ささやんの天邪鬼 ほぼ隔日刊

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

きょうは何の日?

2025-03-11 09:23:07 | 日記
降る雪や 明治は遠くなりにけり。
きょうが「あの日」なのだな。あれからもう14年がたつのか・・・。「十年ひと昔」というくくりでいえば、14年は「ひと昔半」ということになる。私が「あの日」を「遠くなりにけり」と思ってしまうのも、無理からぬことだ。

14年前の「あの日」、2011年の3月11日は忘れもしない、私が脳出血に倒れ、救急車で隣町の救急病院に運ばれた日である。それはまた「東日本大震災」があった日でもある。

「その日」のことは、記憶がだいぶ薄らいでいるが、(毎年、「その日」が近づくと必ずといっていいほどテレビで流される)大津波の映像が、「その日」の記憶をまざまざと呼び覚ましてくれる。

記憶の中によみがえるのは、病院の大型テレビに映された映像である。爆発して煙を上げる原発ーーフクシマ第1原発ーーを背景に、枝野官房長官(当時)が事故処理の経過を逐一報告していた。津波の映像より、原発の上空を飛びかう自衛隊ヘリ機の映像のほうが強く私の印象に残っている。

そんな私からすると、ここ数年の「あの日」の出来事を伝えるテレビの映像には、少なからず違和感をおぼえざるを得ない。ここ数年、テレビは「あの日」の記録として、大津波の映像ばかりを垂れ流すようになった。しかし私からすれば、「あの日」は「大津波」の記念日であるよりも、まずもって「原発事故」の記念日なのである。
(私の知る限りでは、「あの日」を「原発事故」記念日として取りあげたテレビ番組は、NHKの「”傷み”とともに〜西田敏行の知られざる故郷の物語〜」(昨夜0時35分より放送)だけである。
ちなみに新聞では、朝日新聞が「東京電力福島第一原発事故により放射線量が高く、人が住むことができない帰還困難区域が福島県内の7市町村に残る」と伝え、社説では「東電の事故から14年 原発災害の忘却にあらがう」と題して「事故の経験という『出発点』を忘れてはならない」と論じている。)

ともあれ、「あの日」を境に、原発の安全性への神話は大きく崩れ去った。事故によって周辺の広大な地域は放射能に汚染され、立入禁止区域になった。そこに住んでいた5万人近くの住民が避難を強いられ、さながらジプシーの群れのように全国各地をさ迷うことになった。避難所で死亡した被災者も少なくないと聞く。

原発事故のそんな爪痕がまざまざと残る中、日本政府が早々と原発推進策を打ちだしたことが、私には信じられなかった。事故への反省が何もなされないまま、事故の教訓から得られた「40年ルール」など、知らぬ存ぜぬといった態度なのである。

テレビの報道が2011年の「あの日」を「原発事故記念日」から「大津波記念日」へと改ざんしていく歴史修正主義の捏造が、私には政府の原発推進策と密接にリンクしているように思えてならない。
2011年は平成23年である。令和7年の今となっては、平成ですら「遠くなりにけり」ということなのだろうか・・・。こんな具合では、政治不信も高まるわけだわ、石破くん。

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トランプ退潮の予感

2025-03-09 09:53:45 | 日記
その日、私は衝撃的な映像に釘づけになった。2月28にホワイトハウスで行われた、トランプ米大統領とゼレンスキー・ウクライナ大統領との首脳会談である。そこで交わされた激しい口論は、二人の心づもりの違いを浮き彫りにした。
損得勘定にこだわるトランプ大統領と、〈正義〉にこだわるゼレンスキー大統領との違いである。
(〈正義〉にこだわる)ゼレンスキーの態度が(損得勘定にこだわる)トランプ大統領を苛立たせた格好だが、センセーショナルなこの「事件」に対する米国民の反応も、トランプと同じく「ゼレンスキーはけしからん」だったようだ。「やつは無礼だ!」、「大金をつぎ込んで、ウクライナを支援してやっているのに、感謝の念がない!」等々。

ヨーロッパ各国の首脳たちの受け止め方は、だがこれとは明らかに違っている。この「大事件」の後でも、ヨーロッパの各国首脳はゼレンスキーへの変わらぬ支持を表明した。
フランスのマクロン大統領は、次のように述べたという。
侵略者がいる。それはロシアだ。被害者がいる。それはウクライナだ。私たちが3年前にウクライナを助け、ロシアに制裁を課したのは正解だったし、それを継続することも正解だ。

この言葉に示されるように、ゼレンスキーを支持し、トランプを退ける理由は、やはり〈正義〉の如何なのだ。

問題を複雑にしているのは、それでもアメリカが圧倒的な経済力・軍事力を保持していることである。〈正義〉にこだわるゼレンスキー大統領が、怒りを胸におさめながらも、トランプの意に従わなければならない所以である。
ロシアの軍事的脅威にさらされているヨーロッパ諸国の、その首脳たちにとっても、(アメリカの軍事力に頼らざるを得ない、という)事情は変わらない。

