「拝復
素敵な手紙をありがとう。
修士論文の梶井基次郎の『檸檬』の話、とても面白かったですよ。
私も、大学時代には、シュールレアリズムと実存主義に傾倒し、アンドレブルトンとサルトル、メルロポンティの本などを読んでいました。懐かしい思い出です。」
とその手紙は、始まっていた。
「火車」(宮部みゆき)のモデルになった先生から紹介されたからとはいえ、よく、私の話など、聴いてくれたものだと、今では思う。
手紙はこう、続く。
「今の日本の社会では、「外的評価に択われない自己」を自分の中にしっかりと持って、自己を肯定して前向きに生きてゆくこと自体が、とても難しくなっていますね。
小澤さんの文章を読ませていただくと、小澤さんには、人から、言われたことに影響されないで、この難しいことがかならず、成し遂げられるように思いました。そのことと「ひとの支えなしでは生きてゆけない」ということは決して矛盾しないと思います。どうか、自分の生きる途を見つけてください。そして、歩み続けてください。」
そのあと、星空と、それこそスターである先生の謙遜が続くのですが、この手紙を戴いて数年、頑張りすぎず、頑張りたい、と、決意を新たにしている。