われて彼女がニューヨークに行くところから始まる。トミーフラナガンをバックにクラブ出演をするが、声をかけたレナードフェザーの思惑違いか、観客にはまったく受け入れられなかったシーンだ。

映画でも1960年のクレジットがどこかであったように記憶しているが、この彼女の渡米に関しては、ペッパーアダムスのディスコグラフィーを見た時にも気になっていた。というのも、その記録によると1961年8月、レナードフェザーの監修で、モニカゼタールンドのレコーディングセッションに参加とある。

メンバーは当時コンビを組んでいたドナルドバードと一緒、ピアノ以下のメンバーはUnknown。レーベルも定かではないという記録だ。
いずれにしても、彼女の最初の渡米時の録音があったのは間違いないだろう。ただ、思惑違いをしたレナードフェザーの監修となると果たしてどんな形の演奏になっていたのか?
この録音が発掘されたという話は聞いた事がないが、この経緯を知るとアダムスが参加している理由以上に聴いてみたいセッションだ。

自分も映画を観て、印象が変った彼女のアルバムがある。このアルバム“Ohh! Monica”、何度か聴いてお蔵入りしていたが、映画のお蔭で棚卸対象になった。

映画では、ニューヨークデビューが上手くいかず帰国し、更にヨーロッパのコンテストでスウェーデン代表となるが採点対象外のゼロ票となり、その焦心のどん底から立ち直る時期にあたる。
ジャズをスウェーデン語で歌い、ジャズ以外にもレパートリーを広げ、舞台やテレビでも歌に合わせて演じる姿も見せる。要は、エラに憧れジャズを歌っていたが、成功するためには女の意地で手段を選ばす歌手として成功する道を歩んだ時期だ。

考えてみれば、日本でも50年代は江利チエミなど多くの歌手はジャズから始まり、日本語でジャズを歌い、そしてジャンルを超えて大歌手として育っていった。洋の東西を問わず、物まねから始まっても、歌手として大成するプロセスは同じだということかもしれない。

このアルバムは、丁度その60年代前半1962~1964年にかけて発表されたシングル盤やEP盤からの曲を集めたもの。エバンスとのワルツフォーデビーをイメージするのと全く違う彼女の一面を知ることができる。
といっても、自分の所有盤はスウェーデン盤なので、曲名もライナーノーツも詳細は全く理解できない。ということもあって、これまで中身を知らずにいたという事にもなるのだが。

新ためて聴き返すと、ワルツフォーデビーのオーケストラ版があり、ジョビンのノーモアブルースがあり、スタンダードのI Believe In Youがあったり、そして、スウェーデン民謡があったりで、曲もバラエティーに富んでいる。
そして、曲だけでなく歌い方も。ミュージカル的な歌い方をしているが。舞台やテレビで歌った曲であったのだろう。バックのウェストコースト(北欧)風のアンサンブルにも映画を観ると納得。

統一感のないアルバムの印象があったが、エバンスとのワルツフォーデビーに至る彼女の軌跡ということが分かると、映画のイメージと重ね合わせて実に印象に残るアルバムに変身するから不思議だ。



1. Farfars Vals おじいさんのワルツ
2. Siv Larssons Dagbok シブ・ラーションの日記 (Chega De Saudade)
3. Konstigt 不思議
4. Monicas Vals モニカのワルツ (ワルツ・フォー・デビー)
5. En Dag I Augusti 八月のある日
6. Vilsevalsen 迷走のワルツ
7. En Valsmelodi ひとつのワルツ曲
8. Jag Tror På Dej 私は、貴方を信じる (アイ・ビリーヴ・イン・ユー)
9. När Jag Vaknar 目が覚めると冬だ
10. Vart Tar Vinet Vägen ワインは、何処へ行くのだろう
11. Spela För Mig 私に歌って
12. Visa Från Utanmyra ウータンミイラからの歌

Monica Zetterlund – sång
Göran Pettersson – bas
Georg Riedel – bas
Rune Gustafsson – elgitarr
Staffan Abeleen – piano
Jan Johansson – piano
Björn Netz – tenorsaxofon
Egil Johansen – trummor
Bo Skoglund – trummor
Lars Färnlöf – trumpet

Recorded in Sweden, 1962〜1964

オー!モニカ!
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ユニバーサル ミュージック
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管楽器のプレーヤーが自分の歌にバックをつけるには・・・

2015-01-16 | MY FAVORITE ALBUM
Touch Of Your Lips / Takashi Furuya

ジャズの世界は楽器がメインでも歌の上手な人がいる。マリガンとのカルテットで名を馳せたチェットベイカーもその一人。マリガンとのコンビは短命であったが、その後はトランペットだけでなく歌でも有名になった。
ピアノやギターであれば弾き語りもできる。ニッキーパロットのようにベースを抱えながらの弾き語りも魅力的だ。ところがチェットベイカーやサッチモのように管楽器となると歌は歌、楽器は楽器で、自分の伴奏をバックにした吹き語りは残念ながらできないものだ。

関西を拠点にする古谷充もアルトも上手いが歌もなかなかだ。その古谷充の歌をメインにしたアルバムがこのアルバム。スタンダード曲を中心に渋い歌が聴けるが、聴き始めてすぐに歌のバックにサックスアンサンブルが加わるのが気になる。

