陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

人生100年時代、70歳まで働きますか?

2019-12-25 | 仕事・雇用・会社・労働衛生

2020年度予算案が閣議決定されたと、12月21日の読売新聞朝刊が報じています。
先日から報道されている全世代型社会保障検討会議の中間報告における、年金制度改革案や、75歳以上の後期高齢者の医療費負担を所得に応じて2割負担にするなど、これまでの高齢者重視の医療福祉政策から一転し、現役世代を含めた、労働、社会保障、医療介護が一体となった改革が進んでいるようです。

雇用政策に関しては。
就職氷河期世代への支援策が盛り込まれました。非正規雇用や無職引きこもり歴が多い人への資格取得、ハローワークでの相談窓口開設などのサポートが。職安における求人情報提供や失業等給付のみならず、キャリア形成や職場への定着まで面倒をみる支援とのこと。職に就いたはいいが、仕事が続かない人が多いのです。就職率だけの数字で問題解決したと見なさないでほしい。雇用保険にある教育訓練給付金も、キャリアアップの士業資格取得費用を支給するなど手厚くなっています。

社会保障の担い手を増やすために、65歳超えの定年延長や雇用継続を企業へ促し(あくまでも努力義務にとどまるが)、シルバー人材センターへの登録や、再就職支援など。高齢者が働くのはフレイル予防になりますし、認知症や健康障害を防ぐうえでもいいことです。雇用保険料も65歳以上は免除されていましたが、来年4月から徴収されます。そのいっぽう、在職老齢年金の限度額がひきあげられ、現役時代に高所得者だった高齢者が再就職しても豊かな年金をもらいながら働くこともできる件については、いまだに疑問がありますけどね。まあ、医療費や介護の所得に応じた相応負担が図られれば、世代間不平等も多少は和らぐというもの。

いずれにせよ、ますます進む少子高齢化、そして介護社会の到来。
就職氷河期世代の私たちは、キャリア中断した分、長く働けた方がいいに決まっています。厚生年金の適用拡大も検討され、事業規模が少ないパートタイム労働者でも加入できやすくなるでしょう。サラリーマン夫と専業主婦という昭和じみた社会保障モデルがようやく見直されるのです。

就職氷河期の私は、学生時代のバイトも含めて、非正規、正規雇用問わず、いくつかの業界、職種を歩きましたが、資格取得してのちは希望にかなった職場に巡り会えることが多くなりました。ただ、せっかく正社員になっても人手不足気味や人間関係が膠着した中小企業では、働きづらいことが多いものです。政府が旗振り役で働き方改革をと声をあげても、経営の厳しい企業では、長時間労働が蔓延し、パワハラが横行しつづけています。職場で嫌な目に遭うと就労意欲を失って、離職しがちになり、現場は人手が回らないので次に雇った人をすぐ追い出して…の悪循環になります。組織内の空気が悪くなるのは、個々人の気質のせいもあるのですが、経営陣が雇用者を大事にしないこと、業務量が過剰すぎること、様々な雇用形態があるひとが同じ場所で働くための相互理解が不足していることもあげられます。職場に他者をいたわることのできない意地悪なひとがいては、どんなに能力があるひとでも発揮できませんし、有望な人を締め出すので組織は改善せず、顧客満足度にも影響してしまいます。働きやすい職場づくりは大切なのです。

高齢者になっても働くことで社会とつながることは、とても大事です。
仕事で嫌なことも、疲れることもありますが、やはり人といっしょに何かを成し遂げる、誰かの役に立つ人生は、自尊心をほどなく高めてくれます。単身世帯が多い、同居した親が亡くなった、あるいは結婚して配偶者も子もいるがあてにならないなど、中年期以降の人生設計には、安定した雇用が欠かせません。これまで寡婦控除から除外されていた、未婚のひとり親への優遇策も認められ、やっと、この世のなかで声をあげづらかった方々の苦労が報われたのは喜ばしいことですね。

氷河期世代を救うためか、大企業や公務員など安定雇用の職場の人材流動も活発にするとの案も出ています。ただ、職務の長期キャリア形成もあるので、一概にいいとは言えないところです。中小企業と大企業の社員との格差を是正すること、および、ワークライフバランスを重視してあえて非正規労働を選んだ者でも、安心して暮らせ、万が一のときの医療や社会保障が充実している世であってほしいものです。非正規労働者であっても、短時間で成果を出し、職場でかなりの戦力になっている人はいます。待遇差別をなくせば、職場内の空気の悪さは緩やかになるでしょう。出産育児に、介護や看護に、あるいは学び直しで仕事を離れても、誰もが社会参加でき、世の中の支え手として感謝され、働く喜びがえられる、そんな日本になってほしいですね。

仕事で何度も絶望した、氷河期世代の私が願うことはただそれのみです。正直、この支援策があと10年早ければ、と思わないでもありません。私と同年代のひとが救われますように。


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