ささやんの天邪鬼 ほぼ隔日刊

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

右翼とは何か(その3)

2025-03-03 08:51:45 | 日記
(承前)

トランプの自国第一主義は自国の利益を最優先しようとするから、他国のことなどお構いなし、当然、国際協調を軽視する姿勢へと結びつく。
トランプが地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名したこと、また、世界保健機関(WHO)からの脱退を表明したことは、トランプの流儀を特徴づけるものとして、まだ記憶に新しい。

欧米でこのトランプ主義=自国第一主義が台頭すると、この先、国際情勢は一体どうなってしまうのか、と危ぶんでいたら、次の記事が目についた。

中国、米政権との違い強調 25カ国と会談、協調示す 外相外遊終了
中国の外交部門トップを務める王毅(ワンイー)・共産党政治局員兼外相は欧州、米国、アフリカへの約10日間の外遊を終えた。国際会議の傍ら、電話を含めて25カ国の首脳や外相らと会談。ウクライナ和平に向けて国際情勢が変動する中、中国は米トランプ政権との違いを強調し、国際社会の支持を広げようとしている。

(朝日新聞2月27日)

欧米でトランプ主義=自国第一主義が台頭し、(各国が少ないパイをめぐってしのぎを削る)剣呑な国際情勢が見え隠れしはじめたとき、「さあさあ、みなさん、硬いことは言わずに、ひとつ仲良くやりましょうや」と、国際協調の音頭をとろうとする中国。
「そうだ!いいぞ!」と拍手を送りたくなるが、「待てよ」と警戒心が先にたつ。
中国によるこの音頭とりを、額面通りに受け取るわけにはいかない事情がある。中国というこの強(したた)かな食わせ者には、充分な用心が必要だ。
中国という国は、その温厚な面の皮を1枚めくれば、武力に訴えて周辺諸国を押しのけ、自国の覇権を拡大しようと企てる、油断も隙もない膨張主義の軍事大国だからである。

こういう膨張主義の大国に対しては、我が国をはじめとする周辺諸国は結束・協調して立ち向かう必要がある。アメリカのバイデン前大統領は、日・米・韓の軍事同盟を築くことによってこの強かな国・中国に対抗しようとした。
大統領選でバイデンを蹴落としたトランプは、こうしたバイデンの軍事協調路線を否定し、(関税を武器にして?!)アメリカ一国の力で中国と渡り合おうとしているようだが、はたしてどうなりますことやら・・・。

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右翼とは何か(その2)

2025-03-01 09:13:47 | 日記
(承前)

朝日新聞がいう「右翼」は、「排外主義を主張する政治団体」を意味する。ウィキペディアもいうように、「右翼」は様々な意味を持つ言葉だが、朝日新聞はなぜ「右翼」を、この意味で使うのだろうか。

排外主義という言葉で思い浮かぶのは、トランプ米大統領の保護(貿易)主義自国第一主義である。
このこととの関連を考えれば、排外主義を「右翼」と呼ぶことも納得できる。トランプは「共和党」の所属だが、アメリカの「共和党」は「民主党」との対比から、「右翼」のレッテルを貼られることが多いからである。

トランプの支持者には下層の工場労働者が多く、彼らは「自分たちの職が奪われる」との恐れから、排外主義に流れることが多い。
その意味でも、ドイツの「右翼」は、アメリカのトランプ支持者と共通する特徴を持っている。

朝日の記事は
欧州の右翼政党は、移民規制などで米国のトランプ政権と同調しており、欧米の民主主義国で排外主義的な傾向が強まりそうだ
と書くが、その通りである。

朝日の記事は、また次のようにも書いている。

トランプ大統領は、自身のSNSに『米国と同様、ドイツの国民も、特にエネルギーや移民などで常識のない政策にうんざりしていた』とつづり、『ドイツにとって、そして米国にとって、すばらしい日だ』と投稿した。

ヨーロッパ諸国の右傾化傾向は、好ましくない傾向といえる。各国で自国第一主義の傾向が強まり、排外主義が横行するようになれば、少ないパイのぶんどり合戦から、世界のあちこちで戦争が起きる可能性が高まるからである。

興味深いのは、ヨーロッパ諸国のこうした「右傾化=トランプ化」傾向に対して、中国が見せる反応である。

(つづく)

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右翼とは何か

2025-02-27 09:06:32 | 日記
新聞記事でも論説文でも同じことだが、一まとまりの文章というものは、中心になる言葉の意味が解らないと、全体の理解がぼやけて、なにやら消化不良に似た気持ちになるものだ。おとといの新聞記事がそうだった。

独・右翼、第2党に躍進 中道右派が政権復帰へ、連立は拒否 総選挙

「(時時刻刻)右傾化の波、ドイツまで 移民・東西格差に不満、マスク氏ら加勢 総選挙
(朝日新聞2月25日)