ジャケットでメンバーを確認しても、そこには伴奏のサックス陣の名前は無い。そして、古谷充の名前の後に、アルト、テナー、そしてバリトンサックスのクレジットが。
特にジャケットには何の説明もないが、古谷充が自らサックスを多重録音してアンサンブルに仕上げてバックにしたものだろう。サックス好きとしては、特にサックスアンサンブルのサウンドが心地よい。間奏だけでなく、歌のバックにサックスのアンサンブルが絡む、自分の好きなサウンドだ。

このアルバムは、自主制作のアルバムの様だが、発売元をみるとFivesaxesとなっている。実に魅力的な名前だが、他にもこのようなアルバムがあるかどうかは分からない。

ペッパーアダムスの活動歴を見ても、60年代からすでにバックアンサンブルをオーバーダビングするための録音というのが増えてくる。その中にはジャズではなくPOPS系のバックも。このオーバーダビングも多重録音の一種だが、歌のバックのオーケストラが歌とは別々に録られるのは、当たり前になってしまった。

これらのオーバーダビングとは違って、このアルバムは自分の演奏を重ねていった作品。似ているようでアプローチが異なる。
そういえば、同じような試みにジェイムスモリソンの一人オーケストラの演奏があった。他にもこのような試みのアルバムがあったような気がするが、コーラスではシンガースアンリミテッドが得意だった。どれも録音の世界では実現できても、ライブでは再現が難しい。

このサックスサンサンブルに気をとられるが、このアルバムの他の特徴はというと、あくまでもメインはボーカル。ドラムには日野元彦が参加している。彼がデビューしたころはただうるさいドラムだった記憶があるが、この頃になると実にサトルなドラミングも披露してくれ、ピアノトリオや歌伴でもいい感じのドラムになっていた。

後は、古谷充と長年コンビを組んでいたピアノの大塚善章。このアルバムでは2曲だけの参加だが、ここでのバックはピアノが主役となる。他の曲は京都のピアニスト藤井貞泰が参加しているが、ベースの寺井豊共々趣味のよいバックだ。ジャズがブームだった80年代、メジャーなミュージシャンのメジャーなアルバムに隠れて、このような趣味の良いアルバムも作られていたのが80年代のジャズだった。

このアルバムの主役、古谷充さんはまだ大阪で活躍しているようだ。昨年大阪に行った時、息子の光広さんのテナーはライブで聴けたが、今度は是非親子対決を聴いてみたい。
そして、このアルバムを聴くと、チェットベイカーの歌のバックをベイカーのトランペットで聴いてみたくなる。ひょっとしたらあるのかもしれないが?

SIDE-A
1. The Touch Of Your Lips
2. A Foggy Day
3. Skylark
4. I've Got The World On A String
5. DIndi

SIDE-B
1. Sidewalks Of New York
2. I Believe In You
3. I Got It Bad And That Ain't Good
4. I Guess I'll Have To Change My Plans
5. Easy Come Easy Go

Takashi Furuya (Vocal & Saxophones <Alto,Tenor,Baritone>)
Fijii Sadayasu (p)
Zensho Otsuka (p) A-3,B-4
Ikuo Sakurai (b)
Yutaka Terai (g)
Motohiko Hino (ds)

Produced by Takashi Furuya, Hiroo Hashimoto
Recorded at Takarazuka Sounds Atelir on May 22,23, June 11,12,21,23,24, 1985
Recording Engineer : Hideo Ueda, Hidemaro Ichihashi
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レコメンドはコンピューターから勧められるより人からの方がよい・・・・

2015-01-15 | MY FAVORITE ALBUM
'S Wonderful / Marco Guidolotti Quartet

北海道の地方都市の小さな書店の「一万円選書」なるサービスが話題になっている。
書店の店主が、購入者のプロファイルや読書傾向を一人一人考慮し、お勧めの本を一万円分選んでくれるサービスの様だ。今の時代の流れに逆行する、超アナログで人間的な心の通うサービスだ。注文受付に待ちが生ずる程人気が出るのも頷ける。

街の本屋さんが消えて久しい。学生時代帰りに寄った駅前通りにあった自宅近くの書店が無くなったのはもう何年も前だ。毎日数多く出版される本の中から自分の好みの本を探すのは大変だ。昔は、ぶらりと寄った書店をうろつきながら、どんな本が出ているかを知り、そして話題になっている本の情報は自然と把握していた。その中から実際に手にして目を通すことも。書棚の見回りと立ち読みは、レコードのジャケ買同様、本との出会いの大事な場でもあった。

しかし、最近は昔のように何か面白そうな本を探しに大きな書店をうろつく事も少なくなってしまった。目標が明確であれば、本を買う場合も最近はネットの利用が多くなってしまっている。これもレコード同様、新刊のみならず古本が探しやすくなって便利なのだが、本と出会う機会自体は減ってしまっている。

先日、ベイシーオーケストラのライブを聴きに行ったお蔭で、女性バリトン奏者のLauren Sevianと出会えた。古いアルバムの棚卸と、棚卸ついでに気になった古いアルバムを聴くので手一杯で、なかなか新しいアルバムやミュージシャンを聴く機会は少ない。新しいミュージシャンを知るのはやはりライブが一番だ。
他にもこれはというアルバムはやはり聴いてみたいが、どこから手を付けたらよいのか? 今更手当たり次第に買う気もしないし。

