おのぼりさんの浅草

　もうねえ、地震、水害、噴火……と、
いつなにに巻き込まれるかわかったものではない
世の中なんだけど、だからこそ悔いがないよう、
し残したことは体が動く内にしておかないと……
と、大志ならぬ小志を幾つか抱えた私は、そのひとつ、
「浅草でレビューを観てすきやきを食べる」
という望みをようやく達成することができた。

　ほんとは５月に実現するはずだったのだ。
　その直前、私は仕事の外出で足首骨折
という災難に見舞われた。
　こともあろうに、場所は浅草。
　スカイツリーを恨めしく見上げながら泣いて帰った。

　あれから４ヶ月。
　友人の福井さんとヒーちゃんが付き合ってくれて
ついに実現！

　まずは第一目的から。
　６０年代のヒットポップス、歌謡を
歌って踊るという虎姫一座のレビュー！



　幕開けで「ウエストサイドストーリー」の「クール」が
流れたとたん、一人で家出して東京へ出てきた
１４歳の時点に、私はタイムスリップ。
　こっそり観に行ったあの映画が教えてくれたのだ。
　人生はエキサイティング。飛び出して正解だったんだよ、と。

　若い座員達によって次々と繰り出される６０年代の世界。
　すっかり酔わせてもらったが、長くなるので
その感慨はまたいつか……。

　レビューの後は、さあ、町に繰りだそう……って、
人が少ないじゃん、と思われるだろうが
賑やかな通りは写真に人の顔がはっきり写り込んでるし、
私は適当にモザイクをかけたりするワザを持たないしで、
まあとりあえず静かな通りを。
　ほんとは凄まじくにぎやかでしたよ、日曜日だもん！


　刷毛や箒の店。


　パフォーマー。
　銅像じゃない、動きます。投げ銭してきました。


　小さい頃、紙芝居のおじさんが定期的にやってきた。
　私はおこづかいを持っていなかったけど、
おじさんはいつもタダで観せてくれた。
　そのかわり、毎度、私をぎゅっと抱きしめた。
　ひょっとして、したたかに「女」をやってたのかも。
　幼児のくせに。
　

　「あ、ビッグダディだ！」と叫んで、ヒーちゃんが駆けだした。
　何度も結婚、離婚した子だくさんのおじさん。
　ここでマッサージの店を出している。

　「誰それ？　興味ないし」
　と言いながらも、ヒーちゃんに付き合う福井さん。


　ヒーちゃん、うっとり。


　浴衣の女性も多かった。
　どことなし、着こなしやお行儀が昔の女性とは違うけど。


　浅草寺で「絶対、ここのは当たるから！」と二人に
そそのかされ、いやな予感にかられながら引いたお神籤。
　案の定、私だけ「凶」。
　いいよ、いばらの道は慣れてるから。


　前からここに入ってみたかった、と言い、
福井さんは一人で浅草観音温泉へ。


　私とヒーちゃんは、まあ、こんなことして遊んでたわけだが。


　たった１５分くらいで出てきて、風呂上がりの
牛乳を飲み干した福井さんと合流。
　さあ、いよいよ、すきやきだ！

　
　外国人も思わず覗き込む、すきやきの「今半」。
　ここは別館で、お値段が高めだそうな。


　で、私達は庶民的な本店へ行き、お手頃値段の
すきやきセットをいただく。


　たっぷり遊んだのに、食べ終えて外へ出るとまだ明るい。
　でも、それぞれ柏や横浜へ戻らなきゃいけない身。
　「このごろは電車も新幹線もよく止まるから、
無事に帰り着いたら報告し合おうね」と約束し
帰路についたのでした。

　ヒーちゃんがくれた「桃ジュース」。
　福井さんがくれた、桃模様のボックス入りフチ子さん。
私の桃グッズ収集を、二人とも覚えていてくれる。
　やさしいねえ。