Re-Set by yoshioka ko

■これで、真実に近づくか?

 ご両親の思いは、いかばかりか。私は、ふたつの意味でそう思う。まずはそれを伝える記事から。

《以下引用》
 「拉致被害者の横田めぐみさんに関する北朝鮮側の嘘(うそ)がまた一つ明らかになった。めぐみさんの娘キム・ヘギョンさん(18)との親子関係が、日本側のDNA鑑定で証明された韓国人拉致被害者の金英男(キム・ヨンナム)さんは、北朝鮮が「自国の特殊機関勤務員」と説明してきた男性だった。「国家の犯罪」により娘とのきずなを引き裂かれた両親は、度重なる虚偽の説明に翻弄(ほんろう)され続けている」(4月11日『読売新聞』)《引用ここまで》

 横田さんご夫妻の人生は、その大半を娘のめぐみさん探しに費やされた。テレビに映し出されるご夫妻の姿を見るたびに、思いはいかばかりか、といつも思う。

 そして今日も、めぐみさんの夫は、北朝鮮がいうように「キム・チョルジュン」ではなく、1977年頃に韓国で拉致された韓国人男性の「キム・ヨンナム」氏と判明した、というテレビが伝えるニュースの中に登場し、めぐみはこれで生存している可能性がさらに高まった、というお話しをしていた。お二人からは親としての心情がいつも痛く伝わってくる。

 その上で、夫が拉致された韓国人だった、という事実を前に、私はちょっと悲観的な思いを禁じ得ない。それは韓国と北朝鮮のいまの関係を考えれば、横田さんご夫妻が「韓国も一緒になって北に圧力をかけましょう」という願いが通じないのではないか、と思うからだ。

 韓国には、同じように北朝鮮によって拉致された人びとがおよそ500人いる。家族たちは、金大中大統領にも盧武鉉大統領にも、日本と同じように拉致家族の願いを聞き届けて欲しい、と言い続けてきた。しかし、韓国の政府はこの間、北との親密な関係を壊したくない、という政治的判断で、拉致家族たちの願いをないがしろにしてきたという経緯がある。

 今日めぐみさんの夫が拉致された韓国人だった、ということが判明したことで、日本政府としては、韓国もまた北朝鮮に圧力をかけて欲しい、という要求をするものと思われる。実際、小泉首相は定例のぶら下がりインタビューで、そのような主旨を述べ、韓国政府とは緊密な連絡を取っていきたい、といっている。

 拉致事件は犯罪であり、人権問題である。政治的な判断から韓国政府は自国民の拉致事件には冷淡な姿勢を取ってきたが、夫が拉致された韓国人だったというDNA鑑定を前にして、今後どういう姿勢を見せるのだろうか。

 韓国からすれば、小泉首相の靖国参拝が日韓関係をダメにした、という思いがある一方、北朝鮮の核問題では、6カ国の中では韓国こそがイニシアチブが取れると自負してきた。それ故に、対北関係を壊したくない、という思いもある。

 日本とすれば、拉致問題は政治的な範囲を超えた人道的な問題であり、冷え切った日韓関係を超えたものだ、それにせっかくの日朝首脳会談も、拉致問題で頓挫したままであることを考えれば、一緒になって北に圧力をかけよう、というしかない。

 ひとことでいえば、北朝鮮の狡猾な外交戦略と戦術に翻弄されっぱなしの日本政府と韓国政府という図式だが、そうであれば横田さんご夫妻にとって、娘の夫が拉致韓国人だったという今日のニュースは、必ずしもめぐみさんとの再会が近づいたことを意味しないのではないか、と私は危惧する。

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