そこで最近役立つのは、同好の士のブログの記事。読者になると大体好みも分かるし、視聴傾向も分かるようになる。その人のお勧めと自分の好みとが合致した場合は聴いてみたくなるものだ。
このアルバムもその一枚。拙ブログの読者になって頂いているルネさんのブログのお勧め盤にあったのが気になっていた。これは一度聴かねばと思い先日入手したが、確かにイメージ通りのなかなかいいアルバムだ。

Marco Guidolotti のカルテットはベイカー&マリガンカルテットのカバーを基本にしているとはいえ、中身はスケールアップした感じで、力強さが全然違う。
元となるマリガンのカルテットもハードバップ物と較べるとちょっと聴いた感じではアレンジは多いし、プレー自体も軽い感じがする。ところが良く聴くとアドリブの自由度も高いし、小さい音と大きな音のメリハリが効いていて、小さい音でも力強さを感じる事もある。2人の掛け合いだけでなくリズムの2人とのコンビネーションの良さも大事な要素だ。

Marco Guidolotti のカルテットもこの良さをもちろん引き継いでいるが、楽器の鳴りも良く、ダイナミックレンジが更に広がった感じだ。小型スピーカーを大型のスピーカーに替えたような感じがするのは録音の良さだけではなさそうだ。
ベイカーは同じバリトンのペッパーアダムスとコンビを組んだ事もある。この2人だったらきっとこんな演奏だったのではないかと勝手に想像してしまう。
曲もマリガンナンバーが多いが自分のオリジナルも含めて、単なるコピーではなくマリガンスタイルをすっかり自分達の物にしているのが素晴らしい。

バリトンファンとしてはまた新たな注目株と出会えたのも嬉しい。
日本にも確かベイカー&マリガンカルテットをカバーしたグループがあったように思う。今度一度ライブを聴いてみようと思う。カバーと言ってもこの位吹っ切れたプレーが聴けると嬉しいのだが。

良いアルバムに出会えたが、やはりコンピューターが選ぶ機械的なお勧めではなく、推薦者の意思が感じられるお勧め盤には間違いが無い。
ジャズの世界も多くのレビュアーがいらっしゃる。一万円選書ならぬ、一万円選アルバムがあってもいいかもしれない。そして、それは昔の評論家達がそうであったように、自分の好みで独断と偏見を持ったお勧めの方がいい。

1.  Reunion        (Gerry Mulligan)
2. ‘S Wonderful      (George Gershwin)
3.  G & C         (Marco Guidolotti)
4.  Four for Three     (Gerry Mulligan)
5.  Orazio         (Marco Guidolotti)
6.  Tea for Two       (Vincent Youmans)
7.  Night Lights      (Gerry Mulligan)
8.  Say Yes, Say No     (Marco Guidolotti)
9.  Nothing like This    (Marco Guidolotti)
10.  Bernie’’s Tune     (Gerry Mulligan)

Marco Guidolotti  (bs)
Francesco Lento  (tp, flh)
Marco Loddo  (b)
Giovanni Campanella (ds)

Recorded at MamoCenter Theater, Rome, on June 23-24, 2014



'S Wonderful
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Tosky Records
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お目当てのライブ自体は期待はずれであったが、思わぬ収穫が・・・

2015-01-08 | MY FAVORITE ALBUM
Blueprint / Lauren Sevian

最初にお断りしておく。今日の主役Lauren Sevianが期待外れであった訳ではないので誤解のないように。

昨年の暮れも押し迫って、丁度クリスマス時期に、カウントベイシーとディーディーブリッジウォーターの共演ライブがあった。それぞれ昨年来日したばかりであったが、その時のライブがどちらも想像以上に良かったので、「その2人の共演という事であれば、新たな収穫が得られるのでは?」と期待して出掛けてしまった。

会場のブルーノートのプログラムは、通常1部、2部の構成で入れ替え制。それぞれが実質1時間半である。出演するミュージシャンにもよるが、この1部、2部のプログラムが違う場合もあれば、全く同じ場合もある。これは行ってみなければ分からない。

大物2人のジョイントあるいはゲスト出演というのは、集客効果を狙ってか最近よく行われる。特に、ビッグバンドだとボーカルとのセットが多い。その前に行われたボブミンツァーとニューヨークボイセズもそうだった。ビッグバンドだけだと集客が難しいのか?

さて、今回のベイシーとブリッジウォーターであるが、実際のステージは最初にベイシーオーケストラだけが登場してベイシーナンバーを数曲。クリスマスということもあり、最近は指揮に徹しているリーダーのスコッティーバーンハートがトランペットでウィンターワンダーランドを披露。余興と言えばそれまでだが、あまり盛り上がりもせず、すぐにブリッジウォーターの登場となった。

彼女の歌だけでなくステージ上のアクションやトークの素晴らしさは前回も体験済み。ベイシーオーケストラをバックに快調に飛ばすがどうもしっくりこない。彼女も自ら紹介していたが、この時使用していたアレンジは、彼女の前夫のセシルブリッジウォーターやスライドハンプトンの作品とのこと。今回、特に彼女とベイシー向けにアレンジしたものではなさそうだ。当然と言えば当然だが、であれば特にベイシーオーケストラである必要は無かったのでは?思ってしまう。

