《以下引用》
「村井知事は16日の記者会見で、県内のエイズ患者やエイズウイルス(HIV)感染者について「特別な仕事に従事している人たちの間で非常に感染度が高いと承知している」と述べ、外国人女性が多いとの認識を示した。だが、昨年1年間に県内で新たに届け出のあった患者らの8割は日本人で、専門家から知事の認識不足を指摘する声が出ている」(2月17日『信濃毎日新聞』)《引用ここまで》
8割が日本人だったのだから、知事の認識不足も恥ずかしい。しかしもっといただけないのは、エイズやHIV感染に関する知事の差別的な認識だ。まず「特別な仕事に従事している人たち」という感覚は、血液製剤による被害者を愚弄するばかりか、一般県民のエイズやHIV感染に関する理解を誤らせる。
次にエイズやHIV感染者はなにも「特別な仕事に従事している人たち」に限らない。性産業や麻薬といった社会での感染はあるにしても、いまは異性、同性に関わらず、普通の人びとや一般家庭での感染が杞憂されている。そういう広がりに注意を喚起するべき立場であるはずの知事のこの発言は、誤解を生むだけである。
エイズが国を滅ぼす、とまでの危機感を持ったタイでは、エイズ感染者やHIV感染者を減らすために、首相を総責任者にした国を挙げて大キャンペーンを行った。その結果、感染者数の激減に大いなる効果を上げた。
それは「エイズやHIVは普通の病気だ」という考えを根底に、テレビやラジオによるコンドームの使用を訴えたCM、小中高におけるエイズ教育、会社や企業での社員教育と、それは徹底を極めた結果だった。
「特別な仕事に従事している人たちの病気」という認識では、エイズやHIV感染者は社会に潜り込むだけである。そうして感染者の数だけは増えていく。そうではなく、普通の、誰にでも感染の可能性のある病気だ、という認識が広まれば、そういう理解が行き届けば、初めて感染にストップがかけられる。
知事は、そういう対策の先頭に立つべきなのに、この程度の認識では寒々しい限りだ。
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