だが、その事情も変わりつつあるのではないか。前回のブログで、私はフランス・マクロン大統領の言説をとりあげた。
マクロン大統領は『アメリカが私たちの味方であり続けると信じたい。しかし、もしそうでなくなった場合にも備える必要がある』と述べ、フランスを含むヨーロッパ各国が防衛力を強化し、ウクライナへの支援を継続する必要があると強調しました。

もうトランプの気まぐれな言動に振り回されるのはご免だ。我々はアメリカ抜きでもやっていけるように、防衛力を強化しようではないか。ーーこのマクロン大統領の訴えが各国首脳の共感を得て、防衛力強化の構想が現実のものになるようなことがあれば、トランプ大統領ももはや気まぐれな言説を振りまくことができなくなるに違いない。

(つづく)


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トランプ政権の不確実性(その2)

2025-03-07 10:05:15 | 日記
(承前)

トランプ米大統領の思考の特異性。私がそれを思い知らされたのは、次のニュースによってである。

トランプ米大統領は25日、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘で破壊されたパレスチナ自治区ガザの『将来像』の動画を自身のSNSに投稿した。ガザの住民を移住させ、米国が『所有』して再開発するというトランプ氏の提案には地元市民やアラブ諸国が反対しており、物議を醸しそうだ。
(朝日新聞2月27日)

このニュースを聞いたとき、私は、カネのことしか頭にない強引な地上げ屋の所業を連想したのである。
「ここは風光明媚だ。それなりに開発すれば、立派なリゾート地になる。だから、なあ、この土地を売ってくれないか。カネのほうなら、せいぜい奮発するぜ。移住先だって、便利な土地のマンションを用意させる。今のまま、貧乏な暮らしをするか、便利なマンションに移って快適な暮らしをするか、どっちが良いかは考えるまでもないではないか」
この地上げ屋は、土地の住民がそれでもなおこの土地を離れたがらない理由が理解できない。彼の頭には、〈郷土愛〉などという言葉は浮かばず、「どれだけのカネが手に入るか」ということしか考えられないのである。
「トランプの思考の独自性・異質性は、すべてを金銭的な損得勘定の論理(算盤の論理)で考える、ということに尽きる」と私が前回のブログで書いたのは、そういうことである。

さて、ゼレンスキー大統領だが、彼が28日の会談の席で、トランプ大統領から協定書ーー地下資源の権益をめぐる協定書ーーへの署名を求められたとき、頭に思い浮かべたのは、以上のような地上げ屋の姿だったに違いない。
この老人が地下資源から莫大なカネを手に入れたがっているのは、まあ良しとしよう。アメリカはこれまで、かなりの額の軍事支援を行ってきた。その投資に対するリターンが地下資源の権益ということである。

だが、見過ごせないのは、トランプが〈正義〉の観念を完全に度外視していることである。ウクライナの兵士たちは、これまで〈正義〉のために生命(いのち)を賭け、生命(いのち)を落としてきた。そのことをまるで無かったことのように度外視する、この強欲老人の品性がゼレンスキーは許せなかったのである。

怒りに駆られた結果、ゼレンスキーはトランプを怒らせ、軍事支援を止められてしまった。アメリカの支援を失ったままで、この先ウクライナはロシアとどう戦えばよいのかーー。
おそらく冷静になったゼレンスキーは、怒りを胸におさめ、協定書に署名をすることだろう。ウクライナが生き残る道は、それしかない。

注目すべきは、次のニュースである。

フランスのマクロン大統領は5日、ウクライナ情勢をめぐってテレビで演説を行い、ロシアの脅威がヨーロッパに差し迫っているとして、フランスが保有する核兵器による抑止力を、ヨーロッパにも広げることについて、検討を始める考えを明らかにしました。(中略)
マクロン大統領は『アメリカが私たちの味方であり続けると信じたい。しかし、もしそうでなくなった場合にも備える必要がある』と述べ、フランスを含むヨーロッパ各国が防衛力を強化し、ウクライナへの支援を継続する必要があると強調しました。

(NHK NEWS WEB 3月7日配信)

トランプ政権の不確実性。これについては前回の本ブログで述べたが、フランスのマクロン大統領はこの不確実性への対処として、「アメリカなしでもやっていける防衛体制の構築」を考案・構想しようとしている。
これに対して、トランプ政権はどういう反応を示すのか、興味は尽きない。

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トランプ政権の不確実性

2025-03-05 10:33:53 | 日記
先日のことである。朝日新聞の紙上で東野篤子氏(筑波大教授・国際関係論)が次のように語っていた。

28日の会談で明らかになったのは、やはりトランプ政権下の米国に過度な期待をかけるのは難しいということだ。この政権の不確実性は想像以上だったと、欧州は震え上がっている。欧州や日本も、いざというときに米国なしでもやっていけるように、相当に覚悟しなくてはいけない。
(朝日新聞3月3日)

