陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

あの国には、和解よりも革命がふさわしい

2018-06-17 | 政治・経済・産業・社会・法務
史上初となる米朝首脳会談が、シンガポールにて開催されたのは6月12日。
翌日の新聞には、気持ち悪いぐらい蜜月ムードを演出した米国のトランプ大統領と、北朝鮮の金正恩委員長との写真が。しかし、対談は実質1時間にも足りず、あらかじめ裏取引があったかのように、その日午後には、さっさと署名。完全に不可逆的な非核化には程遠く、努力義務だけが示されたようなもの。しかも、北朝鮮の金正恩体制維持だけは明文化されてしまいました。会う前から北朝鮮は一度ドタキャンしかけ、米国ときたら経済支援は、日本と韓国がすればいいと丸投げ。会談の費用まで、現地のシンガポール任せでした。これのどこが歴史的快挙なのか。

結論から言えば、これはトランプ大統領の政治的パフォーマンス。
国連で拉致被害者の非人道問題について熱弁をふるったにもかかわらず、北朝鮮への拉致被害者返還は言明するにとどめたとのこと。もちろん、完全に米国に依存すれば巨額の貿易赤字のツケを押し付けられる日本からすれば、安倍首相本人が北のあの独裁者と話し合うのが望ましいのですが。

そもそも、米国の政権は、首脳級とはいわないまでも、これまでも北朝鮮と非核化に向けて話し合ってきた経緯がありました。ところが、米国大統領の任期は長くても二期八年。政権が変わるたびに振り出しに戻る。しかも、反オバマ派のティーパーティーよろしく反トランプ陣営が議会選挙で多数を占めれば、求心力が弱まる恐れあります。世襲制の北朝鮮国家にお墨付きを与えたのは最悪のシナリオです。

じつは軍部のお飾りで祖父や父ほど国内での人望がないとされる金正恩氏は、今回の外出でクーデターを恐れていたという指摘すらあります。非核化をうやむやにし、さっそく、日本には拉致被害は解決済みとそっぽ向き、経済制裁解除だけをもくろんでいる。日本もこれまで何度も非核化交渉をし、経済支援をしたにもかかわらず、水面下で核開発は進んでいました。

トランプ大統領をノーベル平和賞候補と見做す動きもあるようですが、核根絶を高らかに宣言しながら自国の核実験を阻止できなかったオバマ氏と同じで、時期尚早というものです。トランプ氏の狙いは、北朝鮮と疑似的な融和政策をとることで、韓国との軍事合同演習の負担を減らし、かつ朝鮮戦争での戦死者米軍の遺骨返還にあるのでしょう。貿易上利害関係がないから北朝鮮を甘く見ているだけであって、中国には高い関税をかけ、さっそく貿易摩擦を引き起こしています。米国ファーストを掲げた保護貿易は、各先進国との軋轢を招き、日本にも自動車輸出に打撃を与えんとしている模様。

しかし、そもそも、トランプ大統領は、この狡猾な二枚舌の北朝鮮指導者をべた褒めするほど仲が良いのでしょうか? 安倍首相との会談でも親密ぶりを見せつけていましたが、最近になって、「メキシコからの移民を日本へ送れば、君は退陣せざるを得ない」といった主旨の圧力をかけたともいわれています。そもそも、選挙前からセクハラ問題や人種差別発言でさんざん物議を醸し、自分の家族を政権中枢におくなどの独裁者ぶり。お膝元のトランプ財団には寄付金を私物化して選挙戦で利用した疑惑もあり、いまだに政権幹部を気ままに更迭するなど、紛争の種に事欠かない。親日派とされる異母兄を暗殺し、叔父を含む側近まで粛清、惨殺してきた北朝鮮の指導者と馬が合うのでしょうが、いつ、手のひら返しするかわかったものではありませんね。

正直、物騒なことをいいますが。
一番いいのは、アラブのように革命が起きることですよね。でも、そうなったらイランのようにイスラム国のような武装組織が跋扈し、混乱に陥りかねない。イランでは、米国の求める非核化を行ったのに経済制裁を緩めてくれないという批判も上がったとか。外交問題は一本道ではなく、どの国も利害を探り合いながら、玉突きのように牽制しあい、表面上の友好をアピールしあっています。

このたびの米朝首脳会談を受けて、日朝首脳会談にも前のめりになっている安倍首相ですが、さっそく国連の国際原子力機関(IAEA)の査察費用を日本が負担しますなどと表明しています。会談直前の北朝鮮の核施設廃棄において、日本の報道関係者だけ締め出されたから、自腹で確かめないと気が済まないのでしょうが、なんでミサイルで平和脅かされている方が…と思わなくもない。経済制裁解除は拉致被害者が無事帰国するまでという姿勢は崩さないようですが。正直、イスラム国の脅威のあった数年前と同じく、バラマキ外交に終わってしまう懸念。それでも、民主党政権時代のあほあほしい北朝鮮関係者のおもてなしよりは、いくぶんマシですが。レジェンドづくりのために功を焦って、国民の血税を無駄にするような愚かな外交はしないでいただきたいものですね。拉致被害者ご家族のご無念はあるでしょうが、早期解決は大事だが、相手に付け入られてはいけない。米国の拉致被害者はさっさと解放したのに、日本に対してはいくらでも搾り取ろうとする魂胆が見え見えですよね。ただでさえ、ナントカ学園問題が決着しつつも不信感が残っているのに、来年には消費税増税が控えているのに、国内の課題を放り出してそれを優先すれば、安倍政権は今度こそ国民からの信頼を失うことになりかねないでしょう。日本においての最大野党勢力って、旧民主党とかではなくて、「安倍さんのほうがまだマシ」だと思っている程度の無党派層ですから。


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