陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

二次創作者のおかした、二次創作者のおかしな考えについて

2024-07-15 | 二次創作論・オタクの位相

この二次創作論シリーズ記事は、二次創作を十年以上続けた人間が自虐的に反省した考察の束です。これから、二次創作を楽しみたい、二次創作で人気者になりたい、ひと儲けしたいと考えている人向けのノウハウがしるされていることもなければ、お悩み解決アドバイザーというほどのこともないです。

私は二次創作をブログ上で楽しんでいましたが、いわゆる二次創作者特有の考えかたについてどっぷり染まることができませんでした。
したがってSNSで深く交流したこともないので精神的攻撃をうけることも少なかったですし、その反面、評価が多いともいえませんでした。二次小説をふくめブログ更新をひたすら垂れ流していただけのツイッターでした。私自身は二次創作活動をどこか後ろめたく、負の人生の一部といまでも考えているふしがあります。

たとえば、以下のような二次創作者ならではの習性になじむことができませんでした。
いや、なじもうとしたけれど、根っからの懐疑主義が顔を出して反発しだしたといいますか。

・同人誌を出している人、SNSで神絵師・神字書き扱いされている人は憧れの存在
・二次創作上で輝けば、実人生が補完される
・二次創作で描かれる百合やBLの関係は、現実の男女関係よりも尊い
・二次創作のためにお布施をしたり、広報活動をしたりすることで世の中に貢献している
・自分の二次創作や好きなジャンル、キャラクター、カップルをけなす人間は許せない、死ぬべきだ

二次創作者どうし、同ジャンル者どうしで人間関係がこじれたから、表現の場であるSNSそのものを否定したり、かつて好きだったアニメやゲーム自体をなかったことにしたりする考えもできます。執着していたものを消去する考えで、私自身もいつかは「棄てていくもの」だと認識していました。

最近、自分の人生をふりかえってみると、私は落ち込んだときに二次創作にしがみついていたことが判明しました。
中高生のイラスト投稿時代、さらに大学院から社会人なりたてのあたり。アニメに救われ、そこで描かれた百合めいた友人関係に憧れ、キャラクターの美しく凛々しい生き方に惹かれていました。

でも、現実はどうでしょう?
都合のいいストーリーのような、魔法やロボットや必殺技も出てきませんし、冴えない自分が異世界転生して無双することもありません。頭の堅い上司や経営者、同僚をけとばして啖呵を切りたいけれど、そんなことできるはずもない。他人の作ったキャラクターと設定を借りて、好き勝手な箱庭をつくって遊んでみたけれど、人生上の何かがそれで解決したわけでもありません。

私は二次創作上の交流を十年ほどまえからしなくなったのですが、これには確信があります。アニメや漫画好きのヲタク友だちと長く付き合うのはよくないのではないかという懸念があったのです。
私のきょうだいは、ある少年ジャンプ漫画原作アニメ好きの友だちがいて、きょうだいも私もそれに感化されてファンになっていました。ところが、このきょうだいが高校進学し、就職し、いわゆるリア充な友人ができると、まったく興味をうしなってしまったわけです。きょうだいは文化系ヲタクから脱して、体育会系部活をやって、コミュニケーション能力を磨いていましたし、正社員として十数年以上勤める優良社会人ですし、働きながら子育てもしています。いっぽう、そのアニメ好き友だちは、いまだにアルバイトの掛け持ちで独身のままです。

私自身は不登校の時期に暇だったので、アニメ雑誌やテレビ局のイラスト応募、レヴュー投稿などをくりかえしていました。当時ヲタク友だちがいて、同人誌をつくらないかと誘われたこともありました。この友人は親と疎遠になって、いまは東京にいて派遣で好きなウェブデザインの仕事をしながら暮らしているそうです。この友人、小中学校時代はとても優秀で美人なひとで、勉強はできたが人付き合いの苦手な私にはとてももったいない友人でした。しかし、20代半ばになるとなにかが変わっていました。そして、私自身とも考えがかみ合わず疎遠になっていきました。

ブログを開き、二次創作をするようになって、ネット上でいろいろな人の考えを検索して見聞きしてきました。
そして辿り着いた結論は──二次創作をしていた労力、アニメや漫画に浸っていた時間をすこしでも削って達成できていたことがあったのではないか、もっと正しい自分に近づいていたのではないか、という事実です。自己肯定感が低いから、BL妄想や百合幻想にしがみついてしまうのではないか。現実を否定して破壊願望があるから、SF世界やIFの歴史に惹かれるのではないか。

私はある作品にハマったときにそれを、〇〇症候群だとか○○病だとか茶化して言い表したことがありましたが、ほんとうに病気だといえなくもないです。そして、病だからこそ、いつからそこから立ち直りたいとも思っていたのかもしれないです。

二次創作をやめたい、飽きた、同人活動にうんざりしたときに。
あなたは新しい自分の人生について考えはじめているのかもしれません。


【二次創作者、この厄介なディレッタント(まとめ)】
趣味で二次創作をしている人間が書いた、よしなしごとの目次頁です。
二次創作には旨みもあれば、毒もあるのですね…。







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