陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

たとえ、それが一番の望みでなかったとしても

2018-01-12 | 教育・資格・学問・子ども

明日は大学入試センター試験ですね。
受験生の皆さん、本領発揮されますことをお祈り申し上げます。

数日前のことですが。ショッキングなニュースがありました。
なんと大阪大学の記述式入試問題で、正解だったにも関わらず、30人近くが不合格にされていたという。その問題は理学部で物理の問題だったのですが、当の問題作成者たる教官が、別の解法があったことをかたくなに認めたがらなかったそうで。昨夏より、外部、予備校関係者などが再三指摘していたのに、発表がこんな受験間際。当の被害者本人はすでに他大学や他学部に入学した人もいます。そもそも、この阪大を今年志望先とした受験生も不安でたまらないでしょう。

どの学校に進学するか。どの企業に入社するか。
学歴や職業は、人生を変えます。パートナー選びにも響きますし、家族の生活も関わってきますよね。高学歴だから、公務員であるから、大企業にいるから、人生安泰とは限りません。でも、身近な人を見ていると、ただの個人事業主(もしくは、その家内労働者)と、きちんとした勤め人もしくは企業経営者などとでは、生活がまるきり違います。

今回の阪大の不祥事。学生さんの転入学や他大学受験や予備校の授業料などの補償を検討しているのは、もちろん、当然として。なぜ、この問題作成者たる教官の名前が表沙汰にされないのでしょうね。いくらノーベル賞級のスゴイ発明者だったとしても、若者の人生を狂わせるような学者を、国税で運営されている大学で雇う必要はありません。厳正な処分が下されてほしいですね。

不安なのが、大学入試で今後記述式の比重が高まること。
そうなると、当然、採点基準が不明確で、採点者の気分次第で合否が分かれるなんてこともありめますよね。大学入試は1年だけじゃない、高校3年それ以上の学業成果。それを手違いで否定されたら、たまったものではありませんね。

ところで、今回の被害者の中には。
すでに他大学に進学し、良い友人に囲まれて従事したキャンパスライフを送っているので、転学を希望しない方もいるらしいです。私も、大学の進学先は志望先にすら入れてなかった国立大学でした。センター試験の英語でマークミスをしたと思い込んで、泣く泣く変更したのです。予備校にも塾にも通わなかった私は、第一志望先のボーダーラインを知らなかったのです。後から担任に、あなたの成績だったらチャレンジしても良かったのにと言われました。進学しても、第一希望のあの大学に入れなかった「失敗した私」という思いは拭えず、転学や大学院からの入学を考えました。そもそも、文系などでなく、就職先に迷いがない理系をなぜ選ばなかったのか、という考えは最近までずっと抱いていました。

いま、そのときを振り返ってみますと。
人生は、なるようにしかならない。私が憧れた理系の、薬学部を出た人でも職場環境が悪くて…という人もいますし、名門大学だからと言って教授や先輩が人格的に優れているとは限らない。私は、あの大学で、あの研究室でよかったのだ、と自分に言い聞かせています。あの大学で、いろんなひとに助けていただきました。そもそも、そのあと、複数の士業の資格も取得できたわけですし。救いだったのは、私の親や家族は、私の進学先や就職先が一流でなくともこだわらなかったことですね。いま、売り手市場ですが、大企業でなければ入社させないといって、子に内定辞退を強制する親もいるようです。こういう育て方すれば、エリートから脱落した自分を否定して、子供は一生涯、精神不安定な大人として自立できなくなります。

私の同級生のなかには、早稲田大学に進学したけれど仮面浪人して、東大の文系に入学しなおしたという子もいます。初心を貫いたのは潔い。一年の浪人生活は、経済的にも心身にも、つらかったでしょう。しかし、東大を出たエリート女子が大手マスコミに入社しても、過労死で会社に殺される時代です。自分は優秀である、他人とは異なっている、親や身内の期待に応えなきゃ、という思いは、自分を苦しめ、悲しい結末を招くことがあります。

「頑張って、頑張って、努力した日々はあなたを裏切らない」。

私が好きなアニメ作品の言葉です。
でも、現実はそうじゃありません。どんなに努力しても、努力に見合わないポジションや環境に甘んじないといけないことはあります。土壇場の勝負の日に、最高のコンディションで臨めるとは限らない。自分が元気でも、隣に座った人がゴホゴホうるさくて…ということもあります。試験場は、いろんな事情を抱えた人間が集う場ですから、アクシデントもありえます。

大事なその日に、思いもよらぬ結果が待っていることはあります。
そのとき、一番の望みではないものを、あなたは喜んで受け入られますか?
たとえ、掴んだものが満足のいくものでなくとも、精いっぱい努力した自分は許してあげましょう。
そのほうが、楽に生きられます。

インフルエンザが流行り、風邪気味の方、寒さで体調を崩しやすくなっています。
どうか、この時期、ご自愛くださいね。


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