過去にベイシーオーケストラをバックにした名歌手のアルバムはシナトラやジョーウリアムス、を筆頭にエラやサミーデイビスなど数多くある。アレンジは誰であっても、どれもベイシーオーケストラのサウンドの良さに、歌手の持ち味を上手く重ね合わせたアルバムになっている。共演だからと言って、勝手にベイシーサウンドをバックにしたブリッジウォーターの歌を期待した自分が間違いだったといえばそれまでだが。

さらに、所詮1時間半のステージに無理矢理2人を詰め込む企画も如何なものか?と思ってしまう。2人の単独のステージが良かっただけに、余計に感じてしまうのかもしれないが、今回はベイシーオーケストラの良さを感じるシーンが殆どなかった。
その昔、ネームバリューのある大物をひたすら集めて、手抜きコンサートをやられていた時代もあったが、その再来を危惧してしまう。

さて、あまり満足できなかったライブであったが、ひとつの収穫はベイシーオーケストラのバリトン奏者だった。ベイシーオーケストラのメンバーは最近固定しているが、唯一来日の度に替わるのが、このバリトンの椅子だった。
今回のバリトンは金髪の美女。それだけでまずは気になった。このようなステージだったので、もちろん彼女のプレーがどのような物なのかを確認する場面も無かったが、気になったので家に帰って忘れないうちに早速調べた。

最新情報に疎い自分にとって、最近の若いミュージシャンは、何かきっかけが無いとなかなか知る機会がない。世間ではそれなりに名が通っていても最新事情には浦島太郎で、普段から「誰、それは?」を連発している自分にとっては、Lauren Sevianという名前はもちろん初耳であった。

最近便利なのは、彼女のBioもすぐにネットで調べられること。調べてみると、ニューヨークのビッグバンド界ではなかなか積極的に活動しているのが分かる。ベイシーだけでなく、ミンガスビッグバンドでも活躍しているし、スイング系のバンドにも参加している。ミンガスビッグバンドでは、アルバムになったメンバーにも入っていたとは気が付かなかった。

ビッグバンドだけでなく、コンボでの活動も行っていて、自分のグループも持っているという。その中で見つけたリーダーアルバムがこれだ。バリトンを手にする美女。昔のようにジャケ買をしていれば、間違いなく手にしたとは思うが、最近のネットのショッピングでは、お勧めにも出てきたこともないアルバムだ。

早速買い求めたアルバムが到着したので聴いてみると、実に新鮮だ。コルトレーンが好きということもあり、プレーはモーダルだが実に綺麗な音色で流暢なフレーズを吹く。バリトンの場合は、豪快をアピールすると音が汚くなったり、図体が大きいせいかフレーズ作りがたどたどしくなりがちだが、彼女の場合はどちらもクリア。あまり女性らしさは感じないが端正な音色だ。自分としては、ペッパーアダムスの孫弟子とも思うが、彼女自身は、セシルペインの影響を一番受けているとのことで、ペインに捧げた曲も作っている。

プレーぶりはこちらで↓ まずは圧倒される。



いずれにしても、道でちょっと見かけた女性といきなりデートしたような物。それも最先端のファッションに身を固めた姿で。彼女の魅力はこの一枚では分からない。もう少し付き合ってみると、もっと違った側面や良さが分かるかもしれない。まずは合格点、少し追いかけてみようと思う。

こんなファンクもやっているようなので、



期待したベイシー&ブリッジウォーターは期待外れだったが、彼女と出会えたのが大成果。やはりライブで実物に接すると何か収穫があるものだ。

1. Bluepoint
2. Elusive Illusion
3. Not So Softyly
4. One For C.Payne
5. Gesture Of No Fear
6. True
7. For Mr. Stubb
8. Outline
9. Intepid Traveler
10. The Free Effect

Lauren Sevian (bs)
George Colligan (p)
Boris Kozlov (b)
Johnathan Blake (ds)

Special Guest Mike DiRubbo (as)
Recorded by Reed Taylor at Lofish Studio, New York, December 10, 2007


Blueprint
Lauren Sevian
CD Baby
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自分の演奏よりも先にグラミー賞をとったミシェルカミロの”Why Not”・・・・

2015-01-05 | MY FAVORITE ALBUM
Boddies and Souls / The Manhattan Transfer

昨年も有名ミュージシャンが亡くなった。特に、来日予定であったマンハッタントランスファーのリーダーのティムハウザーの突然の訃報にはビックリした。毎年のように来日していたので、まだまだ現役のライブを楽しめると思っていたのだが・・・・。

このティムハウザーが、マンハッタントランスファーを結成したのは1969年。このグループで作った初アルバムがJunkin’。しかし、メンバー間で進むべき音楽の方向性の意見が異なり、このメンバーでのマントラはすぐに解散となった。

その後、タクシードライバーをしながらメンバーを探しながら再編したのが、現在のマントラとなる。1972年から活動を開始するが、初アルバム”The Manhattan Transfer”ができたのが1975年。ジャズフィーリング豊かなコーラスを聴かせてくれたが、このデビューアルバムでも、ジャズだけでなく、カントリー調であったり、ロックンロール風であったり、広くアメリカンポップスの歴史を感じさせるコーラスを披露してくれた。
このアルバムから今年で40年を迎えるところであった。残されたメンバーで今後も活動を続けるようなのでせめてもの救いだ。

