和貴の『 以 和 為 貴 』

聖徳太子のおしえ【三】

四天王寺 第百十世管長 出口順得氏のお話より・・・

以下。


【第三回】"和"この世で一番大切な心


今回は聖徳太子がつくられた「十七条憲法」のお話をします。

その前に"憲法"とは何かということを簡単にお話します。

学校の授業で習った方もおられると思いますが、"憲法"は「国の最高法規」ということになっています。分かりやすくいうと、国と国民あいだの約束です。日本はこんなことを約束しますよということが書いてあります。

今の日本国憲法は昭和二十一年に公布されました。その前は明治時代につくられた憲法が日本の約束ごとでした。明治時代より前になると、いきなり千四百年も昔に遡らなくてはいけません。

それが聖徳太子の「十七条憲法」です。

日本はもちろん、世界で最も古い憲法です。

「十七条憲法」はひとことでいえば、「私たちが平和で暮らすためにはどうしたらいいか?」ということが書かれてあります。

第一条はこんな言葉で始まります。[一にいわく、和を以て貴しとなし、さかうることなきをむねとせよ]

現代の言葉でいうと、「平和が一番大切ですから、争わないようにしましょう」ということになります。

平和というのは世界中の人々が望んでいることです。それなのに人の歴史が始まって以来、争いごとがなくなったことはありません。皆さんのまわりでも、喧嘩や揉め事はありませんか。

それが大きくなっていけば、紛争や戦争に繋がっていくのです。
平和の実現が一番難しいことですが、一番努力しなければならないことです。

日本人は大昔から"和"を目標にしてきました。

日本の古い名を皆さんは知っていますか。大きな和と書いて"大和(ヤマト)"と読みます。

"和"の大切さを教える神話もあります。「古事記」という本にあります。「天(アマ)の岩戸(イワド)」のお話です。簡単にご紹介します。

高天原(タカマガハラ)という神様たちの世界に、太陽の神様天照大神(アマテラスオオミカミ)がいました。弟は須佐乃男命(スサノヲノミコト)といいます。

弟の乱暴ぶりに腹を立てられた天照大神は岩屋の中にこもり、岩戸を閉ざしてしまいました。太陽の神様がお隠れになったので、たちまち世の中は真っ暗になりました。ほかの神様たちは岩戸の前に集まり、天照大神をどうやって岩戸から出すか、知恵を出し合いました。そして、「ニセの宴会」作戦が始まったのです。

岩戸の中の天照大神は聞こえてくる笑い声や太鼓の音に「なにごとか?」と、そっと岩戸を開けました。その瞬間、手力雄命(タジカラオノミコト)という力自慢の神様が岩戸をこじ開け、光の神様を「えいやっ!」と外に引っ張りだしました。こうして世界は元の明るさを取り戻したというお話です。

天照大神は和魂(ニギミタマ=平和の心)をお持ちの神様です。この神話は、どんなにピンチの時でも、みんなで力を合わせれば解決でき、"和"の光が世界をまんべんなく照らすということを教えいます。

神話は口伝えで受け継がれていました。聖徳太子もこのお話を聞いておられたから最初に"和"の大切さを示されたのかも知れません。しかし、それだけでしょうか。

「十七条憲法」には色んな考え方があり、大勢の学者たちが言葉の意味を研究しています。

私は第一条から第三条まで、人が平和に暮らしていくために必要な三つの心を聖徳太子は教え下さっているのではないかと思っています。

第一条は、"和"ですが、和魂の持ち主の天照大神は、全ての日本人の遠い祖先であると神道は教えます。

"和"を大切にしなさいというのは、ご先祖様を大切にしなさいということです。

皆さんに一番近いご先祖様であるご両親を大切にしなさいということなのです。

第二条は、[篤く三宝を敬え。三宝とは仏・法・僧なり]

真理を悟った人のことを仏といいます。つまり、私たちよりも賢い人のことです。皆さんよりも賢い人といえば先生ですね。聖徳太子は二番目に先生を敬いなさいと仰っています。

第三条は、[詔(ミコトノリ)を承りて必ず慎め。]

少し難しいですね。詔とは天皇の言葉という意味です。天皇は日本という国の象徴です。代々、国の中心におられ、人々の心をひとつにまとめています。

三番目に聖徳太子が国民に伝えたかったことは、自分たちの住んでいる国を愛しなさいということです。

整理しますと、親・先生・国を大切にしなさいと聖徳太子は仰っています。

そこに敬いの心があれば、争いごとのない本当の"和"が実現すると聖徳太子は考えられました。

そして、"和"の世界を実現していくためにはどのような心掛けが必要かというと、「十七条憲法」の第四条では、"礼"の大切さを教えています。

親や先生にきちんと挨拶をし、敬語を使うということ。また、お仏壇や神棚の前では、今皆さんがしているように、手を合わせるということ。

"礼"は心で思い、行動=カタチに表すことが大切です。カタチにすることで自然と敬いの心も湧いてくるものです。

第五条は、[貪(ムサボ)らない]です。

貪るというのは、欲張りになるということです。一個のお菓子じゃ物足りない、もっといっぱい欲しいと考えるのが貪りです。お菓子だけではありません。大人になれば、もっといろんな欲が出てきます。

そうするとモノにとらわれ、人間らしい思いやりの心、豊かな心を失ってしまいます。

さらに十条、十七条などは、皆さんに是非知って頂きたい内容ですが、紙面が残り少なくなりました。次回にしたいと思います。

聖徳太子の「十七条憲法」は「和の憲法」と呼ばれています。

この憲法のとおり、人と人、人と国、世界中の国と国とが"和"の心で結ばれていれば、

理想の世界をつくることが出来るはずです。

しかし、今の世の中、"和"の大切さに気付かず、自分さえよければ良いと考える人が多くなってきました。

"和"がなければ、争いが始まります。そして憎しみや悲しみが広がります。

皆さんがお手本となって、平和な、安らぎの世界を少しずつでも広げていただければと願っています。


 つづく…。



聖徳太子のおしえ【3】 育児 子育て 家庭教育 学校

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