横綱日馬富士がついに引退した。暴行沙汰の幕引きとしては、これしかなかっ
ただろう。暴行沙汰の再発を防止する有効な手立ては、「暴行沙汰を起こした
ら、この世界では生きていけなくなる」という現実を力士たちに教え込むこと
であり、それ以外にない。理事長が講話で「暴力は良くない」といくら声高に
力んでみても、そんなものは力士たちには馬耳東風だろう。「暴力を奮った
ら、この世界では生きて行けなくなる」という現実を突きつけることだけが、
血の気の多い力士たちを教育する有効な手立てになる。引退を表明した横綱日
馬富士は、自ら身を挺して力士たちにこの現実を教えたことになるから、その
意味では、「さすがは横綱、腐っても鯛!」と褒めるべきだろう。
ただ、横綱の引退会見をテレビで見ていて、気になったことが一つある。それ
は、彼が貴ノ岩を凶打したことを、「礼儀がなっていないことを教え正すため
」だったとして正当化し、「自分は正しい。やり過ぎただけ」と語ったことで
ある。ーーこの受け答えを聞きながら、私は、中学生だった頃、軍隊がえりの
教師からこっぴどく殴られたことを思い出した。「態度が悪い」という理由か
らだった。横綱の言葉を借りれば、「礼儀がなっていないから」ということに
なる。だが、暴力を振るうことによって、礼節を欠いた人間を矯正できると、
日馬富士は(また、あの中学の体育教師は)ホントに思っていたのだろうか。
とんでもない。日馬富士は、相手を暴力で支配し、このやんちゃな力士を、自
分の言うことに黙って聞き従う「従順な」人間に仕立てようと思っていただけ
ではないのか。
貴ノ岩を、自分が操れる力士に仕立て上げるための暴力。それならよく分か
る。モンゴル互助会の血の掟を無視して、八百長による星の取引には応じず、
ガチンコ勝負を挑みつづける跳ねっ返り根性、ーーモンゴル互助会を潰しかね
ないこの危険な「反社会的」根性を、日馬富士は叩き直したかったのである。
貴ノ岩の師匠である貴乃花親方は、依然として沈黙を続けている。「アレをば
らして欲しくなかったら、現執行部は引っ込んでおけ。次の執行部のアタマに
は俺がなる」と暗に言おうとしているようだ。貴乃花親方が言外に匂わせるア
レとは、言うまでもなく、この世界の一部にいまだ根強くはびこる八百長体質
である。
ただろう。暴行沙汰の再発を防止する有効な手立ては、「暴行沙汰を起こした
ら、この世界では生きていけなくなる」という現実を力士たちに教え込むこと
であり、それ以外にない。理事長が講話で「暴力は良くない」といくら声高に
力んでみても、そんなものは力士たちには馬耳東風だろう。「暴力を奮った
ら、この世界では生きて行けなくなる」という現実を突きつけることだけが、
血の気の多い力士たちを教育する有効な手立てになる。引退を表明した横綱日
馬富士は、自ら身を挺して力士たちにこの現実を教えたことになるから、その
意味では、「さすがは横綱、腐っても鯛!」と褒めるべきだろう。
ただ、横綱の引退会見をテレビで見ていて、気になったことが一つある。それ
は、彼が貴ノ岩を凶打したことを、「礼儀がなっていないことを教え正すため
」だったとして正当化し、「自分は正しい。やり過ぎただけ」と語ったことで
ある。ーーこの受け答えを聞きながら、私は、中学生だった頃、軍隊がえりの
教師からこっぴどく殴られたことを思い出した。「態度が悪い」という理由か
らだった。横綱の言葉を借りれば、「礼儀がなっていないから」ということに
なる。だが、暴力を振るうことによって、礼節を欠いた人間を矯正できると、
日馬富士は(また、あの中学の体育教師は)ホントに思っていたのだろうか。
とんでもない。日馬富士は、相手を暴力で支配し、このやんちゃな力士を、自
分の言うことに黙って聞き従う「従順な」人間に仕立てようと思っていただけ
ではないのか。
貴ノ岩を、自分が操れる力士に仕立て上げるための暴力。それならよく分か
る。モンゴル互助会の血の掟を無視して、八百長による星の取引には応じず、
ガチンコ勝負を挑みつづける跳ねっ返り根性、ーーモンゴル互助会を潰しかね
ないこの危険な「反社会的」根性を、日馬富士は叩き直したかったのである。
貴ノ岩の師匠である貴乃花親方は、依然として沈黙を続けている。「アレをば
らして欲しくなかったら、現執行部は引っ込んでおけ。次の執行部のアタマに
は俺がなる」と暗に言おうとしているようだ。貴乃花親方が言外に匂わせるア
レとは、言うまでもなく、この世界の一部にいまだ根強くはびこる八百長体質
である。