最初のアルバムでも披露してくれたこのオールマイティーなところがマントラの良さであるが、80年代に入りヒット曲、ヒットアルバムが続き、一時思い切りPOP路線に徹したアルバムを出した時期がある。

このアルバムもその一枚だ。プロデューサーにあのLovin’ Youのヒットを生んだリチャードルドルフを起用している。スティービーワンダーもハーモニカで登場という豪華版だ。
ヒットして当然というアルバムであったので、ジャズファンというよりも幅広くPOPSファンにも受け入れられたアルバムだ。

アルバムとしてビルボードのチャートにもランクインし、シングルカットされたSpice of LifeもHot1001に名を連ねた。ヒットすべく企画され、その通りヒットしたアルバムだろう。

日本では、このアルバムのAmerican Popsは、サントリーのCMでも使われた。


先日紹介したミシェルカミロの凱旋コンサートの一曲目は”Why Not”でスタートした。この曲は彼の初リーダーアルバムのタイトル曲にもなっている、彼の十八番の自作曲である。
実は、このマントラのアルバムにこのWhy Notが入っている。



色々話題になったアルバムだが、このアルバムの曲でマントラは最終的に1983年のグラミー賞でBest Jazz Vocal Duo Or Groupでウィナーとなった。対象曲は他のヒット曲を押さえて、このWhy Notが選ばれた。
カミロにしてみれば自分のアルバムより、こちらの方が早く世に出てしまった。マントラのお蔭で作曲家カミロの方が一足お先にアワードを得、これを梃にプレーヤーとしての名声をも得たということになる。

自分はというと、この手のフュージョン、AOR系のアルバムは決して嫌いではないのだが、ことマントラに関していえば、古い曲、スタイルの方が好みである。このアルバムでは、Down South Camp Meetingが気になった位であまり聴き返すこともなかった。

カミロのWhy Notを聴いて久々にマントラバージョンを聴いたが、やはりどの曲を聴いても、どんなスタイルでも図抜けて上手い。マントラにとっては、これで3年連続のグラミー受賞。ジャズコーラスでは敵なしの時代だった。

1. Spice of Life       Derek Bramble / Rod Temperton 3:40
2. This Independence      John Capek / Marc Jordan 5:01
3. Mystery                Rod Temperton 5:00
4. American Pop            J. Capek / Marc Jordan 3:34
5. Soldier of Fortune          J. Capek / Marc Jordan 4:21
6. Code of Ethics   Wayne Johnson / Alan Paul / Randy Walman 5:06
7. Malaise en Malaisie  A. Chamfort / S. Gainsbourg / Alan Paul 3:58
8. Down South Camp Meeting F. Henderson / J, Hendricks / I, Mills 3:00
9. Why Not! (Manhattan Carnival) M. Camilo / Julie Elgenberg 2:33
10. Goodbye Love        J. Lubbock / Richard Rudolph 3:04
11. The Night That Monk Returned to Heaven   Robert Kraft 3:23

The Manhattan Transfer
Tim Hauser (vol)
Alan Paul (vol)
Janis Siegel (vol)
Cheryl Bentyne (vol)

Produced by Richard Rudoloh


Bodies & Souls
The manhattan Transfer
Atlantic / Wea
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ミッシェルカミロの母国での凱旋コンサート・・

2015-01-03 | MY FAVORITE ALBUM
Calibe / Michel Camilo Big Band

今年の新年はミシェルカミロのカウントダウンで迎えた。
暮れからブルーノートに出演中だが、昨年の秋の東京ジャズで上原ひろみとの共演で来日したばかり、再度の来日である。カミロはソロからビッグバンドまで毎回多様な編成でカミロワールドを楽しませくれるが、今回はThree+Threeと題して3管のセクステット編成。

どのような編成であってもカミロのクラシックのテクニックに裏付けされ、ラテンの血が騒ぐピアノのプレーは不偏だ。メンバーは、カミロとの付き合いも長いメンバー達、カミロワールドをどのように料理するかのツボは心得ている。リズムの要、クリフアーモンドはマンハッタントランスファーのツアーを終えて、こちらも続けての来日だ。
前半はバラードやバックのフルートやミュートプレーを生かしたリリカルな曲もあったが、カウントダウンをはさんで、いつものようにオンファイヤー、カリブで盛り上がっていった。

日本では、お正月は里帰りをして故郷で過ごした方も多いと思う。
このカミロの出身は西インド諸島の国のひとつドミニカ。カミロのラテンの血はここで生ま育った。音楽一家の家系で育ち親戚は皆ミュージシャン、100歳近い父上もまだ健在だそうだ。

祖父の影響でピアノを始め、母国ドミニカからジュリアードで本格的にピアノを学ぶためにニューヨークに渡ったのは1979年。本場のジャズとの出会いはそれからであった。
彼の初のリーダーアルバム”Why Not”を作ったのは日本のレコード会社であったが、これがきっかけとなりメジャーデビューを果たし、1988年にヒットアルバム"Michel Camilo"を生む。

アメリカで成功を収めたカミロは今では母国ドミニカでは大英雄になっているが、彼の成功を一緒に作ってくれた仲間を伴っての凱旋コンサートを1994年に行った。会場は、地元ドミニカの首都サンドドミンゴとは少し離れた郊外の丘に作られた座席数5000のギリシア風円形劇場Altos de Chavon, Amfitheatreであった。



