十二年春正月戊戌朔。始賜冠位於諸臣。各有差。夏四月丙寅朔戊辰。皇太子親聿作憲法 十七条。
聖徳太子の十七条憲法
十三曰。諸任官者。同知職掌。或病或使。有闕於事。然得知之日。和如曾識。其非以與聞。勿防公務。
十三に曰わく、もろもろの官に任ずる者、同じく職掌を知れ。あるいは病し、あるいは使して、事をかくことあらん。しかれども、しることを得るの日には、和すること曾てより識れるが如くせよ。それあずかり聞くことなしというを以て、公務を妨ぐることなかれ。
十三の申し渡しは、全ての公職の任に就く者は、互いに公職者であることを心せよ。時に病い、時に使者にと、公務遂行に支障を来すこともある。しかしながら、それは理由にはならず、いつ如何なるときでも公務遂行の妨げにならぬよう、常に公職者同士が連携することが求められる。その件は全く存じあげないと言って、公務の遂行を妨げてはならない。
十四曰。群臣百寮無有嫉妬。我既嫉人人亦嫉我。嫉妬之患不知其極。所以智勝於己則不悦。才優於己則嫉妬。是以五百之後。乃今遇賢。千載以難待一聖。其不得賢聖。何以治国。
十四に曰わく、群臣百寮、嫉妬あることなかれ、われすでに人を嫉めば、人またわれを嫉む。嫉妬の患い、その極りを知らず。ゆえに、智おのれに勝るときは則ち悦ばず、才おのれに優るときは則ち嫉妬む。ここを以て、五百(いおをせ)にしていまし今、賢に遇うとも、千載にして以て一の聖を待つこと難し。それ賢聖を得ざれば、何を以てか国を治めん。
十四の申し渡しは、政を司る人全ては、 嫉妬する事があってはならぬ。我れが人を嫉めば、また人も我れを嫉む。嫉妬に侵されし心は、その限度を知らぬ。ゆえに、我れより知識の勝れている人あらば喜ばず。我れより才能の優れた人あらば嫉妬する。しかしながら、迅速な公務遂行が求められる今、五百年に一人の賢者に遇うだとか、千年に一人の聖人を待つなどいってはいられない。ゆえに、ひとりでも多くの臣下が、仁徳ある人とならなければ、如何にして国を治めるというのか。
十五曰。背私向公。是臣之道矣。凡人有私必有恨。有憾必非同。非同則以私妨公。憾起則違制害法。故初章云。上下和諧。其亦是情歟。
十五に曰く、私に背きて公に向うは、これ臣の道なり。およそ人、私あれば必ず恨みあり。憾みあれば必ず同(ととのお)らず。同らざれば則ち私を以て公を防ぐ。憾起るときは則ち制に違い法を害う。故に初めの章に云わく、上下和諧せよと。それまたこの情なるか。
十五の申し渡しは、私心を捨て公のためにその身を尽くすは、臣下として当然の道である。およそ人は、私心が有れば必ず恨みの感情が生まれる。気持ちに迷いが生じれば必ず心が穏やかではなくなる。このような感情に囚われた私心では公務遂行の妨げともなり得る。気持ちに迷いが生じると自制心をも失い法を犯す事にも成り得る。ゆえに、最初の条文にも述べた、天・地・民すべての大調和(=大和心)を貴きものとせよとは、このところの心を強くもち、公務の妨げになる私心を棄てなければならないとしている。
十六曰。使民以時。古之良典。故冬月有間。以可使民。従春至秋。農桑之節。不可使民。其不農何食。不桑何服。
十六に曰わく、民を使うに時を以てするは、古の良典なり。故に、冬の月にはいとまあり、以て民を使うべし、春より秋に至るまでは農桑の節なり、民を使うべからず。それ農(たつく)らざれば何をか食わん。桑(くわと)らざれば何をか服(き)ん。
十六の申し渡しは、民百姓を用いるには時期が大事であり、古よりの理でもある。冬の月は閑が有るので、民百姓を用いても問題がない。春から秋に至るまでは、農作や養蚕の時期でもあるから、民百姓を用いてはならない。農作をしなければ何を食すか。養蚕をしなければ何を着用するというか。
十七曰。夫事不可独断。必與衆宜論。少事是輕。不可必衆。唯逮論大事。若疑有失。故與衆相辨。辞則得理。
十七に曰わく、それ事は独り断むべからず。必ず衆とともによろしく論ずべし。少事はこれ軽し、必ずしも衆とすべからず。ただ大事を論ずるに逮(およ)びて、もしは失(あやまち)あらんことを疑う。故に、衆とともに相弁(あいわきま)うるときは、ことばすなわち理を得ん。
十七の申し渡しは、物事を独断で決めてはいけない。必ず多数の者で議論を尽くすこと。ただ小事は単純な場合につき、必ずしも多数の者と議論する必要はない。大事を議論するときは、互いに過ちを疑い合い議論することで、多数の者との意見が理に叶うようになり、最終の発言はそのまま、道理・真理を表わすことになる。
※ 参考資料① 三瓶精二氏の「眞實一路の旅なれば 聖徳太子十七条憲法」より
http://home.c07.itscom.net/sampei/17ken/17ken.html
※ 参考資料② 四天王寺編「聖徳太子と四天王寺」の訳文より
http://kjs.nagaokaut.ac.jp/mikami/slide/17joukenpou.htm
http://home.c07.itscom.net/sampei/17ken/17ken.html
※ 参考資料② 四天王寺編「聖徳太子と四天王寺」の訳文より
http://kjs.nagaokaut.ac.jp/mikami/slide/17joukenpou.htm