「徐々に」、「ゆるやかに」ということです。
日本語でも「グレード(grade)」が上がる、というふうに使われていますね。
稽古はずいぶん進んで、といいたいところですが、ほんとに「ゆるやかに」進んでいます。
これまでの作品との大きな違いを言えば、通常は『本読み』→『たち稽古』みたいな勢いでいつもいってしまっていたのを、
『本読み』→『読み合わせ』→『立ち稽古』と、しているところです。
つまり『読み合わせ』を今回はちゃんとしている、ということです。
さて、ここで演劇関係者じゃない皆様向けに、解説をば。
今日、高校生たちに4回(4つの台本で4チーム作ったので)同じ説明をしました。
通常演劇の稽古は、顔合わせの後、作家もしくは演出家による『本読み』をします。
つまり作品を作家か演出家が実際に読んでいくんですね。
そうすると、だいたい作品の意図や演出家のやりたいことが見えてくるんで。
実際、ここはこういうことだ、とかこうしたいみたいなことをいう場合もあるようです。
(僕は他の稽古場にあんまりいってないからよくわかりませんが)
僕の場合は、俳優さんにまず読んでもらって、俳優さんの解釈や言葉になっていない感覚をせりふの読み方から確かめます。
その上で、今回こうしたい、とか、俳優さんが見落としていそうな点「・・・・・・」とか
今日だと「大黒」という呼び名が「オオグロ」、そして「グログロ」に変化している点を指摘したりして、
ここは、ちょっと気をつけたいです、とか、ここは少し考えておいてください、みたいなことを言います。
また、わかんないことは「わかんない」といって、俳優さんと一緒に頭を悩ませます。
結局読み合わせまで保留とか、動きに関することだとたち稽古まで保留とかにします。
その上で、通常は台本を俳優さんが読みあって、演出家が最初の注文?をつける『読み合わせ』があります。
10年目に気づきましたが「読み」「合わせ」るんですね、これ。
ぼくはついつい俳優さんが立たないと具体的なイメージが立ち上がらないので、気持ちがはやってすぐに台本持ちながらやらせる「荒立ち」に入ることがしばしばでした。
小劇場系はこれが多いんじゃないかな。
作家が演出をかねている場合も多いし。
でも今回、劇団員の提案もあって『読み合わせ』をしてみると、結構この時間は貴重です。
本読みだけでは得られないことがたくさん得られます。
そもそも上に書いたように、俳優さん同士の「読み」を合わせ、僕(演出)の意図と刷り合わせていく作業をここでするわけです。
演劇というジャンルは、作り方をばらしていいし、ばらしてから見るほうが楽しめる場合も多いと、
平田オリザさんと同じように僕も思っているので、ワークショップしたりしてますし、ここでもバラスと
今回はモノローグが半分ぐらいを占めています。
なんで、俳優さんと二人稽古でまずモノローグを固めています。
モノローグの中に回想シーンとしてダイアログが出てくるのです。
だから現在のキャラクターをまず作りたい、とおもって今その作業中です。
そして、モノローグばっかりだとお客さんも退屈するので、7つの発話方法にそのモノローグを分解し、
その発話の方法や声を俳優さんと考え、
さらに、現在、そして過去の回想時の自分、そして劇の終わるときのちょっと未来の自分、さらに大過去とでもいうべきなのかお互い相手に出会ったころの自分と4つのキャラクターを創造していきます。
発話方法はSpeak,Talk,Wonder……、あ、いっぱいありすぎてこれはちょっと退屈になりそうな説明なので割愛します。
つまり、ものすんごく丁寧に作っています。
稽古を始めてもうすぐ多分3ヶ月ぐらいが過ぎるはずですが、いまだにたち稽古には入っていません。
やっぱり徐々にじゃないと、とてもじゃないけれどもやっていけないんです。
でも人との関係って徐々に築いていくもので、それが壊れたから今取り組んでいる「チェロとケチャップ」の主人公たちも悩むわけですが、
僕と俳優さんの関係もこれだけ長くじっくりやれているのでたち稽古が楽しみです。
これで6作品目となる男優さんとは、これまでになかった以前の5作品での役柄への言及(これまでは二人とも映画好きなんで見た映画の役の話が多かった)とか、それから演出への口答え?じゃない、なんというか意見の提出が面白いです。
もともと12個上のこの俳優さんと組んだのは演出家の絶対権力にきちんと歯向かえる人とやりたかったからやったんですが、
それでも近年は時間もなかったせいか、わりと言うなりに動いてくれていたので新鮮です。
女優さんは、初めて組むんで、割と素直にいうことを聞いてくれます。
それでもこだわるところはきちんと主張してくれて、
関東の古典をしっかりやる、フィジカルにも強い、テレビには出ないことを誇りにしている有名劇団出身者だな、と強く感じます。
僕も今回はいくつか俳優経験をつんだので、素直にこの人たちのすごさがわかります。
このブログ連載も徐々に徐々にやってきて、11月でもう1年ですね。
今年も1周目のA:Artistで書いてたみたいに演出家として授業を僕の稽古場にする季節がやってきました。
とりあえず、みんな僕の演出を受けることを選択してくれましたが、どうなることやら。
でも僕もやるからにはいい作品を創るつもりです。
どうにも妹と同い年なんで甘くなりがちですが。
女の子が25人もいて総勢29人という大所帯なのもしんどいです。
でも、演出してるときは、僕はめずらしくかっこいいらしい。
案外みんな言うこと聞いてくれるかな。
あれ、じゃあなんで女優さん僕に惚れないんだろう。
(それは既婚者だからです)←いや、たぶんカッコいいというのがデマ
はい、今日は長文ですが、オチまでしっかり書きました。(終)
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