「国民を敵に回す覚悟を」秋篠宮さまが記者会見で洩らされた“苦悩”…悠仁さまを巡る「いじめ的情報」発言の真意とは
本の題名『田舎暮らし幻想離婚』
著者 坂口由美
出版日 2024.12.
ハンナ・アレントの「やり直す行為」と「赦しの道」を探り求めて行く
モラル‐ハラスメント【moral harassment】の改善のための生活習慣
ハンナ・アレントの「赦し」を理解するなら、それは過ち(不正)を水に流したり忘れ去ったりすることではない。人が赦すのは罪ではなく、罪を犯した人格である。赦すことは、悔い改め、新たに始めるという人間の自由な存在そのものを目的とする。人格というものが個々の行いを越えた新たな始まりであることは、人間の自由の核心であり、赦すことはその自由を守る行為である。しかし自らの罪を認めない者、あるいは自らの罪に開き直って悔いることのない者は、赦されることはないだろう。その人間は、自らの過去を担いつつ新たに始める存在として生きることを、自ら放棄しているからである。
夫婦に共通する利害は?
- ふたりとも「自然が好き」という考え方は一致しています。すると、「田舎の生活」を楽しむことが共通の利害です。この「自然を楽しむ」という利害を成り立たせるには、「自然の中の楽しめない部分は何か?」をリストアップして一覧表を作ってみます。1.自然の厳しさ 2. 自然の危険なところ 3.自然の不自由なところ…この一覧表を確認して、利害をクリアするには何が必要かを考えてみます。夫婦に共通する利害をクリアするための対策案1.冬の暖房 2. 凍りつく水道管 3. 食料の入手の困難 4. 車や暖房費などの経費 等々が、夫婦で意見が一致している状態で、必要なものを確実に手に入れることが、「共通の利害」です。
- 夫婦それぞれが「自然が好き」という気持ちがあって、それは一致していました。ところが、「好き」という気持ちのもとになる理由や判断の根拠は夫婦それぞれが違っていました。夫のひろしは、まともに働かないで、好きな釣りや写真の享楽の世界に心を奪われ、そこから抜け出せないという人間社会からの逃避の考えが土台をなし、よりどころとなっています。一方、妻は、「田舎も都会も人間のものの考え方は同じ」と考えていました。ところが、都会人は個人のプライベートを中心にした個人主義の考え方を持っています。田舎の人は、相互助け合いの人間関係の考え方を持っています。それなのに、妻は。都会人も田舎の人も同じ考え方をする、という認識の上で「自然が好き」でした。夫も妻も、双方とも「人間についての何かを理解する」ということが不足しています。このような人間理解力の不足や未熟が、互いの不満、内面の理解の不足になっています。都会にいると心のトラブルはたちどころに表れるから分かりやすいのですが、田舎にいると、自然とのかかわりが先立っていて分かりにくいのです。妻が分かる「人間観」を夫も分かることができる、ということが「共通の利害」です。
- 夫も妻も、日本の国で生活してます。住んでいる地域の特性はありますが、「物」「サービス」「税制」は共通しています。すなわち、生活のコストは同じであるということです。これは、自然の中で生活していても、都会と同じように「個人」も「生産力の能力」を身につけなければならないということです。妻は、夫のひろしに「仕事になることは何でもやりなさい」と言いましたが、夫は同意しませんでした。しかし、妻に出来るパートの仕事はありません。ですから、ただ出費を強いられるだけ、と嘆いているのが妻です。妻は、離婚後、実家に帰って「職業訓練校」に通っています。これは、「妻自らが収入を増やす能力」がもともと無かったということです。この収入を増やす能力が無かったということが、夫の「収入を増やす能力の欠如」を許容し、放置した原因になっています。「収入を増やす能力が無い」ということは、夫が本来「収入」として家計に入れる金額の利益を失うということです。「夫と話をして、合意させる言葉がない」ということが「収入を増やす力の無さ」を意味します。「双方の共通の利害」は、「収入を増やすこと」を論点とした話し合いと、そのための考えを深めることばを努力して自分のものにすることです。
ハーバード流交渉術の「四つの基本要素」の三つ目は「選択肢」です。
行動について決定する前に、多くの問題解決の可能性のある案を考え出すことが、必ず用いるべき要件です。
これは、相手を目の前におくと考えることの視野が狭くなるので、正しい解決案は一つしかないと思い込む、ということが起こるから、と説明されています。目の前の人から「圧迫感」「ストレス」が加わるからです。自分で、自分の現実や、将来を壊してしまいかねない結果に入り込んでしまわないためには、まず、あらかじめ、行動の前に考える時間を設けること、いくつかの行動の案を考え出す機会を作ることが必要です。考えるべきことは「対立する利害を調整すること」「利害を調整して、共通の利害を創造的に増進すること」「双方に有利な解決案なり、そのための選択肢を考え出すこと」です。そこで、今回のケーススタデイの御夫婦の破局に至った結婚ではどのような「行動の前に問題を解決する案」が考えられるでしょうか?検討して次の「選択肢」から選んでみましょう。
「行動の前」のやり直し
