Birth Of The Cool / Miles Davis Nonet
ジェリーマリガンのアレンジといえばマイルスの「クールの誕生」が有名だ。しかし、有名なアルバムだと演奏の中身はすぐに思い起こせても、他の情報も知っているつもりになって、実はあまり詳細を知らない事が多い。このクールの誕生もそんなアルバムの一枚だ。
先日、話に出たついでに久々に聴き返してみた。良く言えば耳の心地よいサウンドに、悪く言えば刺激のない平板な流れの中で、いつもあっと言う間に聴き終えてしまうアルバムだ。
まずは、このグループができた年を改めて知ってびっくり。戦後まもなく、自分がまだ生まれていない1948年に誕生している。レコーディングのためだけでなくロイヤルルーストにライブ出演していた。スタジオ録音は翌年になるがもちろんSPだ。曲が短いのもそのせいだろう。裏表で何枚かのSPがリリースされ、当然今のようなアルバムにもなっていなかったし、その時はクールの誕生などというアルバムタイトルもついていなかった。このアルバム形態になったのはしばらくしてからだ。。
ビッグバンド編成でもない大型コンボの編成。それにチューバやフレンチホルンが加わる。
確かに斬新なサウンドだ。何も、クールサウンドを作る事が目的ではなかっただろう。ホットなアドリブソロがクローズアップされている中で、反対にアレンジされた演奏を極めたいと思ったのだろうが、この演奏を聴いたファンはどのように感じていたのだろう。マイルス自身も、直前にはパーカーと一緒に演奏し初レコーディングをしたが、このグループでは全く違う試みをしている。
このサウンドを作り出したのは、ギルエバンスを中心に、ジョンルイスとジェリーマリガン、それにマイルスが加わっての共同作業だった。最初は誰がアレンジをしたかも正確には伝わっていなかったようだが、最後に譜面に起こしたのはジェリーマリガン。多くの曲を担当したそうだ。もちろん、バリトンサックスも演奏しソロの出番も多いが、やはり編曲で大きく活躍したようだ。
世間の動きに惑わされることなく、このようなアレンジをし、演奏をしたミュージシャン達も偉いが、ライブを行い、レコーディングの段取りをした関係者もまた偉いと思う。ピートルゴロがプロデューサーとなっているが、真相は???のようだ。マリガンのアレンジへの関わり方を含めて、まさにこの「クールサウンド」の誕生については、その後調査、解明が進んだという話を昔読んだ記憶があった。今度探してみよう。
マリガンだけでなく、このグループに参加したメンバーは、この後それぞれの道を歩む。マイルスばかりに日が当たるが、他のメンバーも錚々たるメンバーだ。それぞれがこのグループでの経験を生かして明らかに他のグループとは違うサウンドづくりにチャレンジしていった。
その後、ジョンルイスの作ったのがMJQ。そのクラシカルなサウンドはワン&オンリーだった。マリガンもチェットベイカーやブルックマイヤーとのカルテットでは、アレンジを重視したコラボプレーにチャレンジする。さらにマリガンは、ショーティーロジャースなど西海岸の面々に、大きな編成でのアレンジされたサウンドづくりを引き継ぐ。これがウェストコーストコーストジャズへ育つ。
トロンボーンのJ&Kの2人も参加していた。やはり2人はコラボとコンビネーションを大事にした単なるバトルチームでは無かった。リーコニッツもクールなトーンを生かして、独自の路線を歩く。
ドラムのマックスローチとケニークラークもしかり。2人ともどこか理性を感じさせる演奏だ。ケニークラークがサボイレーベルのサウンドづくりに果たした役割も大きかったように思う。
という意味でも、このアルバムはマイルスのアルバムというよりは、参加したメンバー人一人の出発点となるアルバムだと思う。
そして、時代を経てそれぞれがまた進化していった。このアルバムを作ったグループのメンバー達がジャズの歴史のある部分の原点となったのは間違いない。アンサンブル物が好きな自分にとっても、出発点の一枚だ。
ちょうどバップの萌芽期、モダンジャズの大きな動きがホットなソロ中心の演奏に流されそうになった時、反対の動きが起こるのもある種の世の必然であったのかもしれない。
たまたまその場にマイルスが居合わせたということだろう。
1. Move Denzil Best 2:35
2. Jeru Gerry Mulligan 3:10
3. Moon Dreams Chummy MacGregor / Johnny Mercer 3:21
4. Venus de Milo Gerry Mulligan 3:14
5. Budo Miles Davis / Bud Powell 2:34
6. Deception Miles Davis 2:50
7. Godchild George Wallington 3:12
8. Boplicity Cleo Henry 3:02
9. Rocker Gerry Mulligan 3:07
10. Israel Johnny Carisi 2:19
11. Rouge John Lewis 3:17
Walter Rivers Producer
Pete Rugolo Producer
Miles Davis (tp.Arr)
Gerry Mulligan (bs,arr)
Kai Winding (tb)
J.J. Johnson (tb)
Lee Konitz (as)
John Lewis (p.arr)
Gunther Schuller (frh)
Sandy Siegelstein (frh)
Billy Barber (tuba)
John Barber (tuba)
Al McKibbon (b)
Nelson Boyd (b)
Kenny Clarke (ds)
Max Roach (ds)
Recoreded in NYC, April 22, 1949 & March 9, 1950
