雨の日の通勤通学ってめんどうですよね。
せっかくの休日もやっとコロナ自粛から解放されかかっているのに、お出かけに制限が…。私も靴やカバン、スーツがずぶ濡れになり新調せねばならなくて苦労しました。
雨続きなので、雨にまつわる映画をと思いましたが、熊本で豪雨災害が起こったようで。不謹慎すぎるかと思い、自重いたします。
代わりに、気分がからりと晴れるような映画をひとつ。
1998年のアメリカ映画「グッドナイト・ムーン」(原題: Stepmom)は、仲の悪い元妻と今の彼女とが子どもを介して、通じあうヒューマンドラマ。原題は「継母、義母」の意味で、なぜこの邦題なのかはよくわかりません。とはいえ、奇妙な三角関係なのになぜか誰も嫌いになれなくなる、ふしぎなからくりがあります。
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売れっ子ファッションフォトグラファーのイザベルは、弁護士の恋人ルークと同居中であるが、彼の連れ子二児の世話にてんてこ舞い。12歳の娘アンナと7歳の息子ベンは実の母親であるジャッキーになついてばかり。家庭の切り盛りについて何事も完璧なジャッキーにとって、子育てになにかと口を出すイザベルは目の上のたんこぶ。
このいがみ合う女性二人がこころを通わすという筋書きは微笑ましい限りなのですが、そもそも疑問なのは、子どもをおいて離婚しようとする夫婦。といいますか諸悪の根源は、自分の半分の年齢の若い女に逃げた亭主。色男の旦那許すまじ!と鼻白んで見ているけれど、彼は彼なりに二人の女性と子どもに気をつかっている部分はあるのですね。
仕事の傍ら、とにかく子どもの気を引こうとあれやこれやと知恵を絞るイザベルが健気ですよね。男の子はともかく、思春期の女の子って扱いが難しいもの。血の繋がった母親にはぜったいに勝てないという劣等感に苛まれながら、仕事の合間も子守りざんまい、我がままな子どもに振り回される若い母親。
ジャッキーは旦那を奪われた腹いせに子どもを惹き付けてイザベルを責めようとしていますし、イザベルの方はなんとかいい母親になることでジャッキーを見返しててやろうとするような節が感じられます。そして、子どもたちにしても魅力的な新しい母親になじむことは、生みの母親を悲しませることだからそうあっさりとはいかない。この三者はどちらかいっぽうを選ばねばなることで苦しんでいます。どちらかとえいば、頑なジャッキーや子どもに歩み寄っているのはイザベルのほうなので、彼女にばかり肩入れしたくなるけれど。
そして、次第に明らかになるジャッキーの抱える悩み。
彼女は子どもを愛していながらなぜ引き取ろうとしないのか。そして、イザベルとルークとの正式な結婚を前にした彼女の苦悩いかばかりか。自分の不幸をひたすら押し隠して、元夫と新しい恋人の幸せの後押しをしなくてはならない彼女の身を切るようなつらさ。子どもたちがしだいにイザベルになびいていくのを見守らねばならないのは、やがて来る別れを辛いものにしないためだったのでしょう。
やがてその抜きさしならぬ事情は、イザベルや元夫、さらには子どもたちにも知られるところとなります。このときのアンナの動揺ぶりが、なんとも複雑な子供心。アンナの恋愛事情を知ってアドバイスしたイザベルはもうすっかり母親役が板についていました。イザベルが写真家ならではの手法で、ジャッキー母子の残り少ない想い出をつくろうとするあたり、こころ温まります。
しかし、ジャッキーとイザベルの母親としての方針の違いは簡単に宥和するわけではなく、最後まで女ならではの意地の見せあいが続くところもドラマを盛り立て飽きさせない。いがみ合った女どうしが腹を割って話し合うシーン、涙なしには語れませんよね。
監督は「ミセス・ダウト」「ハリー・ポッターと賢者の石」のクリス・コロンバス。
出演はジュリア・ロバーツとスーザン・サランドンの二大女優が競演。このふたりだけでなく子役のジェナ・マローン、リーアム・エイケン(この子の笑顔最高(笑))の二人の表情豊かなところも本作の醍醐味。夫役は「アポロ13」の冷静な管制官役で知られるエド・ハリス。嫌味なおばさまと思われたサランドン、後半のはじっけぷりがいいですね。
(2011年8月1日)
グッドナイト・ムーン-goo映画
なお、映画の邦題が原題と違いすぎる件については、gooニュースにありましたこちらの記事が詳しいです。