何が「正常」で、何が「異常」を引き起こすのか、
という問いは、人類の夜明けからつきまとっている問いである。
しかし、私たちの祖先たちはその時代その時代において十分に納得できる柔軟な答えを見つけてきた。
確かに、現在の私たちから見ると、素晴らしい直感を感じさせる答えもあれば、愚かに思える答えもあるが、これらの答えを出す過程や背景など、過去に少し寄り道すれば、現在を理解し、未来の誤りを避けることに役立つはずだと私は、考える。
「正常」と「精神疾患」は苛立たしいまでに捉え難い。
なぜなら、(私たちに線など引けるのか?で描いてきたように)明白で判然とした定義はどうしても出来ないからである。
ただ、精神医学がゆるやかな境界線を容易く超えて膨張するに従って「正常」の領域は急速に縮小している。
例えば、
子どもが癇癪を起こすのは、成長の過程なのか、それとも双極性障害の徴候なのか?
自分が経験しているのは、よくある不安と悲しみなのか、それとも全般的不安障害なのか?
人の顔や事実を思い出せなければアルツハイマー病を心配しなければならないのか?
私が繰り返しになるが、言いたいのは、社会の期待になかなか応えられないからといって、眼の前の問題のすべてに精神疾患のレッテルを貼るべきではないということである。
これには、私自身が、かつて安直にそうしてしまい、時間と人間関係と健康を失ったことへの後悔と反省の念がたっぷり含まれている。
ところで、
DSM-5の作成者たちの良識によってきわどいところで、棚上げにされた
混合性不安抑うつ障害(以下MAD)はという診断がある。
MADは、生きていれば避けて通れないありふれた、そこにある、いっときの悲しみや心配をも医療の対象にしようとする試みであると言えるかもしれない。
なぜなら、その基準はあまりに定めやすく、突き詰めれば、誰もが該当することになりかねないものだからだ。
例えば、失業、離婚、病気、金銭トラブルなどの不幸な出来事へのごく当然の反応が、精神疾患に変えられてしまうのである。
驚くにはあたらないが、このMADは不安定な診断であり、予測する力はないに等しい。
1年後に調査すれば、このレッテルを貼られた人たちの大部分は回復して全く診断を必要としていないか、もっと信頼性の高い別の診断を受けているかのどちらかであろう。
無意味な診断に飛びつくより、注意深く見守る方が賢明で安全な方策であることをよく示しているケースである。
ただひとつ、MADから確実に予測できることは、MADのようにあまりにも基準が定めやすく、突き詰めれば誰もが該当するような新しい診断は、マーケティングの巨大かつ強大な可能性を持ってあるということだ。
私たちの人生に付き物の問題を精神疾患にすれば、製薬企業にとって絶好の金脈になる。
つまり、製薬企業にとっては巨大な市場と偽薬反応という申し分ない組み合わせが得られる、というわけである。
(前に診断インフレについてのあたりで同様なことを描いているが)もし、MADがDSM-5に採用されていたら、MADは、瞬く間にアメリカではよく見られる精神疾患になり、すでに11%もの人々が服用している抗うつ薬は新たに大きな後押しを得ていたであろう。ぞっとする話である。
医学の父とも呼ばれるヒポクラテスの
「何より害をなすなかれ」
ということばが、精神医学が適切に用いられず、応分の範囲を超えたところにまで用いられているときに、今一度、顧みられるようになることを、私は、願っている。
ここまで、読んでくださり、ありがとうございます。
明日から、数日間不定期更新になります。
そのあと昨年の年末に描いていたシリーズに戻すのか、どうするのか、まだ未定です^_^;
こんな私ですが、また、よろしくお願いいたします( ^_^)
今日も、頑張り過ぎず、頑張りたいですね。
では、また、次回。
コメントありがとうございます。
参考になる連載と評価されることは嬉しいです( ^_^)
コンメントとリアクションどうもありがとうございました。
僕の偏った意見満載の日記を読んで下さってありがとうございます。
ようこさんのブログは勉強になってかつ面白いです。
正常と異常の線引きシリーズが終わって次は何の話題か楽しみにしています。
寒い日が続いていますが、風邪など引かぬように暖かくしてお過ごし下さい。
こんにちは。
(ネットに疎い私が、はじめて返信を使いました^_^;)
いつも素敵な記事をありがとうございます( ^_^)
今年もよろしくお願いします( ^_^)
イタリア精神医療とそのACTについて(cf:トリエステ精神病院)、描けるように頑張っていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします(*^^*)
元気をもらえてますよ( ^_^)
こんにちは。
(ネットに疎い私が、はじめて返信を使いました^_^;)
いつも素敵な記事をありがとうございます( ^_^)
今年もよろしくお願いします( ^_^)
イタリア精神医療とそのACTについて(cf:トリエステ精神病院)、描けるように頑張っていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします(*^^*)
トリエステ病院の記事、次の話題にしていただけるのであればますます楽しみです。
いつもありがとうございます。感謝感激です。
私自体の病歴が基なので時間がかかりますが(半年~1年をかけて)描かせていただきたく思います。
私自身、ずっと悩んでいたので、本当にゆっくりですがイタリア精神医療(トリエステ精神病院)について描かせていただくので、また、ご助言お願いいたします( ^_^)