悠の食虫植物 ネペンテス普及委員会 (和名 ウツボカヅラを世に広める会)

食虫植物のネペンテスを広めていくためのブログ。

ネペンテス栽培記 292 今日から始める挿し木増殖 保存版

2016年09月25日 00時00分00秒 | 悠のネペンテス栽培記
数鉢くらいなら問題ないのですが、

野外で大量栽培しておりますと、

そろそろ室内栽培に切り替えるため、

取り込みの準備をせねばなりません。


そうなりますと、

問題になるのが、

夏の間に巨大化した植物のスペース確保です。


まぁ、

ほとんどの観葉植物は、

葉や枝をバッサバッサ切って、

コンパクトに仕立て上げればいいんですが、

ネペンテスはなかなかそうはいきません。


ただ、

あまりにもでかすぎる葉は邪魔になりますし、

かと言ってせっかく成長したのに、

剪定して枝葉を捨てるのも、

もったいない気がします。


そこで、

ぜひチャレンジして頂きたいのが、

挿し木という方法です。


ほとんどのネペンテスは高級植物で、

中には、

一般のサラリーマンの月収でも買えないような、

高額な超希少種まであります。


これをロスト、

つまり枯れさせた時の精神的ダメージは、

はかり知れません。



枯れるときはあっさりと枯れますので、

もしかしたら、

ショックで栽培自体から手を引いてしまう、

なんてことにもなりかねません。



そこで普及委員会では、

かねてからこの問題を解決すべく、

ストックの必要性を重視し、

挿し木実験に力を入れてきました。



まぁ挿し木なんて言葉、

ガーデニング未経験者でも知っとるわいという話しですが、

実際にやってみると、

かなり苦戦するのが、

挿し木と言うものなんですね。






本日は、

皆様の大切にされているネペンテス、

その突然のロストに慌てないために、

何度も失敗の末に得た経験、

その中で比較的成功率の高い挿し木方法を書きたいと思います。




まずネペンテスの挿し木で一番大事なことは、

事前準備です。


準備に始まり、

準備に終わるのが、

ネペンテス挿しの基本中の基本です。



作業場所の確保はもちろんのこと、

道具はすべて揃えた状態から始めるのが、

挿し木の成功率を上げる秘訣です。




普及委員会の場合なので、

すべて同じものを揃える必要はありませんが、

一応、

道具を紹介しましょう。


まずは当然、

枝を切るわけですから、

剪定バサミですね。


個人的には、

家庭用ハサミでもいい派なんですが、

固くて太めの枝を切るには、

やはり剪定バサミの力をかりた方がいいです。


切った瞬間、

家庭用ハサミだと、

枝が左右に吹っ飛んでいきますが、

剪定バサミはスパっと切れて、

その場に枝が落ちますので、

さすが専用の道具は違うなといったところです。



それから、

芽きりバサミもあると便利です。


後はよく切れるナイフ、

水挿し用の容器、

切り口の保護剤があると便利ですね。


まぁ全部、

盆栽用に買ったやつなんですがね。



保護剤は別に市販のものでなくても、

ボンドやロウ、

もしくは粘土や植物油でも大丈夫です。


後述しますが、

今回の挿し木に使用する目的は、

殺菌や雑菌の侵入を防ぐためではなく、

水分の蒸散を防ぐためだからです。


まぁ市販の保護剤が安全パイで、

一回買うと準備するのが一番楽でしょう。


後は、

普及委員会独自の植え込みになりますので、

支柱、

結束バンド、

写真には写っていませんが、

ユグドラシル用の配合用土の準備してあります。



発根促進剤の類は、

あえて用意していません。



挿し木に成功しても、

促進剤が効いたんだねとなっては、

ただの効果の検証になってしまいますので。



では準備が整ったところで、

さっそく、

大きくなったネペンテスの挿し木をしてみましょう。




都合上、

夕暮れ時に撮りましたので、

ピントが合いづらいことをご了承ください。



普及委員会の挿し木方法は、

桜の挿し木実験がフィードバックされています。



挿し木の難物、

桜で実績を上げていますから、

かなり有用性が高いはずです。



夏場に巨大化しやすい代表種は、

やはりアンプラリアでしょう。


交配種ももれなく幹が太く、

成長が始まると一気に大きくなります。



