トランプはふたつの主張を大統領就任後数ヶ月のあいだ、続けた。
ひとつは、
「500万票の不正投票がクリントンに流れた」というものであり、
もうひとつは
「病んだ邪悪なオバマが自分の事務所を盗聴した」
というものである。
......。
アメリカ政治におけるひとつの手段としての陰謀論は、アメリカという国と同じくらい長い歴史を持っている。
自分の行動、思考、衝動の理由を自分の敵に帰する行為は、
投影と呼ばれる心理的防衛機制である。
陰謀論は、厄介な予想外の新事実を、それが帳消しにされるような非難という霧の中に覆い隠す政治的防衛機制である。
先行きが見通せない時代(見通せる時代の方が少ないので)に怯える人々は、安心できる確かなものを探し、それにかたくなにしがみつく。
それも、特にに不愉快な真実に直面したときにそうなる。
陰謀論では、どんなことにも意図が在り、目的が在り、何もかもがその他の事柄すべてと繋がっているとされる。
また、外見はまったく当てにならず、人は皆悪意を持ち、誰かが責めを負うべきだと考える。
さらに陰謀論は釈明や言い訳を与え、悪者を生み、行動を促す呼びかけとなる。
さらに悪いことに、陰謀論は、都合の良い証拠に支えられ、現実による反証にはまったく影響を受けないのである。
1960年代に、リチャード・ホフスタッターが
『アメリカ政治におけるパラノイア的スタイル( The Paranoid Style in American Politics)』という書籍を著した。
そこでホフスタッターは、
「政治における影響力としてのパラノイア的スタイルという概念も、精神を深く病んだ者だけに当てはめられるのならば、現代的意味や歴史的価値をほとんど持たない。
そうした現象を意味あるものにするのは、おおよそ正常と言える人間によるパラノイア的な表現形式の使い方である」
と述べている。
ホフスタッター風に言えば、
コーク兄弟(≒おおよそ正常と言える人間)は、トランプをひどく嫌っているが、入念に選ばれた取り巻きを使って、トランプ政権を取り込むことに成功した(≒パラノイア的な表現形式の使い方)のではないだろうか。
トランプがクレイジーであると決めつけている人は、このような状況を見落としている。
そうした人々は、トランプの発言やツイートが確証だと考えている。
なぜなら、裏付ける信頼に足る証拠がなかったりしたとしても、トランプは自らの主張を力説するのだから、クレイジーに違いないと思っているからだ。
例えば、トランプは就任後の数ヶ月間、大統領選挙で彼にとって不利になるような不正が行われたとされる2つの事例にこだわっていた。
それが、冒頭に挙げたトランプのふたつの主張である。
トランプが困った状況になると陰謀論に基づく口実を探し、それをまるごと飲み込んでから、すべてを吐き出す。
これは危険で卑劣な行為だが、
クレイジーでもなければ、妄想的でもない。
妄想とは、非現実の突飛な信念であり
「その人だけの特有のもので、当人が困った状況に陥る」ものである。
しかし、有権者の多くが、ある突飛な信念に賛同し、その人を大統領に選んだとしたら、それは個人の妄想では済まなくなるのではないだろうか。
広く知れ渡り、多額の資金がつぎ込まれた陰謀論に対抗する唯一の希望は、ひるまずに声を上げられる報道の自由である。
だからこそ、メディアはトランプにとって(もしかすると、ある意味、最大の)「野党」なのである。
アメリカの民主主義を守るふたつの砦が在るとしたら、
報道の自由と正義を守る裁判所であろう。
この2つはトランプが最も激しく攻撃している対象である。
トランプの数あるツイートの中でそれを如実に表しているのが、
「フェイクニュースメディア(落ち目のnytimes、NBCNews、ABC、CBS、CNN)は私の敵ではない。アメリカ国民の敵だ!」
