A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ペッパーアダムスがリーダーとなってスタートしたドナルドバードとのコンビであったが・・

2016-02-03 | PEPPER ADAMS
10 To 4 At The 5 Spot / Pepper Adams Quintet

ペッパーアダムスのアルバムの紹介はリーダーアルバム、サブリーダ―アルバムは大体終了し、サイドメンとして参加したアルバムを地道に拾い出している。
こんなアルバムにもという物もあるが、これは次回にして久々にこのリーダーアルバムを聴き直した。このアルバムはペッパーアダムスとドナルドバードのコンビの初レコーディングだが、ペッパーアダムスの軌跡を追ってみると色々な意味でエポックメーキングな出来事が集約されたアルバムであることが分かる。以前紹介したことがあるが、改めてこのアルバムを振り返ってみることにした。

ペッパーアダムスは1957年ダウンビート誌でバリトンサックスの新人賞を受賞し、西海岸で初のリーダーアルバムとなるMode盤、そして、パシフィックジャズの”Critic’s Choice”の2枚のアルバムを吹き込むと、その後活動の拠点をニューヨークに戻した。すぐ色々なレコーディングセッションやgigに引っ張り凧となったが、11月にはSavoyに3枚目のリーダーアルバム”The Cool Sound of Pepper Adams”を録音した。
暮れには、同郷のエルビンジョーンズと一緒にアパートを借り、ニューヨークでの拠点を確保し、年が明けても忙しい日々を続けることになる。

ドナルドバードとペッパーアダムスは同じデトロイト出身、地元では顔見知り同士であったが一緒に演奏したのはお互いニューヨークに来てからが初めてであった。最初のギグは1この1958年2月1日のカフェボヘミアでのセッションであった。このgigがその後のアダムスの活動を大きく変えることになる。
1週間後にもう一度カフェボヘミアで、そしてジョニーグリフョンのセッションにも一緒に参加したが、2人はファイブスポットに4日間続けて出演する機会を得る。

このファイブスポットは前年にできたばかりであったが、クラブというよりはジャズバーといった感じの、気軽に聴ける雰囲気のライブスポットであった。2人のコンビの演奏はなかなか好評で、そのまま6月まで続けて出演することになり、ハウスバンドとしてレギュラーグループとなってしまった。もちろんアダムスにとっては初めてのレギュラーグループであった。

当然、このグループの評判はニューヨークで広まり、リバーサイドレコードのオリンキープニュースの耳にも入った。この頃レコード業界には丁度ステレオ録音が広まっていた。リバーサイドではそれまでライブのステレオ録音を行ったことがなく、キープニュースはこのバード&アダムスクインテットの演奏をお試し録音する事になった。
実際に録音が行われたのがこの4月15日のセッション。グループとして2月にスタートして、一カ月以上一緒にやってきたので、5人の息もぴったり合った所でのレコーディングとなった。

その日の10時から翌朝4時まで行われた4セット25曲が丸々収録された。やっと終わったとアダムスとキープニュースが一休みしていた所に、エンジニアのRay Fowlerがやってきて、「実はマイクのコードが一本抜けていて、これまでの録音はNGとなってしまった」ことを伝える。慌ててもう1セット演奏したのがこのアルバムに収録されたものだそうだ。10時から4時までのすべてが録音されたのに、他の曲や別テイクが無い理由、アルバムの中で一曲がモノラル録音であるのはそのような事情だったようだ。

このアルバムでのピアノの調律が狂っているという話も良く聴くが、そもそもこのファイブスポットのピアノ自体が、演奏が始まる時には合っていても、セカンドセットが終わる頃には狂い出すという代物であったようだ。

このセッションに加わっていたのは、ドラムのエルビンジョーンズとベースのダグワトキンスが2人と同じデトロイト出身の仲間達。それにピアノにはボビーティモンズが加わってスタートした。出演期間が長期になると、ピアノのティモンズも他の仕事で参加できないことも多くなり、ドンフリードマン、トミーフラナガン、ローランドハナなどが交代で参加した。アダムスにとって初めての実質的なレギュラーグループであり、レギューラー出演の仕事をしたことになる。当時の新聞にもアダムスのグループと紹介されている

アダムスのとっては初のレギュラーグループであったが、この後ベニーグッドマンとの仕事が入りバードとはしばらく別行動になる。11月にニューヨークに戻り、12月にはバードのアルバム”Off To The Races”に参加するが、それ以降、2人のコンビの主導権は、特にブルーノートが絡むレコーディングではバードが主役となってしまう。偶然生まれた2人の初アルバムではあるが、ペッパーアダムスが主導権を持った数少ないアルバムだ。他の録音が残されていないのが、返す返すも残念だ。



1. Tis(Theme)                 Thad Jones
2. You're My Thrill               Clare-Gorney
3. The Long Two / Four              Donald Byrd
4. Hasting Street Bounce             Traditional
5. Yourna                    Donald Byrd

Pepper Adams (bs)
Donald Byrd (tp)
Bobby Timons (p)
Doug Watkins (b)
Elvin Jones (ds)

Procuced by Orin Keepnews
Engineer : Ray Fowler
Recorded at the FIVE SPOT CAFÉ, NEW YORK City, April 15.1958

10 to 4 at the 5 Spot
クリエーター情報なし
Ojc
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする