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本の題名『放火殺人~日本人の親子関係がつくるパニック障害』
著者 坂口由美
出版日 2024.12.
18. 平成18年6月のことです。中間テストがありました。英語のテストです。51点でした。「学年平均は71点。このクラスの平均は72点だ」と担任の先生が言いました。パパのキレて怒っている顔が思い浮かびました。帰宅して、パパに「平均より7点良かった」と言ってしまいました。すぐその後で、6月20日に保護者会があることを思い出しました。「嘘と吐いたら殺す」というパパの声と、ゴツンと殴られる感じを思い出しました。パパの、ふんっ、ふんっという鼻息が耳元によみがえりました。このままでは、殺されると思いました。
19. 6月20日までにパパを殺して家出するしかない、と思い込みました。6月7日の授業中、包丁で刺す方法を思いつきました。でも、殴られたときのゴツンとう感じを思い出しました。切りつけても大怪我したパパに殺されるのじゃないだろうか。
20. 次に考えたのが野球のバットで殴り殺すことです。パパが寝ている時に、寝室に入ってバットで殴る。でも、よく考えると家にはバットがない。貯金は3000円しかない。バットは2000円もする。家出するとお金がかかる。バットを買うとお金が足らない。
21. ゴルフクラブで殴り殺すことも考えつきました。家にはゴルフクラブは5本あります。しかし、ボールを打つ部分が小さい。振り回して頭に命中させる自信がない。
22. これならと思いついたのが剣道で使う竹刀です。高校に入ったとき、剣道部に入ったので買ってもらいました。素振り用で、中に鉄の芯が入っています。これならいけると思いました。
23. 6月10日。深夜。パパの部屋に入りました。よく眠っていました。じっと見ていると、パパはパッと目を開けました。あわてて竹刀を隠しました。パパは起きて部屋から出てきました。「何をしているのだ」と聞かれたので「トイレに行く」と答えました。
24. 6月14日。竹刀で殺すやり方は失敗しました。そこで思いついたのが家に火をつけて焼き殺す方法です。木造の家だから、良く燃えて完全に焼け死んでくれると思いました。
25. 6月18日。石油を家の中で探しました。初夏でしたので、見つかりません。そこでサラダ油がいいと思いつきました。決行日は19日。午前3時。時計にアラームをセットしました。ところが、目覚ましに気づかずに寝過ごしました。朝になっていました。
26. 6月19日。英会話学校から帰宅したのが午後10時です。「今日、お父さんは帰って来ないよ」と継母が言いました。でも、計画は中止できない。とにかく父親から逃げなければならない。そうしなければ、殺されるじゃないか。時計を午前二時にセットしました。ところがまたもや寝過ごした。ふっと目が醒めると午前4時15分になっていた。放火予定よりも何と一時間も遅れている。大変だ。遅刻だと焦って、変装用の帽子とサングラスを用意しました。お金は3000円もあります。連絡が取れないように、携帯電話は二つに折ってパキンと壊して、その場に捨てました。登山靴を持ち、台所にミニチョコクロワッサンがあったので、お腹が空いたら辛いと思ってカバンに入れました。すぐ逃げられるようにと勝手口の外にカバンを置いて、ドアを開けておきました。2本のサラダ油の蓋を開けて、父親の寝室、自分の部屋に満遍なく撒いた。台所にあったタオルをガスコンロに近づけて火を付けてサラダ油を撒いた廊下に置きました。でも、想像したことと違って、一気にバッとは燃え上がらない。近くにあった袋や封筒をタオルの側に置いて火を増やすと、やっと秘が50cmくらいの高さになりました。ちゃんと燃えるだろうか?消えるのじゃないか?そんなことを考えて家を出ました。午前5時でした。