引き連れていったメンバーは、ちょうどその年にビッグバンド編成のアルバムOne "More Once"を作ったが、そのメンバー達が中心。大きな舞台でのお披露目にはうってつけの大きな編成であった。
生まれ故郷での凱旋コンサートであり、当然熱い演奏が行われたはずであったが、その様子は遠く離れた日本では窺い知ることはできなかった。

近年、過去のライブ演奏の音源や映像の発掘が多く行われている。You Tubeなる便利な物ができたので、正式な物でなくなくとも、プライベートな投稿も多い。ファンとしては今まで聴けなかったものを聴けるのは嬉しいものだ。特に、映像だとその演奏の雰囲気を知る効果は数倍にもなる。

最近(といっても5年前になるが)、その時の録音と映像が正式アルバムとしてリリースされた。CDとDVDの両方がセットになっているが、この素晴らしい会場の雰囲気をありのままに伝えてくれる映像が付いているのが素晴らしい。画質はけっして良いとはいえないが音質的には全く問題は無い。熱狂に包まれる会場の雰囲気をそのまま伝えてくれる。

特に、このコンサートのハイライトとなるCaribeは25分にも及ぶ熱演。カミロのソロだけで10分近い。オリジナル映像はこのYou Tubeの映像の前にそのプレーがある。(音もはるかに良い)



これがライブ演奏の素晴らしさだろう。完成度の高いスタジオ録音を好むか、会場と一体となった熱いプレーを望むかは好き好きであるが、カミロのビッグバンドに関しては自分はこのライブ盤の方を好む。カミロのビッグバンドは、カミロのピアノがメイン。複雑なアンサンブルワークやメンバーのソロの出来は二の次になってしまう。
その中でカミロ以外のプレーヤーでは、パーカッションのワリオネクス・アクィーノのプレーが光る。

昨年もこのカミロのビッグバンドが来日した。その時のメンバーも、リズムの要のクリフアーモンド、アンソニージャクソンだけでなく、各セクションの主要メンバーは20年前のこの凱旋コンサートのメンバーと大きく変わっていない。20年前は多少荒っぽい演奏であったが、こなれた素晴らしい演奏を日本でも聴かせてくれた。もっとも、カミロの迫力を各プレーヤーが上回るのは大変だと思うが。ちなみに、カミロのビッグバンドのバリトンは今も昔もゲイリースマリヤン。カミロのビッグバンドでの次回の来日が楽しみだ。

1. Why Not?
2. Dreamlight
3. Suite Sandrine - Part III
4. Suntan
5. Just KIddin'
6. Not Yet
7. Caribe

Michel Camilo (p)
Anthony Jackson (b)
Cliff Almond (ds)
Guarionex Aquino (per)
John Faddis (tp)
Michael Mossman (tp)
Virgil Jones (tp)
Dave Bergeron (tb)
Ed Neumeister (tb)
William Cepeda (tb)
David Taylor (btb)
Chris Hunter (as,ss)
Alex Foster (as,fl)
Ralph Bowen (ts,f)
Lou Marini (ts,fl)
Gary Smulyan (bs)

All Songs written & arranged by Michel Camilo
Produced by Fernando Trueba
Recorded live at Altos de Chavon, Amfitheatre Dominican Republic, December 3, 1994


カリベ(DVD付)
クリエーター情報なし
SMJ
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レイブラウンのラストレコーディングが日本人ピアニストの宝物に・・・

2014-12-29 | MY FAVORITE ALBUM

Happy Coat / Shota Osabe Piano Trio


クリスマスが終わり、毎年この時期になると年末の慌ただしさが一気に押し寄せる。最近では仕事に追われることも少なくなったが、今年は何故か積み残しが多く毎日が気忙しい。それを理由に、今年こそは家の大掃除と思っていたが、また積み残しになりそうだ。

合間を縫って「打ちお納め」、「聴き納め」はしっかり行った。
打ち納めは、雲一つない晴天に恵まれ富士の麓で気持ちよく終了。前半は絶好調、後半は大叩き、終わってみればいつものスコア。
体が元気な間は、来年も週一ゴルフは楽しみにしていきたい。高齢者の仲間入りをすると楽しいゴルフが第一だが、たまには昔の集中力でプレーしてみたいものだ。



今年はライブもかなり行ったが、期待外れだったのは少なかった。結構皆充実したライブをやっているということにもなる。来年もライブにも週に一回は行ってみたいものだが、どうしても好きなものになってしまう。場所も、ミュージシャンも少し新規開拓を心掛けてみようと思っている。

聴き収めは、前田憲男さんのライブに先日行ってきた。今話題の神田のTN Swing Jazzのビッグバンドへのゲスト出演であったが、自らのアレンジをバックにピアノのプレーも健在であった。80歳になられたそうだが、猪俣さん同様演奏を始めると元気そのもの。軽妙な語りも健在で、音楽をやる方は皆さん何をやっても生涯現役のようだ。



自分のレコード、CDの棚卸はちっとも捗らないが、これも好きなアルバムを聴き直すと、関連してまた他を聴きたくなってしまうから。結果的に特定ミュージシャンやジャンルに嵌ってしまっているが、これも流れでいつ違うテーマに変るかも?
ペッパーアダムスも色々聴き出すと奥が深い、これはまだまだ続きそうだが、来年も成り行きで続けたいと思っている。

