民主党は、小選挙区27議席、比例区30議席の計57議席で、選挙前の230議席から4分の1以下、旧民主党結党時の93人をも下回る歴史的惨敗を喫した。
現職閣僚は史上最多の8人(1人は国民新党)が落選。野田佳彦首相は代表辞任を表明し、新代表の下で来年夏の参院選に向けた立て直しを急ぐ。新代表には、細野豪志政調会長や前原誠司国家戦略担当相、馬淵澄夫政調会長代理らの名前が挙がるが、前途に明るい光は見えず、解党の危機が迫っている。
「敗北に至った最大の責任は党代表である私にある。結果を重く受け止め、代表を辞任する」
野田首相は16日深夜、都内のホテルで記者会見し、振り絞るような声で語った。民主党は26日に召集される特別国会を前に、両院議員総会を開き、代表選を行う。
まさに「殲滅(せんめつ)」という言葉がぴったりの結果だった。藤村修官房長官や、田中真紀子文科相ら現職閣僚や、仙谷由人、平野博文両元官房長官ら大物が次々に落選した。
ホテルに設置された民主党の開票センターでは、当選確実が報じられても、候補者全員の名前が書かれたボードに当選を示すバラは付けられないまま。代わりに、細野氏の暗い表情が、何度もテレビ画面に映った。
野田首相は「改めて国民に信頼される政党をつくってほしい」と新執行部への期待を語ったが、民主党の前途は厳しい。
衆院選前、民主党内にはある種の楽観的な見方があった。参院では民主党が依然として第1党のため、「衆参ねじれを生かして安倍政権を追い込む」「自民党との大連立で与党になれる」などの声もあったのだ。
しかし、自公両党が、衆院での法案再可決が可能な3分の2(320議席)を超えたことで、そのシナリオは瓦解した。
それどころか、民主党には解党の危機が迫る。
政治評論家の有馬晴海氏は「消費税増税やTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を、党の手続きを経ずに進めた野田首相ら『松下政経塾』出身者の政治手法への反発が強い。自民党は参院からの一本釣りを狙っている。民主党が消滅する可能性はある」と話した。
自民党は2009年衆院選で惨敗した後、谷垣禎一総裁(当時)の下で捲土重来を期したが、民主党にそれができるのか。新代表には「来夏の参院選のために、世代交代をして党が生まれ変わった姿を見せたい」(幹部)として細野氏や前原氏、馬淵氏らの名前が挙がっている。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「衆院議員の数が激減したため、『参院のドン』こと輿石東幹事長の胸三寸で決まる。民主党には11年分政治資金収支報告書で、12年への繰越金は183億9000万円あった。仮に、今回の衆院選で100億円使っても、83億円残っている計算だ。このカネが唯一の求心力だ」と話している。
民主党は存亡の危機に立たされている。