トランプ米大統領は、国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長を務め、新型コロナウイルス感染症の流行時には大統領首席医療顧問も務めた経歴を持つアンソニー・ファウチ氏の警備を打ち切った。これまで同氏への警備は国立保健研究所(NIH)が費用を負担する形で提供していた。事情に詳しい情報筋がCNNに明らかにした。
警備は23日夜から停止されているという。
新型コロナのパンデミック(世界的大流行)時、前面に立って対策に当たったことから、ファウチ氏は現在も複数の脅迫を受けている。今後は自身の私的な警備を雇用し、費用も自ら支払う形になると上記の情報筋は述べた。
『花とみつばち Privacy non-protected』鬱を消す絵本
原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン『親指姫』
魔法のチューリップ
むかし、一人の女の人がいました。
その女の人はかわいい子どもをさずかりたいと思っていました。
魔法使いのおばあさんのところへ行きました。
おばあさんは特別な大麦を女の人の手の中ににぎらせました。
「いったいどうなるのかしら。」と女の人が考えていると、植木鉢に蒔いた大麦の芽がもぞもぞ動いていました。
にょきにょきのびて、しだいにはっぱをつけました。まるでチューリップのようでした。
「それにしても、きれいなお花ね。」と、女の人は言って、赤い花びらにキスをしました。
花びらはきらきら光っていました。
女の人がなんどもなんどもキスをすると、ぱっと花が咲さきました。
本当にチューリップが咲いたのです。
女の人はチューリップを見て首をかしげていると、花の真ん中に人がいることに気がつきました。
つやつやした緑色のおしべにかこまれて、とても小さな女の子がかわいらしく座っていたのです。
女の子はおやゆび半分の大きさしかありませんでした。
あまりにも小さいので、女の子は『おやゆび姫』と呼ばれることになりました。
カエルの王様
ある夜のことでした。
おやゆび姫がかわいいベッドの上でぐっすりねむっていると、大きなヒキガエルが一ぴき、部屋の中に入ってきました。
みにくく、じめじめしたヒキガエルです。
「かわいい子だわさ。息子のおよめさんにちょうどいいだわさ。」
浅い小川の岸に、ぬまになっているところがありました。
そこにヒキガエルはむすこといっしょに住んでいました。
むすこガエルは母ガエルよりもっとみにくくて、きれいなベッドにねているおやゆび姫を見ても、「ゲーコ、ゲーコ、ゲーコ。」と鳴くだけでした。
小川の底からたくさんのハスを摘み、クルミのからを並べて、二人が結婚生活を送る、特別な部屋をこしらえました。
おやゆび姫は緑のはっぱの上に座ってしくしく泣きました。
あのヒキガエルとみにくいむすこガエルのおむこさんといっしょに住むなんて、考えるだけでがまんなりません。
その一部しじゅうをメダカたちが水の中で泳ぎながら聞いていました。
メダカたちはおやゆび姫を見てみようと水面に頭を出しました。
見たとたん、美しさに心を打たれてしまいました。
こんな子がみにくいヒキガエルたちと暮らすなんてあんまりだ、とメダカたちは思いました。
「だめだ。そんなことをさせてなるもんか!」
メダカたちはくきをかみ切ったのでした。
はっぱはフワッと水面に落ちて、川を流れていきます。おやゆび姫はどんどん岸から遠ざかっていきました。
やがて、大きなコガネムシが飛んできました。
コガネムシはおやゆび姫を見つけるやいなや、前足で細い腰をぐっとつかみ、木の上まで連れていってしまいました。
「かわいいじゃん、かわいいじゃん。コガネムシには見えないけれど、かわいいじゃん。」と、コガネムシは言いました。
コガネムシの奥さんは「ふん! この子ブスねぇん。」と、口をそろえて言います。
でも、だれがなんと言おうと、おやゆび姫はとてもかわいいのです。
おやゆび姫をさらってきたコガネムシだって、今の今までそう思っていました。
