エドガー・ドガ
『エトワール(踊りの花形)』(部分)
1878年頃、パステル画、オルセー美術館
『エトワール(踊りの花形)』(部分)
1878年頃、パステル画、オルセー美術館
2006年のイタリア・イギリス・チェコスロバキア合作映画「ミネハハ 秘密の森の少女たち」は、ある静かな郊外にある女子校に暮らす少女たちを取り巻くミステリー。
ミネハハ 秘密の森の少女たち [DVD] | |
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二十世紀の英国のとある郊外。幼い頃から親の顔すら知らない少女たちが集められた秘密の学園。
そこでは厳格な校長や教官たちの指導のもと、少女たちが規律正しい生活を送っていた。食事のマナーの躾、そして毎日の血のにじむようなバレエのレッスン。少女たちは外部と接触することすら許されず、遊び場といえば校内にある翠ゆたかな森と川だけだった。共同部屋で暮らす少女たちは互いに親密な関係になることを禁止されていたが、ヒダラとイレーヌの二人は急速に愛を深めていく。
ある日、バレエの演舞会を催すことになり、主役をめざして少女たちは色めき立つ。その頃、好奇心旺盛なヴェラは、ヒダラとイレーヌを誘って地下にある書庫へと忍び込む。だが奥の隠し部屋に、ヴェラだけがうっかり閉じ込められてしまい…。
最初は「マリア様が見てる」のような百合アニメーションらしき甘ったるい雰囲気を期待させるものの、結末が目も当てられないほどかなり悲惨。ありていにいえば、女子校を舞台にしたサスペンスです。少女たちは何のためにバレエと行儀作法を学んでいるのか。その真相にすこしでも近づこうとした少女たちが、次々に闇に葬られてしまう。
エドガー・ドガ
『舞台のバレエ稽古』(部分)
(1874年頃、パステル、メトロポリタン美術館)
しかし、少女たちだけが生け贄なのではありません。
ヒダラを愛して主役に立てたいあまりにイレーヌは、ライバルを陥れたともいえなくない。だが、そのイレーヌの想いも裏切って、ヒダラが舞台で見せた負けん気がやがて、愛した者の悲劇を招き、身の破滅を呼ぶことになってしまうとは。
少女たちだけでなく、被害者は他にもいました。その愛憎関係の連鎖が、教官と教え子たちにも及び、女の業の深さがつぶさに暴かれていくところがなんともいえません。無垢で穢れを知らぬ少女たちが大人になったとき、脆い被害者から加害者の側に回れるのか。なんとも残酷な物語です。
タイトルの「ミネハハ」とは、ヒダラがイレーヌを誘ってふたりきりの秘密の逢瀬の場所にした瀧を流れる水につけた呼び名。終盤、この場所が再度、ヒダラの脳裏に挿入されるときのシーンが、なんとも衝撃的ですね。学園の存在理由が明るみになるにつれ予想はつくのですが、正視に耐えないものです。前半部の少女たちがあまりに無邪気過ぎるがために。
後味が悪くて、二度と観たくないです。
女性向けの百合ではないでしょう。逆に男性なら好まれるかも。「マルホランド・ドライブ」とか、「テルマ&ルイーズ」みたいに、どうして実写のこの系統は、ラストが痛々しくて破滅願望を引き寄せるのでしょうね。
監督は「ロビン・フッド(1991)」のジョン・アーヴィン。
原作はフランク・ヴェデキントの中篇小説『ミネハハ』。同作がすでに「エコール」として映画化され大きな反響を呼んだとか。ショッキングさを売りにしている、マニア向けの作品です。
(2010年11月8日)
エドガー・ドガ
『室内(強姦)』(部分)
(1868年-69年頃、油彩、フィラデルフィア美術館)