幹が太く固い方が桜に近く、

今回の挿し木方法に好都合です。



さて、

肝心の切る位置ですが、

普及委員会では、

誰もがすぐわかるように、

葉と葉の中間で切ることを推奨しております。



なので、

葉と葉が近く、

しっかりと生育した部分ではなく、

葉と葉の間が間延びしている、

徒長気味のところがオススメです。






そして切る箇所ですが、

まず鉄則1が、

親木に必ず2枚以上、

健康的な葉を残してください。



葉がないと、

ネペンテスは成長できません。


葉が確保できない場合、

まだ挿し木の準備が出来てないということです。



同じ理屈で、

切った枝には、

必ず葉が2枚以上ついた状態にしてください。


不安な場合は、

下から切っていくことをオススメします。




そして鉄則2ですが、

切り口が乾くと、

ネペンテスは成長を停止してしまいます。


なので、

すぐに切り口を保護してください。



水分が蒸散しないように、

覆うように塗るのがポイントです。


別に塗らなくても枯れることはありませんが、

成長開始まで、

相当な時間がかかる覚悟は必要です。



切り口の乾燥は、

関係のないように見える脇芽にもダメージがいきますので、

やはり保護した方が無難でしょう。




そういう訳で、

切り離した枝の方も、

間髪入れずに水につけます。



ちなみに、

どれくらい乾燥にシビアかと言いますと、

雨の日と晴れの日では、

成功率が違うくらい、

ネペンテスは乾くのを特に嫌います。



なので、

本当は写真を撮ってる場合じゃないのですが、

今回は特別です。




まずはじっくりと切り口を観察してみてください。




切り口の円をアナログ時計に見立てた場合、

外周の3時~5時くらいの位置がキレイで、

その他は緑と白いのが、

ぐちゃぐちゃになってるのがわかるでしょうか。


スパっと切ったつもりでも、

これだけ幹の内部にダメージがあるわけです。


ダメージのあった部分は、

基本的には回復しません。


ここで乾燥させると、

すぐに枯死します。


なので、

しつこいようですが、

すぐ水につけましょう。




挿し木成功率の目安は、

だいたい5割くらいです。


生育が順調に進むという条件が入ってますので、

実際の挿し木発根率は7割~8割くらいでしょうか。



なので、

親木と、

切り取った挿し穂3つ、

計4本になるよう切り分けると安心です。



切り取った枝、

いわゆる挿し穂ですが、

下が詰まったストローのような状態だとイメージしてください。



上だけ開いてると、

水が蒸発してどんどん抜けていきますよね。


なので、

上の切り口は必ず、

フタをするように保護してください。




これで下準備の完了です。



さぁ、

ここからが普及委員会テクニックになります。



まずよくある挿し木方法として、

水分蒸散を抑えるため、

半分くらいに葉を切るというものがありますが、

ネペンテスではとんでもないことです。



葉は何があっても死守しなくてはなりません。



そこで普及委員会では、

発根後に生育を開始したら、

即展開できるよう、

一時的に葉を束ねる方法を推奨しております。




ちょっとかわいそうですが、

これだけで葉からの蒸散を大幅にカットできます。



多少折れたり、

葉に傷がついても、

枯れることはありませんので、

乾燥する前にササっと縛ってしまいましょう。



けっこうバキバキといっちゃいますが、

切り取るよりは全然マシです。




縛り終えましたら、

次のステップです。




ここから先は、

水挿し用になります。


土挿しですと、

カルス形成、

つまり、

発根の前段階で腐ってしまう可能性がありますので、

それはまた別の機会に。




先ほどご覧いただいた切り口ですが、

繊維の都合上、

横方向には切れづらいのですが、

縦方向には切りやすい性質があります。




非常に切りづらく、

切り口がすでに失敗してるのがわかると思います。


このまま挿しますと、

水が吸収できずに、

枯れてしまう可能性があります。



そこで打開案として、

普及委員会では、

縦方向に切り込みを入れる方法を開発しました。



こんな感じで、

