北海道最北端で野鳥のチュウヒが絶滅危機!
周囲で進む風力発電開発が営巣地の環境に影響
湿地・草原の生態系の頂点に立つ猛禽類「チュウヒ」が絶滅の危機に瀕しているという報道を目にしました。再生可能エネルギー関連の事業が、国内最大のチュウヒの繁殖エリアである北海道北部に集中し、リスクを高めているとの指摘です。
◆繁殖数は国内のうち北海道だけで約8割。北海道稚内市や豊富町、幌延町にまたがるサロベツ原野は2万~2万4千ヘクタールの広さ。原野の中心には国内3番目の大きさを誇る6700ヘクタールの湿原もあり、渡り鳥たちには重要な繁殖地のひとつだ。その中には個体数が減少している絶滅危惧種のチュウヒの姿もある。警戒心が非常に強く、キツネなどの動物に襲われにくい湿地などを営巣地として好む。タカ科では国内で唯一、草原などの地上で繁殖する。
◆国内では1970年以降、チュウヒの生息エリアで開発が進んできた。営巣地を変えるなど適応する個体もあったが、チュウヒが好む湿地が乾燥化などによる植生変化で徐々に失われているだけでなく、風力発電事業の工事車両が営巣地の近くまで接近し、警戒したチュウヒが巣を放棄するケースがある。その様子を見ていたという豊富町の住民は「工事業者の対応は車のクラクション禁止を呼びかける看板設置のみ。資材を運んだ大型車が何台も行き交い、配慮しているようには見えなかった。」と語る。
◆チュウヒは風車の羽根よりも低い高さで飛ぶ(※1)ことから、衝突事故などの危険性は低いとよく言われるが、風車の数が増えると繁殖エリアに接近する可能性も高まるだけに「営巣地への影響が懸念される」と日本野鳥の会の研究員は言う。北海道が公表している宗谷管内の風力発電施設は2024年3月時点で206基。建設中や環境アセス中の計画分を加えると、将来的には最大777基まで増える可能性があり、巣を放棄するリスクの高まりは避けられない。
【チュウヒ】タカ科の猛禽類(写真:ⒸT.ITOYAMA)
絶滅危惧ⅠB類(近い将来での絶滅の危険性が高い種)、種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)指定種(※2)
チュウヒの繁殖つがい数については、環境省や日本野鳥の会がチュウヒの保護を進めていく中で、サロベツ原野周辺で多くのチュウヒが繁殖していることが確認されました。2018年から2020年まで北海道全域での調査と本州での聞き取りを実施した結果、チュウヒは北海道で117つがい、本州以南で19つがい、計136つがいが繁殖していると推定されました。2015年当時の環境省推定結果に加味して考えると、30前後の減少が推測できるようです。(日本野鳥の会「野鳥誌」2021年1月号より)
(※1)風力発電事業者は「チュウヒは風車の回転範囲より低く飛ぶので影響は小さい(羽根に弾き飛ばされる可能性は低い)」と、決まりきったように言います(そう言わなければ影響は小さいと評価できないからでしょう)。確かに採餌の際は、草原の草丈より少し高いところを飛び、餌のネズミなどを探し回りますが、私たちの観察においては、しばしば風車の回転範囲の高さを飛ぶチュウヒを確認しています。特に、春先のオスメスの求愛飛翔は、回転範囲の上部の高さで飛翔することも多く、事業者の主張は適切ではありません。日本野鳥の会が環境省に提出した意見でも、「営巣地と餌場の間を飛翔する時は風車の回転範囲下部(20~30m)を飛ぶ」、また「チュウヒの幼鳥を襲う外敵を追い払う際には、風車の回転範囲上部を飛ぶ」としています。埋立地や草原での風力発電設置が増えている今、人知れずチュウヒも風車に弾き飛ばされているのではないかと思っています。残念ながら。
(※2)「種の保存法」:第2条には国および地方公共団体の責務が記載されています。「種の保存のための施策を策定し、施策を実施すること」と。義務付けはされていないようなので、これを遵守し、実効性のある施策を実施している自治体があることは聞いたことがありません。なので、チュウヒのつがい数が増えないのではないかとも....。実効性のあるチュウヒ保護のためには、少なくともチュウヒが生息している場所の近くには風車設置は禁止するくらいの法令を作って欲しいものです。設置禁止範囲は何キロ四方がいいのかは、識者、専門家に決めてもらうとしてです。
ヨーロッパでは100羽以上のチュウヒが風車に衝突死している!
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