大神ジン、貴方って何なのかしら?
学園の平和を守る機動風紀七番隊隊長でありながら、絶対天使を倒す勇者にもなれない
中途半端な存在。だからもう消えて頂戴、私たちの前から。
もう貴方の出る幕じゃないのよ!
…なんて言われたのかどうか定かではありませんが、この第三話でいったん
退場となる大神ジン様。(某所の予告によると、第七話で再登場するようですが)
何か裏がありそうな含み笑いを浮かべている彼は、ひそかに影の黒幕ではないかと
囁かれてもいます。あくまで私見なのですが、彼の役どころはずばり神無月でいう
ところのユキヒトさんだと思われます。
その思わせぶりな怪しい言動やら中性的な魅力で、脇役ながらわりと好演していた
ユキヒトさん。一時は八の首説もあったようですが、終わってみればなんのことはない、
善良な一市民なのでした。ミステリーで主人公の身近にいて胡散臭い動きをして、
視聴者を惑わせるが、結局のところ真犯人は別にいたというパターンですね。
で、ユキヒトさんといえば、神無月のボーイズラヴ要素の担い手…というわけでなくて。
ツバサ兄もそうですが、彼は大神ソウマと対になることによって、その存在意義が
明らかになる人物です。
乙橘学園では、姫宮千歌音と学園の人気を二分する美男子のソウマ。
スポーツ万能で成績優秀、クールビューティで名を馳せていた彼ですが、ユキヒトさん
にからかわれると反発して子供っぽい顔も覗かせる。姫子の前では勇敢にロボを駆って
オロチと闘うソウマも、恋には奥手で不器用な一面がある。そんなウィークポイントを
引き出してみせるのが、ユキヒトさんの役回りだったといえるでしょう。
そして時に三枚目ぶりを発揮する男が恋敵だったればこそ、恋の勝負にリードされつつも
ひとり耐え忍ぶ千歌音の姿が際立って、さも美しく気高く映ってしまうのです。
思うに今作で、このユキヒトさんポジションを継いでいるのが、大神ジン。
彼こそは、王子様に恋焦がれるヒロイン白鳥空の視点で語られるこの物語の序盤に
おいて、綾小路京四郎という人物の裏側をさりげなく暴き出す人なのかもしれません。
第三話の冒頭で、京四郎はジンに向かってパドラスの追跡を中止して、
白鳥空に関する調査を優先させると打ち明けます。
「手負いのパドラスを放棄してまで追う価値が彼女にあるのか?」と問うジン。
またその後せつなや空を交えての作戦会議の場でも、クラウソラスと離れての
身の危険を京四郎に説いたのもジン。
それに答えて「兄さんならこの方法を取る」の京四郎、説得力がありません。
結果として京四郎の読みは外れ、たるろっての奇襲を受ける。
おそらくジンは、これまでに京四郎の深慮遠謀に欠けた強引な戦いぶりをみてきて、
今回の失態もお見通しだったのではないでしょうか。
第二話、機動風紀のパトロール車のなかでジンと密談する京四郎。
探索レーダーに反応しないとの報告をうけ、弱体化しているパドラスを侮って
いました。このとき何らか手を打っておけば、逆襲される事もなかったはず。
「今なら、機動風紀七番隊の戦力でも抑えられるんじゃないか?」と他人事のように
言い放ちます。
これって悪く考えると、せつなに加え新たな一体の絶対天使を手中にした京四郎の
慢心が窺えるんですよね。
さらに深読みすると、京四郎にとって天使を倒す事、世界の平和を守る事は二の次
だったともとれます。次の第四話で、京四郎の口から直に天使を(「止める」ではなく)
破壊する決意が明らかにされますが、ほんとうはこの時点でそれをためらっていたの
ではないかと思えるほど。
パドラスに止めを刺す絶好の機会をあえて逃したのもそのため?
一体を自分の手にかけてしまったら、確実に最後の天使――すなわちせつなまでの
破壊の道を突き進むしかないから…。兄の遺志を借りつつ虚勢を張り続けて進むしか
ない京四郎は、ほんとうは誰かに止めて欲しかったのかもしれませんね。
組織の長として人を動かすことに慣れているジンは、確たる証拠も無いのに
信念だけで猛進する一匹狼的な京四郎をどう見ていたのでしょうか。
戦いの当事者なのに、二話で責任逃れめいた発言をした京四郎。
そんな彼に、いまだ行方の掴めないパドラスの捜索を続行している三話では、
ジンはこう答えました。
「残念ながら絶対天使を持たぬ我々にできるのは、その程度だ」と。
これは絶大な武力を行使できる京四郎への大神ジンの妬み半分、嘲り半分といった
感じでしょうか。
学園都市の平和を守る使命感から京四郎に尽力は惜しまないけれど、内心その方針
には大いに不満。けれど自分は無力なので、気に喰わない奴だが協力するしかない。
大神ジンはあくまでこんな可愛らしい悪意しか、京四郎に抱いていないんじゃないかなと。
ジンの「よろしく王子様」という皮肉めいた言葉は、おそらく白鳥空の恋心が練り上げた
清廉潔白な京四郎像へのアンチテーゼともなっています。
次回でソウジロウとの対峙によって露わになってしまう綾小路京四郎の本質、その脆さは
その前段階で予示されていたといえるでしょう。
大神ジンとは、いわば王子様になり損ねた王子様。
現王子様たる綾小路京四郎と対になり、その行動の輪郭をなぞりながらその暗面を
浮き上がらせてゆく、そんな存在。
彼ができることといったら京四郎と天使たちの活躍を、指を銜えて眺めつつ、そっと
その勇者の影を足蹴にしてささやかな復讐を果たすぐらいのものでしょう。
この二人、決して犬猿の仲というわけではないのですが、ジンとの会話の中に、
王子様の仮面を剥いだ京四郎は本音を吐いていたといえそうです。
ところで、京四郎と空の替え玉二人(全然似てないのが笑える)とせつなを積んだ
トレーラーを運転していたのはやはり機動風紀の面々?
高校生のはずなんですが無免許運転?
それともカズキ兄さんとツバサ兄さんは最愛の弟の側にいたいものだから
留年を繰り返していたのでしょうか(んなわけない)
美形度大増量で、出番は少ないながらも手堅い人気を集めている大神ジン様。
ストーリー上難しいかもしれませんが、最終回までに一度でいいから、
カオンちゃん・ヒミコとの神無月ラヴトライアングル夢の共演がみてみたかったり
します。(いわれもなくカオンちゃんに目の敵にされてそうですね(笑))