なのに、あまりにもみんながみにくいみにくいとはやし立てたので、このコガネムシまでおやゆび姫がみにくいと思ってしまいました。コガネムシはどうしようもなくなって、「おまえなんかどこへでも勝手に行っちゃえばいいじゃん。」と、言いました。
おやゆび姫をつまんで木から飛びおりると、ヒナギクの花の上にちょこんと乗せて帰ってしまいました。
おやゆび姫はめそめそ泣いていました。
コガネムシとお友達になれないほど、自分はみにくいのかと思いました。
なみだが止まりませんでした。
でも、おやゆび姫はバラの花びらのようにおしとやかでやさしく、この世の中でいちばん愛らしい人間なのです。
やがて、おやゆび姫は野ネズミの家の玄関を見つけました。
野ネズミはおやゆび姫がとつぜん来たにもかかわらず、とても喜びました。
ある日、野ネズミは、「近いうちにお客さまがいらっしゃるよ。」と言いました。
「ご近所さんがね、週一回ここをたずねてくるんじゃよ。その人、わたしよりお金持ちでね。大きな部屋がいくつもあってね、つやがあってきれいな黒いコートを着ているんじゃよ。お前さんにあの人みたいなおむこさんがいれば、きっと何不自由なく暮らせることでしょうねぇ。でも、あの人、目が見えないから、お前さんの知っているとびきりのお話を一つ二つしてやんなさい。」
お金持ちのモグラ
とはいっても、おやゆび姫はご近所さんに気なんてありませんでした。というのも、その人はモグラだったからです。
でもやっぱり、モグラはつやつやのコートをめかしこんでやってきました。
野ネズミの説明では、モグラは大金持ちでそれに物知りで、家は野ネズミの家の二十倍もあるそうです。
モグラがお金持ちで物知りなのはまちがいありません。
ですけれども、口を開けば、太陽はばかばかしいだの、花なんてかわいくないだの。
一度も見たことがないから、モグラはそう言うのです。
つい最近、モグラは野ネズミの家とモグラの家をつなぐ通路をほって作っていました。
そこでモグラは言いました。
「おやゆび姫、この通路、好きなときにいつでも通ってよろしい。ただし、通路に鳥の死がいが転がっている。見ても、怖がらないでくれたまえ。」
くちばしも羽根もちゃんとついた鳥が、通路に本当に転がっていました。死んでからそう経っていないようでした。
かわいそうに、ツバメはこごえ死んでしまったようでした。
おやゆび姫は小さな鳥を見て、悲しさと愛らしさがあふれてきました。
このツバメは夏の間ずっと歌い続けて、おやゆび姫のためにすてきにさえずっていたのです。
しかしモグラは足でツバメをわきに押しやって、言いました。
「もうこいつは一言も歌わないだろうよ。この小鳥、なんてみじめなつきの下にお生まれになったんだろうね! ぼくの子どもが鳥でなくて本当によかったよ。あいつらは鳴くことしかのうがないんだからね。『キーヴィ、キーヴィ』ってさ。そのあげく、冬にははらぺこでおなくなりになってしまうんだ。」
燕の悲恋
おやゆび姫は頭におおいかぶさっているやわらかい羽をそっとのけて、閉じられたまぶたにキスをしました。
「もしかして、あなたは夏の間わたしに歌ってくれた鳥さんじゃありませんか?」と、言いました。
「わたしをとっても楽しませてくれた、大切ないとしい鳥さん。」
「さようなら、かわいい小鳥さん。」と、おやゆび姫は言いました。
「さようなら。夏の間、木がみんな緑づいたときも、あつい日ざしが照っていたときも、楽しく歌ってくれてありがとう。」
おやゆび姫は頭をツバメの胸の上にぴっとりと寄せました。
そのとき、ツバメの身体の中から、何かへんな音が聞こえて、いっしゅん不安になりました。
「ドクン、ドクン。」ツバメの心臓の音だったのです。本当は死んでなどいなかったのです。
寒さのために死んだようになっていただけで、ぬくもりが命を吹き返させたのです。
ありがとう、かわいいおじょうさん。」と、病気のツバメは言いました。
「ちょうどいいあたたかさだったよ。すぐに力がみなぎってきた。もういちどあたたかい日ざしのなかで飛べるよ。」
冬の間ずっとツバメは通路の中にとどまっていました。