選択肢1. ここで「行動の前」とは「結婚の前」のことです。妻は「自然が好き」ということと「恋人時代のひろしさん」とが同じものである、と考えました。なぜならば、「自然観が一致した」からです。しかし、結婚するつもりであったならば、恋愛期間の交際中に、1,2年間は田舎に住んでみるべきでした。自然の中の田舎の生活を経験してみることが必要でした。実際に暮らしてみて体験することで、「自然の本当の姿」と「将来、自分の夫になる男性の田舎での生活の仕方、生活習慣」を観察して「自然の多い田舎で生活する」ための準備と、 生活の様式・仕方。また、人生観・価値観・習慣などを含めた個人の生き方について話し合いを行うべきでした。
選択肢2. ここで「行動の前」とは、「結婚して子供を産む前」のことです。ここでは「生活費」が問題点になります。子供が生まれて、子どもにかかる生活費を除いて、夫の収入だけで厳しい環境の中での消費と支出は間に合うのか?という「家計の資産と負債の状況を正確に把握して、そのバランスをチェックすること」を行うべきでした。家計においてバランスシートを作り、夫と対策を相談すべきでした。すると、「ふたりの子どもを出産することは、夫の仕事の仕方と、家計を見直してからにすべきでした。
「行動」のやり直し
選択肢3. 行動とは、夫のひろしさんの金銭感覚についての話を聞いてから後の「生活の仕方」です。結婚式の費用が100万円掛かりましたが、これは妻の希望でしたことで、夫のひろしさんは、結婚式の費用を100万円も掛けてまで、やりたくなかったのです。しかし、妻がどうしてもやりたいというので、弟からお金を借りました。このため、妻に「お前が働いて返せ」という言葉が出たのです。このことから、夫は、結婚生活を共同のものと捉えて、収入を得る社会的な責任を背負う、という自覚がないということになります。都会から田舎に嫁いでくれた妻の「慣れない生活」を励まし、感謝して勇気付けることも、夫の責任の一つということを話し合うべきでした。
選択肢4. 行動とは、「生活費の使い方について論じ合う」ことです。「食費や暖房のための防寒着は無駄が多い」と夫は、咎めました。妻は、「収入が少ない原因の一つの、夫がまともに働かずに、昼食を食べに家に戻ってくる。これも食費を圧迫している」と考えました。これは、「義父からの食費の援助」で支えられました。援助は6年間に渡って続きました。それでも、生活費が不足すると訴えると、「水でも飲んで我慢しろ」と言われました。義父の蓄えが尽きて、援助ができないと言われました。ここで、結婚生活が破局に向かいました。すると、ここでは、「現実生活の自立からの逃避」ということが行われています。これほど困窮した生活でも「村の共同募金」に献金をする習慣は続いていました。田舎の生活は自発的な意志に基づき他人や 社会に貢献するボランティアの共同の観念で成り立っています。夫のひろしさんは、これを当然のこととしていたのです。妻は、それを許容して6年間の結婚生活において享受しました。すると、ここでいう夫婦の「共通の利益」とは、「生活費の自立」「生活費の管理」「支出のリスクの対策」の3つです。この3つの概念が、夫婦どちらとも身についていないところから、つねに「逃避」の生活が続けられています。経済観念の無さから破局の結末に至っています。このままの状態を続けても、いずれどこかで「破局に至る」ということを、夫婦共通の認識に立てて、「収入の管理と収入の目標」に向けての意志を一致させて、破局の原因を減らして軽くするための行動をとるべきでした。
ハンナ・アレントの和解と赦し
人間のあいだに区別を設け、異なる存在を「敵」と見なして絶滅しようとすることは、根源的な悪である。しかしそれが悪なのは、すべ
ての人間が等しく神の被造物であるからではなく、すべての人間が等しく自由な存在として生まれるからである。自分がその出来事にどのように関わるかを定め、世界のうちで自分がこれからどう生きるかを決めることが、現実に対する「同意」(consent)であり「和解」(reconciliation)である。
ハーバード流交渉術の「四つの基本要素」の四つ目は「結果は客観的な基準によることを強調」することが、必ず用いるべき要件です。
ここでの「結果」とは「離婚」のことです。この「離婚」に至る原因は、主に経済的なトラブルです。
これは、相手を目の前におくと考えることの視野が狭くなるので、正しい解決案は一つしかないと思い込む、ということが起こるから、と説明されています。目の前の人から「圧迫感」「ストレス」が加わるからです。自分で、自分の現実や、将来を壊してしまいかねない結果に入り込んでしまわないためには、まず、あらかじめ、行動の前に考える時間を設けること、いくつかの行動の案を考え出す機会を作ることが必要です。考えるべきことは「対立する利害を調整すること」「利害を調整して、共通の利害を創造的に増進すること」「双方に有利な解決案なり、そのための選択肢を考え出すこと」です。そこで、今回のケーススタデイの御夫婦の破局に至った結婚ではどのような「行動の前に問題を解決する案」が考えられるでしょうか?検討して次の「選択肢」から選んでみましょう。
「経済的なトラブル」と「離婚」とをひとつにまとめて「結果」と捉えます。客観的な基準とは、指示性のカウンセリングで定義している「10人の女性」を想定して立てます。この「10人の女性」に「離婚しますか?」と問いかけてみます。すると、「回答」は、「私は離婚します」が半数。「私は離婚しません」が残り半数ということになります。すると、「離婚しない女性が半数の5人いる」ということですから、必ずしも「経済的トラブル」が「離婚の原因と理由にはならない」ということを意味します。では、どのような「やり直し」が考えられるのでしょうか?