もちろん好みのミュージシャンは他にもいる。フィルウッズレイブラウンなども好きなプレーヤーだが、彼らの場合はあまりにも参加したアルバムが多すぎて、全部聴いてみようなどと言う気にはなれない。反対に、彼らの場合はいいアルバムだなと思って、気が付くと参加していたという事が多い。

このアルバムも、その一枚。
そもそも、このアルバムのリーダーの長部正太なるプレーヤーを知らなかった。というのも、今活動の拠点としているのはアメリカ西海岸。昔は日本で尾崎紀世彦のバックなどもやっていたそうだが。
日本には今でも年に数回訪れて演奏しているようだが、残念ながら今まで聴きに行ったことがない。演奏場所もホテルなどが多いようで、どうも自分が良く行く場所とは違うようだ。次回は是非。

演奏スタイルは、ホテルのラウンジでのプレーが似合う。それに、バックがレイブラウンとハロルドジョーンズということで、よりスイングするプレーになっているのがこのアルバム。
録音も良いので真剣に向き合って聴くのも良し、ハードな演奏に聴き疲れた時、気楽にバックで聴くのも良し。車で聴くのも良し。結果的には自分にとっても、わざわざ棚卸をしなくとも、良く聴くアルバムである。

このアルバムはレイブラウンのラストレコーディングと言われている。録音の機会が多かったレイブラウンなので、その後の作品がでてきたかもしれないが、いずれにしても元気に過ごしていた晩年の亡くなる直前の録音であることは間違いない。

レイブラウンのベースというのは安心感がある。他のミュージシャンは分からなくともレイブラウンが入っているというだけで買い求めたアルバムもある。

このアルバムも、2人の参加が長部の良さを引き出したともいえよう。
アメリカでの2人のどこかでの出会いが、このアルバムを制作することになったが、長部にとっては夢のような録音だったと思う。録音場所も、キャピタルスタジオ、昔の有名ミュージシャンが名盤を多く残した場所だった。
レイブラウンにとっては数ある録音の中の一枚だが、長部にとっては一生の宝物となったアルバムであろう。




1. This Is All I Ask            Gordon Jenkins 4:54
2. Too Marvelous for Words       Richard A. Whiting 3:45
3. Happy Coat                Shota Osabe 5:05
4. I Saw Her Standing There  John Lennon / Paul McCartney 4:10
5. East of the Sun             Brooks Bowman 5:38
6. Young and Foolish             Albert Hague 5:33
7. Cotton Fields                Huddie Ledbetter 3:25
8. Can't Leave Her Again            Ray Brown 4:02
9. In the Still of the Night           Cole Porter 4:05
10. Pretend/Somewhere Along the Way 
             Douglas L./Parmen , Kurt Adams 4:15
11. Moonglow              Hudson ? Delange 4:53
12. Willow Weep for Me            Ann Ronell 5:22
13. Anema E Core               Salve D’esposito 3:28
14. My Foolish Heart              Victor Young 3:23

Shota Osabe (p)
Ray Brown (b)
Harold Jones (ds)

Produced by Jerry Stucker ( Ray Brown Co. Producer)
Engineer : Eric Zobler
Recording at Capital Studio StudioA , Hollywood, Feb 27,28, 2002



Happy Coat
Shota Osabe
CD Baby
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ゼロからの出発であったが、4年でニューポートの舞台にも立てたのもレコード会社の支えがあってこそ・・・

2014-12-26 | MY FAVORITE ALBUM
Toshiko Akiyoshi - Lew Tabackin Big Band / Live at Newport ‘77

デュークエリントンが亡くなったのは1974年5月24日であった。その年の暮れ、猪俣猛のビッグバンドはエリントンの追悼コンサートを行ったが、エリントンを追悼する催しは各地で開かれた。そして、エリントンが亡くなる直前に海の向こうでは、エリントンに替わる新たなビッグバンドが立ち上がった。秋吉敏子とルータバキンのビッグバンドだった。

ルータバキンがレギュラー出演していたテレビの仕事(Tonight Show)が‘72年5月にニューヨークから西海岸での制作に移った。そのため、タバキンも活動の拠点を西海岸に変えざるをえなかった。

最初の渡米以来ニューヨークを拠点としていた秋吉敏子も色々悩んだ末、一緒にロスに移ることを決意し、遅れてタバキンの元へ引越しをした。旦那の急な転勤だったが、単身赴任ではなく奥さんも遅れて一緒に同居というパターンだ。共働きで奥さんも仕事を持っていると、なかなか亭主の転勤に合わせて一緒に行くという訳にはいかないのが世の常だが、ジャズミュージシャンというのは個人事業の様なもの。西海岸に行っても仕事はある、かえって新天地で新たな試みをしようと決意し、敏子の西海岸での生活が始まった。

ところが、彼女の場合「音楽はあくまでもArt」。技術だけを生かしたスタジオワークやコマーシャルの仕事はやらない主義であった。夫君のタバキンとカルテットを組んで地元のクラブ出演は始めたが、今一つ本格的な活動には至らなかった。

そこで、彼女が一念発起で始めたのが長年構想を温めていたビッグバンドであった。彼女の場合は、ビジネスとしてのビッグバンドではなく、彼女の書下ろし作品だけをやるリハーサルバンドであった。