この日は第1面と第2面にこんな見出しが張られ、それぞれが大きなスペースを占めていたが、ここにある「右翼」や「右傾化」という言葉の意味が私にはよく解らなかった。
ごく大ざっぱに考えれば、「右翼」とは「左翼」の対義語であり、アカ、共産主義とは反対の思想信条を持った者たちがつくる政治団体を意味する。「右傾化」とは、そういう政治団体が勢力を持つ傾向のことをいうのだろう。

だが、解らないのは、ここでいう「右翼」の意味である。
ウィキペディアには、以下のような説明がある。

右翼と左翼の語源はフランス革命に由来する。フランス革命期の憲法制定国民議会において、旧秩序の維持を支持する勢力(王党派、貴族派、国教派など)が議長席から見て右側の席を占め、左側に旧勢力の排除を主張する共和派・急進派が陣取ったことが語源となった。(中略)
『右翼』は社会主義と対立する保守主義・反動主義を日本では指した。また、『左翼』が共産主義や社会主義をめざす勢力を指すのに対して、右翼は、左翼勢力に反対して自由市場の資本主義を擁護するリバタリアニズムや新自由主義といった勢力や、国家主義・民族主義・国粋主義を支持する勢力を指す。
右翼とは、一般に、自国や自民族が持っている元来の文化、伝統、風習、思想等を重視した政治思想をよぶため、国や時代や立場によっても右翼と左翼の位置付けは異なり、一概に『右翼』と言っても多種多様な主義主張がある。

(Wikipedia より)

朝日新聞の記事にある「右翼」は、このウィキペディアの説明のどれにも該当しない。朝日の記事本文に

反移民・難民を訴える右翼『ドイツのための選択肢(AfD)』が2021年の前回より得票率を倍増させ、初めて第2党に躍進した

とあるように、記事がいう「右翼」とは、排外主義を訴える政治団体のことである。
では、朝日新聞はなぜ排外主義を訴える政治団体を、「右翼」と呼ぶのだろうか。

(つづく)

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予算、そして国家

2025-02-25 08:59:30 | 日記
読者は「トラス・ショック」ということばをご存知だろうか。私は知らなかった。先日、起きがけにスマホで朝日新聞を読んでいて、はじめて知ったことばである。こんなふうに書かれていた。

(予算案の)修正にあたり、政権がこだわったのが財源だった。維新が求める教育無償化には約6千億円が必要で、国民民主が主張する所得税の課税ラインの引き上げには、7兆~8兆円の税収減が見込まれる。財務省幹部は『政権が(野党の言い分を)全部受け入れれば話はまとまる。そのかわり財政は持たない』と言う。
背景には、2022年秋に起きた英国の『トラス・ショック』がある。当時、(イギリスの)首相に選任されたばかりのトラス氏は、財源の裏付けがないまま、歳出拡大や減税などの政策を打ち出した。それに市場が反応し、金利が急騰して英ポンドも急落。混乱の責任を取って、首相は退陣に追い込まれた。

(朝日新聞2月22日)

私が「トラス・ショック」なることばを聞いて、「おっ、これは使えるぞ」と思ったのは、今の我が国の、その国会審議の状況を把握するのに、これは便利なことばだと思ったからである。

目下、石破政権は、少数与党に転落したことから、2025年度の予算を成立させるために四苦八苦している。予算案を通過させるには、衆議院の過半数の賛成が必要だから、石破政権は野党の要求を極力飲まなければならない。だが、財源には限りがあるから、石破政権は野党の要求をなんでも「はい、はい」と聞き入れるわけにはいかないのだ。そんなことをすれば、政権は「トラス・ショック」の轍を踏み、石破首相はトラス首相と同様、辞任に追い込まれるだろう。

国会審議の現状をめぐっては、「足し算だけでは駄目だ。引き算も必要だ」という声をよく聞くが、これも同じ懸念から出たことばだろう。

国家運営の要をなす予算審議の出発点は、財源の議論をしっかり行うことである。「トラス・ショック」が示すように、それはある意味、国を潰さないための、つまり護国のための必要条件でもある。
石破自公は維新と組むことで窮地を脱したようだが、この「自公維」の連合政権をいっそのこと「護国救国臨時政権」とでも呼んだらどうだろうか。


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待てば海路の(その3)

2025-02-23 09:42:09 | 日記
(承前)

「高齢者施設」にまつわる闇の事情。その根本にある問題は何か。
それは「紹介料の高さが優先され、入所者が希望の施設に入れない事態」が起きることだ、と記事はいう。
だが、ホントにそうだろうか。それがホントの問題なのだろうか。

