中国の思惑。核やミサイルをめぐる6ヵ国協議の議長国という立場と、朝鮮戦争時以来の血盟関係という立場のどちらに重きを置くかによって、変ってくるのだろうと思う。議長国である以上は、北朝鮮が「アレは軍事訓練の一環だ、何が悪い」といっても、この期に及んでそういう言い方はないだろう、といえるはずだ。平時ならともかく、北朝鮮は今も戦時なのだ。
血盟関係に重きをおけば、どうなるか。早々簡単には制裁決議に賛成するわけにはいかないだろう。なぜならば、中国よ、お前もか?となれば、自暴自棄とはいわぬまでも、相当孤立感にさいなまされるに違いないからだ。
従って、中国の答えは、制裁を伴わない決議、つまり議長声明がぎりぎり辛抱できる範囲ではないか。
アメリカ。これはブッシュ政権が続く以上は強攻策一本いくだろう。つまり北朝鮮が喉から手が出るほど望んでいる「米朝対話」は実現しない。
ロシア。一番困った立場にたたされているのがロシアではないか。7月にはサンクトベルグでのサミットが開かれるし、そのホスト国としては、これだけ批判も高まっている北朝鮮のミサイル発射を、擁護するわけにはいかない立場でもある。なにしろ事前の説明もなしに(?)ロシアの東玄関でもあるウラジオストックあたりにミサイルは着水しているのである。それだけでも怒る理由があるというものである。
だからといって日米などが出した制裁決議に賛同するか、といえば、そこには疑問符がつく。なぜか?「9・11」事件後こそロ米関係は蜜月だったものの、今では潤沢な地下資源を背に、急速にアメリカ離れがはじまっている。「大国ロシア」こそがプーチン大統領が望むことであり、この場合、制裁決議ではない独自案を出す可能性の方が高い。あるいは棄権するか、どちかだろう。
韓国。基本は「対話路線」。韓国が最も恐れていることは、日米が強硬に出ることによって、韓国までもが思いもよらない形で、予期しなかった事態に巻き込まれてしまうことであろう。ただ日米が韓国の思惑を汲み取るか、といえば、今回はまったくノーだ。そうすると、制裁決議に乗るのかどうか、ということになる。多分トーンを落とした非難決議か・・・。棄権は出来ないと私は見る。そんな事をしたら、韓国と日米との関係が急速に悪化するに違いないからだ。
さて、日本。今の政府高官の発言を聞いていると、最も危うい状況が作られているのではないか。外務大臣も防衛庁長官も、「徴候があれば、その前に叩いてもいいじゃないか」とまでいう。つまり、戦争も仕方ない、といっているのと同じニュアンス。
戦争を起さないために何をするか、というのが英知というものである。その英知を端から無視した発言は行き過ぎである。
ということで、北朝鮮に対する今夜の国連安保理での採決は、ひょっとすれば東アジアの歴史に特別な一行が書かれることになるかもしれない。
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