陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

『マリア様がみてる―イラストコレクション―』

2007-02-10 | 感想・二次創作──マリア様がみてる

 

最近すっかりアニメ「京四郎」漬けな毎日でしたので、ちょっと変化球
(というか死球状態(笑))
かなり時機を逸した感があり、お叱りは覚悟の上であえて
『マリア様がみてる―イラストコレクション―』(2006年8月)のご紹介をば。
最新刊『マリア様がみてる―クリスクロス―』の感想も、昨年末から途中放棄
してるんですけどね…とほほ(汗)


イラストコレクションと銘打っていますとおり、その大半は「マリみて」絵師
ひびき先生のカラーイラスト集です。
紹介文付き各キャラクター画からはじまって、文庫や雑誌コバルト表紙絵は
もちろん、DVD・CDやカレンダー、果ては秘蔵のイラストまでも公開。
私は文庫本しか買わない派なので、見応え十分でした。


他にも、雑誌に収録された五本の漫画や、三薔薇姉妹別に年表仕立てにした
名場面集もあり。

私が特に注目していたのは緒雪先生書き下ろしの短編小説「ハレの日」
令とスールになる直前、入学式を欠席した由乃の心情が綴られているんですが、
頁数が足りなかったのか、最後が中途半端な令へのコンプレックスで終わっていて
物足りなかったです。新しい学び舎でのデビューを飾れずに自宅のベッドで、
ささくれ立った心を埋めている由乃の悔しさはよく判るのですが、その物煩いが
令からロザリオを受け取ることでどう昇華できたのか、そこまでちゃんと描ききって
いればよかったなぁと。
由乃って『黄薔薇革命』で心臓の手術を乗り越えて、外見とは裏腹に気弱な姉を
突っぱねる元気キャラとして登場したけれど、近作ではかなり不当に貶められて
いるようで残念。
祐巳の成長を描く為の噛ませ犬扱いというか、完全に道化役ですよね。
ただでさえ本編でもこんな役回りなのに、なにも今更、話を遡って彼女の小人物
ぶり(笑)を印象づけるようなエピソード持ち出してこなくても…。
大部を占めるイラストが明るい雰囲気であるものだけに、最後のおまけ読み物が
すこし湿っぽくて、後味悪かったです。
あとどうせ過去話書くなら、『プレミアムブック』所収の前紅薔薇姉妹みたく、
令と江利子の組み合わせだったら希少価値があったとも思うんですけれど。

 

ま、それはともかく。
メインの挿絵集録のほうは、ひびき先生の解説もつけてあって存分に楽しめました。
描き手の声が届くのっていいですね。
びっくりしたのが『黄薔薇革命』の当時の帯のコピー。
「もう一度あなたを抱きたい…」って。うはっ♪
あの頃はどつき漫才って感じじゃなかったのに…ああ、シリアスな二人はどこへ…?

文庫カバー絵ではお目にかかれない珍しいペア(令と祐巳とか)もあったりして
びっくり。
でも一番嬉しかったのは、カレンダーの瞳子と乃梨子のツーショット!
本編では絶対にありえない、ウインクしていて爽やかな笑顔の瞳子ちゃん!
めっさ可愛すぎるっ!!(激萌)
普段つっけんどんなのに、こーんな甘い顔されたら、祐巳じゃなくても
ロザリオ差し出しちゃいたくなりますね!ね?(軽~く却下です)


既読の方には有名な話なんでしょうが、『レイニーブルー』の描画時に原稿に
筆を落とした体験から、『子羊たちの休暇』以降はデータ絵に移行されたそうです。
私は正直いうと、手塗り時代の方が絵柄も彩色も好きでしたね。
デジタル絵って色鮮やかなのはよいのですが、肌や髪質のトーンがいつも同じに
みえて面白みがなくて。塗り重ねてできる色調の妙味だとか、偶然に配合された
色の面白さとか、透明感だとか筆致の違いだとか、手描きだからこそ趣き深いと
思える要素が失われた感じがするのですよ。
ま、古色を帯びて味わい深い肉筆画に比べCGはどうも苦手…なんて考える頭に
カビの生えた人間のたわ言ですが。

でも、データ移行してから、なんとなく各キャラの表情が均一化してしまった気が。
つまりひびきスタイルの確立なんですけれども。
顕著なのが、一番よく描いている祐巳の顔。
どんどん丸みを帯びて、ツインテールが短くなってますね。
SDキャラの描き過ぎなのか、他のメンバーも類型化しているような。
様式美とみなしてしまえばよいのですが、登場人物の九割方が同じ制服着てる
世界なのですからもっと表情とか描き分けがあってもいいと思うんですけど。