芽切バサミかナイフで、

縦にスパっと切ります。




すると切り口が、

こんなふうになるわけですね。




切り込みの長さの目安は、

葉の付け根まで切ることです。


それ以上だと、

裂けてしまうことがありますので、

まぁ2~3センチも入れれば十分でしょう。



さらに表面の皮をちょっとむいておくと、

水の吸収がよりスムーズになります。




切りすぎると腐りますので、

おまじない程度の気持ちで、

ちょっとだけで十分です。





後はまた水につけて、

10~20分くらい置きます。



その間に、

どんどん作業していきます。



挿し木するネペンテスを準備して、




切って切り口保護して、

水につける。





葉を束ねて、




切り込みを入れる。




切り込みに失敗、

または幹が細くて困難な場合は、

ナイフでその部分を削り取ってください。




ナイフの理由は、

上から下にスパっと切る必要があり、

ハサミでは難しいからです。




さて、

最初に水につけてた挿し穂はどうなったでしょうか。




水からあげると、

このように切り口が広がってるのがわかると思います。




水を吸い込んで、

膨張した証。


出来は上々のようです。





そしてここから先は、

普及委員会の完全オリジナルです。



本来は、

このまま水に挿しておくのですが、

普及委員会では、

独自開発したユグドラシルシステムに自信を持っているため、

このまま植え込みを開始します。



まずはユグドラシルを準備。




スペースがないため、

一鉢にすべて植え込みます。



全部一緒にして大丈夫かと思われるでしょうが、

大丈夫です。


そう、

ユグドラシルならね。




植え込みが終わったら、

土を足します。




そして水を入れたら完成です。




ユグドラシルは水耕栽培がベースになっているため、

用土が完全に水没するまで水を入れます。



ここで切り口の保護が不十分であれば、

再塗布しておきましょう。




どうでしょうか、

長くなりましたが、

参考になりましたでしょうか。



機会がありましたら、

ぜひチャレンジしてみてくださいね。






あとはこれを繰り返すだけです。




セットさえしてしまえば、

後はユグドラシルがしっかりと守ってくれます。




早ければ2週間ほどで発根し、

3週間くらいで脇芽が出てくるでしょう。



まぁこれはユグドラシルならの話しで、

通常であれば一か月は見た方がいいでしょう。







ちなみに、

ユグドラシルの挿し木成功率は、

ほぼ100%です。


切り口の保護剤以外、

薬剤等はいっさい使用しておりません。



湿度など、

細かい管理も必要なく、

一本植えであれば、

その後の植え替えも必要ありません。




どうですか、

この画期的なシステム、

凄くないですか(´_ゝ`)




ではでは、

今日はこの辺で。



また次回、

お会いしましょう。





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2 コメント

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素晴らしい記事です! (アンゴウ)
2016-09-25 22:27:50
ネペンテスの挿し木でこれだけ詳しく説明されてるページがあったでしょうか!しかも写真付きで。
永久保存版です。
自分ちのはまだ小カブなので、まだ挿し木できないですが、将来に向けて、とても有用な記事です。
勉強になりました!
返信する
アンゴウさんへ ()
2016-09-26 00:58:52
こんばんは!


私の中で、

現状でもっとも成功率の高い挿し木方法なので、

参考にしていただけるなら幸いです(^ω^)


永久保存版で、

勉強になるとは、

これ以上ない褒め言葉を頂き、

とても嬉しいです(^^)


コツコツと実験を続けていた甲斐がありました(*'ω'*)



ネペンテスは一定の大きさに達すると、

成長力がいままでと比較にならないくらい爆発しますので、

けっこうすぐに挑戦する機会がくるかもしれませんね(笑)
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