ワルカンという言葉は、亡き父が癌で入院中につけられた仇名らしいです。悪い患者という意味で、医師の指示に従わない、歩きまわる、めんどくさい患者。さて、私もどうだったのでしょうか。たぶん、それに近かったのでは。たしかに、大人しく検査日まで室内でだまって寝ているタイプではありませんでした。ふだんは引きこもり気質なのに、やたらきれいな空間にハマるときほどアクティブになります。
なじみのgooブロガーさんを訪れると入院しましたよ日記があるので、別に憧れたわけではないが、いちどはやってみたかった入院報告レポートです。自分の人生の記録のためだけに書いておくもの。
夏休みの後半を、私はとある内蔵の腫瘍と思しき検査により、三日ほど県下有数の国立大学病院に入院することになりました。
【前日】
入院に必要なものの最後の買い出しに。百均で急きょゲットしたのは、災害用の簡易ブランケットおよびシャンプー代わりの頭髪用消毒シート(ノンアルコールタイプ)、そしてシャンプーなどの軽めのボトル。これで着替え二枚を含め、大幅に荷物を減らすことに成功。
【初日】
午前早くに身内に送ってもらったものの、9時から入院患者の手続きでロビーはごった煮。お昼から入室、病棟内はとても美しく、同居人が入院した県立病院よりもはるかにデザイン性が高い。大学病院というと、カビの生えた古いいかめしい大理石の病棟というイメージがあったのですが、ウソのようです。最近建て替えしたのでしょうか。
初日は昼食、夕食も出て、出歩きも自由だったので、病棟内のあちこちを散策。残念だったのは大学附属図書館も、院内の患者図書室も休みで借りられなかったこと。ただし、結論からいえば読むひまがなかったので。詰所になんども行き来して、ロック式の入り口を何度も開閉してもらったのは、この日入院組では、私ぐらいものでしょう。あ、また、あの人ね…みたいな視線が痛かったです…。だって、つまんないんだもん、病室の中。
シャワーも毎日21時までなら自由に使えるとあって、不便もなく。インターネットもフリーWiFiで見たい放題。ただし、一部のサイト(なぜか駄文同盟とかの創作系サイトまで)はアクセス禁止になっていました。ノーパソを持ってくればと思いましたが、この初日、外来および入院の主治医だの、婦長だの、担当看護師だの、薬剤師さんだの、の顔合わせが頻繁にあって、のんびり自分のブログを見るどころではなかったですね。正直、誰かが押しかけてくるのが嫌で、逃げ出したくて歩き回っていたくらいです。
夕方以降はロビーの大画面テレビでドキュメンタリー番組を眺めたり、廊下のギャラリーの絵画鑑賞をしたり、退院のちに訪れたいレストランの下見をしたりと。あまりにこの初日がホテル外泊気分で最高潮だったので、調子に載った私は、台風まっさかりだというのに、同居人にご機嫌な報告TELを入れたりして、ひとりで盛り上がっていました。翌日の地獄も知らずに…。
【二日目】
終戦記念日用の映画の記事を更新したのは、早朝はやくに目が覚めてしまったため。前日夕食後すぐに絶食で、さらにこの日は一日中、点滴ざんまい。自由に動くこともままならず。さらに検査でも麻酔をされて覚えていなかったが、動きが多くて思うように針が刺せなかったといわれ…。麻酔疲れで疲労があったのか、この日はほとんど寝てばかり。人生でこんなにしんどい思いをしたのは、初めてか、と思うくらい。とにかく、点滴、採血、点滴、検査。からだに針を通されぱなし。
【三日目】
前日、なしと言われていた朝食を出してもらいましたが、なんとお粥とか薄めの食事…。あまりの空腹に耐えかねて、内緒でパンと飴を食べていました。
検査の異常を調べるレントゲンをしてから無事退院。身内のお迎えで無事帰宅。退院のちに行くはずだったレストランのランチも断念。とにかく早く帰りたいの一心でした。入院日とは気持ちが逆転してしまったのです。
【退院後】
一時間ぐらい胸が苦しくて、また救急車かとサイレンの音の幻覚まで聞こえそうでしたが、仮眠をとったら治りました。やはりいつもの環境に慣れたのでしょうか。昼食もふつうにとれましたし、やはり、雑多な暮らしとは言え、いつもの食事が一番ですね。
忘れないうちに、入院中に経費になったものの精算、事業主貸にする医療費の記帳なども。旅行もそうですが、出かけた後の荷物は鞄から取り出して、きちんと片付けておきます。入れっぱなしにすると、次に使えなくなりますから。
着替えは、少し古めのカーディガン、タンクトップ、綿パンというやや日常着に近いものにしたおかげで、あちこち出歩くのに便利でした。また意外だったのは、売店でも、あんがい良心価格で売られていて現地調達でもよかったかと思ったくらいです。
暇つぶしのもの、新聞や文庫本を持っていきましたが。
検査の不安であんがい耳に入らなくて。スマホでずっとユーチューブの音楽ばかり聞いていました。普段と違って、無駄にネットサーフィンすることもなかったんですね。なぜだろう。ひょっとしたら検査失敗したら緊急手術で帰れない…と神妙な気分になったからかも。
がっかりだったのは検査の経緯が思わしくなく、またしても再検査するか、もしくはもう様子見にするか、と。
最初から様子見できるぐらい、危なくない腫瘍なら、来なくてよかったのではないか? とも言いたくなりましたが。大学病院なので、慎重に検査されるのかも。でも、あきらかに検査のスタッフさんが、研修医さん? いや高校生にも見えそうな学生さんぽくて、ちょっと…と思ってしまいました。そりゃ臨床経験の場として協力すべきだとは思うのですが、なんだかなァ…と。
ただ看護師さんや看護助手、受付の方はじめ、ほとんどのスタッフさんの対応はすごく丁寧で。
あまり不快な思いをすることもなかったです。会計事務職で医療機関に勤めたことはあったので、医療関係者の疲弊は知ってはいたのですが。ひとの命を預かる仕事ですから、なかなか大変なのだろうなと思われたのでした。
ちなみに検査結果がわかるのは、私の仕事の都合で、また翌月廻しですが。このあと、どうするのかな~と考えてしまいます。かなりできれいで格式は高く、けっして通いたくはない病院ではないけれども、遠いのがネックなんですよね、ここは。
結論からいいますと、やはり病院にお世話になるのはかなりの損失なので。平常、健康に気を遣っていた方がいいですね。仕事が休める言い訳になるけれども、けっきょく、復帰した後の仕事の片づけや、自分の居場所を奪われる不安もありますし、病気はしないにこしたことがないのです。今回の一件が、今後、死をもたらす病の一歩前の警告に終わるというのであればよいのですが…。
(2023/08/16)