自分の音楽の世界をビッグバンドと自分のピアノで表現する、まさにデュークエリントンがオーケストラで続けてきたのと同じコンセプトである。違いは、エリントンの片腕がビリーストレイホーンであったのに対して、秋吉敏子の場合は、サックス&フルートのルータバキンであった。
このタバキンのテナーとフルートがオーケストラ全体のアレンジの中でも、常に重要な位置を占めていった。エリントンは誰がどのようにプレーするかを思い浮かべて曲作りをしたという、秋吉敏子も同じアプローチであったように思う。

ロスは幸いにも若手の腕達者は集まりやすい環境であった。しかしお金にならないリハーサルバンドに人を集めるのは決して容易ではなかった。そこで一肌脱いだのが夫君のタバキン。ミュージシャン仲間に顔が広いタバキンが声を掛けて、早速リハーサルがスタートしたのが一年後の1973年。地元のクラブへの出演を経て、さらに一年後の1974年に初アルバム孤軍が制作された

制作したのは日本のレコード会社ビクター。プロデュースも日本の井坂氏が務めた。秋吉敏子という一応世に名の通ったミュージシャンであったが、そのビッグバンドが果たして世に受入れられるか、そしてアルバムにして商売になるかは分からなかった。
確かに、サドメルを始めとして、バディーリッチやメイナードファーガソンのビッグバンドは当時脚光を浴びていたが、内容は時流にのったブラスロック的な演奏でヒット曲が並ぶ。秋吉敏子のアプローチが受け入れられるかどうかはある種の賭けであった。しかし、当時はまだレコード会社が優れたミュージシャンの優れたアルバムを、リスクを負って世に出す使命を持っていた時代であった。

それから3年。毎年定期的にリリースされるアルバムは好評のうちに話題となり、この間の日本への凱旋ライブを含め短期間で5枚となっていた。最初は日本でリリースされただけであったが、アメリカでもリリースされ、ヨーロッパにも伝わり、徐々に秋吉敏子のビッグバンドはグローバルで、まずは評論家の間で話題となっていった。

すると、コンサートやジャズフェスティバルからもお呼びがかかる。そしてついにニューポートジャズフェスティバルからも出演要請がきた。主催者のジョージウェインは秋吉敏子が初めてアメリカの地を踏み、ボストンで留学生活を始めた時からの知己。ニューポートへの出演も特別に1時間半の枠を与えられての依頼であった。

ただし、ロスからニューヨークまでの旅費は自前ということであった。そもそもリハーサルオーケストラとして運営してきたオーケストラに蓄えがある訳でもなく、ビッグバンドゆえ人数も多く、さて困ったという時に助け舟を出したのは、またもや日本のレコード会社であった。
ライブアルバムを作る費用の一部として旅費を負担することになり、目出度く檜舞台に出演できることに。当時のレコード会社は多くのファンに支えられ、売上が伴うこともあり制作費も多く掛けられたということだろう。

このような経緯を経て、秋吉敏子のビッグバンドは無事ニューポートの舞台にも立ち、その模様はまたアルバムとして残すことができた。

こうなると、流れは順風満帆、その後も着実に秋吉敏子のビッグバンドは歩みを続ける。ダウンビートのクリティックポール、そして読者投票両方で第一位となったのは翌年1978年であった。アルバムInsightはJazz Album of The Yearにも選ばれ、サドジョーンズの去ったサドメルに替わって名実ともにNo,1のビッグバンドとなった。晴れてデュークエリントンオーケストラの後継バンドが生まれたと言っても過言ではないだろう。たまたま、ニューヨークでのニューポートジャズフェスティバルもこの年が最後。まさに時代の変わり目であった。

晩年は、レコーディングには必ずしも恵まれたとは言えなかったサドメル、一方で着実にレコーディングを続けられたToshiko-Tabackin Big Band。レコード会社の支えの違いが大きかったように思う。

昨今、CDの売上が益々減少しているという。音楽ビジネスで、デジタル化とネットの普及によってレコード・CDを販売するというモデルが崩れているというのは世界的な潮流である。それに代わってダウンロードのモデルが果たしてお金になっているのか?最近格差社会という言葉が合言葉のようになっている。あまり業界事情には詳しくないが、音楽の世界もごく一部のヒット曲と、その他大勢のインディーズ、自費制作に分かれてしまっているように思う。

最近、素晴らしいライブを聴く事が多いが、ミュージシャンがこの演奏を続けることを誰が保証し、後世においても残された演奏を聴けるように誰がするのか気になる。金儲けだけを目的とするビジネスモデルは早晩終わりを告げるとは思うのだが・・・。。

Toshiko Akiyoshi (p)
Lew Tabackin (ts,fl)
Steve Huffsteter (tp)
Bobby Shew (tp)
Richard Cooper (tp)
Mike Price (tp)
Bill Reichenbach (tb)
Charlie Loper (tb)
Rick Culver (tb)
Phil Teele (btb)
Tom Peterson (ts)
Gary Foster (as)
Dick Spencer (as)
Bevery Darke (bs)
Don Baldwin (b)
Peter Donald (ds)

All Songs Arranged by Toshiko Akiyoshi
Produced by Hiroshi Isaka
Recording Engineer : Dick Baxter
Recorded live at Avery Fisher Hall, Newport Jazz Festival on June 29, 1977




ライヴ・アット・ニューポート'77 (紙ジャケット仕様)
クリエーター情報なし
BMG JAPAN
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