トランプ政権の不確実性、それは、この政権がやらかすことはだれも予測できないということであり、その意味で、この政権には常にリスクがつきまとうということである。

トランプがやらかすことは、なぜ予測不可能なのか。それは、トランプの思考回路が常人のものと全く異なっているからである。
べつに難しいことを言おうとしているわけではない。トランプの思考の独自性・異質性は、すべてを金銭的な損得勘定の論理(算盤の論理)で考える、ということに尽きると言ってよい。

戦争状態にある二国と交渉し、戦争を終わらせようと考えるとき、ほとんどの人は、どちらの国に〈正義〉があるか、とか、〈法〉(国際法)を犯したのはどちらの国か、といったことを考える。どういう戦争終結の形が損か得か、ーーそれも調停者である自分にとって損か得か、などとは考えない。せいぜい地政学的なリスク管理の観点から、賠償金の落としどころを考えるくらいだろう。

だからシンプルに、ーー恐ろしくシンプルに、すべてを「自分にとっての損得勘定」で割り切ろうとするトランプの発想は、だれにとっても予想外であり、予測不可能なのである。

2月28日の首脳会談で、ウクライナのゼレンスキー大統領が突きつけられたのは、まさしくこの「損得勘定の論理(算盤の論理)」にほかならなかった。まずもって〈正義〉や〈独立〉や〈矜持〉にこだわるゼレンスキーは、この予想外の椿事に面食らい、逆上してしてしまったものと思われる。

「トランプはウクライナの地下資源に目をつけている」、ーーこのことを知った時点で、ゼレンスキーは、トランプが「損得勘定の論理(算盤の論理)」を突きつけてくると予測できなかったのだろうか。

2月28日の首脳会談でへそを曲げたトランプ大統領は、「アメリカの軍事支援の有難みを思い知るがいい」と、一時的にウクライナへの軍事支援を停止するだろうが、どのみち「損得勘定の論理(算盤の論理)」にこだわる気持ちから、最後にはふたたび地下資源の権益をめぐる協定書に署名を求めてくるだろう。そのときどう対処すべきかは、今からでも考えられるはずだ。
その意味で、ありうべきこの「想定内」のチャンスに、ゼレンスキーは今度こそウクライナの生き残りをかけて、全身全霊で立ち向かえばよい。

(つづく)

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右翼とは何か(その3)

2025-03-03 08:51:45 | 日記
(承前)

トランプの自国第一主義は自国の利益を最優先しようとするから、他国のことなどお構いなし、当然、国際協調を軽視する姿勢へと結びつく。
トランプが地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名したこと、また、世界保健機関(WHO)からの脱退を表明したことは、トランプの流儀を特徴づけるものとして、まだ記憶に新しい。

欧米でこのトランプ主義=自国第一主義が台頭すると、この先、国際情勢は一体どうなってしまうのか、と危ぶんでいたら、次の記事が目についた。

中国、米政権との違い強調 25カ国と会談、協調示す 外相外遊終了
中国の外交部門トップを務める王毅(ワンイー)・共産党政治局員兼外相は欧州、米国、アフリカへの約10日間の外遊を終えた。国際会議の傍ら、電話を含めて25カ国の首脳や外相らと会談。ウクライナ和平に向けて国際情勢が変動する中、中国は米トランプ政権との違いを強調し、国際社会の支持を広げようとしている。

(朝日新聞2月27日)

欧米でトランプ主義=自国第一主義が台頭し、(各国が少ないパイをめぐってしのぎを削る)剣呑な国際情勢が見え隠れしはじめたとき、「さあさあ、みなさん、硬いことは言わずに、ひとつ仲良くやりましょうや」と、国際協調の音頭をとろうとする中国。
「そうだ!いいぞ!」と拍手を送りたくなるが、「待てよ」と警戒心が先にたつ。
中国によるこの音頭とりを、額面通りに受け取るわけにはいかない事情がある。中国というこの強(したた)かな食わせ者には、充分な用心が必要だ。
中国という国は、その温厚な面の皮を1枚めくれば、武力に訴えて周辺諸国を押しのけ、自国の覇権を拡大しようと企てる、油断も隙もない膨張主義の軍事大国だからである。

こういう膨張主義の大国に対しては、我が国をはじめとする周辺諸国は結束・協調して立ち向かう必要がある。アメリカのバイデン前大統領は、日・米・韓の軍事同盟を築くことによってこの強かな国・中国に対抗しようとした。
大統領選でバイデンを蹴落としたトランプは、こうしたバイデンの軍事協調路線を否定し、(関税を武器にして?!)アメリカ一国の力で中国と渡り合おうとしているようだが、はたしてどうなりますことやら・・・。

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