二次創作の「オン」と「オフ」とで比較しているのですが、どちらかの優劣を競っているわけではありません、あしからず。向いているか、いないか、の話。要するに、お祭りイベント参加が好きか、そうでないか、の違いではないでしょうか。そこにあるのは、学園祭で出店したり、出し物を企画したり、皆でお揃いのTシャツをプリントしたりする、あの楽しさです。「同人」というといかがわしいニュアンスが被せられるのですが、ほんらいは、同好の士という意味ですよね。
家族や知人、仕事の関係者に二次創作していることをバラされたくない人は、絶対にオフには出てきませんし。独り自分で書いたものにイヒヒとか笑っているだけで満足できるお手軽なひとは、オンで済ませることが多い。締切りがないので、制限がないぶん、オン活動者はどうしても更新が気ままになり、未完成のまま放置することも多くなりがちです。私が、そうです(殴)。
オフ活動者のほうが、たいがい、注目されやすいのは結果がかたちに残りやすいからでしょう。ただし、コミケに当選したのに原稿を落としたり、出版しても途中から手抜きしたりすると、クレームがくることもあるようです。新刊を出せる余裕があるのに落選したサークルや、待ち望んでいたファンからすれば、不平不満が募るし、信頼を失います。SNSの誘惑を断ち切る意思が必要ですね…。
最近は、とくにアニメやゲーム化された作品になると、原作者や出版社、製作者委員会が同人マーケットの動向に注目するきらいがありますね。サークルの参加数で人気の衰退度がわかってしまいますし。絵描きの同人屋さんとして実力が認められると、公式認定のアンソロジーへの寄稿やスピンオフ作品などへ声をかけられて、商業デビューを果たすひとも少なからずいます。このブログでレヴュー紹介している原作物の著者でも、もともと同人作家だった、もしくはプロながら継続中の人もいます。アニメ化された原作の番外編や資料などを、大人の事情(笑)とやらで出版できないので、コミケで有償もしくは無償で頒布することもあります。
一部の同人屋さんの素行がしばしば問題視されてもいるのですが、小規模の印刷業者にとってはいいお得意様になっているのだそう。対応のいい印刷会社さんは、同人活動家たちの口コミで人気を得ているので、コミケ前になると予約がいっぱいなのだとか。同人マーケットはいまや中国でも開催されるぐらい巨大市場なのだそうですが、日本では幼女への性犯罪の犯行手口に同人誌の漫画を参照した事件で、その同人誌の作者が警察から呼び出しを受けるという事例もありましたね。べつに作者が犯罪を助長したくて描いてなくとも、そうなることはある。
余談ですが、少々、私的な聞き苦しい話をします。
学生時代、二次創作の同人誌を出さないかと誘われたことがあります。当時、絶大な人気を誇るアニメ作品が好きで、合作でイラストを描いてアニメ雑誌へ投稿したことがある友人の一人に。合作もしくはこの友人個人のイラストは採用されたことがなく、しかも、ふたりとも漫画なんて描いたこともない。一枚絵が描ければストーリー漫画ができあがるってもんでもなし。私が文通で、好きなアニメの四コマネタを送り付けていたので、売ればお金になるとでも思われたのかどうか。もちろん夢だけに終わりましたが、出来上がっていたら黒歴史もいいところですね(笑)。経済的に自立できていない身分で、お金のかかる同人活動は控えたほうがいいわけです。
合同誌などを出しても参加者が締切にルーズだったり、売上の分配や印刷料金の支払いでトラブルになったりで、けっきょく個人だけのサークル活動になっていくケースが、近年多いようです。ベテランの同人創作者が未経験者を誘ってカモにしていることもありうるのかも。ユーチューバーやアイドルと同様、人気絵師さんとしてお兄ちゃん、お姉ちゃんが輝いてみえて、お子様がたの憧れにもなっているんでしょう。誰かと共同で本を出すなら、収支を明らかにして、作業分担や金銭の負担割合はきれいに話をつけておいたほうがいいですね。ネットで知り合ったばかりで素性を知らないし、人柄もわからない人といきなり組まない方がいいでしょう。犯罪に巻き込まれる可能性もありえますから。
私の場合、自分の文章が売り物ではないのですが印刷物になるのは、論文掲載の研究誌や学内刊行物、商社でのカタログ企画編集でやってきましたので、もういいかな感があります。期限があるからこそ集中できたり、打ちあわせ会議があって他者の意見で違った視点に気付いたりするのも大事。それが楽しめるうちはいいのですが…。
つまるところ、二次創作のオフライン活動は、創作の真似ごとをするために、自分が自分の製作費にお金を払うものです。
同人誌で儲けているひともいるかもしれませんがひと握り。ほとんどの人は経費を差し引いたら残らないでしょう。儲からないのに、なぜ続けているかといえば、そこに彼ら彼女らなりの、人生上の充足感があるからとしか言えません。お金をかけた道楽だからこそ、誰かに媚びたくないともいえるのかも。お金をかけてしまうから、もっと評価されてほしい、努力を認めてほしい、という欲に負けそうになってしまいます。そして、苦しいと思ってしまうと、その創作にかけた時間も情熱も無駄になってしまいます。生みの苦しみというのは、他人にはなかなか理解されないものなのです。それが他人さまのつくった設定を借りた二次創作ならば、なおさらに。
さて、私は「オン」だけの人なので、これから二次創作について語る場合には、原則的にオンライン活動のみに絞って言及することが多くなります。同人活動について知りたい方は、ネット上にウィキペディア的なお知恵拝借サイトがあります。
ところで、オン専門の二次創作をすでに十数年行っている身として驚いたことは。
すでに完結から十年は経過して人気も落ちかけている原作に対して、あらたに同人誌が刊行されたり、市販の研究書らしきものに取り上げられていたりすることですね。あるいは、海外でのファンアートが見られたりもする。公式側ですら、すでにもう新しい作品にとりかかっていて忘れているというのに、なんだかすごい現象です。
【二次創作者、この厄介なディレッタント(まとめ)】
趣味で二次創作をしている人間が書いた、よしなしごとの目次頁です。
二次創作には旨みもあれば、毒もあるのですね…。