先日関西方面で仕事があった。帰路はそのついでについでに立ち寄った実家から東京へ帰るために空港へとタクシーに乗った。
タクシーの中から、外の景色を眺めながら、
「この辺りは今でこそ住宅が密集しているが、昔はのどかな田園風景が広がっていたものだなあ。」
などと想いをめぐらせた。昔は小さかった道路も様変わりし今では大きな幹線道路となっている。この道路沿いには、古い神社がある。そしてその神社には隣接した公園があった。公園は今でもあった。
子供の頃、この公園の池には河童が住んでいると信じていた。死んだ祖父からよく聞かされたからだ。
「ここの池には、河童が住んでるからな。近づいたらあかんで」
祖父と公園に行くたびに、祖父は脅かすように僕に言っていた。
「じいちゃん、河童って怖いのん?」
それは、大人から聞いたことは、無条件に信じていた時代だった。他の子供たちも同じだった。
「怖いでえ。急に池から出てきて、池の中に引っ張り込まれるんや。お前も気つけなあかん。そやから池には近づいたらあかんで」
この池の中には河童がいるのか・・・と思うと、水面の小さな波を河童がたてているような感覚に襲われ、祖父の影に隠れながらも、怖いもの見たさで池の水面から目が離せなかったものである・・・ほんとにいるのだろうか・・・と。
今となってはわかる。河童は確かににいたのだ。人間に似た容姿をもつずる賢い河童は、実は僕らを守り続けてきた。彼の存在によって子供達は池に近づくこともなかった。近づくことがあっても、恐る恐る近づいたものだ。そういやって、かつて河童は多くの子供たちを危険な池から遠ざける役割を演じていたのだ。
でも今では、恐れていた河童はもういない。そのかわりに、どのこ公園の池の周囲にも手入れのゆき届いた柵がもうけられている。
そして、子供達はもう河童の存在を忘れてしまった。
長い役割を終えた河童はどこか遠くへ行ってしまった。
前略 河童さん
その節はお世話になりました。
僕らも、すっかりおっさんになりました。
タクシーの中から、外の景色を眺めながら、
「この辺りは今でこそ住宅が密集しているが、昔はのどかな田園風景が広がっていたものだなあ。」
などと想いをめぐらせた。昔は小さかった道路も様変わりし今では大きな幹線道路となっている。この道路沿いには、古い神社がある。そしてその神社には隣接した公園があった。公園は今でもあった。
子供の頃、この公園の池には河童が住んでいると信じていた。死んだ祖父からよく聞かされたからだ。
「ここの池には、河童が住んでるからな。近づいたらあかんで」
祖父と公園に行くたびに、祖父は脅かすように僕に言っていた。
「じいちゃん、河童って怖いのん?」
それは、大人から聞いたことは、無条件に信じていた時代だった。他の子供たちも同じだった。
「怖いでえ。急に池から出てきて、池の中に引っ張り込まれるんや。お前も気つけなあかん。そやから池には近づいたらあかんで」
この池の中には河童がいるのか・・・と思うと、水面の小さな波を河童がたてているような感覚に襲われ、祖父の影に隠れながらも、怖いもの見たさで池の水面から目が離せなかったものである・・・ほんとにいるのだろうか・・・と。
今となってはわかる。河童は確かににいたのだ。人間に似た容姿をもつずる賢い河童は、実は僕らを守り続けてきた。彼の存在によって子供達は池に近づくこともなかった。近づくことがあっても、恐る恐る近づいたものだ。そういやって、かつて河童は多くの子供たちを危険な池から遠ざける役割を演じていたのだ。
でも今では、恐れていた河童はもういない。そのかわりに、どのこ公園の池の周囲にも手入れのゆき届いた柵がもうけられている。
そして、子供達はもう河童の存在を忘れてしまった。
長い役割を終えた河童はどこか遠くへ行ってしまった。
前略 河童さん
その節はお世話になりました。
僕らも、すっかりおっさんになりました。
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