(→カッコ内のメディアの@表記は省略しました)
というものである。
さらにそれに続くツイートでは、
「1人の判事が我が国をこのような危機にさらすとは信じられない。何かあったら、その判事と司法制度のせいだ。
移民の流入は続いている。最悪だ!」
このツイートは、イスラム諸国からの入国を禁止することの合憲性を疑問視する裁判所の判断に反応したものだ。
さらに重要な点は、
裁判所には、彼の行動を裁く権利がないことをトランプが主張していることである。
その主張の根拠は、トランプが国家の安全という、裁判所より高い価値のものを守っていることだそうである。
つまり、トランプはどう転んでも、国家の安全を理由に、独裁的な権力を手にすることが出来る。
また、憲法を尊重しない彼の横暴さに裁判所が歯止めをかければ、トランプではなく裁判所が、テロ行為の責めを負うことになるのである。
そうなれば、トランプは、非常事態宣言のもとに権力を行使できるという構造になってしまっているように思う。
私たちが、世界における民主主義がいつまでも安泰だと信じるためには、アメリカを含む世界の民主主義国家の多くで復活しつつある、反民主主義の傾向に目を瞑らなければならないのであろうか。
トランプ政権やトランプ政権再来の予感が生み出す混乱は、
民主主義がこれ以上機能せず、その結果生まれた政治の空白を独裁者がぴったりのタイミングで埋めるという、
たぶん多くの人々が(少なくとも私は)最も恐れていることを現実にしてしまいはしないだろうか。
そうなってしまう可能性を今の世界が十二分に秘めていることについて私は戦慄を覚えざるを得ないのである。
ここまで、読んでくださり、ありがとうございます。
『出エジプト記』に
「父祖の罪は、子、孫に3代、4代までも問われる」
という、ちょっとギクッとすることばが在ります。
いつか、将来世代から、
「トランプやプーチンが世界にいたとき、あんた、何をやっていたの?」と訊かれたら、キツいだろうなあ、と思いながら、真剣に描いているつもりです^_^;
「ほんの些細なことしか出来ないからといって、何もしなかった者ほど、大きな過ちを犯した者はいない」
というエドマンド・バークの大好きな言葉も支えにしています。
昔の人や偉い人はスゴいことを言ったものだなあー、と思います、そのままグサッと心に刺さることを言うんですもん( ^_^)
今日から晴れが続きそうです。
寒暖差に気をつけたいですね。
今日も頑張りすぎず、頑張りたいですね。
では、また、次回。
いつもこのシリーズを楽しみにしています。
僕の個人的意見はこのシリーズが終わってから、自分のブログに書くと決めていますが、内容はもうほとんど固まっています。
なぜなら僕の感じていることをことごとくようこさんが立証してくれているからです。
それよりも寒い日が続いています、お体を大切にお過ごし下さい。
おはようございます。
読んでくださりありがとうございます。
まだまだ寒いですね。
amocla91さんも体調に気をつけて下さいね!
お互い毎日を頑張りすぎず、頑張りたいですね( ^_^)
彼の発言こそ「フェイク」なのになあ。
裁判所に対する強気発言には唖然としますが、
yoko-2-1さんの解説を読んで納得しました。
香川県は気持ちいい天気!
ようこさんところはどうですか?
寒い日が続きますが、
お互い体調には気をつけて
今週を乗り切っていきましょうね😄
ステキな一日を☆★☆
テル
おはようございます。
コメントありがとうございます( ^_^)
トランプ氏のメディアや裁判所に対する発言には唖然としますよね。
はじめて聞いたとき、聞き間違えかと思ったことを覚えています^_^;
読んでくださりありがとうございます( ^_^)
おはようございます。
おかげさまで体調は良くなっています( ^_^)
テルさんも体調に気をつけて下さいね!