ジェリーマリガンのアレンジといえばマイルスの「クールの誕生」が有名だ。しかし、有名なアルバムだと演奏の中身はすぐに思い起こせても、他の情報も知っているつもりになって、実はあまり詳細を知らない事が多い。このクールの誕生もそんなアルバムの一枚だ。
先日、話に出たついでに久々に聴き返してみた。良く言えば耳の心地よいサウンドに、悪く言えば刺激のない平板な流れの中で、いつもあっと言う間に聴き終えてしまうアルバムだ。
まずは、このグループができた年を改めて知ってびっくり。戦後まもなく、自分がまだ生まれていない1948年に誕生している。レコーディングのためだけでなくロイヤルルーストにライブ出演していた。スタジオ録音は翌年になるがもちろんSPだ。曲が短いのもそのせいだろう。裏表で何枚かのSPがリリースされ、当然今のようなアルバムにもなっていなかったし、その時はクールの誕生などというアルバムタイトルもついていなかった。このアルバム形態になったのはしばらくしてからだ。。
ビッグバンド編成でもない大型コンボの編成。それにチューバやフレンチホルンが加わる。
確かに斬新なサウンドだ。何も、クールサウンドを作る事が目的ではなかっただろう。ホットなアドリブソロがクローズアップされている中で、反対にアレンジされた演奏を極めたいと思ったのだろうが、この演奏を聴いたファンはどのように感じていたのだろう。マイルス自身も、直前にはパーカーと一緒に演奏し初レコーディングをしたが、このグループでは全く違う試みをしている。
このサウンドを作り出したのは、ギルエバンスを中心に、ジョンルイスとジェリーマリガン、それにマイルスが加わっての共同作業だった。最初は誰がアレンジをしたかも正確には伝わっていなかったようだが、最後に譜面に起こしたのはジェリーマリガン。多くの曲を担当したそうだ。もちろん、バリトンサックスも演奏しソロの出番も多いが、やはり編曲で大きく活躍したようだ。
世間の動きに惑わされることなく、このようなアレンジをし、演奏をしたミュージシャン達も偉いが、ライブを行い、レコーディングの段取りをした関係者もまた偉いと思う。ピートルゴロがプロデューサーとなっているが、真相は???のようだ。マリガンのアレンジへの関わり方を含めて、まさにこの「クールサウンド」の誕生については、その後調査、解明が進んだという話を昔読んだ記憶があった。今度探してみよう。
マリガンだけでなく、このグループに参加したメンバーは、この後それぞれの道を歩む。マイルスばかりに日が当たるが、他のメンバーも錚々たるメンバーだ。それぞれがこのグループでの経験を生かして明らかに他のグループとは違うサウンドづくりにチャレンジしていった。
その後、ジョンルイスの作ったのがMJQ。そのクラシカルなサウンドはワン&オンリーだった。マリガンもチェットベイカーやブルックマイヤーとのカルテットでは、アレンジを重視したコラボプレーにチャレンジする。さらにマリガンは、ショーティーロジャースなど西海岸の面々に、大きな編成でのアレンジされたサウンドづくりを引き継ぐ。これがウェストコーストコーストジャズへ育つ。
トロンボーンのJ&Kの2人も参加していた。やはり2人はコラボとコンビネーションを大事にした単なるバトルチームでは無かった。リーコニッツもクールなトーンを生かして、独自の路線を歩く。
ドラムのマックスローチとケニークラークもしかり。2人ともどこか理性を感じさせる演奏だ。ケニークラークがサボイレーベルのサウンドづくりに果たした役割も大きかったように思う。
という意味でも、このアルバムはマイルスのアルバムというよりは、参加したメンバー人一人の出発点となるアルバムだと思う。
そして、時代を経てそれぞれがまた進化していった。このアルバムを作ったグループのメンバー達がジャズの歴史のある部分の原点となったのは間違いない。アンサンブル物が好きな自分にとっても、出発点の一枚だ。
ちょうどバップの萌芽期、モダンジャズの大きな動きがホットなソロ中心の演奏に流されそうになった時、反対の動きが起こるのもある種の世の必然であったのかもしれない。
たまたまその場にマイルスが居合わせたということだろう。
1. Move Denzil Best 2:35
2. Jeru Gerry Mulligan 3:10
3. Moon Dreams Chummy MacGregor / Johnny Mercer 3:21
4. Venus de Milo Gerry Mulligan 3:14
5. Budo Miles Davis / Bud Powell 2:34
6. Deception Miles Davis 2:50
7. Godchild George Wallington 3:12
8. Boplicity Cleo Henry 3:02
9. Rocker Gerry Mulligan 3:07
10. Israel Johnny Carisi 2:19
11. Rouge John Lewis 3:17
Walter Rivers Producer
Pete Rugolo Producer
Miles Davis (tp.Arr)
Gerry Mulligan (bs,arr)
Kai Winding (tb)
J.J. Johnson (tb)
Lee Konitz (as)
John Lewis (p.arr)
Gunther Schuller (frh)
Sandy Siegelstein (frh)
Billy Barber (tuba)
John Barber (tuba)
Al McKibbon (b)
Nelson Boyd (b)
Kenny Clarke (ds)
Max Roach (ds)
Recoreded in NYC, April 22, 1949 & March 9, 1950
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