陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

うしなわれた子どもの命、誰が悪いのか?

2019-05-12 | 政治・経済・産業・社会・法務

滋賀県大津市で生じた痛ましい交通事故は、令和明けましておめでとう、連休明けましてお疲れ様の日本列島に衝撃を与えたニュースでした。
直前にも池袋で車の暴走事故や、神戸でのバス事故などつづいていましたよね。じつは近所でもひき逃げ事故が起きたばかり。

大津市の事故の場合は、直進車に右折車が衝突。はずみで直進車が歩道にいた保育士と園児の列につっこみ、二歳の園児ふたりが犠牲に…。直進車は時速40キロメートルで青信号、ブレーキをかけた形跡もあることからお咎めなしで、右折車の前方不注意だとされています。白昼、見通しの良い道路なのだけど、事故多発地帯であったようです。

この事故の報道ではテレビでも新聞でもそうでしたが、なぜか保育園側の不備を問う姿勢がみられました。
住宅街や都市部で土地が狭いので園庭がじゅうぶんでなく、運動会などを別の場所まで歩かせていく保育園、幼稚園、小学校ってけっこうありますよね。子どもの飛び出し事故などの教育上、実際の歩道を歩かせるのが悪かったとは思えません。まさか、新聞やテレビのワイドショー視聴者層に配慮したとか?

ガードレールの設置にしても、通学路は優先されるのですが、今回の事故現場はお散歩コースだったので認識されていなかった模様。
また蓋のない排水溝なども大雨で道路が冠水した際は道路と区別がつかずかなり危ないのですが、道路が狭くなるのを嫌って地元でガードレール設置の反対運動がおきたりもするそうです。

うちの田舎も家の前が通学路になっています。
軽乗用車がぎりぎり通りかわしできるぐらいの幅を、最近、大型トラックなどが抜け道として通過することが多い。近所の小学校から苦情があって、朝夕の通学時間だけ通行禁止にする案があがったのですが、農家さんが出入りできなくなるので中止になったとか。

今回の事故はあきらかに交通事故ですので、もちろん、一番に過失が問われるのはドライバーです。運転していた専業主婦らしき女性はそれまで事故歴もなく模範ドライバーだったようですが、強引に右折して直進車の進路妨害をしたのは魔が差したのか。女性に多い、ウインカーの出し忘れだったのか。よもや、スマホの覗き見などの脇見運転だったのか。気温が高くてのぼせ気味だったのか。

いずれにせよ、自動車のドライバーは、とくに交通弱者であるお年寄りや子ども、からだの不自由な人を視認した際は、たとえそれが歩道にいたのだとしても、じゅうぶんな注意を必要とする、まさかの事態を予測する心構えを、教習所で習ったはずです。以前、運転中に対向車線の乗用車がいきなりこちらにおおきくはみ出してきて驚いたことがあったのですが、その車は歩道から車道におりようとふざけていた子どもを避けようとしたとっさのハンドル操作だったのです。このように、たとえ自分の側ではなくとも、視界に歩行者がいた場合は乗用車がわにかなりの危険防止の用意がもとめられるわけです。自分が一歩まちがえば凶器になる鉄の塊を運転しているという自覚がないと、誰にでもおこりうるような、もらい事故だったのでしょう。

今回は交通事故ですが、災害時の避難誘導ミスや校内での事件事故をめぐっても、教育者がわ、自治体側が責めを負いかねないケースが増えています。
訴訟しやすくなったからでしょう。しかし、あきらかに不可抗力な事態で尊い子どもの命が失われた場合に、側にいる教師、保育士などばかり叱責してよいものかという疑問もあります。来年で発生から20年になる某大学付属小学校のあの凶悪事件にしましても、子どもを凶悪犯から守れなかったクラス担任の責任を問う非難が激しく、その女性教師は職を辞したとされています。

子どもは自分で自分の身を守れないのですから、預かっている大人には安全配慮義務があります。
しかし、突っ込んでくる車に、ナイフを振りかざす凶悪犯の前に、自己を犠牲にして子どもをかばえとまで、保護者もふくめてわたしたちは命じることができるのでしょうか。

幼稚園保育園の無償化で、少子化でますます貴重な未来の宝たる子どもたちには、税金で国が子育てを後押しするようになります。
以前にくらべると、産休育休時の年金保険料免除などの優遇もあり、その分の負担は子どもがいない働く人も負担しています。子どもは社会が支えて育てるべきですが、それをあたりまえだと傲慢に思われたり、子が多いから自分は世の中に貢献している、という一面的すぎる見かたも困りますよね。共働きの父母も増え、少ない子どもたちに関わる大人の数のほうがますます多くなります。

本日は母の日で、お母さんに感謝する日ではあるのですが。
自分が親になったか、子がいるかどうか関わらず、世の中にどう育てられ、守られてきたかについて、それから自分に類が及ばない子どものことについても、児童虐待などふくめて、どう関わるべきなのか考えておく日でもあるのかもしれませんね。子どもが大事と世の人が思うならば、けっして幼い命をないがしろにするような無残な事件は起きないはずなのですが…。


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