私がかつて独り暮らししていたマンションは、三階建て。
三階に大家さんが住んでいて、二階は二、三人。一階はなんと私だけ。両隣が大家さんの私物の物置小屋になっていて、地下鉄徒歩1分もかからず、物音がしない、という好物件でした。家族が巣立つと、広い家に残された高齢者が増え、部屋の一つがまるまる収納ルームになってしまうこともあるようです。人間も、冬ごもりのリスなんかと同じで、貯めておく習性があるのでしょうか。台風なんかで出不精になると、インドアな趣味がはかどりすぎて困ります。
読売新聞朝刊2018年8月31日付記事にあったのは、家に収納できない荷物を預け、必要な時に搬送してくれるサービスについて。以前から、首都圏では床面積の狭いマンション住民を中心にトランクルームなどの収納サービスは手堅い人気を得ています。記事内の収納サービスを紹介してみます。
「Sumally Pocket(サマリーポケット)」。
専用段ボール箱に詰めた荷物を、宅配業者に渡すだけ。地方の大型倉庫まで搬送され保管される。荷物は一点ずつ倉庫で撮影され、スマホの専用アプリで写真一覧を見ながら選択、搬送してもらう。1箱あたり月額保管料300円、送料は取り出す際のみで800円。この段ボール箱、記事写真で見る限りは、ミカン箱ぐらいの大きさ。昨年、住友商事から大規模な出資金を得て、サービス拡大中。もとSMAPの稲垣吾郎がイメージキャラクター。
「HIROIE」
キャッチコピーは「宅配してくれるトランクルーム」。
段ボール箱に収まらない家具、クリスマスツリーなどの大型オーナメントなどもOKです。専門スタッフが訪問のうえ、梱包してくれるので手間いらず。対応エリアは関東の一部のようですが、専用保管庫は東京。最小サイズ月額3980円(税抜)からなので、交通アクセスのいい立地にセカンドルームを借りるよりはコスパいいかも。
「BookOcean(ブックオーシャン)」
なんと、読書家に嬉しい蔵書に特化したのがこのサービス。1冊ずつ撮影され、アプリでジャンル分けして管理できます。そういえば、大学時代の日本美術史の教官が蔵書が教員の官舎に入らないので、実家に送り込んでいるって言ってましたね。研究者などにはもってこいなのでしょう。定温低湿倉庫でお預かりし、WEB本棚を提供するオンライン・ライブラリーとあるように、虫食い対策も万全。
「ダブル・ゴルフ・ウィズ・GDO」
会社のお付き合いでゴルフに嗜むサラリーマン向け。ゴルフバッグを預かり、ゴルフ場への配送も依頼できる。プレー日の前日に届き、プレー後はゴルフ場から回収される。出張先のゴルフ場でも遊べます。
住宅の整理収納サービスを提供する「インブルーム」のアドバイザーによれば。
スマホで荷物を確認できるので預けっぱなしを防げる。預けられる荷物の大きさや、利用可能エリア、倉庫の保管状態などを比較検討して活用すべし、とのこと。
上記以外にも、ネットで探せば、多様な収納サービスあるようですね。
うちの地方ではあまり聞いたことないけれど。
私はど田舎の家があるので、現状、利用する予定はありません。
マンションのワンルーム暮らし経験の身からすると、とても役に立つサービスです。ただ、このサービスでいくつか気がかりな点は。
・保管先が増えることで、買い物依存症が悪化する
本棚を片付けても、その隙間を埋めたくて新しい本を買ってしまう私が自信をもって言います(笑)。読書アプリとかで購入本登録してますけど、大量になると検索面倒になりますからね…。探すのが億劫で二度買いしちゃったりもするし。
・個人の片づけ能力が低下する、捨てられない
モノって自分の身近にあって手で馴染んで使い込むからこそ愛着が出る。よく使いこんだものは、ありがとうといって、きれいにお別れできますが。買ったままで包装空けないまま置かれた服とか見ると、むやみに、自分の目の前から消した=片付けた、にはならないのではないかと思う。
・スマホを悪用されたら荷物が強奪される
仮想通貨の件を見ていたら、なりすましなどでとられたりしないのかな。あと、怖いのは、荷物を抜き取られて勝手に転売される恐れもないとはいえないですね。現物が自分の手元にあるわけじゃないですから。荷物預かりだと思っていたのに、かってに海外に送られていたとか、誰かに譲渡されていたとか。前述のサマリーポケットは、「預けたもののC2Cでの売買や貸し借りができるプラットフォームに進化させたい考え」(こちら参照)とあるので、やはり狙いはそこなんでしょうねえ。もし、ユーザーが亡くなったら、もしくはログインできなくなったら、荷物の所有権移転なんてことにならないのだろうか…。
・犯罪に利用される可能性なきにしもあらず
よくドラマなんかで麻薬とか拳銃とかの受け渡しに利用されるコインロッカー。他人の債権がついた物品、借金の担保で差し押さえになった貴金属などなどの隠し場所にされるかも?
・家族に秘密でコレクションを形成される
個人が生前のうちは自分の趣味のコレクションを隠す場所として役立ちそうですが…。万が一の時、荷物の相続をめぐって遺族が争わないかという恐れがありますね。
・預けた荷物の管理状態に保証がない
たとえば、貸し駐車場などにある車が事故、もしくは破損させられても、駐車場運営業者は弁済する義務を逃れます。同じことは、収納サービスでもいえるのでは。利用者の方は電子署名する契約書を、なるべくプリントアウトしておくか、プリントスクリーンで画像を残しておいたほうが良さそうですね。上述の「サマポケ」は服飾のクリーニングやお手入れサービスがオプションであるようです。
・宅配業者の疲弊でサービスが縮小
日本郵便が人手不足と人件費の高騰を理由に配達業務の日数を遅らせるそうです。アマゾンなどのネット通販の躍進で活気づいた物流。しかし、トラック運転手の過労死も取沙汰され、物流業界は疲弊しています。荷物の搬送が滞ったら、このサービスの行く末にも影響があるかも。
…という、使わない人間ならではの悩みもカバーしたプランも、先述の収納サービスにはあるようです。
ただ、空き家率は人口比にすれば少ないけれど、実質の空き家数が多いのは、東京、大阪などの都市圏。マンション建造ブームが落ち着いたら、戸建てともども空き家、空室が増える。自分のマンションを所有する子夫婦が、老人ホーム入りもしくは亡くなった親のマンションを倉庫代わりに使用するケースも考えられますね。どこまで需要があるのか興味深いところです。
★片付け上手は生き上手(目次)★
不器用だから、片付けられない。そんな自分でも、ちょっとずつ。2012年ごろから手掛けている実家、我が家の断捨離の記録です。めざせ、シンプル・イズ・ベストなミニマルライフ。