いつも温かい素敵なご投稿ありがとうございます!!いつも楽しみに拝読させていただいております( ^_^)
陰謀論をなぜ信じてしまうのか?本当におっしゃる通りだと思います。
加えて
人は安心よりも不安を見つけやすい習性があります。それは自然の脅威の中で自分の身の安全を守るためで、必要なものですが、とりあえず安全な世界においても不安に注目してしまいます。
インターネットは、その習性を遺憾なく発揮させて、増幅し、強化し、連携しやすくしていますね。
いわば不安の連携というものがあちこちで湧き上がっているように思えます。
感情は良くも悪しくも強いほうが、現実世界では勝って行く…。
第二次世界大戦で負けきった時に大きく民主化に移動できたのは、安心な世界への希求でした。今はそれよりも、先の見えない不安への感情が強いということ。
それも世界的に…。
それを利用する者に引っかかってはいけない。というだけでは不十分でしょう。
安心(平和)への感情、情熱、情動が必要だと考えます。
読んでくださりありがとうございます。
また、コメントありがとうございます。
仰るとおり、安心(平和)のための情熱や感情そして情動が必要、ですよね。
音楽も、大切な平和のための架け橋となりますよね( ^_^)
気になる問題点は....
🔲ひるまずに声を上げられる報道の自由?
一般庶民は陰でコソコソと批判的な意見を喋る。それが拡大・拡散できるだけの能力があるか?命まで張って頑張る人は殆どいないのが現実です。
例えば、香港の自由を獲得しようと努力している「民主活動家=周庭女史」の行動は素晴らしいと評価します。ですが、実態はどうか?世界が変わったか?中国は依然として変化しないのが現実です。
やらないよりはやった方が良い。しかし、やったからと言って変わらないのは何故か?
簡単に言えば、どれほど言論で吠えてみても効果は殆ど感じられないのは非常に残念です。
では、より具体的にどうすると良いか?それはデモ如きでは解決できない。あるとすれば「クーデター」だろうと思います。クーデターとは国家の軍事力を掌握しないと言論では勝てないという欠点があります。では、誰がやるかです。これが明確でないと平和と民主主義の成果は得られないと思います。
🔲多額の資金がつぎ込まれた陰謀論
世の中にはガセネタが多い。特にマスコミというのは非常に偏っていて何処かに民衆を「誘導」させる道具にすぎません。ここで問題なのは、陰謀論だと言っている判断材料は何か?殆どの場合は、権威・学識・有識者などという怪しい人物の解説を聞きながら判断する場合が多い?この方々は本当に正論なのかを判断するのは「個人」です。最も面倒なのがこの「個人」です。自分で判断できないから「他人の言葉に左右され」時としてはオウム真理教の様なマインドコントロールに陥ると見境が無くなる。一言でいえば、個人とは如何に脆い物かです。
🔲裁判での判決の判事と司法制度
いったい彼等は何を基準に判決を出すのか?常に公平で公正な判断が出来る人材が判事なのか?この点は非常に曖昧で、日本の場合は持ち回りの権力争いの中で決定します。一言でいえば、彼らの実績、出自、思想的な中庸を持っている人財なのかを「誰が判定」しているのか?現実の世界では、分析もしていないから世の中で不思議な判決が出ています。これを誰も正すことが出来ないから世の中は混乱します。結論を言えば、裁判及び裁判官を信頼するなというのが正しい。
🔲アメリカを含む世界の民主主義国家
米国は民主主義国家なのか?答えは「NO」です。そもそもが世界に民主主義国家というのは存在しないことから出発しないと間違いが多くなります。要は、人間という生き物を「性善説」で語る人々は大きく間違っていることに気付かない人は多い?これが、世の中で増産・拡散・拡大されている為に世の中は良くなりません。ですが、「悪法も法なり」ですから文句を言ってみても選択の余地はなく、その環境の中でより良く行き延びるしか術がない。これが現実だろうと思います。特に酷いのがマスコミのガセネタに振り回されない事が大事だと言えます。
読んでくださりありがとうございます。
難しい問題は山積ですね。
ただ、難しい問題を難しいからと何もしないよりは、問題があることを認識し、問題の構造を考えてみることも意味深いように、私は、思います。