Re-Set by yoshioka ko

■「検証・韓国反米感情の深層」 第二回

 たまった新聞整理を続けていたら、米韓の〈いま〉を象徴する記事に出会った。

《以下引用》
 「偽札作りなど北朝鮮の不法疑惑に対する米国と韓国の立場の違いが一層際だってきた。韓国政府は(1月)25日、訪韓して「対北朝鮮包囲網」への同調を呼びかけたとする米側発表を公然と批判するなど、水面下の攻防だけに収まらない状況となっており、足踏みが続く6者協議への悪影響を懸念する声も出ている。(中略)盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領も25日、「北の体制を圧迫し、崩壊を望む米国内の意見には同意しない。そうした方法で解決しようとすれば韓米に摩擦が生ずる」と米国を牽制した」(1月27日『朝日新聞』)《引用ここまで》

 北朝鮮が作ったとされる偽のドル紙幣や資金洗浄疑惑をめぐって、北に対しては金融制裁を5カ国が足並みを揃えるべきだ、と奔走するアメリカに対して、韓国はそんなことをしたら北朝鮮を刺激するだけで、得にもならない、という態度を取っている、というニュースだ。

 米韓の不協和音は、北朝鮮の「核」協議をめぐって微妙な時期にもかかわらず止みそうにない。だがその兆候は、今に始まったわけではなかった。

 ということで、『検証・韓国反米感情の深層』。今日はその第二回。

 前回は、日米同盟の絆を強める日本の外務省からも、冷え込む米韓関係に懸念と不満の声が韓国政府に向けられ始めた、と書いた。その実態は、実は4年前の日韓共催によるサッカーワールドカップのときに、形となって韓国民の間に広がっていたのだ。

 それは2002年1月のブッシュ大統領の一般教書演説がきっかけだった。

■一般教書演説が与えた影響
 この年の一般教書演説でブッシュ大統領は、前年(2001年)から始めたアフガニスタンやパキスタン国境を戦場にした〈テロとの戦争〉では勝利しつつある、と宣言する一方で、核兵器または生物・化学兵器といった破壊的な兵器開発の疑惑を持たれている国としてあらたにイラク、イランそして北朝鮮の3カ国を〈悪の枢軸〉と呼び、〈テロとの戦争〉の対象と決めつけた。

 韓国人から見ればこの一般教書演説は、金大中(キム・デジュン)政権が4年間にわたって蓄積してきた北朝鮮に対する〈太陽政策〉を一刀両断に切り捨てたのに等しかった。そしてこのブッシュ演説は金大中政権を支持してきた勢力ばかりか、〈テロとの戦争〉だ、といって先制攻撃に踏み切ったアメリカの一国主義的な傲慢さに腹を立てていた人たちをも怒らせた。

 それにつけ加えれば、もうひとつ因縁めいたことがあった。

 ブッシュ大統領の一般教書演説からほぼ3週間後、同じアメリカ・ユタ州のソルトレイクシティーで開かれていた冬季オリンピックのショートトラック男子1500メートル決勝で、1位でゴールした韓国選手に失格の判定が出された。その代わりに優勝をしたのは韓国選手の妨害をアピールしたアメリカ選手だったが、この判定に納得のいかない韓国選手や観客、あるいは自宅でテレビ観戦をしていた多くの韓国人たちは、アメリカ選手の傲慢さのせいで判定が覆った、と映った。

 この2つの因縁。
 これらの因縁が〈宿敵〉となったアメリカ戦を前にしたサポーターたちの血をたぎらせていた。真っ赤なシャツに身を固めた彼らは〈赤い悪魔〉と呼ばれた。

 6月4日、その日、6万8千人収容の大邱(テグ)サッカー場は赤一色に埋まった。開始24分、まずアメリカが1点を入れる。韓国は押し気味に試合を進めながらも前半は無得点、後半も後が無くなったかに見えた終了12分前、この大会ですっかりヒーローとなった選手が頭であわせネットを揺らせたのだ。

 同点!

 そのときあるパフォーマンスが観客たちの目に飛び込んできた。何人かのサポーターたちが、アメリカのソルトレーク市で開かれた冬季オリンピックで、失格の判定を下された韓国人選手のスケーティングの真似を始めたからだ。それ見たか、韓国人選手の強さを・・・、と失格判定への憂さ晴らしにも見えた。

 大人げない、といえば大人げないが、その映像を見ながら私は全く別のことを感じた。それはこれまでほとんど見ることのなかった韓国人の〈反米感情〉の露出、ということだった。

 試合は1対1の引き分けに終わったが、韓国は次のポルトガル戦に勝ち、決勝トーナメントへの切符を手に入れた。共催国としての責任を果たした韓国は国中がお祭り騒ぎだった。首都ソウルの市庁舎前広場は〈テ・ハン・ミン・グック〉と叫ぶ〈赤い悪魔〉軍団で埋まり、100万人が集まった、と外信記者たちは世界に発信した。

 そして、反米感情をさらに高まらせることになる事件は、そのさなかに起きていた。(第三回に続く)

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