1974年のイタリア・フランス合作映画「家族の肖像」(原題:CONVERSATION PIECE)は、孤高の老教授とその彼をとりまくできあいの家族関係を描いたもの。
絵画が多く出てくるので、芸術映画でもあります。
原題の『Coversation Pierce』とは、18世紀イギリスで流行した「家族の団欒を描いた絵画」のこと。
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ローマの中心地の豪邸に暮らす教授(名前は明かされない)は、『家族の肖像』と呼ぶ絵画コレクションに囲まれて、孤独な生活を送りつづけている。身辺の世話をするメイド以外は、身寄りはいない。
ある日、実業家夫人ビアンカが二階を間借りしたいと申し出る。静かな生活を乱されたくない教授は渋るが、ビアンカの娘リエッタにほだされて一年間の賃貸を口約束。
だが、じっさいに住みはじめたのは、ビアンカの愛人で生意気な美青年コンラッドだった。傍迷惑な住人を抱えた教授は頭を悩ますが、コンラッドのみせる教養に惹かれ、いつしか父子の情を寄せていく。
教授の住まいには、コンラッドをはじめ、夫人ともうひとりの愛人ステファノ、そしてリエッタまでが居着きはじめる。彼らと価値観、世代間ギャップに恐々としながらも、同居人たちに囲まれて、ほんものの家族を得たような幸福感を覚えはじめる教授。だが、コンラッドは過激派の左翼思想の活動家。ある日のディナーの席で口論がはじまり、夫が右翼と通じていた夫人とも仲違い。
瓦解していく疑似家族を教授はまとめることができない。そして、コンラッドは悲しい最期を遂げてしまう…。
教授は過去に離婚経験があり、家庭を築くことを厭わしく思っていた。
その彼が老い先短い身の上になって、自分の知性を伝えられるような後継者を欲しがった。しかし、コンラッドに寄せる愛情は父と子以上のようでもあり、しかしあくまでプラトニックでもあります。
息子とも思いたいせつにした青年の死は、教授にも衝撃を与えてしまって…。
教授の部屋に飾られた名画がどれだかは詳しくないので断定できませんが。夫人が作り替えた現代ふうの部屋にあったのは、たぶんロバート・マザウェルの絵画ではないかと思われます。
こういう現代貴族のお話は、少子高齢化がすすむ日本だと珍しくないでしょうね。
他人との接触を嫌いつづける人が多い限り。かくいう自分もそうですし(苦笑)
家族をつくれなかった引きこもりの老教授、血を分けているのにいがみ合っている母と娘、貴婦人の愛にすがるしかないペットのような青年。どれも悲しい依存関係ですが、現代でもありうることですね。
主演は「カンサンドラ・クロス」のバート・ランカスター。
監督は「ベニスに死す」のルキノ・ヴィスコンティ。あれも、美少年に惚れ込む老人の話だったような…。
(2009年8月31日)