私はちょうど朝御飯を食べ終えたところ。
こんな早い時間に電話があるのは珍しい。
受話器を取ったら、長野に住む画家の友人からだった。
「ねえ、共感覚って知ってる?」
「知ってるわよ」
「ええ、なんで知ってるの? 私は聞いたばかりなのよ、その言葉。
びっくりしたから教えたげようと思って」
いやいや、私も偉そうなことは言えない。
最近になって、若いアーチストの友人、安藤ニキさんの
ブログで知ったのだ。
簡単に言ってしまうと、共感覚とは通常の人が持っていない感覚のこと。
ある種の人だけが、持って生まれるもので、ニキさんの場合は、
耳にした音楽が色や形となって見えるらしい。
レオナルド・ダ・ヴィンチやリムスキー・コルサコフ、
ボードレールなども、この共感覚の持ち主だったという。
この世にそういうものがあること、しかもいま話している相手が
その共感覚の持ち主だと知り、画家の友人はぎょうてんしたのだ。
それで急ぎ、好奇心の強い私に電話をしたという。
「羨ましいなあ、人に見えない色や形が見えるなんて」
友人は溜息と共に言った。画家なら誰でもそう思うだろう。
「でね、その人はね、アスペ……なんとかでもあるんですって」
「アスペルガー?」
「わあ、なんでその言葉まで知ってるの? 私は初めて聞いたのよ!」
「物書きは雑学に長けてるのよ」
じつはアスペルガーもニキさんのブログに詳しい。
これも生まれ持った特殊な感性で、おそらく一般社会では
生きづらいことのほうが多いだろう。
アスペルガーについては私も個人的に思い入れがあるので、
ニキさんに会う前から知っていた。
自分と異なる感性、感覚の持ち主に会うと、人は本能的に
不安や恐怖を覚える。自分には理解できないから、排除しようと
さえする。
せっかく素晴らしい才能を持って生まれたのに、アスペルガー
の人達は周囲の理解を得られず、いじめにあったりして
引きこもってしまうことも多いのだ。
そのあたりのことを、ニキさんは非常にわかりやすく、正直に
綴っている。彼女は文章の感覚も素晴らしい。
実際に会って話しても、いまどきの若者みたいに、語尾を
だらしなくのばすような話し方をしない。
なかなか「。」が出てこない喋り方もしない。
じつにきちんとした日本語を使う。
もしかするとこれは、世間と折り合いがつかず、自分だけの世界に
引きこもっていた期間が長かったおかげかもしれない。
ちなみに、彼女のブログによると、アスペルガーと共感覚は
必ずしも連動するものではないらしい。
ニキさんもこの特殊な感性、特殊な能力を持って生まれたが故に
子供の頃から苦しんだという。
しかし昨年あたりから、まるで大きなくす玉が割れて金銀の紙吹雪が
舞いだすかのように、彼女は躍り出た。
個展やグループ展などを旺盛にこなし、きらきらと輝いている。
溢れるように語り始めている。
この世には美しい「非常識」もあるのだということを、
私も、もっと多くの人に知ってもらいたいと思う。
電話を終えてから、ニキさんのブログのURLをメールで友人に送った。
こちらがその「ブルガダイス絵日記」
http://niki200705.blog.fc2.com/
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冬桃
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探求者ニキ
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