この問題について考えるために、朝日新聞第2面の記事

(時時刻刻)入所者争奪、紹介ビジネス 望まぬホーム、動いた110万円

に目を移すことにしよう。


まず、この記事を引用する。

あらかじめ断っておくが、引用は非常に長い。それだけで、読む気が萎えてしまうほど長い。だから読者は、この部分を読み飛ばしていただいてもかまわない。私が(ケース・スタデイにあたる)この記事を長々と引用するのは、この問題に関する私の見解が正しいかどうかを、読者に判断していただきたいと思うからである。興味がある読者は、この記事と見比べながら、私の見解が正しいかどうかを吟味していただきたいと思うのである。


『母は売買されていたんですか……』
 大阪府内の50代女性は昨年末、こうつぶやいた。記者が取材で、女性の母が老人ホームに入所する際にホーム側が紹介業者に110万円支払っていたことを把握し、それを伝えた時だった。
女性によると、発端は昨年1月ごろ。73歳の母が散歩中に転倒し、足を骨折するなどして入院した。退院後に認知症が進行し、家族では介護が難しくなった。パーキンソン病も患っていた。
入院していた病院の窓口で『もう一度入院させて欲しい』と相談すると、『高齢者施設を検討したらどうですか。詳しい人を紹介しますよ』と言われた。『料金はかかるんですか』と聞くと、返事は『無料』だった。
 『病院から連絡を頂きました』という男性から電話があった。母の体調や、自宅から近い老人ホームを希望していることなどを伝えた。数時間後に『見つかりました』と返事があった。
その日の夕方、ホームの担当者と一緒に、男性が自宅に来た。男性の名刺に会社名が書かれていたが、病院の関連会社だと思ったという。
話を聞くと、紹介されたホームは希望と違い、自宅から車で1時間ほどかかるような遠方だった。男性は『今、どこも施設はいっぱいなんで、ここしかないんです』と言った。すぐにでも施設を決めたいという焦りもあり、そこに決めた。
翌日、男性と一緒に、母のカルテなどを取りに入院していた病院に行った。男性は病院の人から下の名前で呼ばれており、病院の関係者と疑わなかった。
母の入所後、女性は片道1時間ほどかけて自宅と老人ホームを行き来し、苦労していた。
入所から1~2カ月経った頃、再び男性から電話があった。『ご自宅近くの施設に空き室が出たそうです。案内できますが、どうしますか』。女性は『だまされたような気持ち』になったが、自宅近くは希望しており、その老人ホームに案内してもらった。元のホームの部屋のクリーニング代や、引っ越し費用などの出費があったという。
母親が最初に入った老人ホームの関係者は『この地域は施設が多く、『いっぱいで入れない』などということはない。次の施設でも紹介料をもらう二重取りでは』と話す。
女性が男性について、紹介業者と知ったのは後になってからだった。女性は振り返る。『今考えれば、人が動いているのにお金がかからないことはないですよね。私がバカだったんですよ』」

(朝日新聞2月17日)


具体的な事例について伝える新聞記事を長々と引用したのは、この記事が紹介業者を「悪徳業者」と印象づけるような書きぶりをしているからである。

この紹介業者はホントに悪徳業者なのだろうか。
たしかにこの業者は、近親者である女性の希望を意に介さなかった。女性は母親の入所先の施設を「自宅の近く」と望んだのに、実際に紹介したのは、女性の自宅から車で1時間もかかる「遠方」だった。
この記事ははっきりとは書かないが、おそらくこの業者は、この「遠方」の施設に紹介した方がヨリ高額の紹介料を得られるため、(女性の意にそまない)この施設を紹介したのだろう。

だが、これがホントに「問題」なのだろうか。私はそうは思わない。最も適切な対処、それは、この施設が(この女性ではなく)女性の母親に対して最善の介護を提供する場合だろう。

問題は、(近親者に当たるこの女性ではなく、当事者本人である)女性の母親にとって何が最善の対処なのかであるが、それは、母親と同じ症状の高齢者の、その介護に習熟した施設にこの母親を委ねることではないか。

いわゆる「症例実績」というやつである。この母親の症状に応じて、ヨリ多くの「症例実績」を持つ施設を紹介することがこの場合、最善の対処だということになる。

この「遠方」の施設は、高額の紹介料を業者に支払って要介護度の高い高齢者を入所させたがるほどだから、同様のケースの介護回数も多く、したがって同様のケースの介護に習熟し、女性の近場にある施設にくらべれば、この母親に対して、より適切な介護を提供してくれるだろうと推測できる。

実際にそうであるかどうかはまた別問題である。ただ「娘(近親者)の近所かどうか」よりも、「(実際に介護に当たる)施設の介護士・看護師が適切な介護を提供してくれるかどうか」を基準にして、症例実績の多い施設を選ぶ方が、より適切な「高齢者施設」選びではないか、ーー私はそう思うのだが、いかがだろうか。

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