昔から好きな詩人の一人。 今は亡き川崎洋さん。 視点がやさしさにあふれているのに、どういう訳かどこか鋭い。この感性がすごくいいのです。 4月、新しいスタートの方々に贈ります。
いま始まる新しいいま
川崎 洋
心臓から送り出された新鮮な血液は
十数秒で全身をめぐる
わたしはさっきのわたしではない
そしてあなたも
わたしたちはいつも新しい
さなぎからかえったばかりの蝶が
生まれたばかりの陽炎の中で揺れる
あの花は
きのうはまだ蕾だった
海を渡ってきた新しい風がほら
踊りながら走ってくる
自然はいつも新しい
きのう知らなかったことを
きょう知る喜び
きのうは気づかなかったけど
きょう見えてくるものがある
日々新しくなる世界
古代史の一部がまた塗り替えられる
過去でさえ新しくなる
きょうも新しいめぐり合いがあり
まっさらの愛が
次々に生まれ
いま初めて歌われる歌がある
いつも いつも
新しいいのちを生きよう
いま始まる新しいいま
今、ビル エヴァンスのJAZZを聞きながら、「余市」のグラスを傾けています。 眠りにつく前の至福の時、今日を思い、明日を想い 。