自衛隊のイラク派遣は、そういえばそういうことがあったよな、的な感覚になってしまっているのではないだろうか。派遣決定に当たっては、法的基盤の薄さや憲法との整合性など疑念噴出だったのに、いったんことが収まってしまうと、時間の経過と共に忘れてしまう。いや「マヒ」してしまう。次から次へと唖然、ビックリ、驚きの事件が発生すれば、忘れてしまっても仕方がない面もある。
しかし、である。国の、国民の暮らしに大いに直結する事柄を事件感覚で眺めていては、必ずほぞを噛む。そんな思いを持ってこの記事を読んだ。
《以下引用》
「政府が、イラク南部サマワに派遣している陸上自衛隊部隊について、来年6月から撤退を開始、8月中に完了させる方針を米側に伝達していたことが6日、分かった。複数の政府、与党関係者が明らかにした。サマワを含むムサンナ州の治安維持に当たる英軍、オーストラリア軍が来年5月に撤退するとされる状況を踏まえるとともに、9月の自民党総裁任期切れで退陣の意向を表明している小泉純一郎首相の在任中に、派遣を終える狙いがある」(12月7日『四国新聞』)《引用ここまで》
どう読み解くかは難しいところだ。良かった、と思う人はたくさんいるかも知れない。「だってそうだろう、そもそも最初から、ブッシュ大統領と小泉首相の約束ありき、の派遣だった。憲法も解釈次第。そんなすっきりしないものなのだから撤退は当然のことだ」というわけだ。
隊員の家族にとっては、まさに朗報に違いない。
逆に首をかしげる人もいるかも知れない。ようやく自衛隊の海外派兵が可能になったのに、ここで引き揚げるとはなんたることか、というわけだ。
もはやイラク戦争の正当性が全くなくなってしまっている現状からすれば、自衛隊の撤退は当然である。だから元のスタート地点に戻ったのだ、などと理解すれば、それは大いに筋違いというものである。
自衛隊派遣からこの1年の間に、日米関係はさらに深まった。いま急ピッチで行われている「在日米軍再編」の真の目的は、ひとことでいえば、共通の「目標」に向かって、アメリカ軍と自衛隊が共同で対処する、ということである。共通の「目標」というのは、アルカイダであったりイスラム過激派テロリストであったり、あるいは北朝鮮であったり、場合によっては中国であったりもする。〈不安定な弧〉と日米が呼ぶ地域のことである。
そして共通の「目標」に対処すると約束した以上、いったん事が起きれば、自衛隊はアメリカ軍と共に、アフリカから中東、インド洋、南アジアから北東アジアにまで派遣されることになる。これが自衛隊がイラクに派遣されている間に協議され、合意された「在日米軍再編」なのである。
そんなこといつ合意されたんだ、といっても始まらない。小泉さんお得意の〈目くらましの術〉にはまってしまっていたのかも知れない。イラク撤退に喜んでいる場合ではない状況が、もう目の前にまで来ているのだ。
この文章を書いて4時間経ったいま、日経新聞夕刊はこんな記事を載せている。
《以下引用》
「訪米中の前原誠司民主党代表は6日、エデルマン米国防次官(政策担当)と会談した。同次官は先に日米が合意した在日米軍再編に関する中間報告について「ほぼ最終報告と考えている」と述べ、修正には応じられないとの方針を表明した。同次官は米政府が自衛隊に新たな任務を要請したとの観測がでていることには「具体的には知らない」と説明。ただ「一般論としては活動が終わった部隊に別の駐留の可能性を提案することは当然、あり得る」とも指摘し、陸上自衛隊が駐留する南部サマワとは別の地域での活動などを要請する可能性を示唆した」(12月7日『日本経済新聞』夕刊)《引用ここまで》
ね!こんな感じで物事は先に進んでいくんですね。
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