今日は市議会で、千葉市議会議員団研修会が開催され、「地方創生と脱炭素の同時解決に向けた課題とビジネスチャンス」をテーマに、千葉大学大学院・社会科学研究院教授の倉阪秀史氏が講演しました。講師は、廃棄物減量等推進審議会と環境審議会の委員を務めています。
まずは、環境に携わる科学者が一致して「地球温暖化は人為的なもの」としています。地球温暖化の現状と、世界の脱炭素に向けた取り組みの状況などを紹介。世界各国の温室効果ガス削減目標を実行しても、気温上昇を1.5℃に抑えることができず、さらなる対策が求められていることは周知の通りですが、北大西洋に暖流が来なくなることや、複合的な環境問題が出て、ここまで来ると人間での対策は困難になることが予想され、地球温暖化対策を本格的に進めなければならない状況にあると指摘されています。
日本でも2021年に地球温暖化対策推進法の改正を行い、2050年までの期限を法律に書き込み、取り組むとしています。しかしながら日本は化石燃料輸入国であり、総輸入量の21%は「鉱物性燃料」であり、海外に流れる国の富を国内にとどめることができれば、エネルギー安全保障につながるとしています。
石炭火力発電所のエネルギー効率は6%であり、大きく損失していることや、遠くから電力を賄うやり方は非効率で、発電時などで捨てられている熱の利用として、幕張新都心の京葉線から南側で実施されているとのことです。熱導管は日本では導入されていないため、日本が政策として取り組むのかがポイントになるとしています。
建築物における省エネルギーとしては、「ZEB」の取り組み、環境配慮建築物により、一次エネルギーを自社で賄う企業も出てきています。壁面太陽光発電などの技術開発が進めば、さらに高いビルについて「ZEB」化は期待できるそうです。
発電電力量・電源構成では2030年には再エネを36〜38%、原子力も20〜22%と併記しています。倉阪氏は核融合を行う原子力発電は「夢の技術ではない」とし、原子力発電所は電力会社にとっては使い倒して利益を上げたいとして延長を求めているが、原子力が本当にバラ色なのか、事故のリスクや廃炉のコスト、運用コストがかかることを認識すべきではないか、日本本土にある原発はシャットダウンすべきと指摘しました。
再生可能エネルギーは、すでに実用化され、千葉県ではソーラーシェアリングで進んでいる地域で、研究も進められ、将来的には海洋エネルギー(波力、海流力など)も使用でき、日本は再生可能エネルギーに恵まれた国と言えるとのこと。また変動する再生可能エネルギーを安定的に利用するための蓄エネルギー技術を普及させることによって、必要なエネルギー需要を賄う社会になるとしています。大型の蓄電池を本格導入すれば電気自動車も価格が安くなり、ガソリンスタンド業界もシフトすることによって、自動車の所有者の利便性も、それを扱う業界の利益にもつながるという「妄想」があると倉阪氏。洋上風力の技術も日本は持っているので、世界に広げることができる、そうした方向を目指すべきではないかと提案されました。
エネルギーについて、①確実・安全かどうか、②日本の産業の発展につながるかどうか、③地方創生につながるかどうかの判断をすること、千葉市の取り組みの事例を全国や他の地域に波及することができるかが今後問われてくるとしてします。重点政策として、自家消費型の太陽光発電、地域共生型の再エネの立地、省エネ再エネ電気調達、住宅・建物の省エネ性能の向上、ゼロカーボン・ドライブ、資源循環型経済への移行、食料・農林水産業の生産性向上などの取り組みが求められているとのことです。
倉阪氏が研究をしているエネルギー供給量も地域エネルギー自給率100%を超える自治体は、震災後10年間で4倍に達し、「永続地帯2022年度報告書」で公表されています。カーボンニュートラルの取り組みも自治体単体だけでなく、連携して取り組み、連携した相手との交流も含め、地方と一体に取り組むことが必要ではないかということでした。
今日の講演については、議員だけでなく、市民の方にも聞いていただきたい内容です。次の世代に地球温暖化を強いるのではなく、今の世代が真剣に向き合い対策を進めていくことが求められているということをあらためて学びました。