ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

沢尻エリカ 大河ドラマの撮り直しは

2019-12-10 16:23:57 | 日記
けさ新聞(読売新聞)を開くと、月刊誌『文芸春秋』の広告が載っていた。その中の「『沢尻エリカ』撮り直しは必要ない」という見出しが目についた。
沢尻エリカが合成麻薬MDMAを所持したとして逮捕されたのは、はて、あれはいつのことだったのか。ごく最近のことのようでもあり、はるか昔の出来事のようにも思える。このことをブログのネタにしようと思い立ち、正確な日時をネットで調べようとしたが、そんなニュースはネットには見当たらなかった。

この女優が逮捕された当時、テレビのワイドショーでは上を下への大騒ぎ。コメンテーターの評論家先生が次から次へと登場し、麻薬の害悪についてもっともらしくご託を並べたものだ。

しかしながら、それも今は昔。ワイドショーでは沢尻の「さ」の字も聞かれなくなって久しい。かくのごとくメディアの世界では、芸能人のスキャンダルは恐ろしい勢いで消費され、たれ流されていくのである。

さて、私の記憶するところでは、沢尻エリカが逮捕されたことで、NHKは彼女を(彼女が出演する予定だった)大河ドラマ『麒麟がくる』からはずし、代役に川口春奈を起用して、撮り直しを始めた。その損害賠償金として、沢尻エリカには5億円が請求されるとも、10億円が請求されるとも言われている。

そういう事情を踏まえて、『文芸春秋』の記事は「(大河ドラマの)撮り直しは必要ない」と主張しているのだろう。この「撮り直しをすべきかどうか」のテーマについては、次のようなアンケートの結果があったことを、私は思い出した。「文芸春秋オンライン」が行ったもので、それによれば、「両意見が拮抗するなか、『撮り直ししなくてよい(反対)』(51.9%)が『撮り直しすべき(賛成)』(48.1%)を3.8%上回る結果となった」という。
(文春オンライン《沢尻エリカ逮捕 「大河ドラマ撮り直ししなくてよい!」が多数派 その理由とは?――アンケート結果発表 》)

この記事には、「撮り直ししなくてよい」と回答した人の意見がいくつか紹介されていたが、その一つひとつがどれも私には首肯できるものだった。

管見によれば、俳優は配役に応じていくつもの顔を演じ分ける存在である。配役に応じて一定の役を演じるその当人も、生身の人間として、一定の役柄には収まらないいくつもの顔を持っている。芸能事務所が創りあげたいくつかの情報から、我々は「沢尻エリカ」というidola(幻影)を作り上げ、その虚像のファンになったり、ならなかったりする。その幻影(アイドル)のイメージが崩れないよう、芸能事務所は「恋愛禁止」等々の規則を創ったりするが、これは、そのアイドル(幻影)が固定客(ファン)を生み、固定客(ファン)がそのイメージにカネを落としてくれるからである。

ただし、思い違いをしてはならない。自分が贔屓(ひいき)にするアイドルAがある役柄Bを演じるとき、ファンはその役柄Bと、演じ手のアイドルAとを相即不離のものとは思っていないのだ。だから「アイドルAが文春砲によって打ち砕かれたら、Aの演じる役柄Bも打ち砕かれる」ということにはならない。アイドルAの素顔がイメージBと同じだと思い込んでいるファンも少ないだろう。

アイドルAの仮面をかぶった(かぶせられた)少女Xは、生身の人間であるからには、芸能事務所が作ったシナリオに収まらない面をいくつも持っている。時には恋愛もするし、犯罪にはしることもある。そうした行為によってアイドルAの仮面が壊れたとしても、Aが演じるBは観客にとって、あくまでもAとは別の存在なのである。

同じ理屈で、アイドル「沢尻エリカ」のイメージが麻薬所持と逮捕の報道によって打ち砕かれたとしても、だからといって「沢尻エリカ」の演じる大河ドラマの「濃姫」が、もろともに打ち砕かれることにならないのは、言うまでもない。そうである以上、大河ドラマの撮り直しは必要ない。そう私も考える。
コメント
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