おやゆび姫はせいいっぱい世話をするうちに、ツバメが好きになってしまいました。
しかし、モグラも野ネズミもこのことは何も知りません。
というのも、二人はツバメが気にくわなかったから、気づきもしなかったのです。
あっという間に春がやってきて、お日さまが地面をぽかぽかさせました。
ツバメはおやゆび姫にお別れのあいさつをしました。
ツバメはおやゆび姫に、「ぼくといっしょに行きませんか?」と聞きました。「君の大きさなら、ぼくの背中に乗れますよ。ぼくといっしょに、遠くの『緑の森』へ行きましょう。」
でも、おやゆび姫は行ってしまって野ネズミを一人きりにすれば、とっても悲しむにちがいない、とわかっていました。
だからおやゆび姫はこう言いました。「ごめんなさい、遠りょしておきます。」
「ごきげんよう、そしてさようなら。君はほんとに優しくかわいいおじょうさんだ。」と、ツバメは言いました。
そして太陽の光の中へ旅立っていきました。
ツバメを見送るおやゆび姫の目には、なみだが浮かんでいました。
おやゆび姫はあのかわいそうなツバメが大好きだったのです。
「キーヴィ、キーヴィ。」と、ツバメは歌いながら、『緑の森』へ向かって飛び立っていきました。
おやゆび姫はとても悲しみました。あたたかいお日さまの下に出ることは、許されませんでした。
毎朝お日さまがのぼるころ、毎晩お日さまがしずむころ、おやゆび姫は戸口からそっと外へぬけ出します。
すると、いつも風が吹いて、麦穂むぎほがばさっと横にたおれて、そのすきまから青空が見えるのです。
『外の世界って、とってもきれいで、なんて晴れ晴れしているんでしょう。』と、おやゆび姫は思いました。
『大好きなツバメさんにもういちど会いたいのです』
おやゆび姫は強く願いました。
でも、ツバメは二度と帰ってきません。すてきな『緑の森』へ飛んでいってしまったのですから。
秋がやってきて、おやゆび姫のよめいり道具いっしきはみんなととのっていました。
そして野ネズミはおやゆび姫に言いました。「ひと月したら結婚式をあげるわよ。」
おやゆび姫はひっきりなしにしくしく泣きました。
「モグラさんとは、気が合わないの。だから、結婚したくありません。」と、言いました。
「ばかなことを言うんじゃないの。」と、野ネズミは返事しました。
「今はいこじになっちゃだめじゃ。さもないとこの白い歯でかみつくよ。あんなイイ男そこいらにはいないんじゃ。女王さまだってあんなきれいでぴかぴかの服とか、毛皮は着ないんじゃよ。台所も貯蔵室ちょぞうしつも食べものでいっぱいで、こんな運命のめぐり合わせに感しゃすべきじゃよ。」
いよいよ結婚式の日取りが決まりました。
その当日に、モグラはおやゆび姫を地中深くに連れていくつもりでした。
いっしょに暮らすためなのですが、おやゆび姫はいやでした。
あたたかいお日さまがもう見られなくなるからです。
美しいお日さまに別れを告げなければならないのです。
それを考えると、悲しくてしかたがありません。
いままで、野ネズミは戸口に立ってお日さまをあおぐことだけはゆるしていました。
おやゆび姫は最後の一回、とお日さまを見に行きました。
「さようなら、明るいお日さま。」と、おやゆび姫は声を張りあげ、お日さまへ腕をぴしっとまっすぐのばしました。
「さようなら、さようなら。」と、おやゆび姫は何度もくり返しました。
そして近くに生えている小さな赤い花をだきしめました。
「もしあのツバメさんに出会ったら、あなたからよろしく言ってね。」
「キーヴィ、キーヴィ。」とつぜん上の方から声が聞こえました。
おやゆび姫は空をあおぎました。すると、手のとどきそうなところにそのツバメが飛んでいるのです。
ツバメはおやゆび姫を見つけると、すぐによろこんで地面におりたちました。
それからおやゆび姫はツバメにこれまでのいきさつを話しました。
たちのわるいモグラと結婚するはめになって、地下深くで暮らすことになったので、これからは明るいお日さまが見れなくてしょぼんとしているということを。しゃべりつづけていると、おやゆび姫はいっそうしくしく泣くのです。
「寒い冬がもうそこまでせまっている。」と、ツバメは言いました。