次の回答の中から一つを選んでみましょう。
回答
- 夫がどうしても「働かない」のなら「別居」します。妻は、田舎から引き揚げて、実家で職業的自立を目ざして準備し、経済生活を分割してそれぞれの責任で維持します。
- 夫が何と言おうとも「村の共同募金」には応じません。すると夫は、村の人から冷たくされます。頼まれ仕事ではなく、正当な仕事の相手から仕事を受注し、増収が見込めるかもしれません。
- 「借金の返済」を再交渉します。一回当たりの返済額を減らして長期化するか、公的資金を借りて全額返済して、複数ある支払先を一つにまとめて長期返済方法にすることで、返済額の減少を図ります。こうして、生活費の圧迫を緩和します。
- 義父と義弟に相談します。経済の客観的状況を説明して、「夫の収入に見合わない支出が、家計を圧迫していることを、「解決すべき問題」にして、事態の改善策を、夫もまじえて親族が寄り合って相談します。決めたことを「義父、義弟、周りの人に監視してもらいます。
- 夫の働き方の「心の問題」を直視します。「田舎の自然が好き」という幻想への逃避は、どこから来たものか?を夫のまわりの実家から情報を得ます。成育歴や家庭環境などのことです。精神的ケアの方法を研究して、夫にも合意してもらったのち、合理的な生活の運営とは何か?を話し合います。
- 夫婦双方とも「鬱病」の可能性があります。自然に過度に憧れるというのは、鬱の心性が原因だからです。鬱とは、行動と内容の二つの対象の秩序についての認識や理解の水準が低いか、無いか、欠落していることを意味しています。義父が生活を成り立たせてこれたのは、どういう「秩序意識」からでしょうか?義父の秩序意識をお手本にして、学び直して、「やり直しの道を行く」ことで、健全な社会意識を身につけるべきでした。
あとがき
社会の皆さま、こんにちは。
全日本カウンセラー協会の坂口由美です。
この本は、田舎暮らしに憧れて幻想を抱いて、移り住んでみた夫婦が、自然の厳しさや生活の困窮に苦しめられて、離婚に至る顛末を、カウンセリング物語として再構成したものです。私たちが暮らしているこの現実世界が、実は仮想現実であるということを証明するために執筆しました。現在の私は、意識の研究を始めています。それはつまり、そもそもこの世界は錯覚で出来ているのではないか?という疑問が生じたからです。この現実が錯覚を積み重ねて作られているならば、すべてが意識の問題です。意識をどこに向けるのかが問題なのです。
私たちが生きていると思っているこの世界は、実は、意識が創り上げた世界です。では、仮想現実とは何でしょうか?それは、物質世界のまがい物です。仮想現実を本物だと思うのは、誰かに騙されている状態だということになるでしょう。ですから、本当ならば、あってはならない状態と言えるかもしれません。この世界は、意識があってはじめて存在でき、意識がなくなれば、もう存在できません。私たちの意識と無関係な外側の世界は存在しません。内側、心の中にあるからです。現実の世界は仮想現実であるのに、そう感じられない理由は、思考が五感を生み出す世界だからです。何かを空想すると、その量がどんどん溜まります。すると、この量に従って五感が生じるのです。思考も同じで、思考の量が多いほど、感覚が増えるのです。五感と思考量の関係は、思考量が高いほど、筋肉感覚や味覚、嗅覚、触ることの感知範囲が広くなります。思考量が足りないと、見る聞くことの感知範囲も狭くなります。すなわち、思考の量の違いが五感を生み出す、ということです。この延長線上に、現実の世界があるのです。ですから、空想と現実の境界線は、ここからが現実、と明確な区切りはなく、曖昧さがあります。現実世界は、投影によって生み出されている錯覚です。私たちの頭の中には常に大量の錯覚があるということを、お伝えしています。ですから、仮想世界を理解するには、まず頭の中からたくさんの錯覚を取り除かなくてはいけません。錯覚を捨ててしまわなければ、錯覚から抜け出すことは無理なのです。そこでおすすめする方法として、今回は、ハーバード流交渉術の「四つの基本要素」をご紹介いたしました。
それでは、また、次の本でお逢いしましょう。
読者の皆様のますますのご活躍をお祈り申し上げます。
ありがとうございました。