陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

自分の仕事の価値を考えてみよう

2020-12-04 | 仕事・雇用・会社・労働衛生

この記事は、短期間の被雇用者、パートタイム労働者の方にとって、やや批判的な内容を含んでおりますので、くれぐれもご注意ください。


かつて資格試験の勉強をしていたころ、あるいはフルタイム雇用の仕事が途切れて一時的なつなぎとして、短期間だけの仕事、パートタイムの仕事に就いたことがあります。同僚は学生さんから、時間の空いた主婦、孫への小遣い稼ぎ目的のご年輩の退職者などさまざまでした。

一時期、コロナ需要の関係で、かなり恵まれた短期の業務に預かったことがあります。給付金関係の申請業務でした。現場で働く人は十数名ほど。しがらみがないのですぐ仲良くなりました。早く終わっても日給が保障されており、かなりおいしい仕事です。

行政関係の事務でありながら、なかには、正社員としての事務職経験がない方も何人かいらっしゃいました。人間関係がいやなので、短期や日雇いめいた仕事を転々としていると聞きます。扶養されているから、社保適用でなくていい、フルタイム勤務でも2箇月以内限定の仕事ばかり。

本業は個人事業主なのだけど社会見学として働いているという人もいました。
なかには、普通に正社員として就業できそうなくらいスキルがありそうなのに、わざと単純作業ばかり選んでいるという。そうかといえば、これまで失業手当受給をくりかえし、いずれは株で儲けて誰かにこき使われずに生きたいという人も。働く理由はそれぞれです。

私の目的は、時給の魅力もさることながら、行政書士有資格者としての届出の経験を積めそうだからでした。
後から採用の新人のために、業務マニュアルを作成したり、メモや付箋を用意して労働環境をよくしたり。また、他業務チームからの苦情の調整係となったり。朝はせっせと早く来て、責任者がすべき備品の用意をしてみたり。自分なりに運営に貢献しているつもりでした。ところが逆に、勤務日数を1日減らされてしまったのです。

勤務日数を減らされた私は、仕事に気合を入れるのをやめました。
みんなも同情してくれました。ときには、同僚と意地の悪い上司や、あきらかにミスが多いのに叱られない同僚の悪口を言いあったりしました。しかし、そんなことをしても何かが変わるはずもなく。チームで運営しているのだから、人間関係がぎくしゃくすれば、サービスの質に響きます。気を取り直し、どうせ2箇月だけの仕事なのだからと、我慢して、みんなと仲良く盛り上げ役に徹しました。ときには自分が道化役になり、笑われる。雑用でもみんなのサポートに回っていく。おしゃべりに夢中になり過ぎて、本懐を忘れない。しかし、その陰では、しっかり次の職場探しの情報収集、業界研究、転職活動を怠りませんでした。

その結果。
無茶ぶり上司のために、やる気をなくして仕事を適当にサボっていた、業務命令をくりかえし無視していたひとは、まったく再就職先が見つからずじまい。私は水面下で涼しい顔して業務をこなしながら、ハロワにも通って応募書類作成や面接を潜り抜け、必要な資格の勉強すらも二日でこなし、3つの内定をゲットしました。面接は2箇月の間に10回近く行きました。同僚からは、抜け駆けしてずるい、とか言われましたが、笑って返しました。その仕事で受けた仕打ちに比べれたら、面接で言われた厭味など軽いものです。

その仕事はあきらかに、業務内容に比して給料が良すぎたのです。
そのため、他の方はハロワで紹介されるような月給の低い仕事に見向きもしなかった。同じような仕事は二度とこないでしょう。そして、民間会社の仕事は応募倍率が低いので、私のようなものでもすぐ内定が得られたのでしょう。勤務日数を減らしてもらったおかげで、平日の就活に専念できたのです。「どこで働いたか」よりも「何ができるか」を見つめなおしたのです。

私はその仕事で、かなり大事なことを学びました。
どんなに頑張っても努力が空回りすれば評価されないこと。
苦境に立たされても仕事の目的を見失わなってはならないこと。
自分の待遇に不満があるからと言って、就業環境を乱すようなふるまいをしないこと。
年齢に応じたスキルが伴わなければ、高学歴だろうが資格持ちだろうが見下されてしまうこと。
自分の仕事の苦楽ばかり求めずに、業務の流れ全体で自分の役割を考えること。
自分の貢献を過剰にアピールして気に入られようとしないこと。
勝手に自己判断せずに、迷ったときには上長の指示に従うこと。
好き嫌いでひとをえり好みしている管理者は、いずれ部下から嫌われること。
ひとには向き不向きがあり、特性に応じた業務配分をすべきで、決して自分と同じだけできるとは限らないこと。
他人のミスにはなるべく寛容になること。
仕事内容が単純であればあるほど、人的ネットワークの重要性が高まること。
ときには、率先して自分が汚れ役に徹してみること。
人に訊ねるのみならず、書類の意味を自分なりに調べて基礎的な理解を積んでおくこと。

正社員経験がある人ならばわかるはずです。
こんなことは、とっくの昔に。
なのに、短期雇用を繰り返していると、こうした仕事の胆に気づかないまま年をとってしまい、態度だけでかくなってしまいます。

短期雇用やパートタイムでの労働がいかに歯車で、置き換えられやすいものであるかを。面接でその業務に関することは一切質問されませんでした。いくら役所関係の仕事でも、短期ならば実績ではないと見なされるからです。そして、面接を何度も繰り返し、落とされ、蹴られ、を経験したからこそ、はじめて今の業務の良さがわかることもあるのです。転職が多すぎる人間には、大事な仕事が任せられません。その結果、社会人として貴重な経験を積む機会を奪われていくのです。

若い方に老婆心ながら、アドバイスします。
一時的な単価の高い仕事に就くのはいいですが、正当な価値に見合わない仕事はいつか消えてなくなります。私が担当した業務は、やがてマイナンバーが普及すれば要らなくなる仕事。だからこそ、報酬が高かったのです。短期で人を寄せ集めしなければなからなかったのですから。そして、いくら必死に業務を覚えても、また次の職場ではまた新しく覚えなおさないといけない。

正社員として定年まで勤めあげられた人はたとえさえない事務仕事でも、その会社へ貢献したことで社員に感謝されます。しかし、短期の業務、使い捨てのパートや派遣ではそんなことはありません。仕事でなにかを実現したいという欲が高まったとき、それに見合う実績や資格の勉強を怠っていると、生活のための好きでもない仕事しか選べなくなります。時給の高い派遣仕事ばかり選んでいた、かつての私がそうでした。年齢の割に社会人マナーが備わっていませんし、大目に見てもらえるうちはいいですが、やがて冷たく突き放されてしまうのです。転職活動では、「前職」「直近」での業務(直接雇用の)が注目されます。

くだんの前職で、冷遇されていたと思いながらも淡々と業務をこなした私は。
その最終日、現場責任者からいちばんいい仕事を与えられ、感謝の言葉も与えられました。私は、その仕事でこれまでなぜ失敗をしてきたかを学びました。報酬は減らされてしまいましたが、自分の慢心に気づかせていただいたのは、じつにありがたいことでした。

そして、いまコロナ不況で思ったように就業できない方も。
こんなときは、自分の職歴をみつめて、課題解決に向かうときです。仕事は縁ですし、お金は金融投資すれば増えますが、豊かな人間関係はついてきません。社会的距離が必要だからこそ、気遣いや言い回しが求められるのでしょう。いつか活路は開きます。




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