「そしてぼくは南の国へと旅立たなきゃいけない。ぼくといっしょに行きますか?」
「――ええ、わたし、あなたといっしょに行きます。」と、おやゆび姫は言いました。
そして鳥の背中に座って、空いっぱいに広げたつばさの上に足をかけて、そして一番丈夫な羽の一つに腰のリボンをくくりつけました。
ツバメは大空へと舞い上がりました。森を越え、海を越え、万年雪におおわれた山々を越え、飛んでいきました。
ようやく二人は青い湖のところへやってきました。
ほとりには青々とした木々が立っていて、湖にかげを落としていました。そこに、宮殿がありました。
「これがぼくの家だよ。」と、ツバメは言いました。
「あそこにすてきな花がいっぱいあるでしょう。あの中から一つ選んでくれませんか。その上に下ろしてあげるよ。ぼくは君が幸せになるためなら、どんなことだっておしまないよ。」
地面に、大理石の柱が三つに折れて倒れていました。
もともとは一本だったのですが、くずれて倒れるときにポッキリと折れてしまったのです。
その三本の柱の間に、何よりも美しい大きな白い花がいくつも咲いていました。
ツバメはおやゆび姫と下におりていって、大きな花の上に乗せました。
白馬の王子様
おやゆび姫はとてもびっくりしました。花の真ん中に、小さな人がいたからです。
その人は、水晶みたいに白くすきとおっていました。
頭の上に金のかんむりをかぶって、背中にゆうがなつばさがついていました。
そして、おやゆび姫と同じくらいの背の高さでした。
実は、その人は花の妖精でした。
どんな花にも、そういう男の人と女の人が二人住んでいるのです。
その中の王様が、この人なのです。
「まぁ、なんとお美しい方!」と、おやゆび姫はツバメに小声でささやきました。
その小さな王子さまははじめ、巨人のように大きい鳥を見て、ひどくおびえていました。
王子さまもそれだけ小さな人間なのです。
でも、王子さまはおやゆび姫を見ると、とてもよろこびました。
こんなにきれいな女の子は今まで見たことがない、と思いました。
王子さまは金のかんむりを外して、おやゆび姫の頭にかぶせました。
そして王子さまは、名前を聞いたあと、こう言いました。
「どうか私のおよめさんになってくれませんか。すべての花の、おきさきさまとなってくれませんか。」
むすこガエルや、ふわふわでぴかぴかの黒服を着ているモグラをおむこさんにするのとはくらべものにはならない、重みのある言葉でした。おやゆび姫は、「はい。」とかっこいい王子さまに言いました。
すると、ぶわっとすべての花が咲いて、妖精たちが小さなおきさきと王さまのところへやって来ました。
みんなきれいで、二人を見てにこやかに笑いました。みんなおやゆび姫におくりものを持ってきていました。
そのあと、お祝いがありました。あのツバメがお祝いの歌を頼まれて、もちろん引き受けました。
ツバメは二人の頭の上の巣の中で、じっと動かずにウェディングソングを歌いました。
自分のできるせいいっぱいの花むけだと思って歌いました。
ツバメはとても悲しいけれど、それをかくして歌いました。
心の中ではおやゆび姫を愛していたのです。おやゆび姫と別れたくないのです。
「これからはおやゆび姫なんて名前で呼んではいけないわ。」と、花の妖精が言いました。
「へんな名前よ。あなたはとってもかわいいんだから、マイアと呼びましょう。」
ツバメは、「さようなら、さようなら。」と言いました。
あたたかい南の国からデンマークへ戻るため、ツバメはその場をさらなければならないのです。
あたたかい国を飛び立ち、北へ北へと飛んでいくにつれて、とてもさみしくなっていきました。
ツバメはデンマークにも巣を持っていました。
ある家のまどの上に巣はありました。
その家には、童話を書くおじさんが住んでいました。
ツバメは巣の中で「キーヴィ、キーヴィ。」と、歌いました。
それはおやゆび姫が生まれて、幸せになるまでのお話の歌でした。
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