それから、文庫表紙よりも雑誌コバルトの表紙や他のピンナップの方が、お題の
制約がなかったせいでしょうか、とても自由な発想力を用いて描かれていると
思われます。
例えば、プール帰りの祐巳・瞳子とか、ススキをつかって雪だるまならぬ
祐巳だるまをつくろうとなさっている祥子さまだとか。

 

この巻自体の本表紙は余り好きじゃない(爆!…祥子さまと祐巳の表情には
変化をつけて欲しかった)のですが、中身にはおおむね満足です。
文庫サイズでこのお値段で、こんなに豪華なイラストが詰まっている。
とてもお買い得な一冊ですね!
そういえば噂によると、『コミック百合姫』の表紙絵から撤退なさったり、発売予定
だった画集も立ち消えになったそうですね。
ファンの皆様には心苦しい限りですよね。
昨夏も個展が開催されたり、現在は毎日新聞社の無料情報誌「まんたんブロード」の表紙も月代わりで担当されていて、「マリみて」を離れたイラストレーター個人としての活躍も期待されるひびき先生。
いろいろイチャモンつけましたが私にとっては「マリみて」といえばひびき絵!
これからも応援しています!

(「京四郎」の放映合い間に、アニメ「マリみて」DVDのCM流れてましたが
今のところ観る気おきない…)


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2 Comments

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ほぉー (ユリミテ)
2007-02-13 22:26:19
なるほど!
あ。ご挨拶が遅れてしまいました。こんばんわ。
実は私、このイラストコレクションのみ未購入だったんです。
それは、今まで見てきた文庫本の挿絵の寄せ集めだろうと高をくくっていたからです^^;
へぇ。なるほど。こういった内容だったんですね。
すっごく興味がわきました。私もかおっと♪
それと、短編集がついていたんですね。
由乃のモヤモヤと、尻すぼみなお話だということが端的に現れていて、これだけで読んだ気分になりました(ぉ
無印マリみて時代からひびきさんのイラストとともに歩んできたマリみて。
今更違う人の挿絵なんてみたくはないのですが、デジタルペイントだというのを知って、妙に納得する部分もありました。
正直100%うまい!といえる絵ではないと思うんです、ひびきさんの絵って。でも私はなんとなーく好きで。ここまできたら最終巻まで付き合いますよ!(笑)
あと20年くらいは読めるかな?(笑)
返信する
私の『イラストコレクション』へヴィー級へたれオピニオン講座 (万葉樹)
2007-02-14 21:16:04
「ごめんね、ユリミテ様。今野先生の小説はほんとはすごく面白いんだよ。ただ管理人の説明が下手でつまらないから…でもね、ここほら見て、二期DVD五巻表紙絵の令・由乃。おでこくっつけあっているんだけど、どうみても二人はキス寸前なの。ひびき先生のイラストはね、いろんな妄想が働くんだよ」


ごきげんよう、ユリミテ様。
当日レスできなくてすみません。
またしょーこりもなしにパロディかよって叱られそう…。

『イラストコレクション』は中身の半分がカラー仕様ですし、お子様のお小遣いでも買える良心的なお値段。
ただ、ぶっちゃけ、ショートコミックスって、おもしろくないかも(をい)

>今更違う人の挿絵なんてみたくはないのですが

アニメのキャラデザインはひびき絵が基準になっていますしね。
初期の原作読むと、人物の特徴の記述があいまいですし、
ひびき先生のイラストによって、著者がイメージ固めたのかどうかさだかではありませんが、助けられている部分ってあるかと。
たしかにデッサン力があるとはいえませんし、顔も小奇麗にまとまり過ぎてありきたりな絵柄だな(かなり失礼だな)と思いますが、聖さまと令ちゃんはひびき絵の方が私は好みです。アニメ版はやたら顔が濃いですから(爆)瞳子も顔コワイ…。

>あと20年くらいは読めるかな?(笑)

祐巳から数えてひ孫の妹の代の分まで、書き続ければ大丈夫です。
今野先生がといいいますか、集英社がやってそう(笑)
ラジオドラマで時代劇とか、キャラクターが原作者の手を離れていってるのが
気がかりですが…。ひびき先生の絵柄も緒雪先生の小説もそうですが、
マルチメディア化の功罪で初期の奥ゆかしい百合風味が
いくぶん失われたのではないかなとも思います。

私の意見はあくまでご参考程度に。
アマゾンのレヴュー等では、けっこう高評価を得ていたようですね。
こちらを読んで興味もってくださって幸いです。

あまり百合的な話題に触れられなくて恐縮なんですが、
お立ち寄りいただき嬉しくって、涙が出ちゃう状態です。
コメント有難うございました!


【追伸】
「麗しの百合考察」様の返信コメントに思わず納得、
 そして笑ってしまいました。
 やっぱり貴方様はステキです!!

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