
むかし、某大学の研究会に参加させてもらっていたときのこと。
夏期の特別講義で早稲田大学から招かれた演劇論の教授が見せてくれたのは、「民族の祭典」やモノクロ写真。そして、ヒッチコックの映画でした。その時に観たヒッチコック作品を探し求めているですが、なかなか見つからないもので。
今日の映画「ふしだらな女」は、60分という短いものだったのでスキマ時間に鑑賞。
サスペンス要素はないが、ところどころヒッチコック手法と呼ばれる演出がちりばめられています。
1928年作だけあって、モノクロのサイレンと映画。ただし、VHSの音声がかなりよくてBGMだけはステレオサウンド。
冒頭は離婚法廷のシーンから。
酒乱の夫から逃げるように、若い画家と恋に落ちたラリータ。だが、三角関係の末に画家が自殺し、彼女は法廷で有罪判決を言い渡される。
苦い過去を忘れようと旅に出た先で知り合ったのは、青年貴族。愛に傷ついた女として言い寄ったラリータは妻として迎えられる。
だが、厳格な貴族の母親だけは、ラリータが気に入らない。そして、息子の嫁のおぞましい過去を掴む時が…。
筋書き的にはひねりもなにもないのですが、無声映画時代の俳優って表情や動きが豊かですよね。言葉が乏しい分、いろいろ読みこめますが、その分、説明が必要なほど複雑な物語はつくりこめなかったような。
男に身を寄せる時のしおらしさと、母親や家族を前にしての傍若無人な態度。女の豹変ぶりをよく表しています。
しかし、この時代の女性の瞳はとても濃いですね。
しかし、現代の貞操観念が薄れた映画を観ていると、「ふしだら」はもう死語であるような気がします。
この映画のヒロインは、過去が暴露されるとあっさり開き直っていますし、何がなんでも貴族と結婚したいわけでなく、ただ誰でもいいから幸せになりたかった寂しい人だったのではないでしょうか。
(2010年3月3日視聴)